No.316878

そらのおとしものショートストーリー3rd 小学生

水曜定期更新。
久々に1週間で5作ほど補充してみました。
とはいえみんなかなり手抜き作品です。
まあショートストーリーだしいいっか。

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2011-10-12 00:04:04 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:4036   閲覧ユーザー数:3087

そらのおとしものショートストーリー3rd 小学生

 

 その日私は智樹とアルファとカオスと一緒に桜井家居間でテレビを見ることになった。

 私のドロドロレーダーが反応したので今日はアニメを見ることに決めた。

「ロウきゅーぶ!か。一体どんな内容なんだ?」

「ロウきゅーぶ→籠球部。バスケットボールのアニメでしょ」

 名前から考えるにスポーツアニメであることは明らか。

 さて、そのスポーツアニメがどんな修羅場を演じてくれると言うの?

「……ニンフ。何故よりによってこの作品を選ぶの? 自虐プレイ?」

 アルファは何か不満があるらしい。

 ううん。顔を青ざめさせている所を見ると何かを恐れている。

 ヤンデレ・クイーンは何を恐れているの?

「わ~い。お兄ちゃんと一緒にテレビ~♪」

 お子ちゃまカオスは智樹と一緒にいることに満足している。 

 まあこの子はお子ちゃま過ぎて智樹を巡るライバルと呼べない存在なのでどうでも良い。

 デルタもそはらも日和もいないので、今の私のライバルはアルファだけ。

 でもそのアルファは今の所動く気配もないし、たまには恋のバトルとかなしで過ごしたいと思う。

「それじゃあ、見るぞ」

 智樹がテレビを付けて番組が始まった。

 そして私はアルファの不満と恐れの意味をすぐに理解することになった。

 

 

『『『『『お帰りなさいませ、ご主人さまっ♪』』』』』

 

 それはバスケットボールと呼ぶにはあまりにも異質なアニメだった。

 

『もっと、もっと、昴さんに色々なことを教わりたい。わたし、何でもしますからぁっ!』

 

 バスケ大好きな小学生のヒロインがバスケコーチを務める高校生男子の主人公に恋心を抱く。

 主人公の男は、相手が小学生という事で恋愛対象として見ないように見ないように予防線を張りながらも少しずつ惹かれていく。

 その展開自体はまあ良い。

 少女漫画の世界では幼いヒロインが年上の男と恋に落ちて結ばれるというのは珍しくない。背伸びしたい恋という恋愛の一形態。

 でも、それはあくまでも少女漫画での話。

 このアニメは明らかにベクトルが違う。

 思いっきり男性視点で、思いっきり男性視聴者を意識して描かれている。

 要するに、主人公が如何にして小学生の少女に惹かれていくか、言い換えればロリコンとして覚醒していくかを描いた物語に見える。

 

『はぁ~? 捕まっちゃえよ、ロリコン野郎』

『この変態腐れロリコン野郎っ!』

 

 少女の背伸びした恋の物語というよりも、ロリコンというダークサイドに落ちるか落ちないかの葛藤を描いた物語なのだ。

 

『『『『『お帰りなさい、あなたっ♪』』』』』

 

 というか、この作品、バスケボールを触っているシーンよりもお風呂やプール、コスプレしているシーンの方が目に留まる。というか長い。

 何のアニメだ、これって疑ってしまう。

 というか、どう見ても小学生女子を性的な目で見せようという意図が垣間見える。

 

『あ~っ! モッカンさては女の子大切なものをあげる気だな?』

 

 構図的には、ヒロインたちの方が性的なことに興味津々という形を採って、主人公にその気はあんまりないという演出をしながら。

 でも、何だかんだ言ってこのアニメは、高校生男子が小学生女子に惹かれていくことを描いた作品なのだ。

 

『俺、愛莉のこと、すごく素敵な女の子だと思ってるから』

『気にしないで。智花になら一番気兼ねなく話せるから、つい相談しちゃっただけだから』

 

 そして、主人公の男が小学生女子に段々惹かれていく為に割を食ってしまうのが、主人公に想いを寄せる高校生の女の子。

 

『そぉ。わかったわぁ~……なんて、言うかぁあああああぁっ!』

 

 パンチラ担当にもなっているこの女の子のいじらしさ、報われなさは涙を誘う。

 主人公が小学生に惹かれているのではないかと疑いつつも、彼に素直になれないツンデレを続けてしまう。

 小学生ヒロインをライバルと警戒しながらも、よい子なので邪険にできず、バスケの指導まで行ってしまう。

 いずれ用済みになったら捨てられるのかなという未来を思うと涙が止まらない。

 これはそんな、三角関係を描いた物語でもある。

 要するに、このロウきゅーぶという作品全体を一言で表すとどうなるか。

 

『まったくっ、小学生は最高だぜっ!!』

 

 結局はそうまとめられる作品なのだ。

 

 

 

「な、何て恐ろしい作品なのっ!?」 

 ロウきゅーぶを見終えて私は額から汗を流さずにいられなかった。

「……だから言ったのに」

 アルファの不満そうな瞳が私に突き刺さる。 

「だって、これバスケットボールアニメでしょ? 普通はディ~フェンス ディ~フェンス オーフェンスっ オーフェンスっ。ゴリさ~んって叫ぶ系アニメだと考えるじゃない!」

「……ニンフのアニメレーダーの張り方は生ぬるい。そんなことでは生き馬の目を抜く同人業界で生き残ることはできない」

「クゥッ!」

 アルファの視線がより険しくなる。

 けれど、アルファが私に怒りの視線をぶつける理由もよくわかる。

 だって、こんな退廃芸術アニメを見てしまったら智樹は・・・・・・。

「なるほど、小学生か。今まで女はバインバイ~ンこそが最高だと思っていたが、他の見方もあるんだな。参考になったぜ」

 茶を優雅に啜りながら澄んだ瞳でテレビを眺めていた。

「……マスター、ダークサイドに落ちてはダメですっ!」

 危機感を感じたアルファが智樹に正面から抱きつく。

 智樹をロリコンにしない為にアルファも必死なのだ。

「胸の大きな女の子は最高だぜ」

「……本当ですか? マスター♪」

 アルファが智樹に抱きつくのは大いに不満がある。

 でも、智樹がロリコンとして覚醒してしまうよりも100倍マシ。

 今だけはアルファの邪魔な脂肪の塊を応援する。

「そう思っていた時期が俺にもありました」

「……えっ? マスター?」

 アルファが大きく目を見開く。

 まさか、この展開はっ!?

「有るには有る、ないにはないの良さがあるもんだな。なっ、カオス♪」

 智樹はカオスに顔を向けながらニンマリと笑ってみせた。

 巨乳にあらずば人にあらずと豪語していた智樹が、だ。

「うん。お兄ちゃん♪」

 多分意味はわかっていない。けれど、智樹が笑ったので自分も笑って返すカオス。

 構図だけ見ると2人は見つめ合いながら笑いあっている。

 これって、これってっ!

「……マスターの好きな大きな胸はここにあります」

 アルファは更に激しく智樹を抱きしめる。

 胸の圧力で智樹の顔は潰されてしまいそう。

 それは普段の智樹であればウッヒョッヒョとスケベ魂が覚醒しそうなシチュエーション。

 でも、今は……。

「悪い、イカロス。今俺はカオスと話してるんだ」

 智樹はアルファを自分の体から引き離し、カオスをジッと熱い目で見ている。

 やっぱり、智樹はロリコンという名のダークサイドに落ちてしまったのだ!

 

「……もはや、生きていく希望が見い出せません。マスター、先立つ不幸をお許しください」

「ちょっと! 自殺なんてバカな真似はやめなさいよね!」

 アルファが豆腐の角に頭を打って死のうとするので後ろから羽交い締めにする。

「……離して、ニンフ。マスターがロに覚醒してしまった以上、私に勝ち目はないの。あのアニメの葵って子みたいに、ロリの前にムチムチプリンは霞んでしまう存在なの。婆さんは用済みなの」

 アルファの額からポロポロと涙が零れる。

 でも、泣き出してしまうアルファの気持ちもよくわかる。

 大好きな人がロリコンに覚醒して振られるなんて惨すぎる。

「まだ、負けたわけじゃないわよ、アルファっ!」 

 アルファの体を離してゆっくりと智樹に近付いていく。

 智樹がロリコンに目覚めたのなら、またアダルティー好みに引き戻せば良いだけのこと。

 私の全ての魅力を動員して、智樹をもう1度こっち側に引き寄せてやるんだから!

 

「智樹っ!」

 カオスと見つめ合いっぱなしの智樹の注意を私へと向ける。

「何だ、ニンフ? うぉっ!」

 智樹が驚きの声を上げる。

 それもその筈、私は両手を首の後ろに当てながら水着グラビアアイドルさながらにセクシーポーズを取っているのだから。

 私の大人のお色気に智樹もイチコロな筈。

「そんな幼稚園児なカオスじゃなくて、この私と遊びましょう~♪」

 ポーズを変えながらの誘惑。

 私の魅力を総動員した智樹への性的なアピール。

 お願い、智樹っ!

 ロリコンから目を覚ましてっ!

「カオスは幼稚園児……か。なるほど、確かにカオスは幼稚園児に見える」

 智樹は大きく息を吐いた。

 そして表情を引き締めて、凛々しい顔を私に向けた。

「ニンフ。唐突ですまないんだが、俺とデートしないか?」

「えっ?」

 智樹の誘いは本当に唐突だった。

 でも、私をデートに誘ってくれたということは、いうことはっ!

「頼むニンフ、俺とデートしてくれっ!」

「うんっ♪ 喜んで♪」

 智樹はロリコンが治ったんだぁあああああぁっ!

 やったぁ~~~~っ♪

 私は早速智樹と腕を組みながら玄関へと歩き出す。

「ニンフとデートできるなんて最高だぜ」

「もぉ~♪ 智樹ったら、正直屋さんなんだから~♪」

 智樹のロリコンが完治して私がデートする。

 こんな嬉しい展開が待っているなんて。

「……ニンフ。それは貴方の勘違い。でも、ニンフにそんな抜け道があったのに気付かなかったなんて、このイカロス、一生の不覚です」

 後ろでアルファが襖から顔だけ出しながら悔しそうな表情を浮かべている。

 何か言っていたけどよく聞こえなかった。

 アルファには悪いけれど、智樹のロリコンを治したのは私なのだし、今日はデートを満喫させてもらおう。

「楽しいデートにしようね、智樹♪」

 智樹の肩に自分の頭を乗せる。

 あのアニメを見た時はこんな幸せが自分に訪れるなんて微塵も思わなかった。

 ほんと、ロウきゅーぶさまさま。

 

「まったく、小学生は最高だぜっ!」

 

 智樹は何かを呟いた。

 けれど、幸せに浸っていた私にはよく聞こえなかった。

 

 

 了

 

 


 
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