ロックラック。広大な大砂漠の奇跡の様に生じたオアシスの直ぐ傍に作られた街である。砂漠に街ができたおかげで、移動の途中で砂漠を経由する商人や旅人はこの街で骨休めをする。
結果、人と物、ハンターによって賑わう街になった。大海原を行く船の様に大砂漠を行く砂上船や、大空を優雅に旅する飛行船によってこの街には多くの物が集まって来ていた。
そして街の中心部にはハンター達が集まっている場所がある。屋根や壁はなく、石畳を敷き詰めた広場に座れるイスやテーブルがある開放的な場所だった。特に名前はないが、ハンター達は酒場と呼んでおり、毎日数多くの客の姿で賑わっていた。
そして何よりハンターにとって大切な物、ハンターズギルドのカウンターが設けられていた。
狩猟に出かけるために仲間と待ち合わせをしている者、依頼を終えて街に戻ってきて後は報告を済ませて終わりの者。
後者には二種類があり、無事に依頼を達成し仲間と祝いの宴を開く者達、依頼に失敗し重い空気で反省会をする者達。
酒場にある階段を上りさらに奥に行くと、この街のハンターが狩猟に行く際の交通手段、砂上船が止められている砂の港がある。この街のハンターは此処から狩猟に出かけ、ここに戻ってくるのだ。
そして港から一人のハンターが戻ってきた。防具は鉱石で作った装甲を基本にモンスターの骨や鱗、羽毛を使って作られている。防具の名はハンターシリーズ。ハンターにとって初歩的な防具の一つである。肩幅が広く、防具が男用である事から、男性である事が分かる。
ハンターメイルは顔が見えるタイプの防具であり、顔からしてハンターの年齢は22歳か23歳くらいだろう。
背中にはこのロックラックで発明された新型の武器、剣斧(スラッシュアックス)が待機状態になっている。
ハンターはダラダラと歩きながらハンターズギルドのカウンターに向かい依頼の報告をする。そしてカウンターで袋を貰っていた。恐らく報奨金が入った袋であろう。
ハンターは近くにある椅子に座ると、受付嬢に料理を頼む。狩猟に成功したためその報酬で少し遅め、最早少し早目の晩飯を食べるようだ。
ハンターは受付嬢が先に持ってきたお冷を飲み。大きく息を吐きだした。
「・・・はぁぁぁ、何で俺はハンター何かになったんだろう?・・・全部あのクソ親父のせいだ」
ハンターは憎たらしそうな視線を空に向けた。
時は3ヶ月ほど前に遡る。当時、彼はハンターではなく、ユクモ村という温泉で有名な村の飲食店で働いている料理人だった。料理の腕は良かったため、それなりに人が来る店になっていた。
仕事が終わり、彼は家に帰ろうとした時だった。彼の目の前に『強面で人生ではあまりかかわりたくない人達』が現れた。『強面で人生ではあまりかかわりたくない人達』のリーダー的な男の人が彼に近づいて来てこう言った。
『兄ちゃん。悪いんやけど、ちょいと来て貰えるかぁ?兄ちゃんの親父さん、□□さんに付いてお話があるんや』
彼は数年前から失踪している自分の父親の名前が出てきた事に驚いた。そして彼の目の前に出された紙を見てもっと驚いた。
身元保証人という欄に自分の名前が書かれていた。細かい部分は省くが、身元保証人の欄に彼の字ではない字で彼の名前が書かれていたのだ。
そしてそこには父親が返す事になる金額が書いてあった。思考が停止した。今まで見た事のない金額が記入されていた。期限日を過ぎて3年以上放置された様で物凄い金額になっていた。『借りられる金額の限界まで借りた』+『3年分の高利子』=『中規模な企業の株式なら51%買えそうな金額』になっていた。
『兄ちゃん。恨むんやったら、父ちゃんを恨むんやな』
そういったリーダー格の男は部下達に指示を出して木箱を運ばせた。リーダー格の男は木箱のふたを開けた。そこに入っていたのはハンターシリーズ一式だった。
『安心せえ、これ以上は増えんようにしといた。兄ちゃんは今日からハンターになって借金を返してもらおうか?もちろん受けてくれるよな?』
拒否など出来なかった。
「・・・はぁぁぁ、借金を返すためにハンターになるなんて、笑えねえよな」
溜め息をすると幸せが逃げるというが、今の自分には最初から幸せなんかないよな~、と自傷する借金ハンター。運ばれてきた野菜を黙々と口に運ぶ。肉?そんな高級品食べられるわけがないだろう。肉が食べたい時は狩り場で肉焼きだ。
ハンターになってまだ3ヶ月しか経過していない上、訓練所すら通えない彼は何もかも手探りで狩猟に出ているのだ。採集や採掘、増え始めた小型モンスターの狩猟などの小さな依頼の報酬で毎月借金を返し、ギリギリで食い繋いでいる状態だ。
特に今月は厳しい。素材が揃った事が嬉しくて、ボーンアックスをボーンアックス改に強化してしまったのだ。そのため返済に払う金額が少し足りず、生活に回す予定だった金を回したのだ。
さらにそんな彼の精神を追い込む物がある。それは借りている部屋だ。彼が借りている部屋がある宿舎は酷かった、酷過ぎた。彼の様な買いハンターが借りられる部屋なのだからボロい事は承知していた。それでも酷過ぎた。
寝床は藁が積まれただけの、とても寝床とは言えない代物だった。更に外と同じような石畳が部屋の中に続いている。地面の上に壁と屋根を付けただけの空間と言うべきだろう。極めつけは壁である。壁と言っても向こう側が透けて見える薄い布で部屋を区切っているだけである。
プライバシーもクソもない。ほぼ隣の部屋の者と相部屋状態なのだ。ユクモ村にいた時はまともな部屋で過ごして来た彼には、精神的にかなり効いた。
部屋(?) に帰って来た彼はボーンアックスを置き、防具を脱いでアンダーシャツだけになった。ロックラックでは、毎日風呂に入る事はない。寝る前に体を拭くぐらいだ。彼の住んでいたユクモ村は温泉があったため、彼は毎日入っていた。
ユクモ村から離れて3ヶ月が経過したが、まったく異なる環境に慣れるのは難しい。溜め息が癖になったのもそのせいだ。
「・・・はぁぁぁ。明日はジャギィでも狩るか」
そう呟いてハンターは眠りに就いた。おや?ハンターのギルドカードが机の上に置かれている。
本名:ドッペルゲンガー
HR(ハンターランク):1
年齢:16歳
・・・・・・顔はもう20代なのに、実年齢は16歳だったようだ。
あとがき
何を書けばいいのだろう?18歳の頃バイトでレジに立っていたら、お客に『君、新人?23歳くらい?』と言われた事を書けばいいのか?
冗談はさておき、次から狩猟に出ます。基本的にオリジナル要素なし、ゲームに忠実に行きます。
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父親により多額の借金を背負わされた主人公。