No.314476

真・恋姫†無双 〜白馬将軍 龐徳伝〜 第2章 黄巾の乱 幕間

フィオロさん

曹魏のお話がメイン。なので幕間と言う形にしました。

2011-10-08 00:07:19 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:2170   閲覧ユーザー数:1909

 

 

 

 

 

「一刀。もう皆は別の仕事に行ってるわ。此処なら密談可能よ。」

 

「龐徳の件、だな?」

 

「そう、その様子ならあなたの知識の中に龐徳の事もあるのでしょう?」

 

「ああ。」

 

「話しなさい。あなたの知識の中の龐徳とはどう言う人物?」

 

「一言で言うなら義の武人、かな。俺の世界の歴史書や小説では、馬超の元で曹操と戦い、漢中で病気のせいで馬超と別れた。その後張魯の元で再び曹操と戦ったんだけど、傑出した武力が曹操の目に留まって計略で龐徳を配下に加えたんだ。」

 

「ふぅん。」

 

「その後曹操軍の一員として、樊城攻防戦では関羽の額に矢を命中させてるんだけど、これは致命傷にはならなかった。結局于禁と龐徳の軍勢は豪雨による濁流で大半が水没し、于禁は配下の兵士達と共に関羽の降伏勧告を受け入れ、龐徳は脱出に失敗して戦死した。大まかだけど、俺の世界の龐徳の生涯だね。」

 

「関羽・・・あなたが言うにはこの時代の武人としては1・2を争う実力者、と言う事だったわね。」

 

「ただ前にも言ったけど、俺の知っている知識とこの世界だと、もしかしたら大きなギャップ・・・おっと、隔たりがあるかもしれないけどな。」

 

「それは実際に見(まみ)えてから考えれば良い事よ。この件は此処までで良いわ。

 それじゃあもう一つ、実際にあなたが手がけて半年になる、警察の効果について、あなたから聞かせて頂戴。ついでに、政策の提案も聞きましょうか。」

 

「ああ、解った。」

 

 

 

 

 

 

陳留は元々、一刀が訪れる前から曹操の統治により、比較的安定していた。ただしそれは他の地域と比較して、の話であった。それでもその噂を聞きつけた人々が陳留を訪れ、そこで定住する住民も存在している。

 

元々陳留は北西に帝都洛陽、南西に鐘繇が治めて繁栄している許昌、北は黄河を挟んで大都市である鄴、東には中原の穀倉地帯が広がっており、交通の要衝と言える都市である。当然商人の往来は頻繁で、その商人の情報は各地に広まっていくのである。

 

しかし住民が他の地域から流入して来ると、元居た住民との摩擦が生じる事も少なく無い。実際曹操は自らの軍の強化をはかり、その兵士の中から都市の警備に当てる事で、都市に住民が流入増加と共に、悪化の傾向が見られた陳留の治安を保っていた。

 

これに対し、一刀は都市の治安維持と軍を切り離し、警察組織を編成する事を進言。一刀の改革案は、陳留を大まかに5つに区割し、区画事に一つの警察署を設け、さらに駐在所(派出所もしくは交番と、警察官とその家族が住む家を兼ねる拠点)を都市内に点在させて、陳留の治安維持に当たらせる、と言うものだった。

 

ただし、曹操や荀彧はこの改革の利を認めつつも、出費の問題で難色を示した。これに対し、一刀は事前に陳留の有力な商人の一人である衛弘と言う人から、陳留の治安について相談を受けており、一刀に治安維持のためには出資も惜しまないと言う申し出があったのである。しかも衛弘は同じく有力な商人であり、親友でもある衛茲と言う人を誘い、出資する人をさらに募った為に、多額の費用を必要とした一刀の改革を、十分支えるだけの資金を確保する事に成功したのである(ちなみに衛弘と衛茲はこの件で元々良好な関係がさらに深まり、義兄弟の契りを結んだそうな)。

 

この為、曹操は警察組織の構築と運営を全て一刀に一任し、一刀は于禁、楽進、李典と言う3人を部下として譲り受け、実行に移したのであった。この間、一刀は警察部隊に配属された兵卒の中から、一刀が目をつけていた人物であった満寵と呂虔を抜擢し、曹操に推挙している。満寵は曹仁の副官として、呂虔は夏候淵の副官として、現在はそれぞれの指揮下で活躍している。

 

そして、一刀の仕事ぶりは、曹操の期待に十分に応えた。陳留の治安は非常に良くなったのである。

 

しかし・・・

 

 

 

 

 

 

この結果、一刀に取って予想外な事が起きていた。警察が治安維持活動中に民衆からの様々な要望が、警察を通じて大量に上がって来た事であった。警察が発足してからは、道案内や治安の悪い地域の改善要望だったが、時間が経つに連れて流入して来た移民から「仕事を探しているが、何か無いのか?」と言う内容の相談が非常に多くなったのである。

 

これは警察の存在が陳留に浸透した為に、陳留の治安を専門とする組織だけあって、移民に限らず陳留の住民達の悩みを聞く機会が多くなって行ったからであった。それに伴い、「もしかしたら仕事を紹介してもらえるかも」と考えた移民達が、仕事を求めて警察に相談する様になった、と言う訳である。実際に相談に当たった警察官の伝で仕事にありつけた移民も居た為、現在も多くの移民達が相談に訪れるのが現状となっていた。

 

当然こうした情報は、警察のトップとなっている一刀にも報告されたが、元々治安維持を専門として創設された警察には、権限等様々な面で限界があるのは目に見えていた。

 

しかし、こうした移民達を放置すればそれは犯罪の温床となりかねない。移民達は食い扶持を得る為に仕事を探している訳だが、それが見つからずに居れば、日々の食を得られず、餓死するか犯罪に手を染める(最終的に賊となる)事になってしまうのは明白であった。

 

そのため、一刀は治安維持と移民対策双方に関わる改革案を考えた。それは、一刀が元々過ごしていた現在社会、この世界の人々からすれば天の国の制度をそのままこの世界でも使える改革であった。

 

 

 

 

 

 

「はろぅわぁく?」

 

「うん。労働力を必要とする側が求人を公的組織に提示して、公的組織はそれを求職する人に紹介する、と言うものだ。

 警察を発足して半年になるけど、知っての通り、仕事にありつけた移民はまず問題無いけど、そうでない人は・・・言うまでも無いだろ?」

 

「兵として雇い入れたり、屯田制度の人足として集めているのだけれど?」

 

「それでもまだ仕事を探す人は居る。そして、色々商会の人々からは人手が足りないと言う相談も来ていてね。

 明確に求職相談所、さっきも言ったハローワークを作る事で、求人情報を集約させて、労働力を行き渡らせる事が出来る様になる、と俺は考える。

 ちなみに、情報を集約して紹介する為の施設に関しては、衛弘が自分の土地を貸してくれるそうだ。まあ、提案が通ればの話だけどな。」

 

「もう形はだいたい出来上がっていると見て良い?」

 

「構想はもう組み上がってる。労働力を求めている側の要望も、もうかなり集まって来ているから、余り日数をかけずに職業仲介出来る様になると思う。」

 

「そう・・・じゃあ、そこまで整っているなら、はろぅわぁくの設立から運営まで、あなたに一任するわ。

 折角だからその職業紹介に屯田制度の人足募集や、新兵の募集も乗せておいて頂戴。」

 

「了解・・・ところで、警察と両立してやるのか?」

 

 

一刀の表情は少し引きつっていた。流石に警察も軌道に乗って、設立当初に比べれば手間は大分解消された。それでも、警察長官としてはその仕事量は決して少なく無い。何しろ書類仕事に留まらず、定期的に陳留の警邏もしているので、デスクワークと現場の仕事の両立をしていると言う事になる。

 

警察だけなら一刀でも十分務まるのだが、それにさらに仕事が積み重なると、未だにこの世界で責務を背負って1年も経たない一刀には、重責過ぎる。そもそも現状ですら一刀は大変な思いをしながら、自らに課せられた職務を果たして来たのである。しかしこれ以上職務を兼任させるのは・・・

 

 

 

 

 

 

「流石に荷が重いわね、警察に関してはだれかあなたが信頼出来る者を抜擢して任せられないかしら? もし、これと言った人材が居ないなら私が用意するけど?」

 

 

曹操も、一刀に無茶をさせて潰す様な事は避けたいのだ。

 

 

「そうだな、呂虔も満寵も、秋蘭や冬蘭(曹仁)の副官だし・・・そうだ、王忠さんに汚名返上もかねてやらせてやれないか?」

 

「王忠を? 余り感心出来る人事とは思えないのだけれど?」

 

「警察の仕事は地味になりがちだけど、あの人はそうした事で手抜きする人じゃないだろ? それにあの失敗も華琳の命令を忠実に守っただけじゃないか。

 融通のきかない人ではあるけど、だからこそ警察を任せても良いと、俺は思う。一兵卒に降格させられても腐らずに、一からやり直そうって意気込みも感じ取れた。

 王忠さんに汚名返上も兼ねて、やらせてやって欲しい。」

 

「・・・あなたがそこまで言うなら・・・でも、いきなり警察を全面的に任せるのは不安だから、王忠を警察長官代行として置く事にしなさい。一定期間、あなたが仕事ぶりを観察して、問題無い様なら任せるわ。」

 

「解った。」

 

 

 

この後、王忠は一刀のお墨付きを得て、正式に警察長官となる。そして、この一刀の王忠推挙が、天下の戦局に大きな影響を与える事になるのだが、それはまだ先の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

読んで下さった方々、誠にありがとうございます。フィオロでございます。

 

 

漸く期間社員ではありますが仕事にありつけるかもしれません。

 

 

 

 

それは兎も角として、今回は曹魏での一刀の立場について掘り下げてみました。原作では警備隊でしたが、この小説では軍と治安を分ける目的で、警察と言う言葉を持ち出す事にしました。なんだかんだ言って役割分担をしっかり整えられると言う事は、国力が無いと出来ない事ですから、一大守でありながらそれが出来る、曹魏のチートぶりを表現してみました。

 

呂虔や満寵に関してですが、正直今後の本編で出て来るかは未知数です。でも史実的に重要な将軍だから出来るだけ出してあげたいと思うのが本音です。

 

 

 

 

それでは、また次のお話でお会いしましょう。

 

 

 

 

 

 

 
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