No.312036

2006年9月7日に書いた短文が出てきたので載せてみます。
言葉遊び。

2011-10-03 15:13:13 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:378   閲覧ユーザー数:377

「あと少し…」

いつもなら気にもならない距離が、今日はやたらと長く感じる。

煩い程聞こえていた蝉の声も、今はもう耳には届かない。

絵に書いたような、季節の移り変わり。

音もなく訪れる、秋という名の時期。

…悲しくなるのは、何故だろう?

季節は何があっても関係なく変わっていく。

…苦しみは、消えないまま。

 

今朝はかなり涼しかった。

このまま冷えきって、身体が動かなくなってしまえば良いのに…等と自虐的とも取れる事を考えてしまった。

さすれば悩み事からも解放され、苦しむ事もなくなるだろうに。

…幸せを感じたい、というただ漠然とした思い。

直ぐにそれは現実という名の痛いものにかき消され、儚く散ってゆく。

…背中が痛い…

そう考える度に、心も身体も痛くなるのだ。

 

…助けて。

 

 

丁度今のような、秋に変わる時期だった…

辛い出来事を痛感したのは。

手に余る幸福を、手に入れたと思っていたのに。

…遠い日の想い出…それがまだ自分を苦しめる。

涙は枯れる事は無い、きっとこれは生きている限りずっと自分を痛めつけるのだろう。

 

 

…握っていた手が汗ばんできたのを感じた。

濡れた掌をタオルで拭う。

 

…ねえ…まだ着かないの?

脳裏に誰ともない声が響く。

 

早くこの道を過ぎて、たどり着かなければ。

独りを感じたくはない、もう二度と。

 

 

…ふと、涼しい風が一際強く吹いた。

塀に風に流された枯れ葉が当たって落ちる。

…本当に、もう…秋だな。

 

 

まだ目的地には着かない。

見失った未来のように、先には何も無いのではないかという錯覚に陥る。

…無駄に歩む速度を早める。

目に写るのはもう見慣れた景色。

 

 

…もうすぐ…だ。

 

 

やたら長く感じたこの距離も、進めば必ず辿り着くのだと、…少し安堵した。

 

ゆっくりと、確実に、そこに近付く事が出来ているのだ…

 

 

…夜が訪れ始めているのを感じる。

ライトが少しずつ灯り始めた。

 

 

理屈や理由なんていらない、自分は今此処に居て、その場所を求めているのだから。

ループするあの時の感情を、打ち消すんだ。

 

…冷静になるために、深呼吸。

 

廊下に差し掛かり、その先に見えた明るい灯りに安堵の溜め息を吐く。

 

 

 

…ワタシノバショハ、イマココニアル。

 

 

 

 

 

 

 

…おかえりなさい。


 
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