No.311124

訳あり一般人が幻想入り 第3話

VnoGさん

◆この作品は東方projectの二次創作です。嫌悪感を抱かれる方は速やかにブラウザの「戻る」などで避難してください。

2011-10-02 00:57:59 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:814   閲覧ユーザー数:799

 

 

 

 

 

 

 横谷は今、博麗神社の居間にいる。そこには霊夢や魔理沙の他にもう三人の少女(うち一人は幼女)が新たに入っていた。

 

「女性の鬼の角を掴むことはホントに許されることじゃないんだよ!」

「はい、すいません……」

「優さんは外の世界に彼女とかいるんですか?」

「それ聞いてどうするんだよ……てか聞くな……」

 

 横谷は左右から少女(と幼女)の会話のドッチボールとマシンガン説教を数十分間、何とか応対している。しかしずっと応対をするのは疲れてくる。徐々に返事に力が無くなってくる。

 ペチャクチャペチャクチャ……

 

「ねぇ聞いてんの!」

「……はい」 

 

 悪戦苦闘する横谷の状況に、羽を生やした少女が顔をニヤニヤとにやけながら、挑発的な口調で(たず)ねる。

 

「それよりも見てくださいよこの状況、貴方はどう思いますか?」

「すごく……疲れます……」

 

 横谷は頭をガックリと項垂(うなだ)れて疲労感を吐露する。

 

 

 

 第3話 FA? いいえ無償トレードです

 

 

 

 

 

 

 

「邪魔だぞ文、こいつには一回痛い目に合ったほうがいいんだ。それに殺すんじゃない、気絶する程度に抑えるさ」

「いや~でもその衝撃にこの人が耐えれるとは思いませんよ。骨が砕けるかもしれませんし」

(と、とりあえず助かったのか?)

 

 横谷は一瞬安堵(あんど)し顔を下したが、再び顔を上げるとき今度は口をあんぐりと唖然とした。

 仲裁(ちゅうさい)に入るように空から現れた後ろ姿の少女の容姿だ。上半身は頭に山伏が被る頭巾(ときん)のようなものに、左右に伸びている長い紐に二つ等間隔に白い毛玉が付いた赤い帽子に、黒の細いリボンを首元に結んだ普通の半そでシャツだが、そこからカラスのような黒い羽が背から生えていた。

 そして下半身。とてもきわどいくらいのフリルのミニスカートで、風が吹いたら中身が見えてしまうのではないかとも思った。最後に靴なのだがこれも赤く、底が一本歯の下駄のような奇妙な形に伸びていた。横谷はこれらの特徴から、彼女は天狗かそれに近いものとなんとか認識した。

 

(天狗も女なのか!? どうなってやがるここの妖怪共は!?) 

 

 下半身の部分を手で隠しながら、幻想郷の住人達の不思議さ――(こと)に女性が多い事――にただただ驚くしかなかった。

 

「なんならアンタも一緒に殴られるか?」

「あややや、それはほんとに困りますよぉ」

 

 横谷が必死に欲望と戦っているのを余所に、二人のやりとりはまだ続いていた。横谷はこいつは何故俺をかばうんだ、と徐々に疑問が湧いてくる。

 

「ねぇ、いつまでやってんの?」

 

 そこに霊夢が、いい加減しびれを切らしたと言わんばかりに二人のやりとりを(さえぎ)った。

 

「別段そいつがどうなろうがどうでもいいけど……」少し間をとるように息を吸って「これ以上やかましい事して私に無駄足取らせるようなら、封印するわよ」

 

 霊夢の顔はさほど変わっていなかったが、背後から禍々しいオーラを放っているような剣呑(けんのん)な雰囲気だった。右手には既に数枚のお札が出されていた。

 

「うぐっ……」

 

 それまで恐ろしい剣幕で喋っていた萃香が、霊夢の様子を見るなり突然黙ってしまった。

 

「……わかった、やめるよ……」

 

 そして萃香は意気消沈し、(たけ)っていた(こぶし)を下ろした。

 

(今度こそ助かったか……) 

 

 横谷は萃香が襲ってくることはないと見るとほっとした表情で、先刻まで動けなかった体を起こした。

 

「さて、危機は去りました。ということで、早速取材の方に移させてもらいますね!」

 そう言った後、突然少女が優の方へ体を向き、ずずいっと近寄ってきた。

「え?」

 

 安心しきっていた横谷は突然の出来事に、頓狂(とんきょう)な声を上げてしまう。

 

「あなたのお名前は? あなたはどうやって幻想郷に来たんですか? あなたの外の世界での暮らしは?」

「ちょちょチョイ待った! 質問する前に、アンタの名前教えてくれ」

 

 まくし立てるように質問攻めをする少女を抑えて、横谷は名前を訊ねる。

 

「これは失敬、私は射命丸文(しゃめいまるあや)と申します。ここ幻想郷の人気新聞社『文々。(ぶんぶんまる)新聞』の新聞記者です」

「新聞……記者?」

(妖怪も新聞作って読んだりすんのか? つか、自分で人気っていうとか……)

 

 能ある鷹は爪を隠すと言うが、この鳥は軽々と見せた。しかも『爪』ではなく『天狗さ』を。

 横谷は疑問と(あや)の喋り方から来る胡散臭(うさんくさ)さを感じた。

 

「さて、自己紹介は終わりましたから、次はこちらの番ですよ。ではまず、あなたのお名前を教えてください」

 

 そう言い、文は胸ポケットからメモ帳とペンを取り出した。

 

「あ……あぁ……横谷、優だ」

 

 一瞬応えるのをためらったが、一応命の恩人になる文に応えないわけにいかない。それに応えなくても引き出そうと詰め寄ってくるだろう、と思い名前を応えた。

 

「ふむ、横谷さんね……では次に、どうやってここ幻想郷に来たんですか?」

「え? どうやってって……」

 

 横谷は黙り込んだ。ここに来てしまった原因と言えばあの時、高いところからの自殺しようとしたときに、何らかのおかしな出来事によってここに来たとしか思えなかった。しかし、そのことを言うつもりはなかった。

 自分の自殺を喋るほど愚かなお喋りクソ野郎ではないし、そこに根掘り葉掘り聞かれても困るからである。

 

「おや、どうしたんですか黙り込んで?」

「……言えん」

「え? なぜですか?」

「……何も覚えてないからだ」

 

 横谷は咄嗟(とっさ)に嘘を付いた。事実、飛び込んだ後のどのようなおかしな出来事によって、ここに来たのかは横谷には知る由もない。しかし文はそれを聞いて疑念の表情になる。

 

「あやや~? さっきは『言えん』っていったのに突然『何も覚えていない』はおかしいんじゃないですか? 普通は最初に持ってくるんじゃないんですか?」 

(ぐっ……)

 

 言えんという言葉の後から発する言葉ではないこと、は横谷にも分かっていたことであった。しかし咄嗟に出てきた嘘であったためそれしか言葉にできなかった。今更訂正もできない。

 

「何か言えない理由でもあるんですか?」

「だから、何も覚えていないんだよ!」

「声を荒げるところにますます怪しさが感じられますねぇ~」

「くっ……」

 

 本当に覚えていないつもりで声を荒げた事が、(かえ)って怪しさを増してしまった。文は顔がにやけながら横谷に食い下がる。

 

「本当に覚えていないのですか?」

「……本当に覚えていない……」

「本当に?」

「だからそうだっつってんだろ」

 

 強気に言ってはいたが、目線は文に向けていなかった。それが更に怪しさを増長させた。文は横谷を睨みつけている。

 

(くそっ、早く終わらせろよ!) 

「……あぁ!」

 

 文は突然(ひらめ)いた顔をする。

 

(なっ!? 察知したとでもいうのか!?)

 

 悟られないように冷静を(よそお)ったが、横谷の手には大量に汗が噴き出ていた。

 

「もしかして言うのが嫌なんですか?」

「だ、だから俺は覚えてないって」

「隠さなくてもいいですよw」

 文はまるで相手の好きな子を知ってイジワルする子供のように笑いながら勿体ぶる。

「ぐっ、こいつ……」

「大丈夫ですよ。道に迷ってここに迷いこむことは珍しくないですから」

「……へ?」

 

 横谷は、思っていた考えと違う返答に拍子抜けした。

 

「んも~恥ずかしいからって何も言わないから、変に勘繰(かんぐ)ってしまうじゃないですか。」

「え?」

「一部の外来人は森に迷い込んでここにきてしまうこともありますから、恥ずかしがることはないんですよ横谷さん」

「いやいやいやいや、俺は迷ってここに来たわけじゃないんだが」

「あれ? 違いました?」

 

 横谷はほっとしたのと同時に、俺以外にもここに来た外来人がいたのかと関心を抱いた。

 

「他にも迷い込んだやついたのか……」

「そうよ。一ヶ月に一、二人くらいは迷い込むわ」

「へぇ、そうかい」

「まぁでもここに来る原因は、私が(さら)ったり境界をいじってたまたまここに迷いこんでしまう事が多いけど」

「そいつぁ怖ぇ話だな。……って誰と話してんだ? 俺」

 

 横谷は後ろに振り向いた。

 

「えっ!? ええっ!?」

「ふふふ、どうも♪」

 

 目を疑った。また新たな少女――というより『女性』の方が適しているほど、顔が大人びていた――が扇子を持って現れていた。しかもその女性の下半身がなかった。

 人が一人入るほどの横に裂けた空間が展開され、そこから例の女性が紫の服を着た上半身だけがあらわになっている状態だった。裂けた空間の切れ目の両端にはリボンが縛られており、空間の中は暗く、無数の目玉が広がっていた。

 

「な、なんなんだお前は!?」

「これはこれは(ゆかり)さん、お久しぶりです」

「久しぶりね、文」

 

 と、横谷をそっちのけに文と紫という女性は話し始めた。

 

(なんなんだあの妖怪は!? 異次元空間を扱う妖怪なんて聞いたことねぇよ!)

「彼女は八雲(ゆかり)。この幻想郷を創った妖怪よ」

 

 裂けた空間にあっけに取られている横谷の横から、霊夢が彼女の正体を説明する。

 

「あ、あの裂けた空間は何だ?」

「あれは『スキマ』よ。彼女か使える能力『境界を操る程度の能力』によってできる技よ」

「スキマぁ? ……あああ~っ、ワケわかんねぇ。なんなんだよここの世界は……」

 

 横谷は頭を掻き(むし)りながら、自身の目の前に起こる出来事や現れる人物の、外の世界の常識と全く違うことに悲観する。

 

「いいこと教えといてあげる。外の世界の常識はここでは通用しないわ。外の世界に帰りたいなら、ここで外(の世界)の常識を捨てることね」

「・・・・・・」

 

 横谷は言葉にできなかった。『外の常識を捨てる』などと言われてもすぐに捨てられるものではない。『郷に入ったら郷に従え』とは言うが、従う条件が常識を捨てろとは聞いたことがない。

 常識を捨てるシーンと言えば、何か新しい商品を作るときに起爆剤として今までにない商品を企画するときや、漫画や絵を描くときに常識破りな絵や物語を描いて見るものを惹きつけさせるためなど、いわゆるその場限りでの時のみで行われるのであり、いきなり常時常識のことは考えるなというのはどだい無理な話である。

 それにその前の『外の世界に帰りたいなら』という言い草にも絶句していた。まるで数週間は外の世界に帰れないような言い回しにもなる。優はこの二つの言葉とここまで起きた出来事もひっくるめて、何をどう言い返せばいいのか言葉がでなかった。

 

「ところで、あの外来人さんですが」

 

 文と紫の会話は、横谷のことの話をしている。

 

「どうやら迷い込んできたわけじゃないらしいんですが、もしかして紫さんが連れてきたんですか?」

「いいえ? あの外来人を連れまわした記憶はないわ。今初めて()ったんだもの」

「そうなんですかぁ。では紫さんが連れ回した人ではないとなると、一体どうやって……」

 

 文は首をかしげながら考えていたが

 

「それより中に入りましょ。外で話すのもなんだし、それに寒いし」

 

 紫が言い終えると体をスキマの中に隠れ、スキマを閉じたのと同時に今度は障子の近くに縦に同じ

スキマが展開し、そこから紫が現れ、勝手に障子を開け居間に入って行った。

 

「そうね、寒くてたまんないわ」

「私も体冷えてきちゃったし」

「中で話しつけようか」

「ではお邪魔しまーす」

「えっ、おい、ちょっと……ハァ」

 

 残りの五人も紫に続いて中に入ろうと居間の方に歩いていく。

 

「ハァ、なにがなんだか……」

「アンタは掃除の続きをしなさい」

 ぴしゃっ!

 

 横谷も中に入って温まろうと居間に足を入れようとした時に霊夢に(とが)められ、障子を強く閉められた。横谷は怒りが込み上がったが抑えて黙々と雑巾掛けの続きを行った。

 

 

 火鉢の熱で暖まった居間の中は完全に談話室となった。霊夢は紫とコタツの中で何気ない無駄話。奥では先ほど雑巾掛けを終えた横谷を捕まえて説教している萃香と、取材の続きの質問をする文と話している。

 見た目は両手に花状態となっているが、花は花でもトゲがむき出しのバラとヒヤシンスではあるが。その様子を魔理沙は薄ら笑っている。

 

「で、あの子は一体どこから来たのかしらね」

「そんなこと知らないわよ。朝起きたら境内にアイツがぶっ倒れていたんだから」

「ふーん、ぶっ倒れていたねぇ……」

 

 霊夢と紫は横谷について話していた。

 

「ほんとに紫が連れてきたんじゃないでしょうね」

「嫌ねぇ~私が嘘をつくと思ってるの?」

「自分の行いを(かえり)みて言いなさいよ」

「まぁ、ひどいわね。ふふふ」

 

 紫は扇子で口元を隠しながら笑う。霊夢は冷たい目線を紫に送りながらお茶を(すす)る。

 

「でもこれはほんとよ。最近は外に出ていないし」

「ふーん、じゃあただ迷って間違ってここに来たのかしらね」

 

 いかにも興味がないと言った霊夢は返事で返した。近くに置いた煎餅(せんべい)を取ろうと手を伸ばし、それをボリボリと噛んでいるとき不意に口を開いた。

 

「そういえば、アイツここを『変わった地獄だな』ってほざいていたわね。もしかしたら何か関係あるかもね……」

「地獄? ふふ、それは随分な言われ様ね」

 

 霊夢は自分から話したのに、それ以上深く考えるような仕草はなかった。情報は提供したからあとは自分で探りなさいと言った感じで再びお茶を啜る。その情報をもらった紫は笑みを浮かべながら、左右から花という名のマシンガンの応対にあくせくしている横谷を目にやった。

 

「まぁ確かに地獄っちゃあ地獄だよな。人より妖怪とかがよく来るしww」

「余計なこと言ってんじゃないわよ」 

 ぺしっ 

「いてっ」

 

 魔理沙は二人の会話を聞いていたのか、話に割って入ってきた。霊夢は横目で見ながら魔理沙にチョップを食らわす。

 

「あとさ、あいつ面白いもの身に着けてるよな。」

「ん? 特に変わったものはなさそうだけど」

「腕だよ腕」

「腕?」

 

 霊夢は横谷の方を見遣ると、右腕に数珠状のブレスレットを身に着けているのを確認できた。五つの水晶とその間に水晶よりやや小さく数個ずつ髑髏(どくろ)をかたどったアクセサリーという、少し悪趣味さが漂う物だった。

 

「うわぁ……悪趣味なやつね」

「そうか? ちょっとカッコイイと思うけど」

「アンタのセンスを疑うわ……どう思う紫」

「・・・・・・」

 

 霊夢は魔理沙の感性に呆れたといわんばかりに両手を広げ、紫に話題を振った。しかし紫は答えることなくずっと横谷の方を見ていた。

 

「? どうしたのよ」

「……いいえ、なんでもないわ」

 

 ずっと横谷の方を見ていた紫を不思議に思って霊夢は問いかけたが、紫は何でもなかったかのように霊夢の方に目線を戻し、また笑みを浮かべた。

 

「なんか企んでるの?」

「何も企んでなんかいないわよ。でも、そうねぇ……あの子、貸してもらえないかしら?」

「え?」

 

 紫のあまりに唐突なお願いに霊夢は固まった。

 

「いいじゃない。別にいなくたって困らないでしょ?」

「……アイツにはまだやらせることがあるのよ」

 

 霊夢は間をあけて返答した。まだ横谷にやらせることがあるのは確かだが、それよりも紫の唐突のお願いに怪しんでいた。

 何かよからぬことを考えている、と勘ではあるがそう思ったのだ。もとより胡散臭く、何を考えているのかわからない紫のことである、勘でなくとも怪しく思ってしまうのも無理はない。

 

「ね? お願いよ~霊夢ぅ~」

「・・・・・・」

 

 見た目に反して――年不相応とかそういう意味ではなく――甘い声で霊夢に願い込む。その霊夢は怪訝(けげん)そうな顔で紫を見る。ややあって霊夢は

 

「……まぁいいわ。好きにして」

「そう、よかったわ」

 

 以外にも霊夢はあっさりと承諾した。しかし紫はその事に驚いた様子はなく、まるでその言葉を出すことがわかっていたかのように、そのまま横谷の方へ歩み寄る。

 

 三人が繰り広げた怒声と途切れない会話は、紫が横谷の方へ歩み寄ったことで二人の一方的な会話が止まる。横谷は救われたと思った。渡りに船だと思っ――

 

「じゃ、この子を借りていくわよ」

 

違った。船は船でも海賊船だった。(すく)われるのではなく(すく)われる方であった。

 

「へ!?」

「ちょっと待ってください。まだ私は聞きたいことが」

「こっちだって、まだあたしは説教し終わっていないよ!」

 

 文と萃香が反抗する。かれこれ三十分以上は喋っていたのだが、まだどちらも言い足りないらしい。

 

「それはまた後にしておきなさい」

「しかし……」

「説教が終わったら渡すからそれまで待ってて!」

「はぁ、埒がないわね……」

 

 紫がそういうと、折り畳んだ扇子を二人が先に反抗して発言するタイミングを失ってやきもきしている横谷に向って、縦にスッと振った。

 

 くぱっ 

「へ? 何今のいやらしく聞こえる音はああぁぁぁぁぁぁ!?」

「あっ!」

「ちょっ!」 

 スッ

 

 横谷の下にスキマが展開し、そのままスキマの中に落ちて行った。萃香が落とすまいと(つか)みかかったが一歩遅れたため触れることなく落ちてしまった。そしてすぐにスキマは閉じられた。

 

「あややや……」

「紫! なんてことして……ああっ!」

 

 萃香の見た方向に紫はもういなかった。どこに見渡してもいなかった。横谷を落としたのと同時に自分の前にスキマを開き、入ってしまったようだ。

 

「くっそ~逃げられた!」

「仕方ありませんね、紫さんの家に行ってみましょう」

 

 文は外に出て、紫の家がある方向へ恐ろしい速さで飛んで行った。

「こんなことになるんだったら、あの時一発殴っときゃよかった~!」 

 ぐびぐび

 

 萃香は説教が言い足りなかった事と、その説教相手を紫に取られた事でさらに憤慨(ふんがい)し、それを持っている瓢箪(ひょうたん)伊吹瓢(いぶきひょう)』の中の酒を飲んで気を紛らわそうとする。

 魔理沙はそんな様子を後目に霊夢に問いかけた。

 

「いいのかアイツやっちゃって? まだやらせることあるって言ったくせに、もしかしたらなにか企んでるかもしれないぜ?」

 

 霊夢は飲み干し終わった湯呑(ゆのみ)を置いてこう言った。

 

「別にいいわ。やらせることはまだあったけどそれくらい自分でやれるわ。アイツの企みも、私に関わりなければどうでもいいし、それにここに働かせるってことはアイツをここに泊らせることになるし、仕事終わったら外の世界に帰らせなきゃいけないし……そういったものを紫におっ被せればいいかなってね。考えたら紫のスキマ使ってアイツを帰せるし」

「お前なぁ……」

 

 魔理沙は理由を聞いて思わず呆れたといった感じでつぶやいた。

 

 

 

 

 

 

 

 一方、横谷は

 

「エエエエエエエエエェェェェェェ(゜Д°;)ェェェェェェエエエエエエエエエエ!?」

「どこまで落ちんだよおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 目が無数に存在するスキマの空間をずっと落下し続けていた。

 

 


 
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