No.310897

真・恋姫無双アナザーストーリー 蜀√ 桜咲く時季に 第24話

葉月さん

なんとか土日中に投稿できました!
第24話投稿です!


前回からのあらすじ

続きを表示

2011-10-01 20:53:41 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:9235   閲覧ユーザー数:6163

真・恋姫無双 ifストーリー

蜀√ 桜咲く時季に 第24話

 

 

 

 

【愛紗の危機】

 

 

 

《愛紗視点》

 

「まったく。困ったものだご主人様にも」

 

虎牢関に向けて進軍しているさなか、私は思わず愚痴をこぼしてしまった。

 

「何を言うか。お主こそ原因の一端を担っているのだぞ」

 

それを星に聞かれてしまいニヤリと笑いながら私に話しかけてきた。

 

「あ、あれはだな!その……なんというか」

 

星の言葉に徐々に言葉を小さくする。

 

「ふむ。つまり桃香様の胸に緩みきった主の顔が許せなかったと。そう言いたいわけだな」

 

「そ、そこまでは言っていない!ただ、もう少し君主としての威厳をだな!」

 

「英雄色を好むと言うではないか。少し辛抱が足りないぞ愛紗よ。それとも愛紗は自分だけを愛して欲しいのか?」

 

「あ、愛!?」

 

星の言葉に思わず変な声を出してしまった。

 

「な、なな何を言い出すのだ急に!」

 

「おや、愛されたくないのか?主に」

 

「そんなこと言っていないだろ!それにここは戦場だ。そう言う事は控えろ」

 

「何を言う。先に言い出したのはお主ではないか」

 

「うぐっ!」

 

「はっはっは」

 

星の言葉に思わず言葉を詰まらせてしまった。

 

くっ!やはり言葉では星には勝つことができないようだ。

 

「はぁ……まったく、相変わらず口の減らないやつだ」

 

「ふっ。そういう性分なのでな。こればかりはどうする事もできんさ」

 

「だろうな。私も諦めている」

 

「おっと、これはつれない」

 

「煩い。それより兵を動かすぞ」

 

「お堅いぞ愛紗」

 

「それこそ性分だ。我慢しろ」

 

私は一言だけ星に言い軍を進めた。

 

………………

 

…………

 

……

 

「鈴々!兵を配置したか!」

 

虎牢関の目と鼻の先で私たちは軍を展開した。

 

「大丈夫なのだ!」

 

「星は」

 

「問題ない」

 

「よし。曹操の軍はどうしている」

 

「はっ!あちらも準備は整っているようです」

 

「わかった。お前は引き続き連絡役を頼むぞ」

 

「御意!」

 

兵は礼を取ると持ち場に戻っていった。

 

「さて……これからどうしたものか」

 

(ゴゴゴゴゴッ!!)

 

虎牢関を見つめどう攻めるかを考えていたときだった。大きな音とともに門が開いた。

 

「なに!門が開いただと!?」

 

「愛紗!あれを見るのだ!」

 

「あ、あれは!」

 

鈴々に言われ指差す方を見るとそこに立っていたのは……

 

『……』

 

「りょ、呂布!!それに張遼までっ!」

 

牙紋旗を背に門から出てきたのは呂布と張遼だった。

 

《曹操視点》

 

「まったく、麗羽の気まぐれにも困ったものね」

 

戦場を見つめながら呆れたように呟く。

 

それはつい一刻ほど前だった。麗羽の兵が現れて劉備たちと虎牢関を攻めろという命令だった。

 

まったく、私に命令とはいい度胸ね、麗羽。

 

「ですが、逆に居ない方が清々します。あんな大量の兵を策も無しに一気に虎牢関に向かわせては邪魔で仕方がありません!」

 

桂花の言葉に笑みがこぼれる。

 

「ふふっ、それもそうね。それにしても劉備たちも不運よね」

 

合流した早々、虎牢関を攻めろと言われたのだから、休む暇も無いとはこの事ね。

 

「自業自得です華琳様。そもそも!あの馬鹿男が袁紹を総大将なんかにしなければこんな事にはならなかったんですから!ああ、汚らわしい!だから男なんて死ねばいいのよ!」

 

桂花の毒舌は徐々に激しさを増していっていた。

 

どれだけ男が嫌いなのかしら?今度試してみようかしらね。

 

「……駄目ね」

 

そう思ったが私の可愛い桂花をどことも知れぬ男に触らせるのは問題外だった。

 

「?如何なさいました華琳様」

 

桂花が不思議そうに私を見てきた。

 

「……そうね。やはりあいつしか居ないわね」

 

北郷一刀。私が唯一認めたただ一人の男。

 

私の覇道に大いに役立つ男だ。

 

「あいつ?何の話でしょうか華琳様?」

 

「ふふっ。可愛い桂花を苛めるために何をしたら言いか考えていただけよ」

 

「華琳様がしていただけることでしたらなんでもかまいません!」

 

桂花は目をキラキラと輝かせて私を見てきた。

 

ふふっ。それをする相手が男だといったらどんな顔をするか考えただけでゾクゾクしてくるわ。

 

でも、今はそんなことをやっている場合ではない。

 

まずは目の前の大きな関門を何とかしないといけないわ。

 

「ふふっ。その話は虎牢関を落とした後にじっくりとしましょ桂花」

 

「はい!お任せください。この荀彧、必ずや虎牢関を攻め落として見せます!」

 

「頼もしいわね。ところで秋蘭」

 

「はっ」

 

私の横で黙って控えてい秋蘭に話しかけた。

 

「北郷も良いのだけれど。虎牢関に居る。呂布も欲しいわ」

 

「恐れながら華琳様。呂布を手に入れようとお考えでしたら、姉者と私両方を失うとお考えください」

 

確かに呂布の強さは昨日見て知っていたが、まさかそこまでとはね。

 

「あなたたち二人を犠牲にして手に入れようとまでは思わないわ。でも……そうね。張遼ならどうかしら?」

 

「それでしたら可能でしょう」

 

「でしたら私にお任せください!夏候元譲、必ずや張遼の首を持って帰ります!」

 

「姉者、殺してしまっては元も子もないぞ」

 

「わ、わかっている!意気込みの問題だ!」

 

「意気込み過ぎて殺しちゃうとか止めてよね」

 

「だからしないと言っておろうが!」

 

「あんただったらやりかねないって言ってるのよ!」

 

「なにを!」

 

「なによ!」

 

「二人とも止めないか。華琳様の御前だぞ」

 

「「は、はい……」」

 

言い合いをす春蘭と桂花に秋蘭が諌めた。

 

「華琳様、大変お見苦しいところをお見せしました」

 

「そうね。どうしてくれようかしら?」

 

「はっ。必ずや張遼を捕縛し華琳様の御前にお連れし、汚名返上いたしましょう」

 

微笑みながら秋蘭に話しかけると期待通りの言葉が返ってきた。

 

「いいでしょ。なら必ず張遼を連れて来なさい。いいわね」

 

「「「御意!」」」

 

春蘭たちは立ち上がり私の願いを叶えるべく動き出した。

 

「報告します!」

 

「なんだ」

 

準備にかかろうとしていた春蘭たちに兵が報告に来た。

 

「虎牢関の門が開き、中から呂布と張遼が出てきました!呂布は劉備軍に張遼はこちらに向かって来ています!」

 

「なんですって!ちょっと!軍をそんなに進めたの!?」

 

「い、いえ!指示された位置からは動いていません!」

 

桂花の怒声に兵は戸惑いながらも答えていた。

 

「なら劉備軍はどうなのよ!」

 

「あ、あちらも我々と対して位置は変わらないかと」

 

「どういうことでしょうか。華琳様」

 

桂花の横で秋蘭は冷静な声で話しかけてきた。

 

「そうね……大方、もう一度呂布と張遼の力を見せ付けようってところかしらね」

 

それ以外に篭城を捨てて打って出ることなんてありえない。

 

まあ、氾水関の時のように出てきた猪も居たけどあれは例外中の例外だ。

 

「ふっ。天運我にあり、ね。張遼を手に入れるには最高の条件だわ。春蘭、秋蘭」

 

「「はっ!」」

 

「期待しているわよ」

 

「お任せください華琳様!」

 

「ご期待に添えて見せましょう」

 

「これより張遼を捕縛作戦を実行する!皆、奮励努力せよ!」

 

「「「はっ!」」」

 

私は立ち上がり高々と宣言した。

 

《桃香視点》

 

「あわわっ!ど、どうしよう朱里ちゃん!呂布さんがこっちに向かって来ちゃってるよ!」

 

「お、落ち着いてください桃香様。大丈夫です。前衛には愛紗さんに鈴々ちゃん、それに星さんもいるんですから」

 

「そ、そうだけど……でも、心配だよ」

 

戦場に居る愛紗ちゃんたち、それにご主人様が言っていたこともあってすごく心配だった。

 

「だって、ご主人様が言ってたよね。呂布さんには一人で戦わないで三人で戦ってくれって。それって愛紗ちゃんたち一人ひとりより呂布さんの方が強いって事だよね」

 

「そ、それはそうですが、愛紗さんたちがご主人様の言いつけを守らないとは思えません。きっと三人で呂布さんと戦ってくれるはずです」

 

「そ、そうだよね。ごめんね、取り乱しちゃったりして」

 

「いいえ。桃香様のご心配も分かります。でも、愛紗さんたちなら大丈夫です。信じましょう」

 

朱里ちゃんは笑顔で私を安心させようとしてくれていた。

 

そうだよ。私が愛紗ちゃんたちを信じてあげないと!大丈夫、愛紗ちゃんたちならきっと大丈夫!

 

「うん。きっと大丈夫だよね。ありがとう朱里ちゃん」

 

自分に言い聞かせて笑顔で朱里ちゃんにお礼を言う。

 

「いいえ♪それでは私たちは軍を進めて虎牢関を攻めましょう。虎牢関には今は誰も将が居ません。攻めるなら今しかないでしょう」

 

「うん。それは朱里ちゃんと雛里ちゃんに任せるね」

 

「「はい!お任せください」」

 

元気良く返事をする朱里ちゃんと雛里ちゃん。そんな二人を見ていつも私は少し劣等感を感じでしまう。

 

こんな小さいのに軍師として二人はがんばってくれている。それに比べて私は何も出来ない。

 

武も無ければ大した知識も無く、軍師としても役に立たない。こんな私が君主としてやっていっていいのかな……

 

もっと私より優秀な人が君主をやったほうが良いと思ってしまう。

 

……ううん。違うよね。私だからいいんだよね。ご主人様……。

 

私は一度だけご主人様の前で自分の不甲斐無さをポロッと言ってしまったことがあった。

 

………………

 

…………

 

……

 

「はぁ。駄目だな私って……」

 

筆を置き、書簡を見つめながらため息を一つ吐き愚痴を零した。

 

「桃香?どうかしたのか?」

 

「え!?ご、ご主人様!」

 

部屋に一人だけと思っていた私は突然の声に驚いてしまった。

 

「い、いつからそこに居たんですか?」

 

も、もしかして私の愚痴聞こえちゃったかな?

 

ご主人様は今日は非番で執務室に来る用事は無いはずだけどな?

 

「ついさっきだよ。頑張ってる桃香にお菓子とお茶の差し入れと思ってね」

 

そう言うご主人様の手には町で買ってきたのか美味しそうなお菓子と二つの湯飲みがありました。

 

「少し休憩したらどうだ桃香」

 

「うん。そうしようかな」

 

私はご主人様の好意に甘えることにした。

 

「ん~~~っ!!はぁ」

 

伸びをして固まった体をほぐす。

 

「随分、疲れてるみたいだね」

 

「ずっと座ってるから体が硬くなっちゃって」

 

「少しは休憩しないと駄目だぞ」

 

「えへへ。そう思うんだけどね。民のために頑張らなきゃって思っちゃうと中々休めなくて」

 

「まったく。そこが桃香の良いところだけど。悪いところでもあるね。桃香の言ったように民の為だけど、そのせいで桃香が倒れたら元も子もないだろ?それは民の皆も思ってることだよきっと」

 

「あぅ。ごめんなさい」

 

ご主人様の言葉ももっともだよね。私が倒れちゃったら愛紗ちゃんたちにも迷惑かけちゃうもんね。

 

「はぁ。私ってホントに駄目だな」

 

「さっきもそんなこと言ってたね。何かあったの?」

 

「やっぱり聞いてたんだね」

 

「うん。聞こえちゃったんだ。ごめん」

 

「ううん。良いの、別にご主人様になら聞かれても良いかなって」

 

謝ってくるご主人様に私はご主人様ならかまわないと言った。

 

「そっか……あっ。お茶が冷めちゃうね。はい」

 

「ありがとう。ご主人様」

 

ご主人様はお菓子とお茶を机に置いて私の前に座った。

 

「ごくっ……はぁ、美味しい」

 

「それはよかった。それで、何かあったのか?仕事で何か問題でも起きたの?」

 

「あっ、ううん。政務の方は朱里ちゃんや雛里ちゃんに手伝ってもらって問題ないよ」

 

「それじゃ。どうしたんだ?」

 

「うん……あのね。私って役に立ってるのかな?」

 

「……どうしてそんなことを思うんだ?」

 

ご主人様は少し強張った顔をして聞いてきた。

 

「愛紗ちゃんや鈴々ちゃんは強いし、兵たちからも信頼されてる。朱里ちゃんや雛里ちゃん、雪華ちゃんは一杯知識もあって私を助けてくれる。それに比べて私って強くないし、知識も無いのにここに居てもいいのかなって思って」

 

「……桃香」

 

「きっと私なんて居ない方が」

 

(パチンッ!)

 

「え?」

 

一瞬、何が起きたのか分かりませんでした。

 

しばらくすると、頬が痛くなり、ご主人様に叩かれた事を理解しました。

 

「ご主人様……」

 

「それ以上言うと起こるぞ、桃香」

 

「で、でも」

 

「でもじゃない!」

 

「っ!」

 

ご主人様の怒鳴り声に驚き、首を竦めた。

 

「桃香は何も分かってない。なんで俺たちがここに居るのかを」

 

「……」

 

「もし、桃香が、私利私欲で民を苦しめるなら。俺や愛紗、みんなだってずっと桃香と一緒になんて居ないよ」

 

ご主人様は私の前で屈みじっと私の目を見て話しかけてきました。

 

「確かに、愛紗や朱里、他のみんなも秀でたものを持ってる。だからって桃香が落ちこぼれてるなんて俺は思わないよ」

 

「どうしてですか?」

 

私はご主人様に尋ねてみました。すると、ご主人様は微笑み、さっき叩いた頬に手を添えてこう云ってきました。

 

「桃香にも秀でたものがあるじゃないか。俺や愛紗、朱里にだって持ってない。桃香だけが持っている秀でたものがね。それが何か分かるかい?」

 

「わ、わからないです」

 

「簡単なことだよ。桃香のその民を思う優しさだよ。それは持とうと思っても中々もてないものだ。上辺だけの優しさなら誰でも出来る。でも、桃香は親身になって民の暮らしを考え良くして行こうと頑張ってる。だから俺たちは桃香に着いていくんだよ」

 

「桃香は桃香らしく。一生懸命に頑張ってればいいんだよ。俺たちはそれを支援してあげるし、間違ったら注意してあげるからさ」

 

「……ご主人様」

 

「と、桃香!?」

 

ご主人様の言葉に思わず瞳を潤ませてしまった。

 

そっか、私、ここに居てもいいんだね。

 

「えへへ。なんでもないよ。ちょっと嬉しかっただけだから」

 

「嬉しかった?」

 

「うん。私がここに居て……ううん。ご主人様のそばに居て良いんだってわかったから」

 

「そ、そっか。ならよかったよ」

 

「えへへ……ご主人様~♪」

 

「うぉ!と、桃香!?」

 

照れているご主人様に私は思いっきり抱きついた。

 

「桃香様。新たに発生した案件をお持ち……」

 

「えへへ~♪」

 

「何をしているのですかご主人様ーーーっ!!」

 

「あ、愛紗!こ、これは違うんだ!」

 

………………

 

…………

 

……

 

うん!ご主人様が言ったように、私らしく頑張ればいいんだよね!

 

「と、桃香様~~~~っ!!」

 

「え?雪華ちゃん?」

 

自分に気合を入れ直している時だった。後方から雪華ちゃんが大声で私を呼びながら走ってきた。

 

「はぁ、はぁ……桃香様」

 

「ど、どうしたの?息を切らせて。あ、ご主人様は目を覚ましたの?」

 

「そ、それがですね!ご主人様が危なくて!愛紗さんが天幕から出て行って、それで、それで!」」

 

雪華ちゃんは慌てているのか支離滅裂で何を言っているのか分からなかった。

 

「雪華さん落ち着いてください。まずはお水をどうぞ」

 

「あ、ありがとうございます朱里先生。ん……ん……ふぇ~」

 

朱里ちゃんからお水を貰い、水を飲み干すとようやく落ち着いたみたいだった。

 

「大丈夫?雪華ちゃん」

 

「あ、はい。申し訳ありません」

 

「ううん。別にそれはいいんだけど。何かあったの?」

 

「そ、それがですね。ご主人様に愛紗さんたちが出陣したとお伝えしたら慌ててご自身の得物を持って戦場行かれてしまったんです」

 

「ええ!?そ、それって本当なの雪華ちゃん!」

 

「は、はい」

 

「朱里ちゃん!」

 

「はわわっ!い、今探しましゅ!」

 

朱里ちゃんは慌てて望遠鏡を取り出してご主人様を探し始めた」

 

「……っ!い、居ました!本当に戦場に向かってます!」

 

「でも、なんでご主人様は慌ててるのかな?」

 

朱里ちゃんの横に居た雛里ちゃんが最もな疑問をしてきた。

 

「そ、そう言えばそうだね。雪華ちゃん。ご主人様は何か言ってなかったかな?」

 

「何か……あっ」

 

「何か言ってたんだね」

 

「はい。愛紗さんが危ないと言っていました」

 

「えっ……それってどういうこと?」

 

「すみません。私も詳しいことは聞いていないんです」

 

「で、でもなんで愛紗ちゃんが危ないんだろ。だってご主人様は呂布さんと戦う時は三人で戦ってって念を押してたよね」

 

「そうですね……何かそれ以外に、それも、私たちが知らないことがおきているのかも知れません」

 

「そんな……それじゃ、私達はどうすればいいの!?」

 

「ここは作戦通り、虎牢関を攻めましょう」

 

「そんな!愛紗ちゃんたちを見殺しになんて出来ないよ!」

 

「お、落ち着いてください桃香様。別に愛紗さんたちを見殺しにするわけじゃありません」

 

「あ、あの~」

 

「え?あ、ごめんなさい明命ちゃん。ちょっと今大事な話をしてるから待っててね」

 

私達の後ろで雪蓮さんの所の明命ちゃんが遠慮しがちに様子を伺っていた。

 

明命ちゃんは袁紹さんたちが危ないと言うことを教えに来てくれてそのままここに居る。

 

「いえ。そのことで提案があるのですがよろしいでしょうか?」

 

「提案ですか?」

 

「はい。私が一刀様の下へ行き危険にさらされるかも知れない愛紗さんをお助けしようと思うのですが、どうでしょうか?」

 

「み、明命さんがですか?ですが、結構距離がありますよ?」

 

「それは大丈夫です!私、足には自身ありますから!どうでしょうか?」

 

「うん。お願いしてもいいかな?」

 

明命ちゃんの提案はとても有り難かった。愛紗ちゃんが危険ならそれを助ける人は一人でも多い方がいいと思ったからだ。

 

「と、桃香様!?」

 

「だって!愛紗ちゃんは大切な仲間だもん!だからお願い朱里ちゃん!」

 

慌てる朱里ちゃんに頭を下げる。

 

「はわわっ!わかりましたから、頭を上げてください桃香様!」

 

「ごめんね。私のわがままなのに無理を言っちゃって」

 

「構いませんよ。そう言う桃香様だから私や雛里ちゃんは桃香様に着いて行こうって決めたんです」

 

朱里ちゃんは笑顔で答えてくれた。

 

朱里ちゃんが言った言葉は、以前、ご主人様が私に居てくれた言葉と同じだった。

 

『桃香は桃香のままでいいんだよ』

 

ご主人様の言葉がどこからか聞こえたような気がした。

 

「うん。ありがとうね朱里ちゃん!」

 

「それでは、私は早速一刀様を追いかけます!何かお伝えすることはありますか?」

 

「それじゃあ、無事にみんな戻ってきてくださいって伝えてくれますか?」

 

「わかりました!では、言ってまいります!」

 

笑顔で答えた明命ちゃんは走り出すとあっという間に駆け抜けて行った。

 

「ふぇ~。本当に明命さんは早いですね。私もあんな風に早く走れるようになりたいです」

 

私の横で雪華ちゃんは少し悔しそうに明命ちゃんの後姿を見ていた。

 

「大丈夫。雪華ちゃんならきっと早く走れるようになるよ」

 

「そうでしょうか」

 

「うん!だって、ご主人様に鍛錬して貰ってるんだもん。絶対だよ!」

 

私は雪華ちゃんを励ますように笑顔で答えた。

 

「よぉし!それじゃ、私達も頑張って虎牢関を攻めよ~っ!おっ~~~~!」

 

元気良く腕を上げて気合を入れる。

 

愛紗ちゃんの事はすっごく、す~っごく心配だけど。ご主人様も居るし、明命ちゃんも行ってくれたから大丈夫。私はそれを信じて今は私がやらなきゃいけないことをしよう。

 

《愛紗視点》

 

「な、なぜ呂布が出てきているのだ!」

 

虎牢間から出てきた呂布は悠然と歩いて我々に近づいてきた。

 

「……だれ?」

 

無表情の顔から出てきた言葉は立った一言だった。

 

「私は関羽!貴様が呂布か」

 

「……(コクン)」

 

一言も喋らずに頷く呂布。

 

「なんだか想像していたのと違うのだ」

 

「うむ。もっと化物のような顔をしているかと思ったが」

 

「……恋、化物?」

 

「いや。我々に聞かれても困るのだが……愛紗よ」

 

「なんだ」

 

呂布を見ながら星に話しかける。

 

「なんだかこやつ、やりにくいぞ愛紗」

 

「それを私に言われても困る。私とて、戸惑っているのだ」

 

こんなのんびりとした相手は初めてだ。だが相手は呂布、油断は出来ない。

 

「……どいて」

 

「おっと、通りたければ私たちを倒して行くことだな」

 

「愛紗よ」

 

「なんだ」

 

「なんだかその台詞は我々の方が悪者に聞こえるぞ」

 

「なっ!」

 

「鈴々もそう思うのだ」

 

「……悪者?」

 

「違う!断じて違うぞ!」

 

呂布に言われ断固として否定した。

 

「……どいて」

 

「だからどく訳には行かぬといっているだろうが!」

 

「落ち着け、愛紗。呂布よ」

 

「……?」

 

「なぜここを通りたいのだ?」

 

「……約束」

 

「約束?誰としたのだ」

 

「……一刀」

 

「き、貴様!ご主人様のことを呼び捨てにするとは!許さんぞ」

 

呂布の口からご主人様の名前が出てきたことにも驚いたが、それ以上にご主人様呼び捨てにしている事に怒りを感じてしまった。

 

「ご主人様に何用だ!」

 

「……お前には関係ない」

 

「そんなわけがあるか!ご主人様に危険が及ばぬようにするのも我等の勤め!ご主人様に会う理由を言わない以上、貴様を通すことまかりならん!」

 

「やはり我々の方が悪役みたいだと思わぬか鈴々」

 

「思うのだ」

 

後ろで茶々を入れる二人を無視して呂布を睨み付ける。

 

「……どいて」

 

呂布は同じ事を何度も言って来た。

 

「同じ事を何度も……通りたければ我々を倒してから行けと行っている!」

 

「……お前らじゃ勝てない。だから、退け」

 

「なんだと!?」

 

「……お前ら、弱い。恋が勝つ」

 

「それは聞き捨てならんな。我らが弱いとなぜ分かる」

 

「……分かる。恋の方が強い。だから退く」

 

「ええい。言葉では埒が明かん!星!鈴々!同時に行くぞ!」

 

「やはり悪者」

 

「それ以上言うとまず貴様から斬るぞ」

 

「おっと。少々お遊びが過ぎたか。では、真面目に行くとしよう」

 

星は槍を構え呂布の後ろに回りこんだ。

 

「鈴々!」

 

「わかってるのだ!」

 

鈴々も同じように呂布を囲む。

 

「……」

 

構えようとしない呂布に我々は一定の距離を保つ。

 

「行くぞ!はぁぁああっ!」

 

「うりゃりゃりゃりゃっ!」

 

「はいはいはぃぃいいっ!」

 

「……無駄」

 

(ガキンッ!)

 

「なっ!」

 

(カンッカンッ!)

 

「にゃにゃっ!?」

 

(キンキンキンッ!)

 

「なんとっ!」

 

一斉に呂布へ攻撃を仕掛けるが呂布は避けることもせず。己の得物で我等の攻撃をはじき返してきた。

 

「なんてやつだ。我等の攻撃を意図も簡単にはじき返すとは」

 

「噂は本当だったということか」

 

「噂が本当だろうと。ご主人様や桃香様の為にも、ここを通すわけには行かない。全力で行くぞ!」

 

「……」

 

今度は無言で構える呂布だったが、次の瞬間、呂布の言葉と行動に私は対応できなかった。

 

「……お前が弱点」

 

「なっ!?」

 

一瞬で私との間合いを詰めたかと思うと呂布は得物を振り上げ、私の堰月刀目掛けて振り下ろしてきた。

 

(ガキンッ!)

 

「ぐっ!」

 

「愛紗ーっ!」

 

「大丈夫か愛紗!」

 

「だ、大丈夫だ。このような攻撃、受け止められぬ私ではない」

 

だが、流石は天下の飛将軍。こうも一撃が重たいとは。

 

呂布の攻撃で私の手はそれほど酷くは無かったが痺れていた。

 

「……終わり」

 

「な、なに?」

 

一言つぶやいた呂布はもう一度得物を振り上げた。

 

「くっ!そのような単調な攻撃!また受け止めてみせる!」

 

「……無駄」

 

呂布は振り下ろす寸前に一言呟き、得物を振り下ろしてきた。

 

(ガキーーーーーンッ!!)

 

「な、なにっ!?くっ!」

 

呂布の攻撃に私の堰月刀は、音を立てて刃が砕けてしまった。

 

私はすぐさま呂布との間合いをあけた。

 

「愛紗っ!」

 

「愛紗っ!お前怪我をっ!」

 

私の肩からは一筋の血が流れていた。

 

「平気だ!砕けた破片がかすっただけだ!」

 

外傷は多少あるが……まだやれる!

 

「……なっ!」

 

「愛紗っ!」

 

立ち上がった私だったが、膝から崩れるようにして倒れてしまった。

 

くっ!呂布の攻撃で思った以上に膝に負担が来てしまったか。

 

たった二合打ち合っただけでこの有様とは!

 

「……ばいばい」

 

呂布は一言、別れの言葉を言うと得物を振り上げた。

 

「愛紗はやらせないのだーーーーっ!」

 

「鈴々っ!止めろっ!今のお前で太刀打ちできる相手ではない!」

 

「うりゃりゃりゃりゃ~~~っ!!」

 

鈴々は私の制止も聞かずに呂布に攻撃を仕掛けてしまった。

 

「……煩い」

 

(ガキンッ!)

 

「うにゃっ!?」

 

「鈴々っ!」

 

呂布は自分の死角から来る攻撃を見ることもせず防ぎ、そのまま鈴々を吹っ飛ばしてしまった。

 

「くっ!……大丈夫だっ!鈴々は受け止めたぞ!」

 

間一髪、鈴々は星に抱きとめられていた。

 

「……これで終わり」

 

天高く得物を構え直す呂布。

 

「くっ!」

 

申し訳ありません。ご主人様、桃香様……

 

私は覚悟を決めて目を閉じ、呂布が得物を振り下ろすのを待った。

 

「愛紗ーーーーーーーーーっ!!」

 

《To be continued...》

愛紗「葉月っ!いい所で次回だと!?どういうことだ!」

 

葉月「ちょ!愛紗。まずは挨拶挨拶!ども~。いい所で次回に持越しをした作者こと葉月です」

 

愛紗「死に直面している愛紗だ。で、どういうことなのだ!」

 

葉月「いや~。なんだかこれ以上書いちゃうと、また間に合いそうに無かったんできりがいいところで次回に持ち越しさせていただきました」

 

愛紗「くっ!私がどうなるか気になるではないか!」

 

葉月「まあ、作品なんてそんなもんですよ。前にも言った様な気もしますけどね」

 

愛紗「そんなことは知らん!さっさと続きを書け!」

 

葉月「いや~。それがですね」

 

愛紗「なんだ」

 

葉月「実は、虎牢関を攻める前までしかプロット、つまりあらすじが無いんですよ」

 

愛紗「な、なんだと!?」

 

葉月「なんでここからはグンっと執筆が遅くなります」

 

愛紗「き、貴様ーーーっ!!なら今すぐそのぷろっととやらを書け!」

 

葉月「書いてもいいですけど。暫く投稿は無くなっちゃいますけど。それでもいいんですか?」

 

愛紗「書きながら書けっ!」

 

葉月「なにその無茶振り!」

 

愛紗「煩い!いいから書くのだっ!」

 

葉月「それじゃ、気が向いたら」

 

愛紗「なんだとーーーーっ!?」

 

葉月「あっ。ちなみに、ネタバレですけど。雪華の性格とか真名はプロットから変わっていますよ」

 

愛紗「そんなことを言ってもいいのか!?」

 

葉月「まあ、どうせ。出てこないキャラですし。ちなみに、プロットの時の真名は琥珀で性格は一刀様が全て!みないな感じでした」

 

愛紗「なっ!」

 

葉月「それと。優未も出てくる予定は無かったんですよね」

 

愛紗「ではなぜ出したのだ!そのせいでご主人様の恋敵が増えてしまったではないか!」

 

葉月「いや~。前作の優未の人気に急遽出して見ることにしました」

 

優未「いぇ~い!みんな、ありがとうね~~~♪」

 

愛紗「ゆ、優未殿!?なぜここに!」

 

優未「ん?呼ばれたような気がしたから、かな?ねえねえそれよりも葉月~」

 

葉月「はい?」

 

優未「私ね?お願いがあるの」

 

葉月「なんですか?」

 

優未「えっとね……にひひ♪一刀君と雪華ちゃんを呉に来るような話を書いてほしいの!」

 

愛紗「なっ!ダメに決まっているだろうがーーーーっ!!」

 

優未「うぅ~。耳がキンキンする~。もぉ~、耳元で騒がないでよ愛紗ったら」

 

愛紗「当たり前だ!絶対にご主人様は呉にはいかせんぞ!」

 

優未「あ。雪華ちゃんならいいんだ」

 

愛紗「雪華もダメに決まっているだろう!」

 

優未「え~!愛紗わがまま~!独り占めはいけないんだよ?」

 

愛紗「そう言う問題ではない!ご主人様は我らの主で雪華も我らの仲間だ!」

 

優未「だから~。ちょ~っと一刀君たちを呉に遊びに来させるだけだって~」

 

葉月「ああ。そんな感じならいいかもしれませんね」

 

愛紗「葉月!?」

 

優未「でしょでしょ~♪さっすが葉月!愛紗と違って話がわかるね~」

 

愛紗「葉月、貴様ぁ~~~~っ!!」

 

葉月「まあまあ、呉とは同盟を結んでるんですから、それくらいしてもいいじゃないですか」

 

愛紗「う゛っ!し、しかしだな」

 

優未「えへへ~♪一刀君に頭ナデナデしてもらって~。雪華ちゃんには頬をスリスリして~。ああ、きっと最高に幸せだろうな~」

 

愛紗「ご、ご主人様に頭をナデナデ……~~~~~っ!!」

 

優未「あ。想像した?今、想像したよね!」

 

愛紗「っ!し、しているわけがないであろう!わ、私がご主人様に撫でられているところなど!」

 

優未「ダメダメ。愛紗は直ぐに顔に出るからばればれだよ♪」

 

愛紗「ぐぬぬっ……葉月!元はと言えば貴様がだな!」

 

葉月「せ、責任転換!?」

 

愛紗「煩い!その根性叩きなおしてくれる!」

 

葉月「意味わからないし!ああーっ!またこんな終わり方なの!?と、とにかくまた次回お会いしましょう!ではまたーーーーーっ!!」

 

愛紗「待て葉月!くそ!みなのもの次回も必ず読んでくれ。その時までに葉月を更正させておく!さらばだっ!待つのだ葉月ーーーーーっ!!」

 

優未「行っちゃった……まあ、ここは相変わらずだね。賑やかと言うか、騒がしいと言うか。それじゃみんな、次回もよろしくね~、優未との約束だよ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪華「~~~っ!ふぇ。い、今背筋がすごく寒くなりました。風邪でしょうか?今日は早めに寝たほうがいいかもしれませんね」


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
64
4

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択