No.309367

【ボカロ小説】メープルシロップ(TINAMI用)【歌手音ピコ&勇馬(VY2)】

七莉ひおさん

ピコと勇馬が仲良く遊ぶお友達なお話。以前に他サイトに投稿したものの内容を全体的に変えたものです。

2011-09-29 01:31:33 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:956   閲覧ユーザー数:954

「明後日から暫くの間、会社の方に泊まり込みでV3化の為の調整をする事になりました」

 

ピコと勇馬の二人は外見や内面の設定年齢が近い事もあり、すぐに仲の良い友達になる事が出来た。

歌に関しては最初はピコが教える事が多かったが、今では互いにアドバイスしあっている。

プライベートで遊ぶ事も多くなった二人だったので、暫く今までのように会う事は出来なくなると分かったその日に告げた。

 

「そっか。おめでとう! 明日はまだ時間ある? あるなら僕の家で遊ばない?」

「明日なら大丈夫ですよ」

 

 

 

 ++ メープルシロップ ++

 

 

 

二人で部屋でゲームをしたりテレビをつけてみたり。

やる事がなくなるとどちらからともなく会話が再開されるのはいつもの事。

暫く会えなくなるとは言え、その会話も普段と変わりない。

示し合わせたわけではないけれど、会えなくなる理由についてはどちらも触れぬまま。

暫く会えなくなる前の日がこんなのでいいのかと思うほどにだらだらと過ごしていた。

 

時計を見るともうすぐ12時。昼食の時間だ。

 

「もう昼になりますけど何か食べに行きます?」

ゲーム機を手に画面を見つめたままのピコに問いかける。

「そうだなー。ホットケーキがいいな。勇馬作って」

今日は外に出る気がないらしい。

「俺がですか?」

「うん」

「そういうのはピコの方が得意でしょう」

 

そもそも勇馬がホットケーキの作り方を教わった相手がピコだ。

一人暮らしをしている彼は料理を含め、家事をそれなりにこなす事ができるらしい。

勇馬が望んだのではなく、食事どうしているのかという問いに対して姉のミズキが作っていると言った際に

”いつもご飯作って貰ってるなら、たまには何か作ってあげなよ”と半ば強制的に教えられたのだが。

 

「えー」

即座にあがる不満の声。

ゲーム機を置き、膝歩きで勇馬の目の前まで来たピコは胸の前で両手をあわせて頼み込む。

「勇馬の作ったのが食べたいの。お願い!」

「分かりましたよ。材料はあるんですよね?」

「うん! 棚の所にあるから好きに使ってね~」

勇馬は立ち上がり、キッチンへと向かった。

 

 

材料を混ぜた生地をフライパンに流すと甘い香りが漂ってくる。

それに釣られてかピコがキッチンの方へとやってきた。

「んー、いい香り。バニラアイス乗せようっと」

「ピコはアイス乗せるのが好きでしたよね」

「そうそう。勇馬ものっける?」

「俺は普通にバターとシロップでいいですよ」

「出しておくね」

冷蔵庫をあけて飲み物やバター、アイスも取り出してテーブルに置く。

二人分のナイフとフォーク。

勇馬のカップと、自分用のカップも準備。

あとはホットケーキの完成を待つだけ。

 

「はい。出来ましたよ」

「わーい♪」

作り立ての二人分のホットケーキがテーブルに並ぶ。

「アイスのっけてメープルシロップたっぷりかけて♪」

鼻歌混じりに口ずさむ言葉に偽りはなく、本当にシロップを多めにかけている。

「うわ、甘そう…」

隣で見ていた勇馬も思わず言ってしまう程の量だ。

「あったかいのと冷たいのと甘いのが合わさって最高だよね」

そう言って切り分けたホットケーキを幸せそうに頬張る。

「おいしー♪ ありがと勇馬」

「でも前にピコが作ってくれたのはもっと生地がふわっとしてましたよ」

「じゃあ勇馬が帰ってきた時に、今度は僕が作ってあげる」

 

今日はじめての、暫く会えなくなる事に触れた言葉

 

「ピコ…」

「暫く遊べなくなるのは寂しいけど、バージョンアップする勇馬を楽しみにしてる」

それは本心からの言葉。

同じボーカロイドとして性能の向上がどれだけ嬉しい事かを分かっているから。

「ピコもそのうちバージョンアップあるんですか?」

「あー…どうだろうねえ…。僕の方から聞ける事じゃないからなぁ」

あまり自分の方には触れられたくないのかと声のテンションで気付いた勇馬は別の話題を探す。

「それにしてもシロップかけすぎじゃないですか」

「いつもより三割増しくらいかな」

「何でそんなにかけたんです? もしかして美味しくなかったですか?」

「ううん、何となくすごーく甘くして食べたい気分だったから」

「はぁ…そうですか」

「…そうだっ♪」

「?」

ピコは何かを思いついた小悪魔の微笑みで、メープルシロップの容器を手に取る。

まだかけるつもりなのかと勇馬は思ったが、かけたのは自分のホットケーキにではなく…

「はいっ! お祝いに勇馬のにももっとシロップかけてあげる」

「いりませんって! あああそんなに…」

止める間もなくシロップが勇馬のホットケーキにかけられる。

「嫌ならそれも僕が食べてあげる♪」

「それが目的でしたか。はいどうぞ」

シロップまみれになったホットケーキをピコの前に置く。

「やった! ありがと~」

シロップ漬け状態のホットケーキを一口サイズに切って嬉しそうに次々と食べる。

「本当にそれで美味しいんですか」

「美味しいよ。今度食べきれない程作ってあげるから許してね」

「楽しみにしてますよ」

 

本来の味が残っているかは疑問が残る所だが、自分の作ったものを嬉しそうに食べて貰うのは悪い気分ではない。

 

「ねぇ、今度会う時はバージョンアップした歌声も聴かせてね」

「はい。どの位違うかは分かりませんが、ピコにも聴いて欲しいです」

 

 

end


 
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