No.309252

新約・三人の子供

SSSさん

気分転換に書いてみた。  お題:禁書で3匹の子豚

2011-09-28 22:57:37 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:5255   閲覧ユーザー数:5190

 

2XXX年、東京都某所に3人の兄弟がいました。

名前は、長男の『あー』、次男の『とうま』、三男の『しあげ』。

三つ子の彼らでしたが、容姿はまったく似ていません。

長男のあーは、白髪に赤い瞳。

次男のとうまは、ツンツンの黒髪。

三男のしあげは、不良ぶった金髪に染めていました。

頭の良さは、長男、次男、三男という順番でしたが、身体能力の高さはまったくの逆です。

そんな妙にバランスの取れた兄弟でしたが、お互いの仲は非常に険悪なものでした。

 

 

あー「しあげ。オマエ、俺のためにジュース買ってこい」

 

しあげ「んだよー。じぶんでいけよー」

 

あー「ンなのめンどくさいだろォーが」

 

しあげ「おれだってめんどくせーよ! じぶんでいけよ!」

 

とうま「まー、まー。2人ともおちつけって」

 

しあげ「とうまはどっちのみかたなんだよー。どっちつかずでむかつくんだよ」

 

あー「だよなァ」

 

とうま「……」

 

 

こんなやり取りは日常茶飯事です。

頭ごなしに命令するあー、どっちつかずで不幸な目に遭うとうま、筋肉バカのしあげ。

幼い頃から親もなく、3人で生きてきた彼らでしたが、その仲は日に日に悪くなる一方でした。

 

そんなある日。

彼らが10才の誕生日、ついに、別居することになってしまいました。

原因はしあげが大切にとっておいたプリンをとうまが勝手に食べてしまったことでした。

オマケにしあげは、犯人があーだと思ってキレたため、あーはとても怒りました。

 

 

あー「ふざけンじゃねェ! そンな安っぽいプリンを俺が食うわけねェだろォが!」

 

 

その一言で別居が決定してしまいました。

あーもしあげもカンカン。

自分が悪いと知っているとうまは冷や汗が止まりません。

結局、とうまは口を挟めず、バラバラに暮らすことが決まってしまいました。

といっても、すぐその日に新居が見つかった訳ではありません。

学園都市では、彼らのようなチャイルドエラーに新しい家を与えることは中々難しかったのです。

まだ大した能力も持っていなかった3人は、自分たちでそれぞれ家を準備することにしました。

 

しあげは、藁の家を1日で作り上げました。

とうまは、木の家を「不幸だ」と呟きながら3日で建てました。

あーは、鉄筋コンクリートの家を先物取引で得た利益で買いました。

 

三者三様の住まいでしたが、最低限の寝床を得られたことでそれなりに満足していました。

3人は仲が悪かったのですが、自分の家を自慢したくてしょうがありません。

10才で家を作ったのですから、気分的には秘密基地のようなものです。

そこで、3人はお別れ会を兼ねて、それぞれが自分の家を自慢することにしました。

 

―――が、そこで恐るべき光景を目にしました。

 

その日、あーは、待ち合わせ場所に駅前を指定しました。

休日であり、多くの人が駅の前を行きかっています。

とうまは例の如く事件に巻き込まれ、30分ほど遅れてきましたが、今日はそれくらいで腹を立てる2人ではありません。

 

 

とうま「ご、ごめんっ! 遅れた!」

 

あー「き、気にすンな。それより、さっさと行こうぜ」ソワソワ

 

しあげ「そ、そうだよな! べつにおれのたてた家をじまんしたいわけじゃないけどな!」ソワソワ

 

 

自慢したくて仕方ないようです。

しかし、彼らはそれぞれの家を見ることにはなりませんでした。

そうです。

ある恐るべきモノを目撃したからです。

それは、彼らのすぐ近く。

3人と同年代か少し下くらいでしょうか?

親と離れ離れになった男の子が大きな声で泣き叫んでいました。

 

 

子供「うわーん! おかーさーん!」

 

 

珍しくもない光景に、3人は無視して家へと向かおうとしました。

ですが、その子供に近づく人がいます。

高校生くらいの女の人でした。

なんかすごい格好をしています。

素肌にサラシです。

恥ずかしくないんでしょうか?

その人は、ゆっくりと少年の方に近づいていきます。

 

 

結標「あら? あなた迷子なの? とってもかわい……じゃない、かわいそうね。お姉ちゃんが一緒にお母さんを探してあげる」

 

子供「う、うん……。ありがと、お姉ちゃん」グス

 

結標「い、いいのよ! なんなら私がお姉ちゃんになってあげるから!」ハァハァ

 

 

危ない人でした。

関係ないはずの3人が身の危険を感じるくらいに。

 

結局、少年の母親がすぐ出てきたことで、少年は無事に帰ることができました。

九死に一生を得ました。

そんなことをまったくしらない少年は、

 

 

子供「ありがとー、お姉ちゃん」

 

結標「ふ、ふふふふ。いいのよ。今度は気をつけてね」ゾクゾク

 

 

普通の人がする顔をしていません。

まさに獲物を目の前にした狼そのものです。

狩人(母親)がいるためにしぶしぶ引き下がりましたが、まさに紙一重だったと言って良いでしょう。

家の自慢をすることをすっかり忘れていた3人は、その後にさらに恐ろしい一言を聞きました。

 

 

結標「はぁ……。どこかに親のいないかわいい少年はいないものかしら?」

 

 

戦慄です。

目を合わせたら、自分たちの身がどうなることか分かりません。

3人はすぐにその場から離れることを決意しました。

彼らの背中を押すのは恐怖。

年上のお姉さんがここまで怖いものとは知りませんでした。

3人は無事に逃げ出すことに成功したように見えました。

が、あることを忘れていました。

3人の中に、最悪といっていいほど運の悪い少年がいることに。

 

 

とうま「うわっ!? 痛っ!!」

 

しあげ「ば、バカ!」

 

 

そうです。

とうまが盛大に転んでしまい、大声を出してしまったのです。

その声を見逃すほど、ショタコンは甘くありません。

 

 

あー「に、にげ……」

 

結標「どどどどどど、どうしたの、ボク!!」

 

 

回り込まれてしまった。

瞬間移動したのかと思うほど早かった。

 

 

あー「な、なンだよ! あっち行けよ、露出狂!」

 

結標「ふふふふふ。生意気な少年もかわいいわぁ」

 

あー「!?」ゾク

 

 

ジロジロと品定めをするかのような目で上から下まで見られてしまいます。

正直、気持ちの良いものではありませんでしたが、何と言えば撃退できるのか分かりません。

悩んでいるうちに、向こうから攻撃を仕掛けてきます。

 

 

結標「大丈夫、ボク? お母さんは?」

 

とうま「え? い、いないけど」

 

しあげ「バカやろう!」

 

 

とうまがいないと言った瞬間、露出狂の目が光りました。

効果音でいうと『ビッガァァァァ!!』という具合に。

とてもエキサイトしています。

 

 

結標「そそそそそ、それじゃ、お姉ちゃんと―――」ハァハァ

 

あー「おりゃァー!」バキィ

 

 

身の危険を感じたあーは、その露出狂を後ろから思い切り蹴り飛ばしました。

子供の力とはいえ、不意打ちをされてはたまりません。

露出狂は、顔面からアスファルトに突っ込みました。

格闘技ならレフェリーが試合をストップさせる倒れ方です。

しかし、そんなことを気にしている場合ではありません。

3人は全力で逃げました。

3人が少しだけ振り向くと、露出狂が顔面を鼻血で真っ赤にしながら、満面の笑みでこちらを向いているのに気付きました。

そこからどうやって家に帰ったのか覚えていません。

気付いたら、少年たちは自分の家にいました。

 

トラウマになりそうな出来事があった翌日。

しあげは、家でぶるぶる震えていました。

昨日のアレはなんだったのでしょうか?

思い出すだけで、体の震えが止まりません。

気分を変えようと、自作の藁の家のドアを少しだけ開けると、赤い髪の女の人が見えたような気がしました。

ビクッと体を震わせると、あわててドアを閉めます。

足音は聞こえません。

人の少ないところに家を建てたので、誰かが近づいてくるとすぐに分かるというのが、彼の家の長所であり、短所でもありました。

けれど、今回はそれがいい方向に働きました。

しあげは、ホッと胸をなでおろします。

しかし、それは早計でした。

 

 

結標「かわいい少年の匂いがするぅぅぅぅぅ!!!」ドシャー

 

しあげ「ほぎゃあああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

 

座っていたすぐ横。

藁の壁の中から例の露出狂が現れたのです。

心臓が止まるかと思いました。

 

 

結標「あら、あなたは―――」

 

 

しあげは、露出狂が何か言う前に家を飛び出していました。

あのままあそこにいたらやられる。

直感がそう言っていたのです。

身体能力の高い彼は、なんとか露出狂から逃げることに成功しました。

しかし、家もなくなり、行く当てがありません。

困った彼は、2人の兄のうち、比較的仲の良い兄であるとうまの元へと訪ねることにしました。

2人の家の場所だけは聞いていたので、バカな彼でもなんとか行くことができそうでした。

 

―――が、無理でした。

結論から言うと、とうまの家はありませんでした。

不法に立てられたものだからといって、大人たちが木の家を撤去しているところだったのです。

とうまは、その傍らでうつろな目をしてうな垂れていました。

 

 

とうま「ハハハ……。俺の家が……」

 

 

さすがに、しあげは心苦しくなりました。

涙が出そうになりましたが、同情している場合ではありません。

露出狂のことも大変ですが、自分たちの住むところがないというのも大変です。

 

 

しあげ「あーのところ行こうな」

 

とうま「うん……」グス

 

 

しあげが自分でも驚くほど優しい声が出ました。

さすがに、兄弟である彼も、とうまがここまで不幸なところは見たことがなかったようです。

なんだかんだ言っても、世間は厳しいものです。

2人はお互いを励ましあいながら、あーの家に向かうことにしました。

 

 

しあげ「な、なんだこりゃあ……」

 

とうま「す、すげえ」

 

 

あーの家に着いて驚いたのは、立派なマンションの一室に住んでいるということをここで初めて知ったからです。

なぜ兄弟でここまで差が出たのでしょうか?

それはひとえに、

 

 

あー「頭のデキの違いだろ」

 

 

ムッとした2人ですが、その通りなので言い返せません。

こうして中に入れてもらえたことだけでも奇跡のようなことなのです。

2人はあーに感謝しました。

ここなら安全です。

なぜなら、エントランスにロックがかかっているので、不審人物は中に入ってこれません。

それに、法的にも問題なく建築されているので、退去されられる心配もありません。

 

 

あー「まァ、ゆっくりしていけ」

 

 

しかし、2人はあーの態度が妙に引っかかります。

ここまで優しい兄だったでしょうか?

 

 

しあげ「あー、わかった。あのろしゅつきょうがこわいんだろー」

 

あー「ち、ちげーし! あンなヤツ全然怖くねェし!」

 

とうま「とかなんとか言っちゃってー」ププ

 

 

これだけのセキュリティーがあるにも関わらず、あーは怖がっているようでした。

藁の家や、木の家と比べるのがバカらしくなるくらいに整備されたこのマンションに入ってこられる訳がない。

そう2人は思っていました。

しかし、ここは学園都市。

能力の開発が行われている最先端の街なのです。

 

その日の夜のことでした。

日が沈んで少ししたくらいに、インターホンに来客を知らせる合図が鳴りました。

すっかり元気を取り戻した3人でしたが、その音にピタリと会話が途切れます。

 

 

とうま「ま、まさか……」

 

あー「さ、さすがに違ェよな? ンな訳ねェ……」

 

 

一番怖がっているのはしあげです。

全身がガクガクブルブル震えています。

まるで携帯のバイブレーションです。

昼間の恐怖が頭の中でフラッシュバックしていましたので、仕方ないかもしれません。

あーは、恐る恐るインターホンに出ました。

 

 

あー「……ど、どちら様ですかァ?」

 

宅配便『あ、こちら一方通行様のお宅でしょうかー? お荷物お届けに参りましたー』

 

 

その一言に部屋の中が弛緩された空気で満たされます。

何を緊張していたのでしょうか。

まさかここまで突き止められる訳がありません。

 

 

宅配便『どうかしました?』

 

あー「あ、今空けますンで!」

 

 

慌ててエントランスのドアを開けるボタンを押すあー。

しかし、そこでインターホンの向こう側で何か起こっていることに気付きました。

雑音が聞こえたのです。

 

 

宅配便『な、なんだアンタは!?』

 

結標『見ぃつけたぁ……』

 

 

もうホラーでした。

 

3人は、弾けるように玄関へと駆け出しました。

叫んでいる暇すらありません。

それに、叫んだところで居場所を相手に教えているだけです。

ですが、そんな希望もそこで終わりでした。

玄関には露出狂が立っていました。

わずかに見える玄関のドアにはしっかりカギもチェーンロックもかかっています。

どうやってこの露出狂は部屋に入ってきたのでしょうか?

 

 

あー「あ、ああああ……」ガクガク

 

しあげ「お、おばけ?」

 

結標「私がお化け? 失礼しちゃうわね。私は―――」

 

とうま「わ、私は?」

 

 

結標「あなたたちのお姉ちゃんよ」

 

 

部屋に絶叫が響き渡りましたが、もうどうにもなりません。

3人は、露出狂の高校生に食べられてしまいました。

余すところなく全て、それも5年かけてゆっくりと。

そのお陰で、そのマンションでは、夜な夜な不気味な音が聞こえてくるという噂が立ち、周りに住む人もいなくなりましたとさ。

 

めでたしめでたし。

 

【5年後の彼ら】

そんな少年たちもすっかり成長して、ついに高校生となる日がやってきた。

高校生になり、興味を失った露出狂はいつの間にかあーの部屋からいなくなっていた。

 

 

当麻「なんかすっかり汚れちゃったよな、俺ら……」

 

一方「言うな」

 

 

幼い心に受けたダメージは計り知れないものだった。

怯える3人に、○○○だったり、△△△だったり、×××を強要されては心も壊れる。

しかし、元凶である露出狂がいなくなったことで、普通の生活をつり戻しつつあった。

 

 

仕上「……今は、高校生活をエンジョイしようぜ」

 

当麻「そ、そうだよな! いつまでも過去に縛られてることないよな!」

 

一方「し、縛られるとかいう言葉はもう聞きたくねェ……」

 

仕上「あ、ああ……。お前はそうだったな……」

 

当麻「そんなことより、高校生活といえば彼女だろ!」

 

一方「女jは怖ェ……」

 

当麻仕上「「ですよねー……」」

 

一方「ま、付き合うなンてことがあるとすりゃァ……」

 

 

 

 

 

当麻一方仕上「「「年下だろう(ォ)な」」」

 

 

 

 

終わり

 

 
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