「見えてきた!許昌だ!」
「え!?もう!?」
華琳が驚きの声をあげる。
それもそのはず、まだ親衛隊のもとを出発してから4分少々しかたっていないのだ。
「やっと…帰ってきたんだ…」
これ以上言い表すことのできない歓喜の感情は、しだいに見えてくる街の現状に、あっという間に塗りかえられてしまった。
段々街に近づいていくにつれて、俺があまりしたくなかった形での帰郷に、許昌の街もあまりしてほしくなった歓迎の形をしているのがわかった。
「街から煙が上がっているわ」
華琳が後ろから街を見て悲痛な声を漏らす。
街の方々から城壁を超えて煙が立ち上っているが見える。
「くそ!間に合わなかったか…」
「交戦中かもしれないわ。まだ敵はいるかもしれない。急ぎましょう」
「うん。でも、もし戦っていたら、華琳は離れていてくれ」
「わかってるわよ。流石にあれは『私が』かなう相手じゃない。そうでしょう?」
「…やけに『私が』を強調するね」
「…今度は私があなたの支えになる番ってことよ」
「今でも十分支えになってるんだけどなぁ」
ややあって、華琳がため息をつきながら
「私には隠す必要ないでしょ?私はあなたの主だもの」
「…そっか。ありがと、華琳」
「ふふ、どういたしまして一刀」
もう城門は目の前まで来ていた。
一応、どんな事態になっていてもいいようにと、変身だけはしておくことになった。
「変身!!」
「やっぱ何度見てもどうやって変化しているかわからないわ」
「なんかね、榎田さん…こっちの世界でいう真桜みたいな人が言うには、分子…がどうとかこうとかで…忘れちゃった」
「なにそれ…」
「はは、まぁ大丈夫。戦う力をくれるってのは確かだから」
「ホントに大丈夫なの?それ…まぁいいわ。ここからはいつ敵が身を潜めていてもおかしくないわ。あなたの『さーちゃー』というのも人間に戻っていたら意味がないのでしょう?」
「うん。じゃあ、行こう…」
俺たちは一応、見つかってこれ以上敵に暴れられてはたまらないという事で敵を見つけたら速やかに退治できるようにと隠密行動で、あまりメインではない城の門をくぐることになった。
しかし、その門に向って歩を進めていくうちに、俺たちは煙が門から…いや門があったはずの場所から発生しているのがわかった。
「…ひどいわね」
門であったものをくぐった俺たちを出迎えたのは、消し炭となった警備隊の骸だった。
残った胴体も焼け焦げていて、生身の顔の部分はもはやだれとも判別することすら困難になっていた。
「もしかして、だれの仕業かわかるの?」
「うーん。爆発させるのは一人心当たりはあるけど…」
「そう。じゃあ対処方法もわかるわね」
「もちろん…あれ誰か来るみたいだ」
「ホントに?何も見えないけど」
「ホントホント。足音がするんだ」
クウガになるといつもの何倍もものが見えたり音が聞こえるようになる。
緑の時は雑踏の足音から、その話声まで聞こえてきて焦った焦った。
今でも集中してないと、50秒ぐらいしか持たないんだよね。
「とりあえず、隠れて様子を見ましょう。あなたの姿を見られるわけにはいかないし、変身といたら常人の感覚に戻るから意味ないしね」
「それもそうか」
「こちらです…」
記憶にもある顔見知りの街の警備兵が、こっちは夢にまで見た、懐かしい面々を引率してくる。
「凪…沙和…真桜…」
今すぐにでも飛び出して、抱きしめたいのをぐっとこらえ、俺たちはことの推移を見守る。
「これは…」
最初に声を出したのは凪だった。
遠目にも、拳を握りしめているのが見える。
「あかん、流石にこれは…」
「見てられないの…」
沙和と真桜がそろって口を押さえ目をそらすのが見える。
無理もない。この世界にはまだ『爆弾』というものが存在しない。
ある程度『爆発』するものはあっても、ここまでの威力は今の時代にはない。
ここまでむごたらしく、人間の尊厳さえも否定するようなやり方は彼女たちは目にしたことがないのだろう。
ひと段落ついて華琳が腰をあげて、こっちを見る。
行くわよ、という事なんだろう。
華琳を認識すると、凪たちはすぐに緊張した態度をとる。
後になって思う、これは完璧に気が抜けてしまったんだろう。
ワンテンポ遅れて俺も出ていこうとする。
そう。クウガのままで。
皆さんは、ご存じだろうか?
俺が昨日までいた『俺の世界』では、親しい人を除いて、皆がクウガのことを『第4号』って言っていたんだ。
この『第○号』っていうのはグロンギの奴らの通し名でね、グロンギが出現する順で一号、二号…って便宜上つけていたんだ。
え?お前はグロンギじゃないのに何で『第4号』って呼ばれていたかって?
簡単なことだよ。俺のこの変身はグロンギに近いものなんだ。
だから、はじめてみた人からすると、俺とグロンギはそっくりらしいんだ。
俺は全然違うと思うんだけどね。
で、今回。
俺はそれを忘れて大失敗をやらかしてしまうんだ。
華琳のうしろに現れた俺を見て、凪たちは驚愕の表情をあらわにした。
そりゃそうだ。消えたはずの人間が目の前にいるんだ、驚くのも無理はない。
ここはひとつ、成長した俺の寛大さで、感激のあまり涙する凪たちに抱y
「お前も奴らの仲間か!」
ヒュン、という風切り音とともに凪が一瞬で間合いを詰めて襲いかかってくる。
「へ?」
次の瞬間、俺は軽く数mは吹っ飛ばされていた。
「いつつ…あ」
うった頭をさすった手を見て俺は気付いた。
おれが今クウガであること。そして、俺の世界でもなりたての頃は警察にも攻撃対象とされていたこと。
鬼の形相をしている凪の向こう側では、沙和と真桜が、『あほんだら』って書いてある顔の華琳をうしろへひきいれながら、
「凪ちゃ~ん!そんなゲス野郎ぶっ飛ばしちゃえなの~!」
「せやで、凪!そないなゲス野郎、さっさとしばいたれや!」
などと勝手なことをのたまっている。
くそぅ、あとでデコピンしてやろう。
「はああぁぁっ!」
凪がすぐさま間合いを消して殴りかかってくる。
「ぐっ…」
余計なことを考えている暇はない。
俺が消えたときよりも確実に腕が上がっている。
とはいうものの、凪とは戦いたくないので説得を試みる。
「凪!待て!」
「貴様…私の真名を…よくも!」
「…あれ?」
しゅ、秋蘭の時は気付いてくれたのに…
とはいっても愚痴っていても仕方がない。
なんでかわからないけど、凪は相当に頭に血が上っているようだった。
説得が駄目となると、少し頭を冷やしている俺は反撃の態勢をとる。
「ま、真桜ちゃん…今、隊長の声じゃなかった?」
沙和がひきつった顔で隣にいる真桜に話しかける。
「う、うちもそう聞こえた…あのごついの、もしかして隊長やないの?」
真桜が冷や汗を垂らしながら沙和と目を合わせる。
「あら、あなたたちは冷静なのね」
「「!?」」
華琳が苦笑しながら二人の会話に入る。
「た、大将。知ってはったんですか?」
「もちろん、ここまで一緒に来たんだもの」
「隊長はなんであんな姿になってるの~?」
「一刀は説明されたけれど覚えていないって言ってたわ。彼はもの覚えは悪くはないはずだから、おそらくとても面倒な仕掛けなんでしょう。…だからそんなに目を光らせても何もないと思うわよ、真桜」
「ばれましたか」
「それでそれで、華琳様。凪ちゃん止めなくていいの~?」
華琳は戦闘中の一刀と凪を一瞥して、
「そのままでいいわ。一刀のあの姿を見るのは、3回目だけど今までは未知の敵が相手で、ものさしがなかったから、純粋な力比べで、双方どの程度の力を持っているのかわからなかったの。だから、いい機会だし凪には試金石になってもらいましょう」
「はぁぁぁあああ!!」
凪の攻勢はさらに激しくなっていく。
「ぐっ!」
チッ、と凪の拳が俺の肩をかすめる音がする。
ちらと殴られたところ見てみると、赤い装甲で見えずらいが、うっすらと血がにじんでいるのが見える。
華琳たちも止める気はないようだし、何よりこれ以上戦うのは嫌だ。
気合を入れなおして俺は凪を見据える。
と、凪が一歩詰めてパンチを繰り出そうとする。
それを避けて手甲(閻王)をたたき割ろうとするも、流石は凪、こちらが攻撃を繰り出そうとした瞬間には手が戻ってしまっている。
「く…流石にそう簡単には行かないか」
(どうする…)
俺は呼吸を整えながらも内心とても焦っていた。
変身を解こうにも、この速さの戦闘の中で解いた瞬間生身をぶんなぐられるだろう。
いかに凪が百戦錬磨の手だれといえどもアクセル全開の体にブレーキをかけても簡単には勢いをそぐことは出来ない。
もとより、凪本体に危害を加える気がないので攻撃は論外。
…となると手甲をたたき割るか、動きを止めるしかない。
手甲の方としては相打ち覚悟で攻撃をぶつける…それは怖い。
下手したら凪の手も持たないかもしれない。
動きを止めるか…まぁ、やってみるか。
Tweet |
|
|
21
|
0
|
追加するフォルダを選択
真・恋姫無双の魏√で消えてしまった一刀君...
もし彼が仮面ライダークウガの世界に巻き込まれたら、全て終わったときどうするかという設定のお話です。
とはいってもクウガになるまでの一刀はあのフランチェスカとかの設定に準拠したいと思います。
続きを表示