No.309002

鳳凰一双舞い上がるまで 第三章 6話

TAPEtさん

真・恋姫無双の雛里√です。
雛里ちゃんが嫌いな方及び韓国人のダサい文章を見ることが我慢ならないという方は戻るを押してください。
それでも我慢して読んで頂けるなら嬉しいです。
コメントは外史の作り手たちの心の安らぎ場です。

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2011-09-28 14:01:29 投稿 / 全12ページ    総閲覧数:3576   閲覧ユーザー数:2901

鳳凰一双舞い上がるまで 第三章 白鮫江賊団編

 

前回のあらすじ

 

修羅場(笑)

 

 

 

北郷一刀の今までの設定

 

 

一刀(一代目)一人称:俺 雛里への呼び方:鳳士元→雛里

 

 

・外形:薄い褐色が入った髪。大いに知られた一刀。肌が結構焼けてる。幼い時から祖父(直刀)に鍛えられた体。並の体型だけど中はみっしりと筋肉が詰まってる。

 

・服:聖フランチェスカーの制服

 

・やってること:学生、北郷流剣道師範代理、直刀死後は師範

 

・天の御使いという名について:利用できるなら使おうと思っている

 

・武器:日本刀「氷龍」

 

・特徴:暗い性格で人の良く絡まない。(人気がなかったわけではない)

 

    人の言動や周りの状況から情報を編み出す洞察力を持っている。

 

    恋愛に感心がなかったが、雛里を見てほぼ一目惚れしてる。

 

    人との信頼をとても大事なものとする(人と良く絡まないことは信用できないからでもある)

 

    一部の動物と話が通じる(狼、蛇など)

 

 

 

一刀(二代目)一人称:僕 雛里への呼び方:雛里ちゃん

 

 

・外形:白髪、肌も日を浴びなかった白い肌。そのせいでちょっと病弱そうにも見える

 

・服:白いシャツの上に狼の皮で作ったジャケット、ブルージーンズ、狼の皮で作った手袋

 

・やってること:大陸一周を企んでいる。

 

・天の御使いという名について:無関心

 

・武器:木刀→???

 

・特徴:雛里ちゃんへの愛情が以前より外に出ている。

 

    雛里ちゃんからの愛情表現に弱い。(良く頭がショートする)

 

    極端な反戦主義、人の死に関して非常に感情的。→孫策に対して軽蔑感を持っている

 

    (前代に比べ)活動的な性格をしている

 

 

 

 

左慈SIDE

 

一刀たちが何やら面白いことになっていたけど、その騒がしい間を利用して、私はちょっと私事な仕事を済ませておくことにした。

誰もおかしく思わなかったらしいけど、洞窟の奥の方にはまだ白鮫やその幹部たちが残っていたはずだった。彼らが誰一人奥から出てこないことは何かおかしい。

そう思った私は、洞窟の奥、白鮫の部屋に向かって歩くのだった。

 

確かここだと思うけど……あら。

 

「………可哀想に……」

 

最初に私が見たものは、予想した通りと言えば気味が悪いけれど、白鮫の部屋の前で見張りをしていた江賊二人だった。

二人とも頸が胴体から落とされていた。

 

「ごめんなさい、今の私にはどうすることもできなかったの」

 

元をいうと、これも私が招いた事件。

完全に氷龍を抑えることができないことを知っていつつも、私が貂蝉が狙った通りに、奴に体を渡す他なかった。

 

「ぐぉおぉ……」

「……まだ中に居るようね」

 

私は異質的な声が聞こえてくる白鮫の部屋の中に足を踏み入れた。

 

「……っ」

 

私の目に見えた光景は想像以上を越えるものだった。

 

氷龍は人の欲を感じ、その欲を叶えるための力を与える。それだけでなく、氷龍はその欲を更に深まるようにさせる。

人の欲を吸って力を成す氷龍は、自分の力を増やすために握った主の欲をより強くさせる。

氷龍を握った人間が一度その力を惑わされると、後は氷龍に餌を付けるただの宿主。

氷龍は、言わば人の欲を吸うためにその人の欲を操る寄生体なのだ。

氷龍はより効率的に欲を吸収するためにその人の欲を大きくさせる中、少しずつ宿主を蝕んでいって、最終的には彼の体を完全に自分の意志で動かせる。

 

…と、日本で奴を観察していた卑弥呼が言っていた。こいつも自分なりに生きるための進化をしたのでしょうね。

 

そして、今私の目の前にいる『人型をした羅刹』が、氷龍の寄生の最終段階。

もう、白鮫という存在の意志は残っていない。ただその者が持っていた欲だけが残って、その体が砕くまで氷龍に利用され続けるまで。

 

「可哀想に……」

「うおぉぉぉーー!!」

 

その声が白鮫の最後の叫びだったのか、それともまだ声帯に慣れていない寄生体が声を発していたのか、私は分からなかった。

 

「それにしても納得いかないわ。何故そんな人間の体を必要としているの?私から奪った体をどうしたのかしら。要らないなら返して欲しいのだけど」

「……ぉぉぉ」

 

おかしい。

私が昔失った力の一部と言える氷龍は、知性に関しては確かに劣る。

でも、たかが人間一人に寄生することにこれほど時間をかけている?

その前に何故私の体を吸収しておいて遙かに劣るこんな下劣な人間の体を………。

 

氷龍が私の昔の意志をまだ持っているとしたら目的は3つ。

貂蝉を殺すこと。

北郷一刀を殺すこと。

外史の存在全てを破壊すること。

 

「ぅぐぉぉぉ」

「……まさか……あはっ!いやいや、まさかそんなことするわけ……」

「ぐぉぉおおおお!!!!!!!!!」

「……いや、もしかしたら……」

 

でも、そんなの昔の私のやり方じゃいわ……でも、そうじゃないと、この低能な仕事の理由が説明できない。

 

「そう……体を分けたのよ!自分は貂蝉のところに行ってここに残り分のあなたを残して!

「ひゃああ゛あ゛あ゛あ゛ーーー!!!」

「そう……そんな手を取ったのね」

 

この世界の北郷一刀はまだ仲間が少ない。

しかも氷龍の能力を抑えられる力は鳳雛のみ。

これほどの力でも十分と思ったのでしょう。

 

「今それがあなたの何分の一なの?十?百?千?…舐めたことしてくれたじゃない」

 

確かにあなたを縛り付ける鳳雛はもうこの世に残っていない。

でも、百分の一のあなたなんかに遅れを取ると思ったら、あなたは彼らを見損ない過ぎてるわ。

 

「四百年も苦しんでおいてまだそれが分からないの?」

「こ……ろ……す……」

「……ふん」

 

どうやら他の幹部たちは全てこいつが仕留めたようね。

 

「もう良いわ。あなたと話がしたかったのだけど、こんな残留思念に聞いてみても何にもならない。

「ころーすー!!!!」

「あ、これはお見舞いね。遠慮することはないわ」

 

私は手の『氷龍』を振ってくる羅刹の前にダイナマイトを差し出しながら言った。

 

「……あ、火付きものないじゃん」

 

私ったらうっかり屋さん(てへっ☆)

 

………さっさと逃げようか。

 

 

雛里SIDE

 

「というわけだからさっさと逃げないとヤヴァイことになっちゃった」

「ま、待って、話についていけないのだけど……」

「奇遇ですね。孫権さん、私もです」

 

この人は何を言っているんですか?

居なくなったかと思ったらまた来て逃げないと行けないって言うし、奥からは変な声聞こえるし一刀さんはまだ倒れてますし…

 

「一刀さん、いつまで寝てるんですか?」

「雛里お姉さん、一刀さん冗談じゃなく気絶してます!軽い脳震盪です」

「一刀様、しっかりしてください!鳳統さん、あんまりです!あんな情熱的にされてこの仕打はあまりです!」

 

あわわ、なんですか、それ。

まるで私が悪いみたいじゃないですか。

 

「……雛里ちゃん、やりすぎ」

 

あわわ!倉ちゃんまで…!

 

「もう、男だと大事な時に使えないんだから。とにかく、孫権さん、皆を船に乗らせてください。そこの江賊たちも一緒に」

「え、えっと……」

「待て、そんなこと許せん!」

 

戸惑ってる孫権さんの横で甘寧さんが入ります。

 

「蓮華さま、例えこいつらが本当に江賊をやめるとしても、こいつらをこのまま生かしては、こいつらの手に殺された人たちの恨みを晴らすことができません」

「馬鹿ね、甘寧。死んだ奴は恨みなんて抱かないわ。恨みなんて贅沢な感情は生きた連中しかやらないわよ」

「貴様はさっきから知った口ふりを……」

「知ってるとも!私は沢山を死人を見てきたわ。でも、その中で自分を殺した者を恨む人なんて一人たりともいなかった。皆残された人たちのことを心配するだけよ。なのにあなたたちはいつも復讐だの命で償わせるだのふざけた考えで時間を浪費する。だからこの乱世がいつまでも長引くことが分からないの?!」

「!」「………!」

「っっ!貴様!」

 

左慈さんの言葉に怒りを抑えられず放たれた甘寧さんの刀が鈴の音を鳴らしながら左慈さんの頸を狙いました。

けど、左慈さんの頸に剣が当ろうとするとほぼ同時に、後ろにいた倉の棒がそれ以上進むことを阻みました。

 

「……さっちゃんに手出すと許さない」

「ちっ!」

「二人ともおちつ…」

 

二人の間の空気が緊迫になるのを見て私は二人の間を仲裁しようとしました。

 

「静まりなさい!!!」

「「「!!!」」」

 

でも、それと同時に孫権さんの大喝が洞窟に響いて、甘寧さんと倉ちゃんを驚かせました。

 

「思春!あなたは一体何をしているの!」

「っ、ですが蓮華さま!」

「彼女たちが言った通りよ。あなた、いや、私たちは今まで殺すことばかり考えていて、何故彼らが殺さなければならなかったかについては考えても居なかった」

「どういう……」

 

孫権さんは甘寧さんの言葉を聞かずに、江賊たちに向かって叫びました。

 

「この中で孫呉の住民だった者たちは手を上げてみなさい!」

 

そうすると、ほぼ3分の1の人たちが手を上げました。

 

「なっ!」

「分かる?あなたが殺そうとしているその賊の中では、かつて我が母、孫文台の民だった者たちも入っているわ」

「し、しかし、今は奴らはどこにも属しない賊の群れ…!」

「それは孫家が堕ちなかったらそうならなかったこと。その責は我らにあるわ」

「そんなことは……」

「あなたはあなたは江賊討伐をしてきたことが母様と孫家への償いと言ってたわね。それが言い訳ということが分かったわ」

「…!蓮華さま、そんなことは……」

「あなたが何をしてきたっていうの。あなたはただ殺していただけよ。母様を殺した時と何も変わってないわ。ただ言い訳が変わっただけ。あなたの手に殺される人が居るだけよ。言ってみなさい。あなたは今まで、誰かを助けると思って戦ったことがあるの?」

「………!!」

 

孫権さんの言葉に甘寧さんは剣を落として震えました。

 

「わ、私は……」

 

恐慌状態になった甘寧さんはその場に座り込んでしまいました。

倉ちゃんはその姿を見て武器下ろしました。

 

そして、私は孫権さんの顔を見直しました。

…孫策さんの顔とは…結構違うように思います。

肌や髪色は一緒だけど、孫策さんに比べもっと穏やかそうな姿の人。

私は孫文台さんを見たことはありませんが、きっと孫堅さんは、孫策さんよりも孫権さんに似ている人だと思いました。

 

「一刀さんがどうして私を助けるために孫権さんに助けを求める気になったのか分かった気がします」

「………へ?」

 

期待、僅かな期待がそこにあったのだと思います。

この人なら……

 

「ひひぃいいいいーーーーー!!!!!!」

 

そんなことを思っているうちに、さっき左慈さんが言っていた『らすぼす』がそこまで付いてきていたことを、私たちはやっと気づいたのでした。

 

 

 

牙莎SIDE

 

「散々困らせやがって…」

「ぐへっ!」

「おい、てめぇ!何している!」

 

武器も無しにつったっている江賊の腹を蹴る部下一人をみかけて俺は大声で怒鳴った。

 

「ざけたことするな!」

「ぐぅっ!」

 

そいつを同じく蹴り飛ばして俺は倒れた江賊の者に手を伸ばした。

 

「おい、大丈夫か」

「あ、あぁ……」

「副頭!一体何を考え……」

「少なくもてめぇらよりは沢山考えてる、すっこんでろ!!」

 

俺の行動に不満そうに何人か叫んだが聞く耳持たない。

 

理解はする。

こいつらを仕留めるために何ヶ月を追い回ってきたんだ。

思春だって今すぐこいつらを血祭りにあげたいだろう。

 

けどよ、くだらねーんだよ。

俺は正義の見方とかじゃねぇ。武人だ。

戦う気を失った者を殺すのは賊の仕業だ。イカサマでもなければこいつらに手を出すことは罪もない村人を殺すこいつらの仕業と変わりゃしない。俺たちはそんなことをしようと思春あいつの部下を務まってるわけじゃねー。

 

「お前らも良くわかっとけ!何がこいつらと俺たちの行動の差を生むかを!何が俺たちがこいつらを殺すことは正義でこいつらが殺すことを悪にするのか良く考えてみろ!それが分からず賊を殺す連中に『義』なんてねー!そんな奴俺たちの義賊団には要らねー!」

 

同じ殺人だ。なのに何故俺たちは堂々と俺たちの仕業に『義』という言葉を付けることが出来る。

心がけが違う。殺る目的が違う。ただ欲のために殺し続ける連中とは格が違わなければならねーんだ。

そうでなければ、他の連中にただの領域争いと見られても何の文句も言えねーんだよ。

 

「ひ、ひぃぃぃやあああああ!!」

「今度は何だ!」

「ば、化物だーーー!!」

「あぁん?」

 

今度は何馬鹿な騒ぎをしてるんだ、こいつら………

 

「ぐぉぉおおおおお゛お゛!!!」

「!!」

 

なっ!

何だあの声は……

 

「ぐぁっ!」

 

そして、続いて聞こえる部下の断末魔。

何かが起きている。

 

「ひいぃ、助けー!!」

「何だ、一体何の騒ぎだ!」

 

洞窟の奥に偵察に向かわせた連中の一人が逃げてきていた。

俺はそいつを捕まえて言った。

 

「ば、化物です!化物が剣を振り回して皆を……」

「は?」

「…っ」

 

でも、その時、俺は信じられないものを見た。

 

俺が掴んでいたそいつの顔が、俺ば見ている前でヒビが入って上と下が真っ二つになる姿を……

もちろん、同時にそいつの体の血が俺に噴かれた。

 

「うっ!!」

「ひ、ひぃぃいいい!!」

「副頭までやられたー!

「な、何が起きてるんだ!」

「お、お頭に知らせろ!早くこっからに逃げるぞ!」

 

俺は死んでねー!

ったく、いったい何だ!

とにかく、こいつらを退避させて思春に報告しなければ……

 

「お前ら全部船に戻れ!もうすぐ撤退するぞ!」

「くおぉおおろおおすううう!!!!」

 

 

 

 

左慈SIDE

 

不味いわね。

もうここまで……

 

「皆、残っている人たちは全員船に乗るように言ってください。被害を最小限に抑えなければなりません」

「一体どういうことなの?」

「えっとですね。簡単に話しますと……」

 

うーん、ダメ。基盤知識がない人に言っても分からないでしょうし。

 

「鳳統ちゃん、簡単に説明するわね?」

「はい」「おい、何故私から彼女に話を移す!」

 

シカトして

 

「白鮫が氷龍を持っているのを見ましたね」

「はい」

「実はあの『氷龍』、人が長く持っていると化けてしまうのですよ」

「……はい?」

「だから、あの刀の力に呑まされてただ殺すことだけ知らない化物になっちゃうんです。だから早く……」

「思春!!」

 

その時、男一人が顔を血まみれにして現われました。

 

「あわわー!化物!」

「ちげー!俺だ!凌操だ!」

「一体その血はどうしたの?」

「姫さん、思春はどうした。今緊急事態だ。もう何人もやられてる。人が敵う相手じゃ……」

 

そう孫権に話していた男は、そこで未だに衝撃で座り込んでいた甘寧をみかけてそこに近づいた。

 

「鈴の音!!!何を惚けてる!!」

「……牙莎……私はもぅ……後は…」

「ざけんなーー!!!」

 

男は甘寧の胸倉を掴んで無理矢理立たせてはその顔に迷いもなく拳をぶち込んだ。

 

「うっ!」

「思春!凌操、やりすぎでしょ!」

「黙ってくれないか、姫さん。何があったかしらねーが、こいつはこんな惚けてちゃいけねー奴なんだ!そうだろ、鈴の音!お前を信じて付いてきた連中が死んでいく!なのに貴様は何だ!世の何もかも終わった顔しやがってなんと言おうとした?『私はもうダメだ?』だー?『後は任せたー?』てめぇに任されるぐらいだったらあの修羅場でてめぇに負けて自殺してた方がマシだ!」

「……牙莎……」

「てめぇが俺を生かした。俺の部下どもを生かした。今更それを背負わないとは言わせねー!俺は認めた女ならこんなところで凹んでないでさっさとその鈴の音鳴らしながら動け!やるべきことをしろ!!」

 

……へぇ、この男。なかなか骨のある奴ね。

凌操……か。何故外史に選ばれなかったかおかしいぐらいの凛々しさ。

 

「……そう、そうだったな」

 

部下の言葉に自分の立ち位置に気づいたか、甘寧は立ち上がった。

 

「……ありがとう、牙莎、状況を説明しろ」

「洞窟の奥から化物が出てきて目に見える奴は全部殺す勢いで暴れてる。実際そうもしているしな」

「何…!それはどういうことだ」

「俺もわからねー!とにかく早く撤退しないと皆殺しだ!」

 

 

 

「でも、何かエキストラーたちばかりカッコイイわね。誰かさんが下手なことしてなければ北郷一刀の出番なのにね」

「あわわ!私のせいですか!?私のせいじゃないですよ!」

「いや、鳳統ちゃんのせいだよ」

「うっ……ふえええ、一刀さーん!!」

 

あ、泣かせちゃったか。

既に追い詰められてたのに追い打ちかけちゃったかな。

 

「ていっ!」

「痛っ!」

「……さっちゃん……メッ」

「うぅぅ…ごめんなさい」

 

娘に叱られた。

 

 

 

一刀SIDE

 

「冷っ!!」

 

顔にいきなり冷たい水を浴びられて、僕は目を覚ました。

 

「てわわ、やっと起きました」

「一刀様、大丈夫ですか?」

「真理ちゃん!周泰!何するんだよ」

 

っ!まだ頭が痛い。

 

「ごめんなさい、でも早くしないと本当に不味いことになりそうで……」

「不味い?どういう……」

 

「こーーろーせーーー!!!!」

 

その声が聞こえた時、俺の全身の毛が立った。

何だ、あの声は……聞くだけでも体が凍ってしまいそうだ。

 

 

「真理ちゃん、この水寒すぎるよ」

「ごめんなさい、冬ですし、洞窟の中は更に寒かったもので……でも、温めて注ぐわけにもいかないですし」

 

確かにそんな優しさは要らないな。

 

「でも、いったいどうなってるんだ?」

「えっと、何かぶわーーっ!現れて、どガーーン!として、くおおおお!と叫んできました」

「……真理ちゃん、通訳」

「さっき話を聞いたところ、どうやら中で化物らしき……化物が甘寧さんの部下を殺しているそうです」

 

化物…?どういう……いや、それより、死人が出た!

 

「ふえーーー一刀さーーん!」

「!雛里ちゃん、今早く皆を退避させ…」

「起きてくださーーい!」

 

ちょっ、もう起きてる!フライパンやめっ……

 

「いったーーーー!!!!」

「雛里お姉さん、何するんですか!」

 

顔面正面だった!死ぬ!死ねるぅぅ!!

 

「はぁ……はぁ……一刀さん、起きました?」

「また寝るところだったよ!永眠に落ちるところだったよ!何でそんな強く叩くの?僕は雛里ちゃん好きだけどSMな関係は勘弁だからな!」

「二人とも馬鹿みたいですからいい加減やめてください!読んでる皆さんに少しは緊張感持たせてください!」

 

ちょっと待って、取り敢えず痛いのをちょっと落ち着かせて……

 

「ふぅ……」

「「!」」

「……うん?二人ともどうしたの?」

 

深呼吸をして僕が二人を見ると、さっきとは違って二人ともぽかーんとした顔で僕を見ていた。

 

「?」

「…一刀さん、今口から……金色の粉みたいなのが」

「へ?」

「もう一度息吐いてみてください!」

 

雛里ちゃんが多忙に言ったので、僕は雛里ちゃんが言う通りにもう一度深呼吸をした。

そしたら、彼女が言った通りに、金色に光る粉みたいなものが僕の口から出てきた。

そう、まるで一年前、僕が死んでこの新しい体に蘇った時に吐いたように……。

 

「……わ、私…一刀さん殺しちゃったんですか?」

 

自分がフライパンで僕にトドメを差したせいだと思ったのか雛里ちゃんが本気で泣きそうな顔で僕に聞いてきた。

一瞬、僕も雛里ちゃんに殺されたのかと思ったけど、

 

「いや、違う!真理ちゃん、僕の顔変わってる?」

「えっと、額が赤くなってることを除くと多分いつも通りです」

「ね?僕死んでない。死んでない」

「でも、だったらどうして……」

 

「あ、もう安定期入ったの?」

「うわっ!」

 

突然囚われていた女の人が現れて僕は後ろに下がった。

 

「周泰ちゃん、あっちに行って倉ちゃんがあの化物の足を遅らせるのを手伝ってくれる?深く攻めたらダメよ。掠り傷でも死ぬから」

「は、はいっ!分かりました」

 

周泰が女の話を聞いて去った。

 

「安定期って、何ですか?」

「心臓に定着していた鳳雛がもう体に慣れて北郷と完全に一体化したのよ。思ったより早かったわね」

「あなたは一体誰ですか?何故そんなことを知っているんですか?」

「うん?ああ、そういえば、あなたとこう話をするのはここで初めてだったね。私は左慈よ。あなたの心臓に鳳雛を貫かせたのは私よ」

「!」

 

この人が……以前雛里ちゃんが言っていた人だって……

 

「ところで、安定期というのは、一刀さんは大丈夫なのですか?」

「うん?安定期でしょ?文字通りよ。ただ……」

「ただ…何かあるんですか?」

「……うっ!」

 

うっ、気持ち悪い……

腹の中から…何か熱いのが昇ってくる

 

「一刀さん!どうしたんですか!」

「何か……吐きそう」

「始まったわね」

「どういうことですか?!」

 

うぅ……

 

「うぼあぁーーかはぁ………」

「あ」

 

奥から昇ってくるまま吐き出すと、それは今まで見たことのない多い量の金色の粉が口から吐き出された。

粉はその場に留まっていて、どんどん集まってきた。

そして、その集まっている模様がまるで日本刀のような形になると、それはいつの間にか黄金色の粉じゃなく、本当に日本刀の姿に変わっていた。

 

剣身はは炎の色で染まっていて、柄には鳳凰の模様が刻まれていた。

 

「これは……」

「握ってみなさい」

「……だけど」

「今あの化物、止められるのはあなたしかないわ。あの化物は『氷龍』が白鮫と呼ばれた人間の欲を食らいついて出来たもの。『氷龍』を抑える力は管理者の世界でも『鳳雛』しかなかった。今あの『氷龍』はごく一部の力で、しかもまだ未成熟。今ならアレを完全に葬ることが出来る」

「……これで、戦えば良いのか?」

「ええ」

「あの『氷龍』を壊せば……白鮫は元に戻るのか?」

「……あなたはまだそういうことを考えるのね」

「良いから答えてくれ!」

 

わかっている!

馬鹿げているとわかっている。あいつがどれだけ悪人なのかもわかっている……!

だけど、どんな人間でも、生きようと思うことを罪とは言えないだろ。

 

「言い方が悪かったわね。私は褒めるつもりで言ったのだけど…」

「え?」

「でも、ごめんなさい。あなたも知ってるでしょうけど、一度氷龍に傷つけられた体は癒すことができないわ。『氷龍』を壊しても白鮫は助からない」

「………そうか」

 

……僕は、あの時諦めずにもっと迫っていたら……

 

「一刀さん……」

「……左慈、雛里ちゃんと真理ちゃんを連れて船に乗ってくれ。僕は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あいつを楽にさせてあげてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

倉SIDE

 

「てやぁああっ!!」

 

周泰ちゃんが長い刀を持って化物に近づこうとしていた。でも、

 

「くぉおおーー!!」

「っ!」

「はうあ!」

「おい、お嬢ちゃん、深く突っ込むな。あいつの剣で一度斬られたらそれでお終いだ!」

 

こいつ…強い。

一つ一つ剣を振るう時すごく重くて、すごく冷たい。

 

今ここに居るのはあたしと周泰と江賊のおじさんと三人。

三人で相手してるのに、全然齒が立たない。

 

「……じゃあ、これなら!」

 

あたしは、周りの松明から火を集めてその化物に投げた。

でも、炎が体に届く前に、冷気によって火はもう消されていた。

 

「!」

 

……寒い!

 

「おい、そこの火女、何してる、避けろ!」

「!」

 

しまっ……

 

普通の人と戦う時はまったく考えられない角度から化物の剣が迫ってきた。

あたしは無理矢理避けようとしたけど、脚が絡んでその場で後ろに倒れてしまった。

 

このままじゃ……

 

「はぁあああっ!!!」

 

その時、いきなり他の女が現れて、あの馬鹿げた力の化物の剣を正面から受け止めてあたしを庇ってくれた。

 

「っ!!…重い……!」

「!」

 

…この女は…甘寧……私を庇ったの?

さっきはあんなに殺気立ってさっちゃんを殺そうとしていたのに。

 

「思春、そいつと力比べするな!お前の得意はそうじゃねーだろ」

「っ……ナメるなー!」

 

甘寧が一瞬止めていた化物の剣身を受け流して化物の腕を狙った。

 

「くぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」

「よっしゃあ!!」

 

化物の腕は斬られて洞窟の地面に落ちた。

 

「甘寧さん、すごいです!」

「あたりめぇだ!うちのお頭がこんな化物に遅れをとるか!」

 

横の周泰ちゃんと甘寧の部下がはしゃいでる。

 

「立てるか」

「……うん」

 

甘寧は尻餅ついていたあたしに手を伸ばした。

その手を握って立ったあたしは、ちょっと不思議な感じになった甘寧を見つめた。

 

「…さっきは済まなかった」

「………」

 

『私は沢山を死人を見てきたわ。でも、その中で自分を殺した者を恨む人なんて一人たりともいなかった。皆残された人たちのことを心配するだけよ。なのにあなたたちはいつも復讐だの命で償わせるだのふざけた考えで時間を浪費する。だからこの乱世がいつまでも長引くことが分からないの?!』

 

アレ、甘寧に言ってることじゃなかった。

 

「……さっちゃんが言ったの、あなたはどう思う?」

「……正直分からん。死んだ奴は何も言わんからな」

「…うん」

「だが、例え死んだ人たちがそれを望まないとしても、彼らの命を穢した賊どもが次の命も穢そうとするのであれば、奴らを断罪することを迷う理由などない」

「……そう思う?」

「何故お主はそんなことを聞く」

「……あなたがそう思っているのだったら……」

 

あたしはあなたの主人の姉を殺さなくちゃいけないから。

 

「おい、思春避けろ!」

「何っ!」

「ぐおおぉおおーー!!」

 

再び動き出した化物はいつの間にかまた腕がくっついていて、あたしも甘寧もすぐに避けなかったら、きっと斬られていた。

 

「どういうことだ。確か腕は切り落としたはずじゃ…」

「何か斬られた部分からうねうねしたのが出てきて、またくっついちゃいました」

「とんだ化物だぜ。あんなんじゃ頸斬っても仕留めねーじゃないか!」

 

 

 

 

「皆退け。白鮫は僕は終わらせる」

 

その後ろから聞こえた声に、戦っていた四人ともそこを振り向いた。

 

 

一刀SIDE

 

「一刀様!」

「……一刀」

「おい、大丈夫かよ。倒れてたんじゃ……」

「もう大丈夫だよ。それより、皆船に戻ってくれ。こいつは僕がなんとかする」

「まて、貴様。あいつが白鮫だと?」

 

白鮫の姿は既に人間のそれではなくなっていた。

死体のように青ざめた顔に、白目を剥いた姿は、ただ屍が動いているものとしか思えない。

白鮫は死んだのか。それともまだそのどこかに残っているのか。

どっちにしろ、奴の体は休むこともできずに動き続けていた。

もうこんなことしなくてもいいというのに。全てを穏やかに済ませることも出来たはずなのに……。

 

「済まない、白鮫」

「貴様は、あんな姿になった奴を見てまだ言うか!あいつ、人間であることも諦めたというのか!」

「だからなんだ!あいつもついさっきまでは人間だった。ただ己が欲のために生き続けた普通の人間だ」

「獣以下の下衆だ」

「それが人間というものだ」

 

欲を求めて何が悪い。

ただ、その欲で人、そして己を穢してしまった。

もう僕に出来ることなんて、これぐらいしか残ってない。

 

「何をしている、周泰!倉もさっさと蓮華のところに戻れ」

「は、はい」

「……一刀、気をつけて」

 

倉と周泰がそうやって船に向かって去っていった。

 

「……牙莎、先に帰って私が乗る船一隻だけ残して全部撤退させろ」

「思春…!」

「甘寧」

「あいつとはやり損ねた戦いが残ってる。出来れば人として仕留めたかったが、それができないのならここで葬ってくれる」

 

甘寧は目の前の化物が白鮫だったということを聞いて、どうしても帰ることができなかったのかそう言って剣を構えた。

 

「………おい、北郷」

「…凌操、今日ここで何人死んだ」

「……五人だ」

「そうか……後、あの中でもこいつに殺された江賊たちが居るだろう」

 

今日、誰も死なせないと言った上に、失った命たち。

忘れてはいけない。裴元紹たちとも同じく、彼の死もまたなくても済んだことだった。

彼らの死は、決してあって良いものではなかった。

 

「甘寧は守ろう。今日はもう十分すぎるほど死んだ。これ以上はダメだ」

「……頼んだぞ」

「さっさと行け、牙莎!」

「わあった。無理すんじゃねーぞ」

 

凌操はそう言ってまた船の方へ向かった。

 

「……おい、甘寧」

「何だ。言っておくが、貴様などに守られるほど弱いつもりはない」

「いや、それは分かってる。ただ、一つ聞いていいか?」

「何だ?」

「……凌操とは付き合ってないのか?」

「っ!!貴様、いきなり何を言い出す!」

「無礼だと知った上で言ってもらうと、お前の我侭を聞いてやるほどの男はアイツぐらいしか無いぞ」

「白鮫の前に貴様から斬ってくれるわ!」

「そんなこと言ってる場合じゃないぞ。向こうがもう待ち切れないようだ」

「っ!」

「殺すーーーー!!!!」

 

白鮫は素早いスピードで右手の『氷龍』を振るった。

腕の関節などまるで気にしてない動き。その上に強い。

まさに人でなくなってるな。

 

「ふん!」

 

甘寧が鈴の音を鳴らしながら先に仕掛けた。

甘寧の曲刀が綺麗に決まって、白鮫の左の手首がまるで良く焼いたハムのように切れた。

でも、すぐに切れた手から触手のようなものが出てきて、手首を最初の場所に付けた。

 

「ちっ、体は斬っても無駄か」

「頸を狙うか……或いは……」

「何だ?」

「ころせーーー!!」

 

向こうから攻めに来てる。

 

「甘寧、一瞬でいい。あいつの剣の動きを止めてくれ」

「何をつもりだ」

「奴の本体は恐らく刀の方だ。そっちを砕けば、多分奴も動きを止める」

「お前の考えが間違っていたらどうなる」

「んじゃあ、いつまでも斬っても再生するやつをしょうもなく切り続けるつもりか!」

「ちっ……仕方ない。分かった」

 

ーーぐぉおおおおおおおお!!!

 

僕は刀『鳳雛』を構えた。

 

伝説によると鳳凰は、生きているものは口にせず、草の上にも立たなかったという。

鳳凰は生き物の命を奪うことなんてしない。

僕は今、白鮫を殺しているのか?それとも白鮫はもう死んでいるのか?

もし氷龍を壊せば、左慈の言うこととは違い、元の姿に戻ってはくれないだろうか。

 

「来るぞ!」

「っ」

「ぐぉおおおおおおおお!!!!」

 

激しく動く白鮫の腕が甘寧の頸を絶とうと激しく振り下ろされると、甘寧はそれを受け流せず一瞬それを正面で止めた。

甘寧の剣の刃にヒビが入る音がした。これ以上は持たないだろう。

 

一瞬で終わらせる。

 

「甘寧!!」

「うおおおおお!!」

 

『鳳雛』の刃が、甘寧が作ってくれた隙を逃すことなく、そのまま氷龍の剣身に当たる。

次の瞬間、氷龍はまるで氷が火に当たって溶けるかのように、くだけ落ちた。

 

「おおおおおおおおお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!」

「やったか!」

 

最後の断末魔を叫んだ白鮫は氷龍のようにまるで氷のようにその場で溶けていった。

人型を保たせていた、人間としての『欲』さえも消えてしまった白鮫の最後の姿は、人としてのそれではなく、結局化物としてのものであった。

僕と甘寧は、最後やっと見分けられる白鮫の顔の形をした化物の残余物を見ながら、何も言わぬままそこにしばらく立っていた。

 

 

 

雛里SIDE

 

今、私たちはあの修羅場だった洞窟から出て、新野に向かっています。

孫権さんも元々そこで軟禁される予定だったみたいで、私たちも元々そこと通って行くつもりだったので、別に文句は言えません。

でも、本当に長い一日でした。

どれぐらいかというと12話分の長さでした。

 

江賊たちの洞窟にあった財宝ですが、主人が分かるもの以外は甘寧さんたちが処分することにしました。今になって元主なんて探すこともできませんし。

後ほどの話ですが、私を薬で眠らせて江賊に売った旅館の男が、何が後ろめたかったのか、甘寧さんたちと私たちが、村を襲った張本人という出来もしない話をして、官軍を呼び寄せてました。

おかげで、私が孫権さんに言った通りの作戦で、鈴の音義賊団に官軍の軍資金を分けてもらうようにすることができました。裴元紹さんたちの時にも思ったのですが、本当に黒いのは賊になって人を殺して生きようとする人たちよりも、普通な顔をして他の人を嵌めて生き延びようする人たちの方が余程人間として終わってる気がします。

結局、その人には何もしませんでしたけどね。

 

人が急に増えた鈴の音江賊団ですが、それもそれほど問題にはなれそうにありません。

しばらくは私たちが責任を持って見張りもしますし、そのうち甘寧さんや凌操さんに調練されれば、皆以前のような蛮行は止めてくれるだろうとそうぼじてぃぶ(肯定的という意味らしいです)な考えをします。

 

倉ちゃんは左慈さんと一緒にどっかへ消えてどこに居るかわかりません。

鞄も取り返して、左慈さんは『今回は疲れたからしばらくはまた冬眠するわね』と言ってましたから、多分またあの蛇の姿に戻っただろうとおもいます。

真理ちゃんは…良くわかりませんが、何か周泰さんと意気投合していました。周泰さんに隠密行動のコツなど伝授『して』あげてるとか言ってました。良くわかりません。

そして、一刀さんは……私に膝枕させて私と下からアイコンタクトしながら無言な時間を楽しんでます。

 

「一刀さん」

「うん?」

「頭、重いです」

「あ、きっと雛里ちゃんが打ったから、コブの分だけ頭が重くなったんだ。雛里ちゃんのせいだから仕方ないね」

「脚に血が回らなくてじりじりします」

「酷いな、雛里ちゃん。僕今日雛里ちゃん助けようと頑張ったのに、この仕打ち?」

「さっきキスしたじゃないですか」

「それは喧嘩止めるために急にしたのだろ。しかもおかげで頭打たれて気絶したし」

「じゃあ、結局一刀さんの頭のコブ出来たのって私のせいじゃないですよね」

「………ーー」

 

不満そうな顔をしながら一刀さんが頭を上げようとすると、私は無理矢理また私の膝の上に一刀さんを戻しました。

 

「愚痴ってみただけです。本当に拗ねないでください」

「……雛里ちゃん」

「はい」

「結局、全部救うことは出来なかったね」

「………そうですね」

 

甘寧さんの部下が五人、江賊の人たちに確認すると、死んだ幹部は、白鮫を含め十一人。全部して十六人の人々が、あの洞窟の中で死にました。

白鮫なんて、最後は人の形でもない姿で死んでしまって、私と真理ちゃん、孫権さんなんて声だけ聞いてどんな姿の化物になっていたのかすらわかりませんけど、一刀さんは『見なくてよかった』と言うほどでしたから、きっとまともな死に方ではなかっただと思います。

白鮫のことですが、後で左慈さんに聞いた話では、その妖剣が人にあれほど浸食するには少なくも半年はかかるそうです。私たちが白鮫を見た時、もう既に白鮫は人ではなかったのです。

 

「でも、もしあのまま甘寧さんたちが江賊と戦っていたら、もっと沢山死んでいたと思います」

「それでもやっぱり、僕は皆助けたかった」

「一刀さんは神様じゃありません。人である以上、一刀さんと私たちにできることには限度があります」

「……雛里ちゃんってさぁ、僕が人間と思う?」

 

またその話ですか?

 

「一刀さんは立派な人間です。恋人の私が保証します」

「白鮫は『氷龍』に取り憑かれて最後にあんな姿になった。僕も良く考えてみると似たようなものだろ?」

「…それが怖いですか?」

「いや、全然」

 

一刀さんは割とあっさりそう答えました。

 

「もう、そういうのは全然怖くないよ。自分が死ぬとか、化物になるとか、そういうのは全然怖くない。ただ……もしそうなることで、雛里ちゃんに嫌われるようになったら、それはとても耐えられそうにない」

「………」

 

私は思わず一刀さんのお顔を手のひらでベチっと叩きました。

 

「痛っ」

「あまり馬鹿なこと言うと膝枕やめてもらいます」

「何で怒られたかわからないけど取り敢えず膝枕はやめないでください。雛里ちゃんの膝の上じゃないと船酔いで死ぬ」

 

もう……

あ、そういえば…

 

『だからね、あなたは助けてもらったらどんなご褒美をあげようかそれだけ考えていなさい』

 

………

 

「雛里ちゃん、どうしたの?」

「…一刀さん、助けてくれたお礼に何かしてあげます。何が良いですか?」

「へ?……膝枕でご褒美なつもりだったけど…」

「そんなの別にいつにだって出来ます」

「マジか。何で僕は今まで我慢してきた」

 

一瞬、『あ、そうですか』と逃げた方がよかったかなと思いました。

へ、変なことお願いされたらどうしよう。

 

「まぁ、それはおいおい考えておくとしよう」

「何で後にお預けするんですか!怖いですからやめてください」

「だって今船酔いのせいで何されてもあまり楽しめそうにないし……まぁ、後でちゃんとしたところに行ったら…」

 

何ですか、ちゃんとしたところって……まさか、本当に……

いや、むしろ。今まで一年も一緒に居たのに今までなかったことがおかしいと思うかもしれませんが、あの、えと、あわわ……

 

「あ、あわ……す、スケベはダメです」

「……それは具体的にどこまでダメなの?」

「全部です!全部ダメです!」

「膝枕は?」

「それは……うーん……有りです」

「じゃあ、それで……雛里ちゃんが」

「……え?」

 

その後、すごく恥ずかしいことになりますが、それは別の機会で話そうと思います。

とにかく、こうして、私たちの旅の第一歩は、最初から波乱万丈に幕を開けたのでした。

 

 

 

 

 

 

白鮫江賊団編 終わり

 

 

 

 

次回予告

 

「豫州刺史の袁術公路。すごい蜂蜜好きで蜂蜜のためなら目がないらしい」

「あっちもこっちも蜂蜜ばかりです」

「蜂蜜を持ってくるのじゃー」

「おかげで豫州はもう崩壊寸前。あっちこっちで蜂起が起きる予兆もあります」

 

 

「僕も甘いものは大好きなんだけどね」

「蜂蜜美味しいです♪」

「……なんか、味おかしくね?」

「……………」

「倉ちゃん、どうしたんですか?」

「……齒が痛い」

 

 

「孫策さん、あなたに反乱軍たちの討伐を命じます♪」

「嫌な仕事だわ」

 

 

「一刀……?」

「孫策?」

 

 

「蜂起した農民の数は約五千、その半分を率いているのが彼女、太史慈だ」

「お前はまた彼らを悪を決めつけるつもりか!」

「そんなのあなたに言われなくても分かってるわよ!でもどうしろっていうの!?」

「……お前、やっぱ許さない」

 

 

「蜂起が起きれば袁術の客将な孫策は自分の手で民を討伐しなければいけなくなる。もしそんなことが起きたら、僕は今度こそ孫策を殺すことを躊躇しない」

「民たちを奮い立て!我らの怒りを、我らの血と涙で私腹を肥やした官軍に示すのだー!!」

「孫策が増えた……」

 

 

「反乱軍を撃ったら孫策に対しての民衆の支持度は地面に落ちる。袁術に逆らったら奴らの軍に農民たちと一緒に皆殺しだ」

「あたしたちと手を組めば、袁術を倒せる」

「この私に何の関係のない民たちを盾に使えというの?」

 

 

「もうこれしか方法がないわ」

「孫策!!」

「私は孫呉を建て直す。そのためならどんな犠牲も惜しまない!!」

 

 

「何かがおかしい。裏で得しようとする奴らがあるな」

「袁術、その蜂蜜水を飲むな!」

 

 

 

 

豫州蜂起編

 

COMING SOON

 

 

 

あとがき

 

 

えー、無事に白鮫江賊団との事件を終わらせることが出来ました。

とてもシュールだったことに関してはご了承くださいませ。

何か思った以上にファンタジーな話になろうとしています。現実とは一体なんだったのでしょうか(笑)。

 

次回からはしばらく拠点が続いて、その後は上の予定通り、豫州に行ってまた騒ぎを止めるために頑張ります。

孫策が……出ますね。

今回孫権と絡んだばかりなのにまた孫家ですね。すみません。

でも、今回の蜂起編は、三話で終わらせようと企んでます。代わりに一話の内容が比較的に増えると思いますが…

今回孫策がまた出ると、周瑜さん、黄蓋さん、陸遜さんを出さなければいけないわけですが……陸遜は……出ないと思います。

理由は単純に、自分が苦手なキャラTOP3だからです。他の二人は星と稟です。

 

というわけで、今回の話は、如何でしたでしょうか。

思った以上に長引いてしまいました。頭の中はもう西涼までも言ってるというのに大変な話です。

 

まぁ、いつかは追いつくでしょう(笑)

 

では、次回の拠点を発表します。

 

一刀&雛里、真理、倉

一刀&蓮華、周泰

明命&真理

 

です。

 

あくまで次回拠点というわけで、残りもちゃんとやります。

後、隠れカップルは一人しか要請なかったし……関平さん、どうしましょうか。

 

他は全部やります。

 

またアンケートして、思春と牙莎が絡むのを見たいという人が5人以上出たら書きます(本人は絶対無理だと思っている)

 

では、次回一刀の拠点と天性の諜報員でお会いしましょう

 

ノシノシ

 

 


 
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