この作品は恋姫無双の二次創作です。
三国志の二次創作である恋姫無双に、さらに作者が創作を加えたものであるため
人物設定の違いや時系列の違い。時代背景的な変更もありますので
その辺りは、なにとぞご容赦をお願いいたします。
上記をご理解の上、興味をお持ちの方は 次へ をクリックし、先にお進みください。
桃香達が発ってから数日。
三人とその他複数の営みが消えたことによって、いつもより静寂を増した幽州城内。
しかし、なぜかその日は城内が、朝早いというのにも関わらず騒がしかった。
そして、そのいつもとは違った少し肌がピリピリするような緊張感に、一刀は無理やり覚醒させられた。
コンコン
と、同時に部屋の扉がノックされ、外から声が掛けられる。
「一刀殿。生きていますか?」
「……生きてるし、起きてる」
朝から失礼極まりない起こし方に少し辟易しつつも、しょうがないといった顔をして、とりあえず受け答えをする。
相手が誰だか分かっている上での対応だ。
案の定、寝台から起き上がって扉を開けると、目の前に眼鏡を掛けた文官。A級危険人物、于吉である。
この文官、優秀なのだが危険な匂いがすると、城内で専らの噂だった。そして、なぜか一刀と左慈にだけ遠慮が無い。というか若干馴れ馴れしい。
「……なんかあったのか」
未だ霞んでいる視界をリセットするように眼を擦りながら于吉に問い掛ける。
すると、初めから台本でも用意されていたかと疑いたくなるほど、于吉は流暢に現状を説明した。
「いえ、どうやら賊が入ったようでして。目下、他に盗られた物は無いかと鋭意捜索中と同時に人的被害が無いか確認中なんですよ」
「被害は?」
それを聞くと同時に一刀も文官の顔になり、于吉に現状を確認するため、問う。状況を把握しようと試みたが
しかし
「とりあえず今現在確認できたのは―」
「できたのは?」
「メンマです」
――沈黙
「……悪い。もう一回言って貰えるか?なんか寝起きで頭働いてないみたいでさ」
予想外の、おそらく幻聴に首を捻りながら頭を軽く叩いて今度こそしっかり覚醒させる。
「ですから、メンマです」
が、返ってきた答えは先刻聞いた幻聴と同じ内容だった。
とりあえず理解はした。理解はしたがあまりの拍子抜けにもう一度確認してしまう。
「マジで?」
「マジです。……まったく。正直、私としてはメンマなんて盗られようが、焼かれようが、ばら撒かれようがどうでもいいんですよ。ただ早く左―」
そこまで言った瞬間、于吉が一刀の視界から消えた。
否、なにか強大な力によって横っ跳びに飛んでった。
あぁ……人間ってあんなに長い間宙に浮いていられるんだなぁ、と現実逃避しつつ、凄まじい速さでこの場に現れて、凄まじい力で于吉を吹き飛ばしたなにかに眼をむける。
そして、見たことを後悔した。
目の前に、悪鬼羅刹としか表現できないなにか、いや、誰かが息も荒く拳を突き出したまま静止していた。
――沈黙
状況が理解できていなかったさっきの沈黙とは違い、ある種の恐怖からの沈黙。
一言でも言葉を発せば矛先が自分にむかってくるような気さえしてしまう濃密な殺気。
その悪鬼羅刹が飛んでった于吉にとどめを刺そうと一歩踏み出したその時。
ガバッ!
「星!落ち着けって!」
救世主、我らが白蓮が悪鬼羅刹に見間違うほどに狂暴化した星を後ろから羽交い締めにした。
「グルルルルルル………フーッ!」
羽交い締めにされたことが気に食わなかったのか、それとも周りが見えておらず、于吉にとどめを刺しに行こうと再び動き始めたのか定かではないが、猫のような威嚇声を上げながら白蓮の羽交い締めから脱出しようと身をよじる星。
呆気にとられて静観できていたのもそこまでだった。
すぐに自分の部屋にとって返し、棚にあった壺を持ち出す。
そして驚くほど迅速にトラブル発生現場(自分の部屋のすぐ前)に戻った一刀は未だ暴れる星の前に壺を突き付ける。
「星、ほら!メンマだぞ!」
メンマ
その単語を聞いた瞬間、星が一瞬にして白蓮の拘束を振りほどき、壺を一刀の手から見事としか言えないほどに素早く掠め取った。
そして
「……はっ!私は一体何を……」
不可解なぐらい自然に正気に戻った。いや、正直不自然というか不可思議というか。
「一刀、助かったよ」
少しぐったりとした様子の白蓮が礼を言うが、今この現状が把握でき無さ過ぎて正直、頭がパンクしそうだった。
「いやそれは別に良いんだけど。なにがあったんだ?」
「多分、賊云々の話は聞いてるだろうから割愛するけど。メンマ以外の被害状況を星と一緒に確認してたら急に星が走りだしてさ」
「確認って……どこで?」
「むこうの宝物庫――って言ってもうちには大したもん無いからただの物置――」
「城の反対側じゃねぇか!そんなとこから于吉の悪口拾ったのかよ!?」
どんな集音声だよ。しかも言ったのと聞いたのがほぼ同じタイミングって……。
星のメンマに対する規格外な執着と、それによって発生する企画外な身体能力に恐れおののきつつ、一旦落ち着いた星と、早朝だというのに疲労困憊な白蓮を伴って一刀は軍儀の間にむかうことにした。
「あれ?なにか忘れてるような……ま、いいか。忘れるってことは大したことじゃないだろうし」
『于吉くん!?なんで血塗れで倒れてるんですか!?誰かー!担架、担架をー!!』
「と、いうわけで今からメンマ強盗対策会議を始めたいと思います」
軍儀の間に集まった面々。主に中心は白蓮、燕璃、星、左慈、なぜか無傷の于吉。
あとは手の空いていた文官数人。舞流だけがこの場に居ないのは、会議に出ても大した発言はしないだろうと長年の経験から悟った親友、燕璃の采配でもある。
なので舞流には軍部の主な仕事と、賊の足取り調査を任せた。
だが、一刀の言った会議名に首を捻る文官もいれば、露骨に顔をしかめる人物(燕璃)も居る。
唯一、星だけは凄く真剣な顔で一刀のことをガン見していた。
「それじゃ左慈。現状を報告してくれ」
「はい」
一刀の言葉に左慈が立ち上がり、今日の早朝から今までの経過を報告し始めた。
「今日、早朝です。僕は起きて朝の支度をしていたのですが、少し違和感のような空気を感じまして。なんとなくそれが感じられる方――つまり宝物庫の方ですね。その辺りに行ってみたら宝物庫の鍵が壊されているのを発見しました。念のため人を数人呼び、警戒しながら中に入って盗られた物がないか捜索したのですが――」
チラリと一瞬、星を見て
「その時点でメンマが盗まれていることを確認しました。床に土の跡が残っていたのと鍵が壊されていた点を見るに賊の犯行でまず間違いはないかと」
とりあえずの報告を終えた――のも束の間。
『いやはや、盗られたのがメンマで幸いでしたな!』
一人の文官が最っ高に空気を読まない発言をした。まったくもって左慈の気遣いが水の泡だった。
どうやってその場に移動したか誰にも分からないほどの速度で星が、空気を読めなかった文官の前に移動して、凄く据わった眼をしつつ
「刺すぞ?」
どこから出したかも分からない龍牙を首に突き付けていた。しかも質の悪いことに喉仏に。
なのでその文官は悲鳴すら上げられずその上、濃密な殺気を真正面から受けた影響で気絶した。
口から泡吹いて。
「星!落ち着けって!」
「メンマを愚弄する輩はこの世から消え失せろぉぉぉ!!!」
そろそろキャラが崩壊しかけている星を必死で押し留める白蓮。一介の君主がやることじゃあ無いとは思うが、暴走した星を止められる人材が少ないのもまた事実。
一刀が進行役となって会議を進めている以上、白蓮が星を御するのは必然と言えよう。
そんな中、于吉がスッと静かに手を上げた。
「どうした?于吉」
「そもそもこの会議にはなんの意味があるのでしょうか?えー、その。メンマが盗まれたことは確かに由々しき問題ではあると思いますが」
なにか今朝の件がトラウマにでもなったのだろうか。于吉にしては珍しく言葉を選び、星の反応を気にしながら一刀に問う。するとその于吉の言に何人か頷く文官が。
……いや、正直俺も知りたい。
「理由は二つある」
心の内を隠しながら、一刀は現状の問題点。つまりこの会議の意味について説明を始める。
「まず、賊の仕業というのにも関わらず目撃報告が全くない。これは再び警備体制の見直しと共に、この城自体に綻びが無いかを調査するいい機会だ。つまりその対策を検討する会議。そしてもう一つ。えー……周倉将軍だけでは軍部が回りきらないため、一刻も早くメンマを回収し、趙雲将軍の暴走を収めること。……下手すりゃ盗ってった賊達、血を見ることになるだろうけどな」
最後だけ頬を引き攣らせながらボソリと呟き、それを運悪く聞いてしまった面々は戦々恐々といった面持ちになる。戦以外でこんな緊張感のある会議は初めてのことだろう。基本的に土地柄ということも相まって、ここ幽州には純朴な人間が多い。
どちらかといえば太守である白蓮もその部類なので、普段の軍儀及び会議はここまで緊張感漂う殺伐としたものでは無かった。
「では私と左慈殿、于吉は警備体制の見直し及び、城内の調査を」
「そ、それじゃあ私と星、一刀は賊の調査とメンマ探しに」
燕璃と白蓮の割り振りに頷く面々。間違いなくベストな分け方だろう。と、いうか今の状態の星と行動したくないというのが本音か。
「燕璃は他の文官達も動員してくれて構わない。そっちは一任する。左慈と于吉は燕璃の補佐してやってくれ」
「わかりました」
「任せてください!」
「やれやれ……」
白蓮の指示に上から燕璃、左慈、于吉の順に応える。燕璃はいつも通り無表情。左慈は意気込み、于吉はどうでもいいといった風だ。
それぞれのやることが決まったところで会議を終わらせ、軍儀の間から出ていく面々。
「燕璃、ちょっと」
同様に出ていこうとしていた燕璃を一刀は引きとめた。
「なにか?」
「いや、燕璃が星の為に動くなんて珍しいなと思って」
率先して班分けをした積極性を少し嬉しく思いながら一刀は安堵した表情で笑い掛ける。
「いえ、ただ単に趙雲殿があのままだと舞流に負担が掛かりっぱなしですから」
「友達思いだな、燕璃は」
「そんなものじゃありませんよ。ただ舞流には――」
『おーい一刀!早くしないとまた星が暴れて――うわっ!』
何かを言い掛けた燕璃の言葉を遮るように白蓮の声が被さった。
「お、おい!白蓮、大丈夫か!? 悪い燕璃!また後で」
慌てて駆けだす一刀の後姿を見ながら、一言二言呟いた燕璃はなにかを振り払うように頭を軽く振って、入口で待っている左慈と于吉にむかって歩きだした。
「おや裴元紹殿。なにかお悩みですか?」
「うるさい眼鏡ですね。斬り落としますよ」
「どこを斬り落とされるのかは……あまり聞かない方がいいみたいですね、于吉くん」
「じょ、冗談ですよ。そんな据わった眼で見ないで頂けると嬉しいのですが」
【あとがき】
真・恋姫†無双 真公孫伝 ~雲と蓮と御遣いと~ 1-17
【 メンマ強奪事件!?暴走する昇り龍 前篇 】
更新させていただきました。
いやはや、お疲れです。
どうにも最近ですね精神的に泥沼にハマっていまして、「自分探しの旅に出たいなぁ」なんて思いつつ、不可能であることを考えるとさらに泥沼に……の悪循環です。
なんか軽く末期かもしんない。
なんてちょっとだけ愚痴りつつ、今回の更新です。
仕事の合間に三国志関連の書籍を読んでいた時、郭嘉が凄い人物評をされているのに気付きました。Wikiとか見ると凄いですからね!機会がお有りでしたら調べてみてください。
少しだけその抜粋を。
郭嘉奉考
品行不良・傍若無人で気侭な性格。
しかし、曹操に驚くほど重用される。分析能力に恐ろしく長けていたと言われ、孫策の暗殺すら予期していたとか。(この辺りが呉√の凛の立ち位置に繋がっているんでしょうね)官渡の戦いの後、隔岸観火の献策を袁尚、袁煕の残党を倒すために用いた。が、その後ほどなくして疫病に倒れ、若くして亡くなる。
郭嘉が没したときの曹操の言葉「哀しいかな奉考、痛ましいかな奉考、惜しいかな奉考」は有名。後に赤壁の戦いで破れた際、曹操に「奉考がいればこうはならなかったろう」とまで言わしめた。
いや、個人的に大好きですね。郭嘉。もちろん、凛も大好きです。
さて、話は逸れましたが本日の本題です。以前と同様、アンケート第二弾です。
コメントと同時にお答えいただければ幸いです。もちろん、今はこれの更新だけで手一杯なのですが、余裕ができた時の準備段階ということで、よろしくお願い致します。
・もし次に新作を書くとしたら?
1、別にオリジナル主人公でもちゃんとしてればいい
2、オリキャラ厳禁!恋姫の主人公は一刀オンリーだ!
3、最強設定はちょっと……それ以外ならオリジナル主人公も可
という感じのアンケートです。コメントの一番最後に番号だけ入れてくだされば……ご協力お願い致します。
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真・恋姫†無双 真公孫伝 ~雲と蓮と御遣いと~ 1-17
更新させていただきます。
帰ってきて二時間後に更新。
自分を褒めてやりたい……ガクッ。