No.307052

Just Walk In The ----- Prologue・1

ども、峠崎ジョージです。
投稿68作品目になりました。
『恋姫』ラウンジでは若干ほのめかしました、能力モノのオリジナルSSです。
結構思いつきで始めたにも関わらず設定が面白いくらい浮かんでくるわ浮かんでくるわで、大変になると解っていながらも見切り発車してしまいました。何故に俺ってこう、短編が書けないんだろうか……?
意見感想その他諸々、一言だけでもコメントして下さると、そのついでに支援ボタンなんかポチッとして下さるとテンションあがって執筆スピード上がるかもです。

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2011-09-25 00:36:55 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:6489   閲覧ユーザー数:5647

 

 

―――――とあるサイトの、とあるラウンジが、全ての始まりだった。

 

 

 

 

 

 

『ジョージ:いよいよ、明日だな。戦国』

 

『戦国:はい。今更ながら、少し緊張してます……(苦笑)』

 

『タンデム:無理もないよ。十年近く離れてたんでしょ?』

 

『狭乃 狼:久々の里帰りって訳だ。待ってるぞ、戦国くん』

 

『マリア:いよいよですね。受験、大変だったでしょう』

 

『戦国:えぇ、まぁ。暫くは、机に向かいたくないです。あはは……』

 

『雷電:いいじゃん、別に。俺なんてもう二度と参考書なんか見たくねえしww』

 

『ジョージ:いや、お前はもう少し知識を増やせ』

 

『雷電:ちょっ、ジョージさん酷くね!?』

 

『狭乃 狼:同感だな。いつまでもふらふらしてないで、何か一つ「これだ」ってモンはないのか?』

 

『雷電:ん~……ないっすね、特に』

 

『タンデム:そんなだから言われてるって事に気付きなよ、雷ちゃん。兎に角、会えるのを待ってるよ戦ちゃん』

 

『戦国:はい、宜しくお願いします。それじゃあ、明日の飛行機の時間もあるので、そろそろ落ちますね』

 

『狭乃 狼:そうか。日本(こっち)は昼間でも、アメリカ(そっち)は真夜中だもんな』

 

『戦国:そうなんですよね。こっちの朝一の便で向かうので、そろそろ寝ておかないと』

 

『マリア:時差ぼけは大丈夫なんですか?よく酷いって聞きますけど』

 

『戦国:そこは大丈夫だと思います。10時間以上は飛行機の中なので、多めに寝て起きる時間をずらしておけば、後は大丈夫かなって』

 

『ジョージ:その後は、俺が面倒見るさ。待ってるぞ、戦国』

 

『戦国:はい。それじゃあ皆さん、また』

 

―――戦国さんがログアウトしました。

 

 

 

 

…………

 

 

 

……………………

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

「ふわぁ……ふぅ、やっと着いたぁ」

 

アメリカの地を後にして約半日。長かった空の旅を終えて、入国審査を無事抜けた後、噛み殺しきれなかった欠伸と共に、僕は空港のエントランスに降り立った。

手荷物は必要最低限に纏めて、他は予め送っておいたから、手元にあるのはキャリーカート一つだけだ。

 

「まだ少し寝足りないな。でも、これからはこっちの生活リズムにしなきゃならないし、夜まで我慢我慢、と」

 

かぶりを振って、取り敢えずさっき売店で買ったペットボトルの緑茶で喉を潤した。流石は本場だ、本当に美味しい。大量生産品なんだろうけど、やっぱり向こうとはレベルが全然違う。

 

「さてと、まずはタクシー拾わなきゃ」

 

空のペットボトルをゴミ箱に放り込んでエントランスを後にする。

春は好きだ。暑過ぎず寒過ぎず、日々を過ごすのに快適な気温。短い間に咲き誇り、あっという間に散り果ててしまう国花の季節。

そんな燦々と降り注ぐ日差しの下、ひっきりなしに行き来したり常駐しているのを見れば、乗り場がどこなのかは直ぐに解った。近づくだけで開いたドアには少し驚いたけど。

 

「この場所までお願いします」

 

後ろのトランクにキャリーケースを積んでもらって車内へ。運転席が右である事に『日本なんだなあ』としみじみ感じながら、ポケットから差し出したのは目的地周辺の住所。結構年配なドライバーさんは柔和な笑顔で直ぐに了承してくれた。

 

「お客さん、観光かい?」

 

「いえ、戻って来たんです。4月から、こっちの大学に通うので」

 

「へぇ。今までは何処に?」

 

「アメリカです。10年以上、ずっと向こうに」

 

「ほぉ。それじゃあれだ、帰国子女ってやつかい?」

 

「そうなりますね」

 

そう、僕はずっと両親の仕事の都合でアメリカで暮らしていた。

珍しい方ではあるかもしれないけれど、別に有り得ないなんて事じゃないし、僕自身もそれに対して特に不満がある訳じゃなかった。生活に不自由はしてなかったし、小さい頃からそんな環境で暮らしてきたから、今となっては英語もお手の物。そのお陰で目指したい夢も見つかって、その為に進学先をどうしようかって悩んでいた時に、こんな提案をしてくれた人がいたのだ。『だったら、日本の大学に来てみたらどうだ?』って。

 

 

『戦国:日本の大学で、ですか?』

 

『ジョージ:お前の事だ、日本語も本格的に勉強したいんだろう?だったら日本で学んだ方がいいに決まってる』

 

『戦国:それはまぁ、そうですけど』

 

『ジョージ:それに、何だったら俺の家、というか俺の店の2階に空き部屋がある。そこを格安で使わせてやってもいいぞ』

 

『戦国:それって、下宿って事ですか? っていうか、お店やってたんですか?』

 

『ジョージ:あぁ。ウチでバイトしてくれんなら、生活費はそこから天引きって事にしてやるよ。メシの面倒も見てやるしな。どうだ、悪い条件じゃないだろう?』

 

『戦国:それは、確かに魅力的な提案ですけど、本当にいいんですか?』

 

『ジョージ:夢を追いかける若者を手伝ってやりたい、なんつうお人好しの妄言さ。どうする? その気があるなら、俺の気が変わらねえ内に連絡寄越せよ』

 

 

で、散々考えた結果、僕はHN『ジョージ』さんの好意に甘えさせてもらう事にしたのだ。

親しくなった切欠は、本当に些細なものだった。とある投稿サイトのとあるラウンジで、とある共通の話題からそこの住人達と仲良くなった。『ジョージ』さんもその一人。

サングラスとアロハシャツをこよなく愛し、和製ターミネーターを志し日々鍛錬に勤しむナイスガイ―――というのが、ネットでの『ジョージ』さんのキャラクターだった。現実でもそうなのかは解らないけど、アバターの彼しか知らない僕は概ね似たような印象しか抱いていない。まぁ、流石にそのまんまだとは思っていないけど。

 

「どんな人なんだろう、『ジョージ』さんって」

 

タクシーの中、流れていく景色を見送りながら、僕は創造の域を脱しない想像を繰り返していた。

乗車してから結構経ちもすれば、街並みもがらりと変わってくる。流石に技術大国なだけあって綺麗で最先端なイメージから一転、何処か懐かしさと風情を漂わせる風景に様変わりしていた。

 

「お客さん、この辺りだよ」

 

「あ、有難う御座いました」

 

賃金を払い下車してまず感じたのは、『道が狭い』という印象だった。まあ国土面積がそもそも桁違いな訳だから当然と言えば当然なんだけど、それにしたって綺麗に整備された高速道路があったかと思えば、車幅ぎりぎりなんじゃないかってくらいの一方通行の脇道を見かけたり、地域によって整備の具合がバラバラなのは何処も同じなんだな、なんて思ったり。

さて、立ち尽くすのはここまでにして。

 

「えっと、地図は……」

 

予めネットで調べてプリントアウトしておいた地図を取り出す。目印を探して現在地を確認して、

 

「あっちか」

 

キャリーケースを片手に、目的の住所へと歩き出した。

 

 

「ん~、この辺のハズなんだけどな」

 

地図との睨めっこを始めて十分くらいか。『ジョージ』さんの言っていた通り、確かに進学を決めた大学にも割と近い。駅からも遠くないから、交通の便はよさそうだ。

兎に角、信号機に記された住所で確認しても、間違いなく近づいている。

 

「『ジョージ』さんは、見つかれば直ぐに解るって言ってたけど」

 

どうやら表通りではないらしく、少し脇道に逸れてみた。すると一件の雑居ビルらしき建物が目に入って、

 

「ひょっとして、あれかな」

 

近づくに連れて食事処のような匂いが鼻腔を擽り始めた。『そうなんじゃないか』という思いは柄づくに連れて増していって、

 

「……あ~」

 

1階の店舗、その店構えを見た途端、それは完全なる確信に変わった。見た目は何処にでもあるような大衆食堂。しかし、鮮やかな藍色の暖簾にはでかでかと達筆でこう記されていた。

 

「『ごりら食堂』って……」

 

一時期『ジョージ』さんは自分のプロフ画像にゴリラを使っていた事がある。幼少時、自分のあだ名に使われていたらしく、当時は毛嫌いしていたものの生態を調べる内に大変気に入ったんだとか。

閑話休題、間違いなくここが『ジョージ』さんのお店な訳で、この扉一枚の向こうに本物が待ち受けている訳で、

 

「……取りあえず、入るかな。」

 

今更になって、妙に緊張感がこみ上げてくる。でも、何時までもここで立ち尽くしてたって何も変わる訳じゃない訳で、

 

「え~っと、失礼しま~す……」

 

店内はそこそこに広かった。お客さん用の席は厨房を囲むような木製のカウンターと、畳の敷かれた座敷の二種類。純和風な内装は一目で気に入った。これまた達筆で書き連ねられたお品書きは正に定番のものばかり。豚カツとか、生姜焼きとか、焼き魚とか、丼物も扱ってるらしい。

それは兎に角だ。

 

「あの~、誰もいないんですか~?」

 

奥に向かって、そこそこに大声で呼んでみた。見た所、お客さんは一人も入っていないし、厨房にも誰もいないようだった。

 

「留守、なのかな。鍵、開いてたけど」

 

もう一度表に出てよく見ると、札は『閉店中』になっていた―――って、あれ?

 

「なんだこれ、『春夏冬二升五合』?」

 

暖簾のインパクトが強すぎて最初は気付かなかったけど、入口の傍らののぼりに、やっぱり達筆でそう記されていた。

 

「春、夏、冬? 升とか合って、確か単位だったような?」

 

始めて目にする謎の熟語に首を傾げていた、その時だった。

 

 

 

 

 

 

―――――そりゃあな、『商い益々繁盛』って書いてんだよ。

 

 

 

 

 

 

「秋がねえから『あきない』、升が二つで『ますます』、五合でちょうど半升だから『はんじょう』って訳だ。昔の商人が商売繁盛を願って看板に書いたのに、俺も倣ったのさ。で、なんだ? 客か?」

 

突如、背後から聞こえた声。

振り向いた先には、190はあろうかという筋骨隆々な体躯の男性が、肩に魚屋らしき店の名前がでかでかと記された発泡スチロールをいくつも、肩に担いだり小脇に抱えていた。

髪は短く刈り上げており、黒いTシャツに青のジーンズという非常にラフな格好。

そして、何より特徴的なのが季節外れの派手な『アロハシャツ』と柔らかな陽光を照り返す『サングラス』。

こんな、普通なら違和感だらけのコーディネートを、しかし違和感皆無で着こなせるであろう人物は、僕の検索エンジンでは一人しか該当しない。

 

「ひょっとして、『ジョージ』さんですか?」

 

「……成程な。ってことは、お前が『戦国』か。『初めまして』ってのは、ちとおかしいな。まあいい。取り敢えず中、入れ」

 

否定せずに笑顔を浮かべた。つまり肯定って事だ。

唖然とした。自分から『和製ターミネーターを志す』なんていう人だから筋肉質だろうとは思っていたけれど、この人はもう志す必要ないんじゃあなかろうか。手足は見るからに太く逞しく、胴体は典型的な逆三角形。広い肩幅とその高身長が余計にその迫力を増長させている。この人、本当に食堂の店主なの?

そんな僕の困惑など露知らず、未だ動けずにいる僕を『ジョージ』さんは振り返って、

 

「おい、どうした? 早く入れよ。色々説明する事もあるんだから」

 

「えっ、あ、はいっ!!」

 

その言葉に我に返った僕は、急いで再び店内へと入って行くのだった。

 

(続)

 

後書きです、ハイ。

 

取り敢えず、導入部分が完成したのでうpしました。

 

もう解っていただけたと思いますが、ステージは現代日本で、主人公的ポジションは『彼』です。

 

まだ『能力』の『の』の字も出てきてませんが、暫くは人物や世界観の説明的な内容になりますので、今しばらくお付き合いくださいませ。

 

 

 

で、

 

 

 

とうとう始めちゃったよ、3本目……

 

次の更新は『蒼穹』だ、なんて言ってましたが、思いついちゃったんだ……そして書きたくなっちゃったんだ……

 

多分、次はこれか『蒼穹』のどちらかになります。リアルの方の原稿もあるので次はいつになるかは明言できません、ごめんなさい。

 

『早く俺を出せよっ!!』って人、もうちょっと待って?間違いなく出るから。

 

『もう俺達にチャンスはないの?』って人、展開次第で有り得るかも。

 

兎に角、俺に時間をくれ!!第2回『瑚裏拉麺』もあるというのに……

 

 

 

ほいでは、次の更新でお会いしましょう。

 

でわでわノシ

 

 

 

…………今日は大学祭で色んな屋台手伝ってきたんで、ホント疲れました。


 
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