No.305663

ナイルの箱庭 銀色のコイン

ののさん

異国のイタリア ローマの郊外にある美しい場所での出来事
ファンタジー

2011-09-22 22:24:32 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:543   閲覧ユーザー数:543

あの時の銀のコインが

 

私の手の中にある

 

あの思い出

 

あれは夢

 

 

ナイルの箱庭?

 

時は中世のなかば

 

華やかな欧州のローマ

 

年の離れた従兄弟達と綺麗な場所で遊んだ記憶

 

父親の仕事で私はローマへと来たのだ

 

異国の母親を持ちながら

 

何故だか嫌われる事もない

 

むしろ好かれて

 

周りに愛された

 

大貴族の郊外の邸宅に連れてゆかれ

 

幼い僕は

 

青の空の下で

 

広々とした庭園の緑の迷路や階段状態になった噴水

 

それは綺麗な場所で

 

他の貴族の子供達と笑い

 

一緒に隠れんぼに享受る

 

遊び足りない子供達に

 

優しい瞳をした従兄弟は言う

 

この近くにハドリアヌス帝という

 

古代ローマ帝国時代の帝の別邸跡がある

 

お弁当を持って行ってみようか?

 

誘われて…僕一人がついて行く

 

行ってみたのは

 

とても広々とした邸宅後だという場所

 

とても大きな広い場所

 

ちょっとした町か村程の広さ

 

そして 加工された良質の大理石ゆえに

 

人々は邸宅の大理石の多くを持ち去り…

 

しかしながら…それでも…なお

 

遺跡後は素晴らしく

 

残された蜂の巣に組み合わされた城壁跡

 

ご覧よ あの大きな二階立て程のレンガの建物後は

 

浴場跡

 

各国の大使とかも来た

 

ちょっとしたサロンでもあったらしいよ

 

そして…緑の野原で見かけるのは…

 

まだ年若い青年の彫像

 

同じ彫像が幾つかあるのだ

 

情感的・・な

 

とても整った柔らかな綺麗な顔立ち

 

短めのカールした巻き毛

 

優しげな目をしていた

 

アンテイオキア

 

エジプトにも似た名前の都市があったね

 

この邸宅を作ったハドリアヌス帝と縁は深いらしいけど

 

しばらく口を濁して

 

眉を寄せて

 

しばし悩み…言うか言わないか悩み…

 

詳しい事は知らない

 

 

そういえば…彫像が

 

誰かにかなり似てるかも

 

誰に

 

笑みを浮かべ

 

僕を指差し

 

アンテイオキアに似てるの

 

笑いを抑えながら従兄弟は首を立てに振る

 

よく似てる

 

ハドリアヌス帝は

 

古代ローマ帝国が黄金時代にあった時に皇帝だった人

 

欧州の多くとエジプトやアフリカの一部も古代ローマ帝国の領土

 

とても豊かで水道橋が出来たり

 

剣闘士とか 奴隷がいたりした時代

 

遺跡を巡りながら そんな話をしていた

 

巨大な建物の跡地

 

当時、続州だった国々の現した建物とかも

 

あったらしいよ

 

イギリスにはハドリアヌス帝が敵の攻撃を防ぐ防壁を作って今も残ってる

 

建物の中のドーナッツ型の人口の池

 

それから縦長の人口の池

 

幾つかあるうちの一つ

 

小ぶりながら

 

Uの字型に並べた白い彫像に囲まれた池があった

 

それから白い彫像の中に奇妙な動物がいた…

 

ワニという生き物だよ。

 

エジプトのナイル川にいる

 

川に住む生き物なんだ。

 

人さえ食べるらしい

 

何でも アンテイオキアはワニに食べられて

 

古代エジプトでは ワニに食べられた人は神になるらしくて…

 

ハドリアヌス帝はアンテイオキアが食べられた事が哀しくて

 

帝国の頂点に立ち

 

泣いてはいけない帝なのに沢山泣いて…

 

エジプトにアンテイオキアの神殿を作って

 

それでも哀しくて

 

自分の余生を過ごす別邸に

 

このナイルの箱庭を作ったらしい

 

エジプトのナイル川の箱庭らしいよ

 

生きてるワニは こんな色なのかな…

 

さぁ…見た事はないから…

 

ワニの尻尾に触れてごらん

 

ただし左手の人差し指の指先で

 

そっと少しだけね…

 

従兄弟は笑う…

 

ワニが目を覚ますから…

 

言葉に釣られて しやがみ込み

 

そっと尻尾に触れた…

 

気をつけて…

 

アンテイオキアみたいに

 

ワニに食べられないように

 

奇妙な笑顔

 

従兄弟の笑み

 

まるでイタズラを企む道化師のような

 

えっ

 

と驚き、振り返り…従兄弟を見る

 

視線を外した僅かな時間

 

グォォという不気味な唸り声

 

白いワニが僕を睨み…

 

ゆっくりとその姿は大きくなり…

 

そして口を開く

 

従兄弟は笑う…

 

アンテイオキアみたいに

 

神になるかい

 

神殿を作ってあげるね…

 

でもワニに生け贄になって食べられないといけないよね…

 

慌てる駆け出して

 

走り逃げる

 

走り逃げ回る場所の風景は

 

白亜のギリシャ風の神殿のような場所に変わっていた…。

 

ワニは まるで水の中で泳ぐような動作で宙に浮かび

 

川の中で獲物の魚を追い回すかごとく

 

僕を追い回す

 

豪華な建物の彫刻の施された柱にぶつかり

 

大理石の床に倒れこむ…

 

ゆらり…倒れこんだ僕に気がつかず

 

立ち去る白いワニ…

 

助かったのかな…

 

半ば泣きながら…安心して

 

一息…

 

白い大理石の床

 

大部分が白い大理石をメインにしながらも

 

まるでモザイクで飾るように 色違う石が埋めこまれ

 

幾何学的に飾られている

 

とても綺麗だった

 

何か小さな物が落ちている…

 

小さな光で煌めき

 

何かな

 

手に取ると

 

銀色のコイン

 

月桂冠の冠にギリシャ風

 

古代の衣を纏う男の横顔

 

昔の貨幣だ

 

古代の皇帝かな

 

柱の向こうから男が現れた

 

ここは他の者が立ちいる事が許されない場所

 

何者だ

 

男は話ながら僕を見つめ

 

ひどく驚いた顔をする

 

アンテイオキア…

 

続く

 


 
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