決断したあの日。
見知らぬ女が尋ねた。
『貴様は、何を望む?』
だから『力』と、答えた。
『なんの力だ?』
その問いに、俺の答えは――――――――。
現実世界で平凡な日々を暮らしていた彼は、ある日、突然、まるで何かに衝突したかのような『異次元時間移動』によって、流れ星と共にこの『三国志の世界』に落ちた。
そして、この世界に落ちて、彼がはじめて目にしたのが『関羽』『張飛』と名乗る二人の『女の子』だったのだ。
『関羽』『張飛』といえば『三国志』のメインキャラー。それも有名な英雄達である。しかも『女の子』なんて信じられなかった。
彼女達から、話を聞けば聞くほど、現実世界の歴史・場所・人物と同じでありながら、まったく異なった世界である『三国志の世界』。
当然、彼は混乱した。自分は、このまま、この世界でどうすればいいんだ、と。
だけど『関羽』と名乗る『女の子』が、彼に向かって優しく微笑んだ。
「ああ。きっと貴方ならこの乱世を終わらせられます。きっと……」
彼は関羽が神にすがるような顔で安堵するその笑顔に引き寄せられそうなった。そんな経験は彼にとって初めて。それは『恋』の種だった。
そして、彼、北郷一刀は彼女に『自分だけ』の女性になってほしいと願ってしまう。
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「そして、不覚にも俺は愛紗以外の女の子達も好きになってしまった」
現在。
彼は、洛陽にある自分の寝室で過去を思い返していた。
「そのために『リセットされる瞬間』を愛紗だけを助けてしまったために、他のみんなを怒らせることになったんだ」
激怒、復讐、絶望。
自分をただ遊びだと認識した彼女達は、『記憶』をなくした後も『天の御遣いの北郷は敵』と認識してしまい以後の物語すべてが『北郷殺し物語』になってしまっていた。しかもそれは根強く残ってしまい何度繰り返しても消すことができなかった。
それを知った北郷は絶望した。そして、元に戻すために悩む。
―――答えの先は、完全なる無だった。
「貴様の罪を消すためには己の手で彼女達を殺す以外でしか手はない」
華蛇という魔術師が教える。この世界の誕生の秘話、彼女達の元の形の原理を。
「…………俺……は」
そして、決断して北郷は『力』を手に入れた
「………俺は、桃香や華琳達を殺すよ。そういう物語を創ってすべてを一度無に返す」
『乙女達を皆殺しにするための力を』
まず、天和達を殺した『黄巾の乱』。次に月、恋、麗羽達を歴史の順に……。
「次は桃香だな」
そう口にした時、北郷に迷いなどなかった。罪の意識はすでに天和達で薄れているからだ。だから、彼にもう迷いなどない。ただ、機械的に『どうしたら桃香』を殺せるかを考える思考をする。
「この世界で死んだ英雄は、強制的に俺に殺されたことになる……。しかし……」
自分の寝室を出る。
「まずは……華琳には、表舞台から去ってもらおうかな?」
第二話へ続く。
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第一話
『策略の北郷』