「本気でものを言うつもりなら、言葉を飾る必要があろうか。」[ゲーテ]
病室。
目の前には軍服を着た女性が立っている。ローズとは違い鋭い目つきだが、どこか母親の様な優しい眼差しも宿っているように思える。「ジャック」は赤い髪を軽く触りながらふとそう感じた。彼女の名前は「アデル・ベルモンド中尉」
「…ジャック候補生。報告は以上か?」
アデルは軍帽の固いつばを触りながら聞いた。
「はい。」
「…そうか。マック兵長や候補生たちが犠牲となったのは仕方ない。ジャック。おまえは、1人の仲間を救ったのだ。おまえは正しい選択をしている。」
「しかし…私は…。」
「いいかジャック、行動の良し悪しではない。生き残った者が後を継ぐ、それだけの話だ。それに、二人の仲間に手を貸すか、意識を失いかけている仲間を助けるか…二者択一を迫られていたとしたら誰でも後者を選ぶ。おまえは正しい選択をした、わかったか。」
「…はい。」ジャックは力なく答えた。
「…まぁ良い。ではこれより「ジャック」、「ローズ・ベネット」を正規兵として正式に登録する。初期階級は一等兵、あるいは二等兵の二つだが後ほど通知する。」
「了解です。」
ジャックは意識を失ったままのローズに目をやった。
「彼女には私から伝えておきます。」
「そうしてくれ。」彼女はそう言い残し、病室を後にした。
ジャックは自分が助けた仲間にもう一度目をやり、小さな声で呟いた。
「俺はジャックだ。ブラッドマチェットはもういない…。」
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読んだ方、ぜひコメントを! これでとりあえず一区切りなんだな…