「・・・・・・」
森の木々のざわめき
川のせせらぎ
そして
「んーーー・・・」
片手で竿を持ちながら伸びをする一刀の姿があった。
勿論仕事サボって釣りに来ているのである。
「やっぱりこれに限るわな」
一刀がそう言った時
「仕事を抜け出して釣り、か・・・変わらんな」
後ろから声がした。
「んで、そんな俺を見つけるのはいつもお前なんだよな・・・」
一刀は来るのが分かっていたと言わんばかりに、華雄に向けてそんな事を言った・・・
「それで?」
「ん?」
「今日はどんな考え事をしているんだ?その垂らしている針、裁縫用の針だろう?」
華雄の言葉に一刀は
「良く分かったな」
そう言って竿を上げた。
川から出てきた針は、確かに裁縫用の針であった。
「釣った魚を入れておく物が無いし、お前は釣る気のあるないが分かりやすいからな・・・」
「・・・合ってるけど、そう読まれると何か悔しいな」
一刀は不機嫌そうにそう漏らして、再び針を川に下ろした。
「怒るな怒るな」
華雄は拗ねるようなその仕草を見て笑みを浮かべた。
「怒ってねえよ」
明らかに不機嫌になっている一刀。
しかし華雄はあくまで笑顔のまま
「で?私の質問に答えてはくれないのか?」
華雄はそういいながら、一刀の隣に腰を下ろす。
一刀はちらりと華雄の方を見ると、竿の方に目を戻して言った。
「力について考えてた」
「力・・・か」
「ああ」
二人は釣れる事のない竿、そして糸の方を見て言った。
「俺って、そこまで強くなかっただろ?」
「・・・そうでもないと思うが。あの左慈を倒した時のお前は、十分強かったと思うぞ?」
「ああいうのは普段出せるもんじゃねえよ。それに一対一だったから何とかなったんだ。多人数との戦いになったらあの時の俺じゃあどうにもならなかったわい」
「ふむ、確かにな・・・」
一刀の言葉に頷く華雄。
一刀は続ける。
「まあ、その・・・ちょっと自分にビビっちまってな」
「・・・ビビる?」
華雄が頭に?マークを浮かべた。
「この前、霞と試合しただろ?」
「ああ」
そう、一刀は武器が出来上がった後、自分の成長の成果と新しい武器での戦い方に慣れるために霞と試合をしたのだ。
そして結果は・・・
「霞のあんな悔しそうな顔は、初めて見たな・・・」
「俺も正直、一度目で勝てるとは思ってなかったよ」
一刀は勝った。
斬鋼剣での一刀。
霞が一撃入れようとした時、後の先を取る形で一刀の刀が霞の胴の寸前で止まっていたのだ。
「一度も霞には勝てなかったのにな・・・正直、俺の方が呆然としちまったよ」
「まあ、無理もないな」
「で、勝った時に思っちまったんだよ。俺は最強になれるんじゃないか?とか・・・」
「それが悪い事なのか?」
華雄が訊ねる。
一刀の今の力は、更に磨けば恋にも並ぶのではないか?と思われるほどだ。
実際やりあってはいないが、今やってもおそらく勝つとまではいかなくとも中々の勝負が出来るだろう。
となれば、単なるうぬぼれなどではなく、この先辿りつくかもしれないのだ。
最強という称号に・・・
「俺は・・・怖がってるみてえなんだ・・・」
「・・・・・・」
「自分の力に溺れたやつの末路は、どれもろくなもんじゃねえ。自分でも気付かないうちにこんな力持っちまって、俺もその一人になっちまうんじゃないか?って・・・不安になっちまってな・・・」
自嘲気味に笑い、そんな事を言う一刀。
「一刀・・・」
一刀は基本、人に弱い所を見せたりはしない。
それを見る事の出来る人間は五人といない。
その一人が・・・
「一刀」
華雄が横から一刀を抱きしめた。
「・・・華雄?」
「約束を覚えているか?私がお前を守ると」
「・・・ああ」
それは華雄の強さの原点ともいうべき過去に交わされた約束。
「私はまだまだ強くなる。もしお前が自分の力に溺れそうになったら私が止めてやる。だから・・・」
華雄は一刀の耳元で囁いた。
「お前は、迷わず好きなように生きればいい」
「・・・・・・」
一刀は何も言わなかった。
いや、言えなかったのかも知れない。
何故なら
一刀の体は震えていて
華雄の肩にぽたりと
いくつもしずくが落ちていたのだから・・・
どうも、アキナスです。
更新したい!でも時間が取れない!もどかしい!
そんな事を叫びたい今日この頃です。
さて、久しぶりに書きましたが、今までアナザーに入って出番が凄く少なかったこの人。
重要人物だと言う事を忘れている人もいるのではないでしょうか?
と言う訳で、またおもいつきで書いた今回のおはなし。
次は最初に会った恋姫との話でも書こうかなあ?
それでは次回に・・・・・・
「超究武神覇斬!!」
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森の中→川→釣りとくれば?