馬神弾が自らを引き金と化してから数ヶ月後、久し振りに紫之宮まゐと再会した兵堂剣蔵は彼女の腹部の微妙な変化に気付いた。
「もしかして自棄喰いですか?そんなんじゃ・・・」
「ううん、そうじゃなくて・・・」
はにかんだ様に俯いた彼女は剣蔵にとって想定外の言葉を発した。
「あ、あのね、ダンが・・・ダンが還って来たの。」
「え?それって一体?」
数ヶ月前のあの日・・・
艦内放送が作戦開始15分前を告げた。
「15分あれば1回位は大丈夫ね。」
何て事を口走ってしまったのかと彼女は軽い後悔に見舞われた。他に言うべき事柄は幾らでも在った筈なのに・・・。
しかし目の前にいる最愛の男は静かに肯定した。
「そうだな。」
「え?」
その先には特に言葉は必要なかった。唯、まゐは彼が激突王と呼ばれていた事実をその身を以って深く実感していた。
それから数ヵ月後の再び現在・・・
「今、ダンは私の胎に居るの。」
「そ、そうか・・・そうなんですね!」
凡その経緯を察した剣蔵は戸惑いつつも祝福した。
「おめでとうございます。」
「あ・・・ありがとう。」
まゐは更に言葉を続けた。
「ダンのキースピリットはダブルシンボルだったから、もしかしたら双子かも知れない。」
彼女は潤んだ瞳から涙が溢れた事を自覚さえしていなかった様に微笑んだ。
「凄く元気でね。時々蹴るんだ。お胎の中でバトスピでもしてるのかな?」
いつしか周囲は宵闇に包まれていた。ふと剣蔵が空を見上げると、気の早い星が瞬いたと思ったら、すぐに流れた。その流星を剣蔵はサジッタアポロドラゴンが放った矢の様に錯覚した。
「また流れないかな。」
「え?」
彼女の疑問には答えずに剣蔵は、いつまでも空を見上げていたのだった。
(了)
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カレーが食べたい。