No.300103

仮面ライダーW 驚きのU/壊れかけのメモリ

春香刻冬さん

Pixivの方でアンケート的にお一人様だけですが、ありがたいことに続きが気になった方がいらしたようなので。 続けばいいですね(ぉぃ←

2011-09-14 19:01:06 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:955   閲覧ユーザー数:953

 2011年秋。

 エコを推進する街風都にも、冬が近いことを感じさせるような、空っ風が吹き始めた頃。古びた玉屋「かもめビリヤード場」の2階にある私立探偵事務所、「鳴海探偵事務所」に一件の依頼が舞い込んだ。

「行方不明の息子さん捜し・・・・・・ですか?」

 この事務所の私立探偵・左翔太郎(ひだり しょうたろう)が、依頼人である女性突斑弥生(つきむら やよい)に訊き返した。

 弥生の話をまとめると、どうやらこう言うことらしい―――

 彼女の息子である突斑槍(つきむら そう)は、ある日突然、書き置きも何も無しにいなくなっていた。

 部屋や家に荒らされた形跡はないが、衣類が無くなっていることから警察には家出と判断され、現在風都署で捜索をお願いしてもらっているという。

 だが、彼女には一つ気掛かりなことがあった。

 槍は居なくなる数日前に、謎の男から奇妙な機械と、そしてUSBメモリのような物をいくつかもらっていたらしい。その日は結局妙な様子も見せなかったため、少し様子を見ようとした矢先の行方不明だった。

 もしや何か恐ろしい事件に巻き込まれているんじゃないかと心配だった弥生は、素早く動けない警察ではなく、この私立探偵事務所へ赴いたのだった。

「彼がもらっていたUSBメモリとは・・・・・・これと同じ形でしたか?」

 翔太郎と弥生のようすを観察していた青年・フィリップが、手に持った写真を見せた。

「いえ・・・・・・遠目からだったので詳しくは解りませんが、もうちょっと角張って機械的だったような・・・・・・これは?」

 弥生の疑問にフィリップはそのまま答える。

「これはガイアメモリ。人間を怪物――ドーパントにしてしまう成体ユニットです。失礼ですが、息子さんはなにか世間に不満を持っていたことなど・・・・・・おありで?」

「世間に、不満・・・・・・そうですね、槍は『何で犯罪者がこんなに蔓延っていられるのか、不思議でならない』。よくそう言っていました」

 フィリップが唸る。

「そうすると、やはりそこに付け入られて・・・・・・ということかな」

「だろうな・・・・・・わかりました、弥生さん。槍君は俺達が絶対に探し出して保護します」

 その後いくつかの細かい依頼契約手続きなどを終え、翔太郎は薄手のコートを羽織って調査に出る用意をしていた。そこに、フィリップがむずかしい顔をしてこう言った。

「翔太郎、あまり考えたくはないんだが・・・・・・」

「ん?」

「槍君が受け取ったというガイアメモリのような物が本当にガイアメモリなのだとして、なおかつ弥生さんの言っていたことが本当だとしたら・・・・・・彼が受け取ったのは、僕達の持っているT1ガイアメモリか、NEVERの使ったT2ガイアメモリのようなタイプなんじゃないか」

「おいおいフィリップ、そんなんだったらとっくに誰かが使ってるだろーよ。じゃ、行ってくるぜ」

 翔太郎は、少し笑いながら事務所を出て行った。

 

 

〈で、特に収穫もなく帰ろうとしたところで全く関係のないドーパントと接触した、と〉

「あぁ・・・・・・」

 風都内で1、2を争う巨大駐車場の裏手で、翔太郎はここにいないフィリップと会話をしていた。その腰には妙なベルトが着けられ、右手には黒い外装をしたUSBメモリのような物――ガイアメモリが握られていた。そのディスプレイ部分には、意匠化された"J"が書かれていた。翔太郎が、メモリのボタンを押すと、スピーカーから《ジョーカー!》と電子音声が流れる。

「行くぜ、フィリップ!」

〈あぁ、翔太郎!〉

 翔太郎が右腕を構え、フィリップと同時に叫ぶ。

「変身!」〈変身!)

 すると、ベルトの左右にあるスロットの右側に、意匠化された"C"が書かれた緑のメモリが、どこからともなく設置される。

 翔太郎はそのメモリを最後まで押し込むと、次に自分のメモリを左側にセットし、左右のスロットを同時に開いた。

《サイクロン! ジョーカー!》

 それぞれのメモリから電子音声が流れ、翔太郎の体が風に包まれる。そしてそこから現れた姿に、相対していたドーパントが驚きの声を上げる。

「か、仮面ライダー!?」

 その問に、翔太郎とフィリップが答える。

「そう」

「僕達は、2人で1人の」

「「仮面ライダーだ!」」

 そして2人は、いや、仮面ライダー・Wは、ドーパントに言い放った。2人にとって大きな意味を持ち、数々の罪人に言い放ったこのセリフを。

「「さぁ、お前の罪を数えろ!」」

 仮面ライダーW。

 いつごろからか、風都で蔓延るドーパント絡みの事件を密かに解決へと導いていた、風都のヒーローである。

 左右半身の色が違うことが特徴で、バイクに乗ってマフラーをたなびかせるさまから、風都の住人には「仮面ライダー」=(「仮面を付けたライダー」)の愛称で呼ばれている。

 その正体は私立探偵・左 翔太郎とその相棒・フィリップ。彼らは、今日も風都を脅かすドーパントたちの罪を数えさせる。

「ハァッ!」

 Wの右足から繰り出される回し蹴りが、相手のドーパントに直撃し、ドーパントは駐車場の中へと吹っ飛ばされる。

 今のWは"サイクロンジョーカー"と呼ばれる基本形態で、"サイクロンメモリ"の"風の右半身"による、周囲の気圧を操作することによって発生する風の力、そして"ジョーカーメモリ"の"切り札の左半身"の、高い格闘戦能力から生み出される徒手格闘をメインの戦闘スタイルとする。

「おらっ!」

 Wが飛び掛かって右ストレートをあびせるが、今度はいともたやすく避けられてしまう。

 そのまま数度攻撃を繰り出すも、相手は簡単に避けてしまう。

「翔太郎、相手のメモリは環境利用闘法に特化していて素早い。ここはルナメタルだ」

「おし、分かった!」

 Wが腰のベルト――ガイアメモリ制御用ベルト型フィルター・ダブルドライバーのスロットを収納し、左右のメモリを引き抜くと、今度は右側に黄色、左側に白のメモリを挿して展開した。

《ルナ! メタル!》

 電子音声が鳴ると同時に、Wの体の中央を走るライン・セントラルパーテーションから体の外側に向かって、Wの色が変わってゆく。

 これはルナメタルと呼ばれるWの姿で、"ルナメモリ"の"幻想の右半身"と、"メタルメモリ"の"闘士の左半身"が組み合わさることで出来るものだ。

 ジョーカーとは違い、メタルサイドには身の丈を超える棒術武器・"メタルシャフト"が生成され、全体的に格闘戦能力・打撃力・防御力が上がる。また、ルナサイドの幻想の力によってメタルシャフトはその形状を自在に変えることができるようになり、たとえば今回のように素早い相手を、鞭状に変化したメタルシャフトを使って動きを封じる、などの戦法が使えるようになる。

「くらえっ!」

 だが、今回のドーパントは予想を上回るスピードでメタルシャフトを軽々と避けてみせる。

「仕方ない、ここは一度サイクロントリガーで相手の隙を!」

 フィリップが提案し、翔太郎がメタルシャフトを仕舞うと同時に、再びメモリを変える。

《サイクロン! トリガー!》

 W サイクロントリガー。"風の右半身"と、青い"トリガーメモリ"の"銃撃手の左半身"が組み合わさった形態で、専用エネルギー銃・"トリガーマグナム"が生成される。

 また、この形態ではサイクロンサイドの風の力によって、トリガーマグナムの弾丸が広範囲に拡散・高速連射され、命中率こそ悪いものの牽制や隙を作る場合にはピッタリなのだ。

 Wはすぐさまトリガーマグナムを手に取り、ドーパントへと勢射する。

 素早く逃げ回るドーパントだが、今度は少しずつ、確実に着弾している。

 しかしそこでドーパントは驚異的なスピードで逃げようとする。

「フィリップ!」

「来たよ!」

 Wが右手の形態電話型端末・スタッグフォンで呼び出したのは、Wが使う高性能バイク・ハードボイルダーだった。

 Wは急いでハードボイルダーに飛び乗ると、一気に加速してドーパントを追う。

 そしてドーパントが射程圏内に入ると、再び嵐のように風の弾丸をお見舞いする。

「もうちょっと!」

「・・・ン・・・・・・?」

「どうしたフィリップ!」

「翔太郎、ストップ! 誰かいる!」

「あん?」

 翔太郎が駐車場の出口の方に人影を見つけると、Wは急ブレーキを掛けた。

 ドーパントも人影に気付いたらしく、足を止める。

 人影は、見た目が高校生か大学生くらいで、左手に何かを握っていた。だが、逆光でその人物の姿はよく見えない。

 と、翔太郎がその人影に逃げるよう言おうとしたその時、人影が突然その左腕を前に突きだした。そして、その場に電子音声が鳴り響く。

《ユニコーン!》

「!?」

 Wだけではなく、ドーパントも驚く。

 人影はそのまま何かを腰に持っていき、そのまま右側に弾くような動作を取った。そしてその途端、

《ユニコーン!》

 再び電子音声が鳴り響き、竜巻のような風が人影を包み込んだかと思うと、その中から、輪郭の全く異なる人影が現れた。

 同時に、太陽が雲に隠れたのか、外の光が弱くなっていき、ついにその人影の姿が見えた。

 翔太郎はその姿に驚きを隠せず、フィリップはなんとか声を絞り出した。

「仮面・・・ライダー・・・・・・?」

 そこに立っていたのは、青緑の体をし、一本の角を持った、まさに"ユニコーン"とでも言うべき姿の仮面ライダーだった。

 

to be continue......


 
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