妖精
?「コイツ…外来人?」
?「多分、そうじゃないかな…」
頭上で誰かの声が聞こえる。
目を開けると、2人の女の子がこちらをのぞき込んでいた。
?「あ、起きた」
青い髪の、活発そうな女の子と
?「大丈夫ですか?」
緑の髪の、大人しそうな女の子だ。
俺「う、大丈…ぐはっ」
体を起こしながら反射的に大丈夫と言おうとして、右足が痛いのに気付いた。
うわ、何かすっげー腫れてる。
俺「何があったんだ…?」
青「それはこっちが聞きたいよ!せっかくお昼寝してたのに」
青い髪の子が何やら半泣きで言っている。
緑「私が来た時には、二人ともここで倒れていた?んです」
緑の髪の子の話に?が浮かぶ。
俺「…何故そこで疑問系なんだ?」
?「あ、あはは…」
何か緑の髪の子が若干引いているが、気にしない事にした。
ふと青い髪の子をよく見ると、後頭部、リボンの横辺りにたんこぶが出来ていた。
ポク、ポク、ポク……チーン!
成る程、泣いてたのはコレか。
って事は…俺はこの子の頭を蹴り飛ばしたんだな。(で、俺はカッ飛んだんだな)
俺「いや悪い、ついやっちゃったんだ☆許せ!」
青「ふざ…うん。許す」
?
冗談のつもりで言ったんだが、許されてしまった…まぁいいか。
謝罪(?)も済んで、周囲の異変に気付く。
俺「それで…ここ、どこ?」
走っていた街並みは面影すらない。
周りにあるのは木々と湖、そして霧だけだ。
緑「霧の湖って言われてます」
俺「霧の湖?何か聞いたこ…」
緑の髪の子を見て、本当に今更に気付く。
緑の髪にサイドテールに羽根?
よく見ると青い髪の子にも羽根…あれ?
そういやこの2人、何か見た事が…。
俺「え、えーと、名前訊いても、いいかな?」
何か嫌な予感がしたが、訊いてみた。
青「あたい?チルノ」
緑「大妖精って呼ばれてます」
俺「ΩΩΩ<な、何だってぇぇっ!!!???」
いろんな意味で大当たりだった。
俺「幻想郷…だと…?」
俺は知らないうちに、とんでもない事に巻き込まれてしまったみたいだ…。
この世界に来るには、何かしらの限られた方法で来るしかない。
俺「(カラオケ屋の入口に何かあったのか?)」
いや、あの場所に何か出来てたら、鬼かく…じゃなかった神隠しが頻繁に起こるハズだ。
となると、考えられるのは…あちらとこちらの世界を行き来出来るあの妖怪。
そこで、ここに来る前にすれ違った女性の事を思い出した。
あの時見た、日傘の女性。
あれが…スキマ妖怪・八雲 紫。
だが、それでも疑問が残る。
俺「(犯人は彼女だとして何故、俺がスキマ送りに?)」
俺自身、幻想郷に行きたいとかは…めっちゃあったけど、そんなモンで来れる訳ないだろうし。
ん?そういえば、あの時…
『…やっと見つけた…』
確かに紫さんはそう言っていた。
俺「(見つけた?俺を?)」
至って普通の生活を送ってきたハズだが…。
何だ?無意識のうちに突然能力でも発現したのか?
そうなると、自分の能力が気になりだした。
俺「(一体どんな能力を?変形するとかか?)」
単独変形とかはしょぼいよな。
?「…ねぇ、ねぇってば!」
俺「(気持ちよく毛が抜ける能力…変態じゃねぇか)」
そもそも、そんな能力よりもっとかっちょいい能力が…あれ?
周囲がなにやら涼しくなってる?
いや、むしろ寒いくらい…。
?「アイシクルフォール!」
俺「うっひょい!?」
飛んできた氷の塊を驚きながらかわす。
見ると、目の前にチルノがいた。
チルノ「一人でブツブツ何言ってるのさ!」
考えてて呼びかけに気付かなかったみたいだ。
俺「あ、悪い悪い…何ぞ?」
チルノ「アンタ、名前は?」
俺「名乗る程の者じゃないぜ!」
カッコよく決まっ
チルノ「…もう一発撃つよ?」
俺「すいません嘘です。見(けん)というチンケな奴でございます」
らなかった。
平伏して名乗る。
だって…弾幕怖いんだもん。
大妖精「けん、さんですか」
チルノ「ケン…へぇ犬なんだ?」
見「漢字が違うわ⑨」
チルノ「……」
見「ちょっ…パーフェクトフリーズは止めてえぇ!?」
数分後…。
見「こ、こういう字です…」
震える指先で名前を書く。
弾幕、怖い……。
チルノ「ふぅん「貝」ね…アンタはヘタレみたいね」
うわぁ、⑨にヘタレって言われた!
⑨のクセにっ!
チルノ「何か文句あるの?」
見「そそそんな訳ないじゃないですか…やだなぁチルノさんったら」
憎い…つくづく小者な自分が憎いっ!!
チルノ「まぁいいわ。それより、アンタ外来人よね?」
見「そうなりますね」
何故か、敬語チックになってるが気にしたら負けだと自分に言い聞かせる。
大妖精「チルノちゃん、この人はイタズラとかしないと思うよ」
大妖精(大ちゃんでいいか)のセリフで大体予想がついた。
そういやコイツ、皆からいじられっぱなしだっけ。
チルノ「あんなのイタズラじゃないよっ!殴り飛ばされたり、溶かされたり…」
自分で言って思い出したのか、泣きそうな顔になっている。
何か…苦労してるんだな。
チルノ「でも、コイツはチキンみたいだから反逆なんかしなさそうだし」
同情した俺が⑨だった。
見「くっそ、能力の詳細が分かったらコテンパンに…」
チルノ「何か言った?」
見「いえいえ、チルノさん最強っスねと」
あぁ…小者だなぁ、俺。
それはさておき、ここにいても犯人(紫さん)は現れないだろう。
取りあえず、いそうな場所に移動するか。
見「それで…ここは霧の湖だったな?俺は犯人を探しに行こうと思う…どっちに行ったらいいよ?」
チルノ「犯人って…スキマ妖怪?」
見「そう。あの人は神出鬼没らしいですから…まずは、人里の方でしょうか?」
安全面と情報収集的にも…あと出会いフラグ的にも。
チルノ「人里?こっちだよ」
大ちゃん「人里だったら、こっちですよ」
見「………どっち?」
教えてくれるのはありがたいが、二人して正反対を指すとかどうしろと?
いや…チルノの方を見ると何か館が見えるんですが。
見「チルノさん、ありゃ何ですか?」
チ「え?紅魔館じゃない?」
「何を今更…」といった顔をする。
やっぱ、⑨は⑨なんだな。
見「…えーっと、じゃあこっちね」
大ちゃんの指した方を見る。
道は…獣道っぽいが何とかなるだろ。
取りあえず、日が暮れる前に行くか。
見「それじゃ、二人ともありがとな」
チルノ「また暇だったら遊んであげるよ!」
大ちゃん「気を付けて下さいね」
チルノと大ちゃんに見送られ(チルノの言葉はスルーし)ながら、俺は霧の湖を後にした。
妖精 了
Tweet |
|
|
0
|
0
|
追加するフォルダを選択
毎度、潮です。
このお話は、某所でやってる幻想入り「幻想郷奔走記」の本編二話部分に当たります。
この頃は台本作成ペース割と速かったんだけどなぁ。