No.296002

幻想郷奔走記(零話)

さん

毎度、潮です。
このお話は、某所でやってる幻想入り「幻想郷奔走記」の冒頭部分に当たります。
これが後々の本編に引っ掛かってきたりしますが、それ程重要ではない…ハズです。(現時点では)

2011-09-08 22:35:17 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:290   閲覧ユーザー数:286

 

それは、何かの物語を見ているようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

涯ての夢

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最初に見たのは、夕焼けの草原と女性の姿だった。

 

女性「私と一緒に来なさい」

 

金色の髪に着物という特異な姿の女性が、前方に手を差しのべる。

 

女性「こちらなら、あなたを…」

 

?「ありがとう」

 

女性の言葉を遮るように、少し離れた場所にいた男…青年が言った。

 

青年「でも僕は、ここが好きなんです…だから、ここにいます」

 

困ったような笑顔でやんわりと断る青年。

 

それを聞いた女性は、少し悲しい顔をした。

 

女性「あなたはもう、『………』から外れているのに?」

 

青年「分かっています。だからこそ僕は、この場所を…………、どちらも守りたいんです」

 

ところどころ聞き取れなかったが、青年はにこやかに笑っていた。

それが何を意味しているのかは、分からなかったが。

 

 

 

不意に、見ている映像が切り替わった。

古い造りの屋敷で、何人もの男達が話し合いをしている。

 

男1「あいつは…ではない」

 

男2「しかし、この村を…」

 

男3「奴らと手を組んでいるかもしれん」

 

男4「追い払いはしたが、……したとは言っとらんしな」

 

口々に誰かの事を言っているようだ。

やがて、奥の方で黙っていた男が口を開いた。

 

老人「あれは何度も村を守ってくれた…しかし、あれが原因で奴らが

ここを狙っているのかもしれん…儂が話を付けてこよう」

 

 

 

また、映像が切り替わった。

闇に浮かぶ月と、松明のようなものの明かり…夜のようだ。

傷と血にまみれた青年に、先程の男達が怒鳴っていた。

男達の後ろには、結構な数の人がいる。

 

男1「やはりお前のせいだ!」

 

男2「お前に引き寄せられて奴らが来るんだ」

 

男3「お前が…お前が!!」

 

男4「出ていけ!!」

 

背後の人々からも非難・罵声を浴びせられ、青年は俯いたままそれを受けている。

青年の背後に突然、先程の女性が現れた。

 

女性「貴様達は、何様のつもりだ……!!」

 

怒気を孕んだ低い声。

それと共に、女性の背後の空間が歪む…!

しかし、

 

青年「止めて下さい」

 

青年の言葉で、それが消えた。

 

女性「なっ……」

 

女性の驚く顔。

『化け物』と恐怖し、悲鳴を上げる人々。

 

青年「……」

 

青年は無言のまま、その場を去った。

 

 

 

景色が変わった。

月明かりが差し込む森の中だろうか。

大木の根本に座り込む青年と、それを見下ろす女性。

青年の身体や顔に付いた血や傷から、先程の続きなのだと分かった。

 

女性「……」

 

青年「はは……やはり、難しいですね」

 

女性「本当に馬鹿…とんだ甘ちゃんね」

 

ぎこちなく笑う青年に、女性が言った。

 

女性「……の……この世界では、…………を削ってしまう…前に言ったわね?」

 

青年「えぇ、聞きました」

 

女性「何故あの村を捨てなかったの?そうすれば……を使うこともなかったのに」

 

青年「………を亡くした僕を、皆で育ててくれた村だったからですよ」

 

そう言った青年は、昔を思い出すような遠い目をしていた。

 

青年「だから、僕も村の人達の力になりたかった…役に立ちたかったんです」

 

女性「…………そう」

 

青年の言葉に何を思ったかは分からないが、女性は短く答えた。

 

青年「あ、そうだ…」

 

樹にもたれかかり、今にも目を閉じそうになっていた青年が、思い出したように呟いた。

 

青年「…僕のお願い、聞いてくれますか?」

 

女性「…私に出来ることならね」

 

青年「……もしこの先、僕のような……を持って困っている者がいたら、

助けて………下さい」

 

女性「…覚えていたらね」

 

女性の返事を了解と受け取ったのか、青年はにこりと笑った。

 

青年「ありがとう…もうひとつ、いいですか?」

 

女性「…何?」

 

青年「僕が……だら、人の………場所に、………下さい」

 

途切れ途切れで聞き取れなかったが、青年が何かを言った。

 

女性「気付いていたのね」

 

青年「自分の……ですから」

 

女性「そう…その願い、確かに受けたわ」

 

それを聞いた青年は、満足そうに頷き、

 

青年「ありがとう…」

 

その目を閉じた。

 

女性「……異端の……を持ったが故に、…に拒絶され、……に恐れられ、

……からも捨てられた…」

 

倒れたままの青年に近付き、その手を取る女性。

 

女性「それでも…総てを赦した、心優しい私の友人……」

 

二人の周りの空間が歪んだ。

 

女性「行きましょう、全てを赦す……へ…」

 

 

 

 

 

目が覚めると、自分の部屋だった。

 

俺「…変な夢だったな」

 

ノソリと体を起こし、考える。

 

見た事のない風景

今よりずっと昔の服を着た人々

それと…何故か見た事のある女性

 

何の夢で、これが何を意味しているのか分からなかった。

 

俺「ん~……ま、ただの夢か」

 

何か引っかかる気がしたが、気にしないことにした。

そういや、何で俺寝てたんだっけ…あ、カラオケの集合時間まで時間があったから…。

時計を見た。

 

俺「げ」

 

集合時間15分前!?

やっべ遅刻じゃん!!

 

俺「うわあぁっ!!」

 

自室から飛び出し、俺は約束の場所へと走り出した。

 

 

 

 

 

涯ての夢 了

 

 
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