私達姉妹はいつも仲良しだった。だから、こいしが目をひきちぎり、晴々とした顔をしていた時も仲良しだったのだと思う。
「おねえちゃん」
びくり、と自分の身体がゆれた。いつの間にかまどろんでいたらしい。
私は夢の続きを見ているような気分で、思わずこいしの顔を確認してしまった。なんだか不安そうな顔をしていたので、頭をなでてあげる。細くてたっぷりした髪の毛がここちよい。こいしは気持ち良さそうに目を細めてだきついてきた。こいしの頭で視界がいっぱいになり、深い安心感が私を包んだ。
彼女の髪はすっかり白くなってしまった。昔は私と同じ紫色をしていたなんて、誰も想像できないだろう。あの頃の私がこいしの髪はきれいね、と想うと、一緒でしょ、と彼女は笑ったものだ。
でも、 色が変わってしまった彼女の髪も、やはり綺麗だと想う。頭をなでると、こいしはくすぐったいのか、おかしそうに笑った。
「どうしたの、こいし」
私は妹の頭をなでながら聞いた。
「うん。ちょっと昔の夢をみちゃって」
「あらあら。私もよ」
それを聞いたこいしは顔を上げてこちらをみる。
「それって…わたしが」
「そう、それは…こいしが」
「「目を閉じた時のこと」」
私はこいしを、ぎゅっとだきしめた。
こいしの私を抱き締める力も、強くなる。
「ねえ、こいし」
「うん」
「私、うれしいのよ。私とこいしが同じ夢を見たことが」
「どうして?」
「こいしが目を閉じて、私はこいしとの繋がりが切れちゃったような気がしてたの。でも、そうじゃなかったから」
私はこいしから身を放し、まっすぐにその目を見つめた。こいしも同じように、私の目を見てくれている。と、思う。
「昔のことはもうどうしようもないけど、今の私はこいしと一緒にいるわ。そして、こいしと繋がってるの。私にはわかる」
何の根拠もないけれど、私はそう信じることにした。きっと何もかも変わってしまったあの時にだって、いちばん大切なものは変わっていなかったのだ、ということにした。
こいしは、無言で少しだけ私をみつめて、そして。
「ふふっ」
突然、おかしそうに笑った。私は思わずぽかんとした顔をしてしまった。なぜこいしが笑ったのかがわからない。知らず知らずのうちに、面白いことを言ってしまったのだろうか。
でも、こいしが本当にくすくすとおかしそうに笑うので、何だか私も楽しくなってきてしまった。
私達は、しばらくの間、二人で笑い合った。
ねえ、おねえちゃん。
こいしが、私に声を、いや、かけていない、えっ?
「そんなの、あたりまえじゃない。私はずっと、変わっていたつもりなんて、なかったよ」
こいしは、にっこりと私に、そう言った。
おわり
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仲が良い姉妹はいいですねーみたいな感じですいません