No.294189

対魔征伐係.38「廃工場捜索②」

シンヤさん

1P目に本文、2P目にその話に出てきた、関するものの設定紹介、小話など。あれば読者からの質問の答えなんかも。質問をする場合はお気軽に。回答は次回の2P目になります。質問内容は3サイズとか趣味とか好きな食べ物とか、設定に記載されていないもの、或いは紹介自体されていないものなど何でもOKです。但し、有耶無耶にしたり、今はネタバレ的な意味で回答できないよ!となる場合もあることをご了承ください。

2011-09-06 01:19:29 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2440   閲覧ユーザー数:411

「待ってて、二人とも!」

 

眼下からの恵理佳の声で思考を中断させる真司。

 

「恵理佳、待て!」

「ど、どうしたの・・・?」

 

こちらに走り寄ろうとしていた恵理佳を制止する。

 

「・・・コイツがわざわざ餌を用意していたこと、恵理佳が無事なこと・・・

こいつの射程がどれほどかは分からないが、こっちに来れば恐らく俺らの二の舞だ」

「で、でも・・・それじゃあ・・・」

 

不安そうな恵理佳にひとつの手段を講じる。

 

「・・・結界で俺と雪菜を囲ってこの蔦を切断してくれ」

「結界術・・・子供の頃に基本的なことしか教わっていないし、それに実際にやったことなんて・・・」

 

恵理佳が幼少の頃に真司が代わりに退魔師になることになったので、それ以来修行らしいことは何一つしていない恵理佳。

実戦で使える知識など大昔に教わった基礎中の基礎程度だった。

 

「恵理佳ぁ~!早く助けてぇ~!」

 

いい加減耐えかねた雪菜が助けを求める。

真司も顔にこそ出さなかったが内心はかなり不味いものを感じている。

 

「基礎の印は覚えているか?」

「・・・うん、基礎なら・・・」

 

覚悟を決めたのか、顔つきが変わった恵理佳を見て、初めての実戦投入を試みることにした。

 

「後は子供の頃にじいさんから教わったことを思い出して、集中するんだ。出来ると信じてな」

「・・・やってみる」

 

静かに頷くと、ゆっくりと両手を前に差し出す。

 

 

(・・・他にも手段は講じるべきか・・・)

眼下では恵理佳がぎこちない手つきでゆっくりと印を結んでいるが、郁はおろか、真司よりも数段遅い。

遅いと言うよりも、たどたどしかった。

初めて結界を張るのがこんな窮地の状態では仕方が無いことなのだが。

他にも何か手段は無いかと軋む身体を無視して考える。

身体を締め上げる蔦の力は一気に上がりこそしないものの、確実に上がっている。

締め上げられ始めて数分。

(・・・相変わらず抵抗する力も出ねぇし・・・後数分か・・・)

力が入れば締め付けにも抵抗できたのだが、脱力状態の現状ではやられ放題である。

このまま行けば数分後には血流のストップで身体を壊すか、身体の部位をへし折られるかだ。

どっちにしても詰みになる。

眼下の恵理佳はぎこちない手つきだが、真剣な表情でいよいよ印も終盤へと向かっていた。

だが・・・

 

 

「・・・?どうした?」

 

恵理佳は真剣な面持ちのまま、手がピタリと止まってしまう。

「・・・」

 

完全に集中しているのか、声が聞こえていないようだ。

遂には途中まで進めていた印を中断してしまった。

こうなるとまた初めからである。

 

(・・・ぐぁ・・・や、やばいな・・・)

 

先ほどの手つきでは正直危険な感じだ。

そう思った矢先・・・

 

「二人とも、準備しておいて」

 

恵理佳がそう呟く。

 

「準備・・・?」

 

真司と雪菜は唐突に言われた言葉に理解が出来なかった。

そして恵理佳を見返すと・・・

 

「・・・マジか」

 

先ほどまでの手つきが嘘のように慣れた手つきで印を結んで行く恵理佳の姿があった。

その速さは郁に匹敵するほどの素早さだ。

そして・・・

 

「・・・いくよ、二人とも!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブチィッ

 

 

 

 

 

「おわっ」「きゃっ」

 

地面から生えていた蔦は恵理佳の張った結界により切断された。

二人は自由落下で結界の下部へと尻餅をつく。

 

「二人とも、大丈夫?」

「・・・あんまり大丈夫じゃないがな・・・」

「うぁ~・・・お風呂入りたいぃぃ・・・」

 

液体塗れの二人に恵理佳が走りよってきた。

 

「近づくと・・・って・・・」

近づいてきてはまた先ほどの二の舞・・・そう思った矢先、周りを見て驚く。

「恵理佳、この結界・・・何時まで張っているんだ・・・?」

「また下から捕まりそうだったし、多分だけど数分は維持出来そう」

「・・・そう、か・・・」

「・・・?」

 

三人の周りには四方が十メートル程度の結界が淡い光を放って張られていた。

これほどの大きさの結界を維持することは今の真司でも頑張って数分だろう。

それを初めて術を行使した恵理佳が出来てしまうのだ。

驚くのも無理はなかった。

 

(・・・これが、本家の血脈か・・・)

 

改めて高嶺の名を思い知らされる真司だった。


 
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