No.293663

次回まどマギイベント用模索品みたいもの

日宮理李さん

魔法少女まどか☆マギカオンリーイベント用の試作思考ものです。
とらのあな(http://www.toranoana.jp/mailorder/article/04/0020/03/36/040020033640.html

2011-09-05 12:43:40 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:552   閲覧ユーザー数:546

魔女の気配を感じ取った魔法少女らが、魔女と戦っていた。

「はぁ!」

 何度も、爆発と何かのちぎれる音がその場に木霊する。それと共に少女たちの声が駆け巡る。最初は激しかった音がしたが、徐々にその音が消えていく。

 そして、その結果は魔法少女の勝利で終わりを告げる。それは魔女の敗北を意味する。

 その証として、地面へとグリフシードが音もなく落下した。

「ふぅ……これで大丈夫ですよね?」

 少女が、グリフシードを拾うと少女と共に戦ったそのものに振り返る。それ以外には誰もいない。

「そうね、“大丈夫”じゃないかしらね」

 そのものが答えると笑う。その笑い顔には邪気が一転もなく、きれいな笑い顔であった。その評定に少女は安堵した。

「……どうかしたんですか?」

 だけど、ただ一点だけそのものに不審を感じたのか、少女が尋ねた。

「どうしてそんなことをいうのかしら?」

 そのものは表情を変えない。

「だって、だったらなんで“まだそのマスケットを構えている”んですか?」

 少女の言葉通り、そのものは左手でマスケットを支え右手でいつでもトリガーを引けるようにしていた。

「それはね……!」

 そのものの言葉が甲高いパンという音でかき消される。

「えっ!?」

 少女にはそれがなぜ起きたのかわからないという表情をした。

「ふふふ」

 その姿をみて、そのものから笑みがこぼれる。

「どう……して?」

 少女が苦しそうに片膝をつくとそうつぶやく。

 少女の左肩から少女の服を赤く染める血が流れていた。左肩を抑える右手の指の隙間から赤く染まっていて、血の流れを止めることが出来ていなかった。

 そのものの手に握られたマスケットからは、白煙が空へと上がる。

「どうしてなんですか、“  ”!」

 少女がそのものの名前を呼ぶ。

「……」

 少女の問いにそのものは答えない。

「ふふ」

 そのものはその場で一回転をすると、さらにその場に大量のマスケットを召喚する。その数は30を軽く超えていた。

 そのものは照準を少女に合わせようとしゃがみ込むとサイトを覗く。

 マスケット銃の音が響き渡ると、少女の右足にはその痕跡があらわれた。そこから、赤い血が勢い良く飛び散る。

「や、やめてください! どうして、どうしてこんなことをするんですか! 教えてくれたのはあなたなのに! あなたは私たちの先輩のはずなのに!」

 少女が痛みに耐えかねてもう片方の膝もつく。そして、少しでもマスケットの射程距離から離れようと、撃たれた足を引きずりながら後退していく。傷口から流れる血は少しずつ弱くなっていくが、傷口を完全に止めることは少女の残る魔力ではすることができなかった。移動の影響で少女の白かった服が赤く染まっていく。それは服の装飾であったかのように、赤と白の縞模様が出来上がる。

「どこいくの?」

 そのものがその場を軸にするとすばやくマスケットを拾っては撃ち、拾っては撃ちと5回の銃声が鳴り響く。

「くぅ……!」

5回の銃声は少女を的から外すことはなかった。両手首、お腹、右肩、右足。

そこから、血が少女を赤く染め上げる。さらなる追撃を受けた少女は口を食いしばりながら、足に鞭をうち動かす。

後ろへ、ただまっすぐ。少しずつ確実に距離をとろうとする。

「……」

 やはりそのものは答えない。

 答えようとしない。ただ、狙いをつける。サイトを覗く。

 的は外さない。

本来狙うはずの魔女はそこにいない。

その的は、魔女ではなく“少女本体”。

 覗いてしまえば、後はトリガーを引くという作業を残すのみ。その作業はサイトを覗いて的に狙いをつけるよりも数倍早い動作で行える。

「はぁ……はぁ……痛みが止まらない……、魔女との戦闘に力を使いすぎたから……? それともあの人の能力!?」

 少女が動く。それから逃げるように。少女が発する声には必死さしかなく、余裕は感じられない。

 ――少女は知っていた。

例え、後ろへ後退したとしてもそのものの射程外へいくのはこの足では無理だと。それに少女と違って、そのものの両手足とも目立った負傷はどこにも見当たらない。だから、逃げたとしても追いついてしまう。

だけど、少女はそうするしかなかった。目の前の恐怖から逃げるために足を動かす。

「……はっ!」

 そのものが声を発すると少女にむけて胸から何かを飛ばした。

 それは避けられることなく少女へと辿り着く。

 まるで最初からそこにあったかのように。

 

 ――黄色いリボン。

 

 黄色いリボンが少女の左足に取り付き咲いた。

「えっ!?」

 そこからのことは一瞬であった。

 少女の左足に咲いたリボンからヒモが一斉に少女の身動きを封じるために動く。

 それは植物の根のように少女の身体を絡めとる。

「こ、これは、リボン!? と、とれない」

 少女は、身体に絡まるリボンを解こうとするができなかった。動けば動くほどよりそれは強くなっていく印象を少女は感じて焦り始めた。

 それは、少女がこのあとに起こることを知っていたからだ。

 ――動けない標的がどうなるか。

 射的の的がなぜ動かないのか……、それは撃ち落とされるためにそこに置かれているからだ。

 ならば、魔法少女が魔女を封じ込めるために使う魔法はなんのためにあるのだろうか。

 ――そう、それは魔女を倒すため。

 敵を倒すために、動きを封じるのだ。

 つまり、動きを封じられた少女がまつ運命を少女は必死に回避しようと試みていた。

「くっ……!?」

 右手、右足、左手、左足と完全にリボンが少女の動きを封じ身体に巻き付く。その頃には少女は地面に仰向けに倒れていた。

 そのもの頭を差し出すように。その姿は一見すると、芋虫のようにみえる。

「……あなたは、私のエサだったのよ。いえ、“私たちの”」

 そのものがそういうと、足元にさらに大量のマスケットを召喚する。打ち終えていたマスケットは既に魔法で消失済みであるようで、近くに落ちていなかった。

「ね、“シャルロッテ”ちゃん」

 そのものが、少女ではない何かにそう話す。その目線は、少女の後ろの方に向けられいた。

「……?」

少女がゆっくりと後ろを振り返ると、ピンク色の長い耳をもった人形のような形をした生き物がピタピタとかわいい音をたててこちらに歩いてくるのが見えた。口元には何か茶色い液体がよだれのようについている。

「えっ!?」

それは、魔女と呼ばれる存在だった。

少女たちが倒した魔女とはまた別の魔女。

「どうして、ここに魔女がいるの……!? 魔女は倒したはず! ま、まさかそんなことは……」

 少女がまわりを見渡す。まわりは先程と同じ魔女の結界の中であった。

 魔女。それは不安や猜疑心、過剰な怒りや憎しみといった禍の種を世界にもたらす存在。

 そして、魔法少女が倒すべき敵。

 少女は気づくべきだった。

 なぜ、魔女を倒したのに魔女の結界がなくらならないのかを。

「……!」

 シャルロッテと呼ばれた魔女は、口を開けると何かを話すかのように口元を動かす。

「……えっ!?」

 でも、それは少女には何を言っているのか聞き取れなかった。むしろ、何かの音が出るのか今の少女には判断する力さえ残っていなかった。

「そうね、“そうしましょ”」

 そのものには声が聞こえているのか、手に持っていたマスケットを少女へと向ける。

「ね、やめましょう? 私たち魔法少女は……ぅ!?」

 1発、2発、3発とそのものの足元に存在するマスケットが少女へ次々と放たれる。

 それと共に少女から声が痛覚を感じさせる声が発せられる。

「はぁ……はぁ……」

 発砲が終わった時、少女の足元には赤い貯まりが存在していた。

 血溜まり。

 それは、少女の身体からそこに流れ落ちる。黄色かったリボンの拘束ももう血で黒く濁っていた。

「あ、ぐっぅぅぅ!」

 少女の悲鳴が一瞬その場に響き渡ると、もう少女の声がそこで聞こえることはなかった。

「……ふぅ」

少女の身体が一定のリズムでビクンと痙攣を繰り返す。それをみたそのものは、少女をリボンで空中に上げると地面へと何度も叩きつける。

「はぁ!」

 そして、確かめるようにその動きを止める。

少女の痙攣が止まっていることを確認すると、

「ふふ、これで大丈夫」

 とつぶやき、少女だったものを地面へと下ろした。

「ね。……シャルロッテちゃん?」

 そのものがふりかえると、嬉しいのか一度ジャンプをしてシャルロッテと呼ばれた魔女が少女に向かって歩き出す。その歩く音は人とは違い何かビーズが落ちたかのような音をしていた。

「……ぁむ」

 ただ、むしゃむしゃと何かを噛み砕く音だけが響き渡る。

「……?」

 口元を赤く染めたそのものが何かを発見したのか、

「かかかか」

 と、声にならない声で笑った。

 

 ――チーズはまだ見つからない。

 

☓ ☓ ☓

 

「ぁむ……」

 杏子が公園の看板に寄りかかりながらポッキーを食べている。それとともにサクサクとスナック菓子特有の音が鳴る。子供がそれを覗いて、ほしそうな顔をちらつかせていたが、杏子が見つめると逃げてしまった。

「はぁ……」

 杏子が虚しく溜息をつく。隣には食べ終わったと思われる食べ物の残骸が積み重なっていた。 数にして、10箱。20cmものさし程度まで積まれていた。

 菓子袋を上下に揺らし、残りの食べ残しも左手に出すとぺろりと舐める。その顔はまだ足りないと嘆いていた。

とはいっても、杏子のもっていた食べ物はそれで全てで、ポケットを何回も調べても何も出てこなかった。

「はぁ……」

 お菓子もなくなったので、杏子は景色を見ることにした。

目に入るのは、学生。つまらなそうな目で学生の通行を見つめる。男子生徒、女子生徒数多くの人が歩いている。

それ自体に興味はまるでなかった。興味があるのはただひとつ。

――少女。

歩いてくる学生に探している少女はいなかった。

 時刻は、16時。

学生の幾人かは帰宅する時間帯であり、杏子はある人物を探していた。

 青髪のショートカット。少し生意気で、でも本当はすごく優しい娘。

そして、かつての自分を思い出させてくれる娘。だからこそ、杏子はさやかの現状を守ろうと思っていた。

“魔法少女”として。

「あ……!?」

 その娘を発見して、おもわず杏子から言葉が溢れる。その声は陽気で心の中がそのままあらわれているようであった。

 青髪の少女、さやかが坂上の通路奥から歩いてくる。友達は近くにおらず、一人で空を眺めるように公園と向かって歩いている。その顔はどこか退屈そうでたまにあくびをしていた。

 その坂道は、学校からさやかの家までの通行道でいつもさやかはこの坂道を使っていた。坂を登れば学校に続く道へとつながっている。他の生徒や先生等も使っているようで、道としてはかなりきちんと整備されていて小さいな子どもや、年寄りも歩くのに苦労しない。

 だからこそ、こういう中間地点のような公園も置かれていた。

「さーやか。学校終わったのか?」

 公園の看板に寄りかかっていた杏子がさやかの近くまで飛び跳ねる。その距離三メートルといったところか。さやか以外がみたらそれは驚く距離だ。

そのことを注意しても直そうとしないことをさやかは何度も経験していて知っていた。だからこそ、さやかは「はぁ」とため息をつくだけで何もコメントしない。

「……あ」

 はじめ、さやかがそれを見たときは驚いて腰を抜かしそうになったのを思い出してさやかは少し顔を赤くした。とはいっても、暁美ほむらというもう一人の超人のような人間を見ているせいか、さやかは杏子のそれを不思議に感じることはなかった。

「ん? どうかした?」

 そんなことを考えてることも知りもしない杏子が尋ねる。

「いや、終わったところだけど。あんたにさそれが何か関係あるの?」

 さやかが目を細めるとそういった。さやかには興味がなかった。さやかはいつも通り病院に行く予定があるだけで他に特に用事はなかった。

 帰る途中に、杏子がいようといまいとさやかの予定は変わらない。

「ん、いや関係ないけどさ」

「そうだ……、あんたさぁ、少女失踪事件って知ってる?」

 さやかが心配そうに杏子にそういう。それは学校で先生が話していたことだった。

 若い少女が、毎日1人ずついなくなっていること。見つかるのはその少女の血か、衣服のみ。警察は事件だと判断し、調査しているが何もつかめていない。

 各自注意するとのことで、親御宛の連絡紙ももらっていた。

「なにそれ、おもしろいのか?」

「はぁ……、あんたさ、もう少し世間を知っておきなよ。あたしがいえたことじゃないのはわかってるけどさ」

 頭を抑えたさやかがため息をつく。

「別にアタシは興味ないし、これからなんてどうでもいいさ。それに……」

 杏子がさやかを見つめる。

「そ、それに何よ?」

 その視線があまりに直線的に見つめてきたのでさやかが慌てて目をそらした。

「別になんでもねーよ。それよりもゲーセンいこーぜ、さやか」

 杏子がさやかの右手を引くと、走りだす。

「ちょ、ちょっと待って、引っ張んなくてもいくからさ!」

 それに合わせるかのようにさやかも走りだす。顔は言葉とは裏腹に笑っていた。

 

☓ ☓ ☓

 

「へぇ、相変わらず、うまいね。それもむかつくくらいに」

 杏子のゲームプレイを見た感想をさやかが皮肉を言いたそうな顔でそういう。

「さやかもそういわずにやればいいじゃない?」

 ゲームのステージが終わったのか杏子がさやかの方を振り返る。

「あたしは、そういうの得意じゃない。どっちかというと聞く専門かな」

「聞くって、恭介ってやつのヴァイオリンかい?」

「そ、それはもう聞けないんだよ。言っただろ、恭介は左手がもう……」

 さやかが下をうつむく。

「そうだったな。でも、聞くだけじゃつまらなくない?」

 新しいステージに入った杏子が踊りながらそういう。

「そんなことはないよ、あたしはそうやって恭介と一緒にさ……」

「恭介か……」

「ん、どうしたの? いつもはパーフェクトなのに」

 さやかが見つめるゲーム画面では、ミスが大量にかかれており、『NOT CLEAR』と表示されていた。

「いや、別になんでもないさ」

 杏子がつまらなそうな顔をする。

「あ、ごめん。もう時間だからいくね」

 さやかはかばんを肩にかけると

「じゃあね」

 そういって、一回手を振ると杏子の元を去っていった。

「恭介か……」

 

☓ ☓ ☓

 


 
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