「それで?あなたは今まで何してたの?」
膝の上の華琳が俺を見上げながら、至極真っ当な質問をする。
平原で14号と戦ってから、俺たちは奴にやられた兵士を埋葬した。
空を見ると雲ひとつ無かった青空は、もう赤く染まっていた。
「今から許昌に帰るのも億劫だし、危険だし…近くの村の視察もかねたいわ。だから今日はあの村に泊まりましょう」
と華琳の鶴の一声で、近所の村の城での宿泊が決定した。
今、この部屋の中には華琳、秋蘭、俺の3人のみだ。
親衛隊は扉の前に2人、他は休んだり、近くの見回りに行ったり、いろいろである。
……………ここまではいい。
だが、俺の膝に華琳が乗ってるのだろう?…わからない。
部屋に入るなり、「座りなさい」と言われてその通りにすると華琳は何も言わずに俺の膝の上に乗ってきた。
いや、以前も乗ってきたことはあるのだから、まぁ大体の察しはつくんだけど、でも3年分の重みというか、華琳も成長してるんだなと感じさせるような、前はなかったような色気g
「ちゃんと聞いてるのかしら?」
華琳が額に青筋を立てながら、俺に聞いてくる。少し怖い。
「あぁ、ごめんね。ちょっと3年分の感情がひとしおに来てね。きれいになったね、華琳」
「藪から棒に何言ってるの?3年たっても種馬ぶりは健在のようね。ほら、早く話しなさい。
今日私たちを襲撃した奴は何者なの?あなたのあの姿は何なの?」
華琳がため息をつきながら、矢継ぎ早に話を催促してくる。
秋蘭は真面目な顔をして…いや、口の端が少し上がってるような。ともかく、助け船を出してくれそうにもない。
今度は、俺がため息をつく番だった。
頭をかきながら、最初にベルトをした時のことを思い出しながら、
「そうだな…どこから話したものか…」
こうしておれは1年に及ぶ未確認生命体との死闘をかいつまんで2人に話した。
ダイジェスト版だったのは、どうせ皆集まったときにもう一度話させられるのを見越してである。
あの話は何回もするには長すぎるし、それに、気分がいいものではないからだ。
話は進んで俺がこの世界に戻ってきたところになる。
「あなたの話からすると、その『けいさつ』が『むせん』であなたに未確認生命体の場所を教えてたようだけど、今回はどうやってわかったの?」
「ああ、それはね、貂蝉が俺の乗り物にある仕掛けをしてくれたんだよ」
「仕掛け?」
秋蘭が首をかしげて訊ねてくる。
「うん。なんかあいつこの世界に関しては結構融通が利くらしくてね、未確認生命体を探してくれる機能を付けてくれたんだよ。とはいっても限界があるらしくてね、アマダム…これは奴らも俺も使ってる力の源みたいなものなんだけど、の力が発揮されないと見つけられないらしいんだ」
神龍みたいなやつである。
「なるほど。じゃあ奴らの根城を見つけて一気に強襲ってわけにはいかないのね」
「そうなるね。それに、仮に見つけて奇襲をかけても多分返り討ちにされると思うよ」
「あら?一緒に戦乱の世をかけた戦友をずいぶんと信頼してないのね」
華琳が少々むっとして言い返してくる。
俺は苦笑いしながらその理由を答える。
「一緒に戦ってきたから、だよ。呂布と戦ったことがあるだろ?強い奴らは力だけでも彼女より上だと思う。それに、相手に合わせて自分の闘い方を変えてくる奴もいるんだ」
「あの呂布よりもか!?」
秋蘭がおののいた顔を見せる。
「でも、あなたは一人で戦ってきたじゃない」
「違うよ。たくさんの人に助けられたから、闘ってこれたんだよ。ここでも皆で戦ってきただろ?
それに…俺は、もう金の力を使う事が出来ないんだ」
実は、元の世界にいたころ、ベルトがほぼ修復したことを椿さんに確認してもらって、変身することになった。
榎田さんが今後未確認生命体のような存在が出現したときに、俺がいなくても対処できるようにクウガをベースにして普通の人間が着る強化スーツを開発すると言っていた。
確か、プロジェクト名は…。クウガの研究が終わるころには別の人に引き継がれてたみたいだけど。
そのとき、それぞれの金に変身することになったんだけど、全然、バチバチって来なかったんだよね。
この世界に戻ってきたとき、貂蝉に聞いてみたんだけど…長かったから、ぜんっぜん覚えてない。
かろうじて覚えてることは、あの時のおれは未確認と戦ってるうちに、自分も強くなりたいって思ってたのがアマダムに影響を及ぼして金の力が身に付いたらしいんだよね。
で、0号との戦いでほとんど壊れたベルトはほとんど一から自己修復をしたらしいんだけど、もうその時のおれは気がぬけちゃってて。
うっかりアマダムがその力も修復しちゃった、とそういうことらしい。
「そう、残念だけどしょうがないわね。まぁ、いいわ。使えないなら使えないなりの闘い方をすればいいのよ。そうでしょ?」
久しぶりにみる華琳の王の顔だった。
「前向きに考えてくれて嬉しいよ」
「当然よ。王はいかなる事態が起こってもいいようにひとつの事象に対していくつもの解決案を用意しておくものだわ。…ところで、秋蘭。もう一刀の帰還を知らせる早馬は出してしまったのかしら?」
振られて、秋蘭が椅子をならしながら、立ち上がって答える。
「申し訳ありません、華琳様。なにぶん一刀戻ってきたことで頭が回らなく…すぐに手配します」
「いいわ。少しおもしろいことを思いついたの。一刀の力を測るためにもね」
「はぁ…?」
主人の命令に秋蘭は納得できない顔で、席に着いた。
「何をさせる気だ、華琳」
「いずれわかるわ。あなたは絶対反対するでしょうし。ところで秋蘭、少し森の方が騒がしい様ね」
「いや、そんなことは…そうですね、少し騒がしいような」
キョトンとした顔で華琳を見つめていた秋蘭は、やがて何かに得心がいったように答える。
「そうでしょう?見回りに行ってこようと思うのだけれど、秋蘭今日は疲れているのでしょう?」
膝の上の華琳はこちらに表情を見せない。
「はい、華琳様。失礼ながら今日はもう休みたいと思います。そうなると護衛が…おや、一刀。いいところにいるではないか。華琳様が見回りにお出になるそうだから、護衛をしてはもらえないだろうか」
「え、別にそんな気配は…」
「行くわよ、一刀」
華琳がピョンと俺の膝から飛び降りて、座っていた俺の脛に蹴りをかまし、身支度を整える。
「うぅ…何なんだよ、もう」
俺は赤くなっているであろう脛をさすりながら華琳に目を向ける。
だが、華琳はこちらに顔を向けずに
「それぐらい、察しなさいよ…鈍感なのは相変わらずなんだから…」
と言っている。こころなしか、若干耳が赤いような。
身支度してる俺の後ろで
「華琳様、こればっかりは貸しひとつですよ」
「えぇ…わかってるわ。許昌に戻ったら、一番最初に一刀と二人きりになれるよう取り計らうわ」
「恐れ入ります」
こんな会話が聞こえたような聞こえないような。
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真・恋姫無双の魏√で消えてしまった一刀君...
もし彼が仮面ライダークウガの世界に巻き込まれたら、全て終わったときどうするかという設定のお話です。
とはいってもクウガになるまでの一刀はあのフランチェスカとかの設定に準拠したいと思います。
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