No.292664

真・恋姫†無双 ~君思うとき、春の温もりの如し~ 合間15

lovegtrさん

連日投下です。間が開いていましたからねー。
今回は愛紗拠点です。

2011-09-04 02:56:43 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:7537   閲覧ユーザー数:4208

「う~む……どうしたものか……」

私は今とても困っている。いや悩んでいると言ったほうが良い。

「う~む……あれがあれで…いや、それでは……」

顎に手を当て城の廊下を考えながら自分の部屋へと戻る。

もう日も暮れ、辺りもしんと静まり返ったところに私のうめき声が聞こえたら、皆気味悪がるだろう。

いつもならそう思うところだが、いまの私にはそのような余裕が無い。

「いや、だからと言って急には……」

「どうした愛紗よ?変な声を出して」

名前を呼ばれはっと顔を上げると樹の枝に星が酒瓶を持って座っているのが見えた。

まわりを見ると廊下からだいぶそれていた。いつの間にか庭に出ていたらしい。

「何か悩み事か?」

星は酒をグイッと飲むと私の奇声について聞いてきた。

「む、別に何でも無い!」

私の悩みは人にあまり言うことのできないものである。

まして人をからかうことを生きがいにしている星に知られるのはまずい。

「なんだ、てっきり一刀殿のことかと思ったのだが…」

「なっ!?」

何故、孫権殿の名前が?しかもズバリ的中である。

いや、それよりも、

「星!何故お前が孫権殿の真名を!?」

「いやー、それはもちろん交換したからだが」

何っ!?いつの間に…

「い、一体何時…?」

「さすがに主である桃香様より先に交換するのはどうかと思ってな。

 桃香様達が交換した後、私も交換した。

 それに雛里も交換しているぞ」

「何ー!?」

あ、あの人見知りをする雛里まで真名を交換しているだと!?

「私と雛里は呉に今回の使者として向かったからな。

 こっちに帰ってくる道中、仲良くなったのだよ」

「そ、そうなのか…」

こいつの話を聞くとなんだか気が抜け、がっくりと肩の力が抜けてしまった。

「で?」

「で、とは?」

「だから何を悩んでいるのだ?」

こちらをじっと見つめながら星は聞いてきた

ほとんど星にはバレているようだし、こいつに相談するのも良いかもしれないな。

「実は…私も交換したいのだ…」

「?何を?」

「真名…をだ…」

「誰と?」

「その……孫権殿、と…」

樹から降りて私の隣に腰を降ろした星は私の話を聞くとポカンとした顔をしていた。

「…それだけか?」

「それだけとは何だ!」

確かにもう孫権殿と真名を交換した星にとっては大したことでは無いのだろうが…

「あ、相手は同盟国とはいえ、王だぞ?そうやすやすと真名を交換することが出来るか!」

「別にそう重く考え無くても良いと思うぞ?

 お前が真名を託すに足る人物だと思ったんだろ。なら、そんなもの関係ないだろう」

そうなのだが…

「愛紗は何故、真名を交換しようと思ったのだ?」

「…魏との戦いの時、私は孫権殿に助けてもらった。

 あの時、孫権殿がいなければ私は生きていなかっただろう。

 その礼を含めて、これから一緒にこの大陸を良くしてゆくのだ。当然であろう」

「本当にそれだけか?」

ニヤニヤしながら星が聞き返してきた。

「な、それ以外に何がある!本当にそれだけだ!」

星に茶々を入れられ少し顔が熱くなるのを感じる。本当に何だというのだ。

「…まあ良い。さっきの言ったが別に深く考えなくても良いと思うぞ。

 一刀殿ならきっと受け取ってくれるさ」

「そ、そうだろうか…そうだな。

 よし!決めたぞ!私は孫権殿と真名を交換する!」

星の励ましを受け、決心するように右手を強く握りしめた。

翌朝、昨晩の決意が鈍らぬうちにと早速孫権殿の部屋に向かうことにした。

しかし、いざ行くとなると緊張するな。この角を曲がると孫権殿の部屋が見える。

「すーはーすーはー……

 よし!行くか!」

落ち着くために深呼吸をし、覚悟を決めて角を曲がる。

「ん?あれは……」

すると部屋の前には孫権殿と一緒に呉から来た、確か甘寧が立っていた。

「甘寧殿。済まないが孫権殿はいらっしゃるか?」

「…一刀様は生憎、出かけておられる」

私を見ると、甘寧は一瞬目付きを鋭くしたような気がしたのだが…何か悪いことをしたか?

「そ、そうか…別に休養でも無いで、戻ってきたらまた来ると伝えておいてくれ」

そう言い残すと、私はその場を急いで去った。

早速、出鼻をくじかれてしまったな……

 

少し時間をあけ昼前、再び孫権殿の部屋に向かった。

すると朝と変わらず甘寧が部屋の前に立っていた。

「あー、孫権殿は帰っておられるか?」

「…まだ帰っておらん」

素っ気無く答える甘寧。本当に何かしただろうか。

「では!では何時ごろ戻られる?」

「知らぬ」

すると甘寧は用は済んだと言わんばかりに、私から目線を外し部屋番を続けた。

……?おかしいでは無いか。何故、甘寧は部屋の前に立っているのだ?

部屋の中には誰もいないはずなのに……

「甘寧殿、本当に孫権殿は外出しているのか?」

「ああ、先もそういったであろう」

「では、何故甘寧殿はここに立っているのだ?」

「!?べ、別に良いではないか!」

今、明らかに動揺した。やはり…

「孫権殿は中に居られるのだな!」

「居らぬと言ったら居らぬ!用がないなら立ち去れ!」

「私は孫権殿に用があるのだ!」

「用なら私が聞いてやる!だから即刻立ち去れー!」

部屋に入ろうとする私とそれを止めようとする甘寧が取っ組み合いの攻防を行っていると、

「なんだか外が騒がしいな」

部屋の扉が開き、中から孫権殿が姿を表した。

「やはりいたでは無いか…」「ふん」

甘寧は見るからに不機嫌そうに顔を逸らした。

「おや、関羽じゃ無いか?」

「孫権殿、今までどちらに?」

「え?今日は今までずっと部屋に居たけど…」

「へ~、部屋に」「チッ」

甘寧の方を見ると舌打ちをして忌々しそうに私を睨みつけた。

「丁度良かった。腹が減って今から昼飯にしようと思ってたんだ。関羽もどうだい?」

「!はい、喜んで!」

「じゃあ、思春も一緒にい「甘寧殿は用事があるようです!!」…え?」

「な!?貴様!何をい「さっきのこと孫権殿にばらすぞ(ボソッ)」って……」

「そうなのか、思春?」

「え?ええ……」

「そっか…じゃあ関羽、行こっか」

「はい!」

済まぬな甘寧。しかし私の願いのためにはお前は邪魔なのだよ。

場所を食堂に移し、私は孫権殿と一緒に昼食を摂ることとなった。

でも、その前に目的を達したくては…

「そ、孫権殿!実はお願いがあるのです!」

「お願い?俺に出来ることなら、別にいいよ」

「はい、私の真名を受け取って欲しいのです!」

勢い良く頭を下げ危うく机に頭をぶつけそうになった。

「…どうしてだい?」

「はい!前にも言いましたが、魏との戦いの時に孫権殿が助けに来てくれたこと、私は本当に感謝しているのです。

 あの時、助けてもらわなければ私はあそこ朽ちていたでしょう」

下げていた頭を上げ、孫権殿の真剣な目を見つめ返す。

「死んでしまっては桃香様をお守りすることができません。

 私はあの方の夢を叶えてあげたいのです」

「…桃香の事は好きかい?」

「はい!頼りないところもありますが、あの方の優しさはこの大陸に必要なものです。

 …それに最近では政務にも力を入れているんですよ!」

「そっか…関羽は桃香のことが大切なんだね」

「あの方のためなら命をかけることが出来ます。

 しかし、死ぬつもりはありません」

「ほお、何故?」

孫権殿は興味を示したように片目を瞑り聞いてきた。

「私が死ねばあの方は悲しみます。

 私は桃香様に、いつも笑顔でいてもらいたいのです!」

「…こんなに自分の事を想ってくれる義妹いて、桃香は幸せ者だよ。

 ……分かった、君の真名受け取ろう。俺の真名は一刀だ。これからもよろしく『愛紗』!」

「ふぁあ……」

孫権殿に、一刀殿に真名を呼ばれた瞬間、なぜか胸の奥が暖かくなるのを感じた。

一体何なのだ。首を左右に振り、一瞬の雑念を取り払う。私は桃香様の家臣だぞ。

「こちらこそよろしくおねがいします、一刀殿」

そうこうしているうちに食事が運ばれて来て、一刀殿と一緒に昼食を食べた。

その頃には私のあらぬ邪念などどこかに消えていた。

前回に引き続き蜀での拠点その2です。

今回は愛紗の拠点で、彼女が一刀に真名を預けるまでを書きました。

それプラス何かフラグも立てて行きました。

 

愛紗が一刀の部屋に来たとき、なぜ思春が邪魔をしたかというと、ヤキモチです。

なぜヤキモチを焼いているのかというと、まあ蜀に来て一刀の周りに女の子が増えましたし。

あと、『胸』でしょうか。蜀の面々は他のところに比べて平均が大きような気がします。

チーパイの思春はそれが…グハッ!?どこからか…鈴の音が…ガク…………


 
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