この作品は恋姫無双の二次創作です。
三国志の二次創作である恋姫無双に、さらに作者が創作を加えたものであるため
人物設定の違いや時系列の違い。時代背景的な変更もありますので
その辺りは、なにとぞご容赦をお願いいたします。
上記をご理解の上、興味をお持ちの方は 次へ をクリックし、先にお進みください。
「それでだ、黄巾の奴らが立て籠ってるのって砦だっけ?」
進軍中、一刀は確認の意も兼ねて質問する。
「あぁ、黄巾の奴らが怖くて逃げだした、地方豪族が管理してた砦だよ。その砦をそのまま使って、拠点にしてるみたいだな」
「なるほど……って地方豪族?幽州の太守は白蓮だよな?」
「あくまで肩書きは、な。今の帝から幽州太守っていう肩書は貰ってるけど、私が治めるのに納得しない奴らも多くてさ。完全に幽州を平定してたわけじゃないんだ」
そう言って白蓮は、あははと笑う。
その笑みは言外に、自分は太守の器ではないと言っているようで、一刀は少し苛立った。
白蓮は頑張っている。間近に居れば否応なく見せつけられるその努力。
自分の器を知ってなお、努力する。そんな白蓮にもいつか報われる日がくるのだろうか。
「ですが、今回の一件は公孫殿にとって好機とも言えます。ま、好機を物にできるかは私達次第ですが」
「ん?どういうことだ、燕璃」
その言葉に、燕璃はやれやれといった表情で深く溜息を吐く。
しかも、
こんなことも分からないんですか、阿呆の極みですね。
なんてテレパシーが送られてきそうな視線を一刀にむけている。
「今回の、仮に黄巾の乱と名付けましょうか。この黄巾の乱、今回の討伐作戦のように、本来その場所を守るはずだった者達が逃げていることが多いです。逃げた者にはその地域を統治する資格など無い。つまり、公孫殿が幽州を平定する足掛かりとなるわけです。分かりましたか?北郷さん」
「……大変懇切丁寧な説明ありがとう、燕璃。でもそっか、そういう考え方もありだよな」
もちろんこの話は白蓮の意思有りきではあるけれど。
「それに、いざとなればこちらには御輿もありますからな」
珍しく燕璃と轡を並べていた星が会話に割って入る。
一刀にはだいたい星の言いたいことの予想が着いていた。
「まさかとは思うけど、俺か?」
「おや、よく分かりましたな。とっくに忘れていたかと思いましたが」
「……初っ端から色々衝撃的だったからな、あれ」
ついでに言えばその言葉の持つ胡散臭さも。
だが、妙にその言葉が自分の肩書きにしっくりくるのもまた事実。
「なにせ一刀殿は天の御遣いなのですからな」
一刀がこの世界に来て最初にあった出来事に思いを馳せようと回想に入る暇もなく、その胡散臭い、天の御遣いなんていう恥ずかしい言葉を星が口にした。
そして
「「「「「 えぇぇぇ!!?? 」」」」」
きっかり五人分。桃香、愛紗、鈴々、舞流、燕璃が驚きの声を上げた。
……あれ?舞流と燕璃にも言ってなかったんだっけ。
「なるほど、殿は天の御遣いだったのでござるか。なら、殿の背後に御光が挿していたのも納得がいく」
そんなもん見えてたのかよ、舞流。言っちゃ悪いが眼科に行った方がいいな。
「天の御遣い……それは予想外でしたが、あまりパッとしない御遣いですね」
思ったことを常に口に出してたら人間関係めちゃくちゃになるぞ、燕璃。
「凄い!凄いよ愛紗ちゃん!一刀さん天の御遣いだったんだって!」
天の御遣いを連呼しないでほしい。恥ずかしいし、なにより持ち上げられ過ぎると後が怖いぞ、桃香。
「……」
あれ?まさかのコメント無しか、愛紗。というかなんだ、その百面相。
「……」
鈴々まで!?なんでこの二人はそんな微妙な表情をしてんだ?
以上、北郷一刀が胸中で思ったそれぞれに対するコメント。
白蓮と星の二人は、一刀が天から流星と共に降ってきたのを目撃しているので、ノーコメントだった。
黙々と馬を進めている。
いつしか静かだった行軍も賑やかになり、一刀もこの時だけはこれから戦をするという現実を忘れることができた。
それを肩越しに見ながら、微笑む星を目撃したのは隣に居る白蓮だけだった。
「珍しいな、星。お前が人に気を使うなんて」
「なんのことやら。ただ辛気臭いのは性に合わないのですよ。白蓮殿も、あまり自分を卑下する発言は控えた方が良い」
「はは……善処するよ」
もっともな星の発言を受けて、白蓮は苦笑いしながら前方を見る。
既に目視できるところまで目的の砦は近づいていた。
砦を正面とする高台に陣を構えた公孫賛軍。
本陣の天幕では、どのように砦を攻略するか、軍儀の真っ最中だった。
「砦っていうか城塞だよな、あれ」
「そうですな。幽州にある砦の中でも堅固な部類に入る砦故、城塞と呼ぶのが相応しいでしょう」
星が砦を見た一刀の感想に補足を付ける。
「ですが幽州はあくまでド田舎なのでこの程度です。洛陽近くにある汜水関、虎牢関などとは比べ物になりませんね」
相変わらず一言多い燕璃。
若干、幽州太守である白蓮の顔が引きつっているように見えなくもない。
「汜水関に虎牢関か……やっぱり有名なんだな」
「一刀?どうかしたのか?」
「い、いやこっちの話。そ、そんなことより、攻略法考えなくちゃだろ?」
白蓮に顔を覗き込まれ、数歩後ずさりする一刀。
よくよく周りを見渡せばこの天幕に居る男は自分のみ。
意識してしまうと、居心地の悪いことこの上ない。
美人に囲まれてる!やっほーい!
なんてポジティブにはなれない。そんなアホなぐらいポジティブな知り合い、一人ぐらいであれば心当たりはあるのだが。
「ふっふっふっふっ………」
「どうしたんですか舞流。ついにダメになりましたか?」
「不肖、この周倉。僭越ながら一計がござる」
どうやら自分に酔っているらしく、燕璃の暴言は聞こえなかったらしい舞流が含み笑いを続ける。この子は随分と便利なフィルターを持っているらしい。
「……とりあえず言ってみ?聞くだけ聞くから」
「そもそも某は皆が何に悩んでいるのか皆目見当がつかないでござる。簡単な話、全軍による物量に任せた一斉突撃で殲滅すればいいでござろう!」
「却下」
舞流の案は星の即答で、にべもなく却下される。他の面々も同意するように頷いた。
そして
「舞流。邪魔なので陣の隅で丸くなってなさい」
という、親友からの血も涙もない発言により、言われた通り陣の隅で体育座りを始めた。
「砦の方に動きはあったの?白蓮ちゃん」
「あぁ、さっき斥候が戻ってきた。さすがに私達が布陣してるのは気付いてるみたいだから、砦の様子は慌ただしかったってさ」
「う~……鈴々は早く戦いたいのだ!」
「某も鈴々に賛成でござる!」
「落ち着け二人とも。正面から戦うのは下策だ。なにかしら策を考えなければ被害が増えるだけだぞ」
戦いたくてウズウズしている二人を愛紗が冷静に止める。
そんな騒がしい天幕の中、一刀は報告に上がっている敵の規模。白蓮が過去に漢王朝から渡されていた、砦の見取り図。肉眼で見える地形。そして慌ただしく戦闘準備をしている黄巾賊の心情を考えながら一人、頭をフル回転させ策を練っていた。
「この中に弓が得意な人っていたっけ?」
「弓なら多少心得がありますが」
一刀の問いかけに応えたのは燕璃のみ。
他は苦笑いするか、得意ではない自分を恥じるかのように眼を逸らしていた。
「あの砦の中に矢って届くか?」
「そうですね……少々時間を」
そう言って天幕から出ていく燕璃。
そして、数分もしない内に戻ってきた。
「この気候なら可能ですね。ま、弓を使ったことの無い者では無理ですけど」
「そうか……」
再び思案に耽る一刀。
しばらく唸っていたかと思うと、静かに顔を上げた。
「一応、策思いついたんだけど」
「弓隊で砦内の戦力を少しでも削ごうということですか?」
自分なりに愛紗も考えていたのか、一刀に先んじるかのように予想を口にする。
「さっき言ったことを聞いていなかったんですか関羽殿。少なくとも弓の経験者でなければ射かけられません。それに、我が軍の弓隊はそこまで数も多くない。射かけたとしても百発百中では無いのですから、焼け石に水です」
「むぅ……確かにそうだな」
燕璃の不遜な物言いを気にすることなく、自分の浅慮さを恥じるように顔を曇らせる愛紗。
だが、確かに燕璃の言う通りだった。
三国志屈指の弓将、夏候淵や黄忠、黄蓋であれば別だが、弓隊はあくまでも弓隊。弓将ではない。普通の人より技量と経験が勝っているだけなのだ。
が、しかし
「あー……白熱してるとこ悪いんだけどさ、俺が言いたいのそういうことじゃないんだよな」
一刀が脳内で組んでいた戦運びの構図は、燕璃の言うそれでは無かった。
「矢文?矢文って……矢文だよな?」
「そう。矢の文で矢文」
白蓮の疑問符に対し、一刀は宙に字を書いて補足する。
「黄巾党のやつらの結束力って実際どうなんだ?固い?柔い?」
「そうですな……構成員の全てがなんらかの事象に対して不満を抱えていると思うが、結束となるとそう固くはないでしょう」
「あぁ。それどころかこの乱の騒ぎに乗じて山賊とか盗賊も黄巾党の中に居るだろうから、星の言う通り結束はほとんど無いと言っていいんじゃないかな。それが矢文とどう繋がるんだ?一刀」
「いや、結束がそこまで固くないんだったら砦内で内紛でも起こせないか――なんて思ってさ」
つまり、一刀の言いたいのはこういうことらしい。
【 戦闘が始まったら、手筈通りに 】
そう書いた文を矢で砦内に送る。
もちろん、黄巾党の中には字が読めない者は多いだろうが零では無い筈。
その誰に宛てられたか分からない手紙が疑心暗鬼への火種となる。
もし万が一、黄巾党の中に字が読める者がいなくとも、いなければいなかったで砦内に何らかの動きは必ずある。
その辺りの微妙な反応の違いを察知するのは至難の業だが、彼らは良くも悪くも元一般人。
心情の変化など隠すのは容易ではないし、こちらはこちらで政治なんて高度な物の経験がある太守に文官。一般人など遠く及ばない感覚を持っている武官たちがいるのだ。
そこは凄く曖昧だから皆を便りにさせてもらうけど、と一刀は苦笑いで付け足す。
お世辞にもまともな統率が執れているとは言えない黄巾党が、疑心暗鬼でさらに統率を乱す。そして戦闘中に『裏切り者が出たぞー!!』とでも叫べば、策の完成だ。
元々疑心暗鬼な状態で戦っていた黄巾党がさらにさらにと足並みを乱していく。
その機に乗じて攻勢を一気に強めれば――勝てる。
この策、敵が砦から出てこなければ意味を成さないが、出てこなくても同じこと。
そもそも幽州に居る黄巾党が一か所に集結した時点で勝敗は見えている。補給線が整っていない籠城戦など愚の骨頂。出てこなければ兵糧攻めにされるだけなのだから。
そう締めくくって一刀は説明を終える。
漂うのは沈黙。
桃香たちの嘘を見破った時のような空気が辺りに漂っていた。
そしてその後、協議の結果。
一刀の案は採用された。
【あとがき】
真・恋姫†無双 真公孫伝 ~雲と蓮と御遣いと~ 1―13
【 一刀の策・そして苦悩 】
更新させていただきました。
お疲れさまです。作者です。
正直、書いている暇があるのが奇跡です。
あくまでも今現在は、ですが。
今回は前々回に引き続き、一刀が頭の回転の速さを見せつける話となりましたが、結局のところ話を考えているのは私なので。
ご都合主義だなぁと思いつつ頑張って書いています。
まぁ、策が成功しようとしまいと一刀が苦悩するのは決定事項みたいですがね。
さてさて、この先どうなることやら。
早く一刀と白蓮のイチャイチャを書いてみたいとこです。それでは。
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真・恋姫†無双 真公孫伝 ~雲と蓮と御遣いと~ 1―13
更新させていただきます。
体の節々が痛い……。
……誰か、油かオイルを各駆動箇所にぃ……!!