<side 魏>
朝議から二刻ほど経った軍議室。
そこでは、華琳、桂花、風、稟の魏の頭脳とも呼べる4人が一枚の紙を中心において会議をしていた。
警邏に出るといっても、むやみに出ても意味がない。そこで華琳は軍師を集めて次に犯人が出現しそうなポイントを探ることにした。
「何か出現する地点に関する手掛かりはあるかしら?」
華琳は集まった3人に訊ねる。
「もちろんです。だてにお兄さん直伝の測量法で作った地図を使ってませんよ~」
風がどこか誇らしげに、そして少しさびしげに答える。
「これを見てください。まず犯人が出現した地点を示してみますね」
トントンと死体があった場所に小石をのせていく。
「これを見て何か気付きませんか?稟ちゃん」
「これは…風、これらの死体が発見された日時はわかりますか?」
稟が興奮した目で風に訊ねる。
それを聞いて満足げに、
「もちろんですよ。一番最初に死体が発見されたのが、こ「ちょっと待ちなさい!」」
指で示そうとした風に桂花が待ったをかける。
「私にもわかったわ。候補の地点は現状2つあるけれど、今も事件が続いていることから考えると、ここでしょ?」
桂花がある一点を指し、ホメてください華琳さま!的なオーラを出しながら華琳を見つめる。
しかし、意外と事態は単純、華琳にも読めていた。
華琳はため息をつきながら、風に聞く。
「どうかしら?風」
「ぐ~」
「起きなさい!」
居眠りをした風に稟が突っ込みを入れる。
「おお!桂花ちゃんの傍若無人な自己顕示欲に少々あきれて、うっかり寝てしまいました」
風が少し頬を膨らませながら答える。
「まったくだぜ。嬢ちゃん。あんまり顕示がつよすぎるとかえって飽きられちまうぜ」
風の頭の上からとどめとばかりに宝譿が突っ込みを入れる。
しかし、さすがは桂花そんなことでは動じない。
「なんとでも言いなさい。私は華琳さまに認められればそれでいいの。で、どうなの?」
「はい、桂花ちゃんの言うとおり、出現地点はここです、ちなみに次はこ「ここか、ここね?」」
こんどは華琳が少しいたずらっぽく微笑みながら、2点を指さす。
また突っ込もうとしたものの、久しぶりに見た華琳の笑顔に毒抜かれる。
とはいえ納得がいかない風は
「う~。華琳さままで風をいじめるのですか~?」と拗ねたふりをしてみる。
「ふふ、ごめんなさいね。ほら、拗ねてないで、教えなさいな。それとも、閨で聞いた方がいいかしら。」
「残念ながら、風の身も心もすべてお兄さんのものなのですよ。
死体が発見されたのはこちらの方です」
風が指さす。
「ということは、こういうことですね」
稟はそばに置いてあった紐を地図の上に小石に沿って垂らしていく。
そこに出来上がったのは、巨大な渦巻きだった。
「あの傾向から推測すると次の場所はこのあたりね」
華琳は馬を走らせながら、隣にいる秋蘭に声をかける。そばには王の親衛隊が20人ほどいる。
「そのようですね。華琳さま、万が一の場合はお下がりください」
「分かっているわ。私だってこのようなところで命を落とす気はないもの。それに、もし何かあってもあなたが護ってくれるんでしょ?」
「もちろんです、華琳様」
「いいこね、秋蘭。」
華琳が満足げに笑みをこぼす。
「曹操様われわれもおります。どうぞご安心ください」
親衛隊の隊長が苦笑しながら言う。
「まぁ、期待しているわ」
いつもの盗賊退治の雰囲気で一行は進んでいく。
しかし、平原を行軍している途中、突然隊員の一人が倒れた。
「どうした?……!」秋蘭は眼を見開いた。
隊員の体には報告にあった傷とまったく同じものがついていた。
「華琳さま!お下がりください!」
秋蘭はすぐに臨戦態勢に入り華琳を後ろ手にかばう。
華琳は焦っていた。
敵はどこにいる?敵の姿は見えない。
今敵はどこから攻撃してきた?敵の姿は見えない。
どうやって攻撃してきた?当然武器も見えない。
敵はどうやって近づいてきた?我々以外の気配は微塵も感じなかった。
ふと、風が軍議で言っていたことを思い出す。
『
-------弓だとしたら矢が落っこちてないとおかしい------
-----真上から狙撃----- 』
「まさか…!」
華琳ははっとして見上げる。そこには何か黒いものが浮かんでいた。
「秋蘭!上見て!」
「華琳様…?上…?………っ!」
永年弓を扱ってきた秋蘭は視力が常人より優れていた。
「なんだあれは…?」
「なんだったの!?秋蘭!」
秋蘭の目に映ったのは、ヒトのようでヒトでないことは確かにわかる何かだった。
「ボギヅデ、バギンググシギビンレバ」(こいつで 27人目だ)
ヒトのような何かはカチャリと腕輪の飾りをひとつずらす。
「ログブズギダボバ。ババババジャスバ」(もうきづいたのか。なかなかやるな。)
ヒトのような何かが少し関心したようにつぶやく。
はるか下で秋蘭が弓の弦を引いている。
「ゴンバロボゼ、ボソゲバギゾパゴセ」(そんなものでおれはころせないぞ)
ヒトのような何かは嘲笑った。
秋蘭は上空に向かって矢を放つも、真上にいる敵に届くはずもない。
矢は途中でむなしくも風に流されてしまう。
「秋蘭!」華琳が叫ぶ。
「なにがあったの!?」
「華琳様!私から離れないでください!おそらく敵は我々の想像をはるかに超えています!このままでは危険です!」
秋蘭の思考はもう「敵をどう倒すか」ではなく「華琳をいかにして生かすか」に切り替わっていた。
秋蘭は唇をかみしめていた。
いつ敵が襲撃してもいいように、見晴らしのいい平原を選んだのは失敗だった。
隠れるところなど、周囲10町にはどこにもなかった。
「お前たち!私たちがおとりとなる、なんとしても華琳様をお守りするのだ!」
「「「御意」」」
「秋蘭!絶対に生きなさい!分かってるわね?あなたたちもよ!一人でも多く魏に帰るのよ!」
「もちろんです、華琳さま」
「「「御意!」」」
「ガギヅザ ガギゴザ」(あいつは さいごだ)
ヒトのような何かは逃げる華琳を見ながら言う。
「ラヅバ ゴラゲザ」(まずは おまえだ)
ヒトのような何かは構える秋蘭を見ながら言う。
「ゴラゲダヂ ゾ ボソグボダ ボボゴセ メ・バヂス・バザ」
(おまえたち を ころすのは このおれ だ)
ヒトのような何かの名はメ・バヂス・バといった。
特に策があるわけではない。
でも、華琳をここで死なせるわけにはいかない。
ただそれだけが秋蘭を動かしていた。
「一刀…救ってもらったこの命…華琳様をお救いするために…使わせてもらうぞ」
秋蘭はどこか遠くの世界に行ってしまった一刀のことを思い浮かべる。
敵はなぜか攻撃してこない。しかし、こちらから目線を外さない。
ただこちらだけを見ていた。遠くで何か耳慣れない音がしていた。しかし、そちらを見る余裕さえも彼女にはなかった。
「ボボガビビ、ギヂゲビゼビレバギド、ラダ、ダブガンラヅボドビバス」
(この殺気、一撃で決めないとまたたくさん待つことになる。)
秋蘭の攻撃は届きはしないものの、バヂスは長年の経験で、彼女がただものではないことを悟る。
「グボギ、ゴドシゾギセガゲデロサグゾ」(少し囮を使わせてもらうぞ)
バヂスは腰についた石を見てニヤリと笑った。
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真・恋姫無双の魏√で消えてしまった一刀君...
もし彼が仮面ライダークウガの世界に巻き込まれたら、全て終わったときどうするかという設定のお話です。
とはいってもクウガになるまでの一刀はあのフランチェスカとかの設定に準拠したいと思います。
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