目玉がある。
ぼくの背後に目玉が一人分浮いていていつも僕を見つめている。寝る時も食事する時も趣味の小説を書いている時も目玉はじっと僕を見ている。
笑われている気がする。
目玉には誰かを嘲笑する為の脳はついていない。だからそんなわけはない。そもそも本当は見られてすらいない。ただあれは浮いているだけだ。でも僕は見られていると感じる。笑われていると感じる。
そんな愚考も笑われている気がして、そんなわけはないと思い直して、その考えだって目玉に見通されていて笑われているのだと感じる。
本当には見られていないのだから拒絶もできない。それでもずっと僕は見られている(気がする)。
見られて笑われて僕の趣味をあれはすべて知っていて黙っている(気がする)。
この小説だって目玉は見ているのだ。稚拙さをあれは嘲笑って僕は文句も言えぬまま苦痛を感じる。視線を気にしてキーボードを打つ手が惑う。散々惑った末にどうでも良いことばかりをつらつら書き連ねる。
見ている。
見るな。
見るな。
願ったところであれに届く訳は無く文字の表示を小さくしたり自分の体でモニタを隠したり僕は幼い誤魔化し方しかできないのだ。そうしてあれはそんな僕を嘲る。どんな誤魔化し方をしようと開き直ろうとあれはただ見ている。嘲笑っている。
見るな。
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意識すると視線があまりに気になり過ぎてこれ以上書けない。