ばん、ばんと二度大きな音がした。
(仕留めたか……いや、まだだ)
目を凝らして敵を探す。どこかにいるはずだ。あの憎い後ろ姿を忘れることなどできない。
(っ、いた!)
狙いを定めて手を伸ばす。そうして、壁に向かって叩きつけた。
ばんっ。
ひときわ、大きな音がした。
手をのける。そこには血痕があった。それは敵を仕留めたしるしだ。
私は脇のシャワーで手の血を洗い流した。
「これで私の身は守られたわ……」
ほっとして、浴槽へと身を落とす。
浴室の壁の血痕の中に、潰された蚊の死骸が横たわっていた。
蚊との闘いは、やるかやられるかの死闘である。
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女の闘いです。