No.28496

あたらしい朝(ときメモGS)

きのさん

ときメモGSの二次創作です。夏休みがおわって、また学校で氷室先生に会えるのが嬉しい主人公なのです。

2008-09-02 12:53:04 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1039   閲覧ユーザー数:988

 

一昨日の夜、またカレンダーをめくった。

その1枚は特別な1枚だった。

今年の夏は意地悪だ。

9月1日は日曜で、2学期は2日から始まる。

きっと、喜んでいる生徒のほうが多いんだろうな、と思う。

 

 

すこし前なら、わたしも喜んだだろう。

氷室先生と顔をあわせずに済ませられるから。

 

その棘が抜けたいまは、2学期が待ち遠しかった。

 

 

始業式が嬉しくて眠れない高校生なんて滅多にいないだろう。

小学生の遠足のようだ。

遠足より、もっと素敵だ。

こらからの毎日が特別の日。

 

 

眠るのに苦労したのに、目覚まし時計より先に目覚めた。

 

 

夏休みよりは、混雑している電車。

夏休みよりは、人の姿の多い通学路。

夏休みより、早い時間にくぐる校門。

 

 

夏休みの間にも見慣れていたはずの学校が、

まるであたらしく見えた。

 

 

これから毎日、ここに氷室先生がいる。

これからまた、同じ校舎で氷室先生に会える。

 

 

おはよう、と心の中で挨拶をした。

おはよう、と校舎に、校庭に、心の中で挨拶をした。

 

 

嬉しいというのは、こうした気持ちを言うのだろう。

校庭の端を彩る緑にも、

まだ夏の色の空にも、

おはよう、といった。

 

 

 

そして、待ちわびていた早目の足音が聞こえてきた。

その足音が通り過ぎたら、わたしのとびきりのおはようを言おう。

 

「おはよう」

そのとき、斜め後ろから声がかかった。

 

「始業式から感心だ。節度ある生活を心掛けていたようだな」

 

「おはよう、ございます」

そして、挨拶は繰り返された。

「おはよう」

いつものように、軽く頷きながら、その言葉は繰り返された。

そして、わたしを追い抜いて、歩み去った。

 

 

わたしは、立ち止まっていた。

そして、その後姿をずっと見つめていた。

いつもは、立ち止まったりしなかった。

見つめていたりしなかった。

 

でも、今日は特別の朝だ。

先生からさきにおはよう、と言ってもらった。

はじめての、特別の朝だ。

 

 

おはよう ――。

おはよう ――。

 

 

そう胸のなかで繰り返しながら、

絵の中に、ずっととどめておきたい瞬間がある、と思った。

 

 

   エピソード完


 
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