No.283474

真・恋姫 呉伝 -為了愛的人們-第五十二話

獅子丸さん

第五十二話。

わかりにくくて申し訳ありませんorz
今回から各時間軸に名前をつけました。

続きを表示

2011-08-24 05:11:16 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:15913   閲覧ユーザー数:12168

 

 

 

 

『赤壁編』

 

 

 

 

 

― 陸遜Side ―

 

 

 

 

 

「駄目です!!これ以上近づく事はできません・・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

 

速く行かなければいけないのに。

敵船から絶え間なく降り注ぐ矢の雨を忌々しくにらめつけながら必死に打開策を探しています。

速く行かなければ祭様が・・・・・・。

祭様が居る場所までは・・・この矢の雨を潜り抜ければ直ぐなんです。

祭様は今頃必死に戦っている筈。

それなのに救出にも行けずにこの場所で足止めされるなんて・・・・・・。

 

 

「金剛隊は?」

 

 

一刀さんの隊が居れば・・・・・・。

そう思いついて直ぐに確認を取りました。

結果は・・・。

 

 

「無理です・・・・・・金剛隊は戦線を押し留める為に既に敵船との戦闘を開始しています」

 

「っ・・・」

 

 

こうなれば・・・。

もう一つ思いついた策。

だけどわたしの中にいる軍師の私がその考えを否定しました。

わたしは祭様を死なせたくありません・・・だから、この矢の雨の中を掻い潜ってでも救出に行くつもりでした。

だけど、軍師である私はその考えを押し留めます。

祭様一人を救出する為に多くの兵を犠牲にするわけにはいかない・・・そう言って。

軍師としての言葉。

それはまったく持って正論。

個の為に多くの兵を犠牲にするなど以ての外。

その個が皇帝や王ならいざ知らず、祭様は一介の将。

軍師としての私はそう言葉を並び立てました。

わかっているんです。

私は軍師なんですから。

わかってはいても・・・・・・。

私は空を見上げます。

視界の端に写る矢の雨は更に勢いを増し私達を遠ざけようと降り注いでいました。

 

 

「一刀さん・・・・・・」

 

 

視線をそのまま『天』に移し愛する人の名前を呟く事しか出来ませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『現代編』

 

 

 

 

 

― 趙雲Side ―

 

 

 

 

 

「お会いするのは二度目・・・・・・でございますかな?」

 

「そうね。・・・それで、話と言うのは何かしら?」

 

 

場所は官途。

冀州(きしゅう)を避け洛陽に移動していた私達の目に官途へ向けて進軍していた曹操軍が現れた。

私達は合流し、そのまま官途へと同行したと言う訳だ。

 

 

「貴殿が軍を進めていたということは既に幽州での事は耳にしておるのでしょうな・・・・・・ならば話が早い。

此度の袁紹軍の行為・・・・・・少々おかしいとは思わぬかな?」

 

「・・・・・・そうね。貴方は何を見てそう思ったのか聞かせてもらえるかしら?」

 

 

流石は曹孟徳と言う所。

私の言葉を聴いて確信を突いて来るとは・・・・・・。

 

 

「・・・そうですな。今回の侵攻、余りにも急すぎた事。

もう一つは・・・・・・伝令の兵に対しての余りの仕打ち・・・・・・ですかな」

 

「なるほどね・・・・・・。詳しく聞かせてもらえるかしら?」

 

 

曹操も何かを感じ取ったようで私の説明に真剣な表情で耳を傾けている。

急な侵攻もだが、それよりも私が気になった点がある。

伝令の兵に対しての仕打ちだ。

一般の兵にやられたのであれば納得できる。

しかし、あの伝令が受けていた傷は明らかに一般の兵から受けた傷ではなかった。

あの伝令が生きて私達の元にたどり着いたのは正に奇跡と言えよう・・・・・・。

鋭利な刃物で切られた傷が全身に見受けられた。

恐らくは・・・最初は急所を外し、ある程度弱った所で致命傷となる傷を負わせたのだろう。

余りにも残忍な仕打ち。

私はあの袁紹が指示したとは思えないのだ。

 

 

「麗羽ではないでしょうね。・・・・・・麗羽の家臣が勝手にやったか・・・もしくは」

 

「失礼いたします」

 

「何かしら?秋蘭」

 

「北方に砂塵を確認いたしました・・・・・・恐らくは」

 

「直ぐに準備しなさい。・・・・・・貴方はどうするのかしら?」

 

「聞かずともお分かりであろう?」

 

「いいでしょう。存分にやり返してあげなさい」

 

「言われずとも・・・・・・」

 

 

そう答え、私は兵達を待機させている場所に向かう。

此処に袁紹が来ているのであれば恐らく、かの疑問の答えを知る者がいる筈。

 

 

「白蓮殿、無事でいてくだされよ・・・・・・」

 

 

跨った馬の腹を蹴り、私は布陣を開始した曹操軍へと合流した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

― 凌統Side ―

 

 

 

 

 

面倒な事が起こりそうだぜ・・・。

先ほど仕入れた情報にうんざりしそうになる。

溜息を吐きながら一刀様が居る部屋の扉をノックする。

どうぞ・・・と言う声を聞き部屋に入る。

 

 

「ん?・・・ちょうど良いいな」

 

「何が?」

 

「いや、周瑜がここに居た事だ」

 

 

部屋に入れば一刀様と冥琳が書簡や筆を手になにやら仕事をしていたようだ。

 

 

「一刀様、新しい情報だ。官途で戦が始まった。戦況は当たり前のように曹操軍が押している・・・袁紹軍は程無く落ちるだろう。

そしてもう一つ・・・・・・荊州に動きがあった。劉表が死んだらしい」

 

「曹孟徳と袁本初の事はなんとなく予想はつくからいいけど・・・・・・荊州は・・・」

 

「ふむ・・・どの程度までわかっているのだ?」

 

 

周瑜がそう問い掛けてきた。

俺はわかっている限りの情報を話す。

荊州の劉表が死に、跡目争いが起きている。

劉琮派と劉琦派。

荊州の殆どの役人がその二つの派閥に別れ争っているのだ。

 

 

「・・・と此処までは良くある事だ」

 

「・・・・・・なるほど。で、先があるのだろう?」

 

「影、続けてくれ」

 

 

一刀様の言葉に従い続きを話す。

二人が気にしているのはこれだ・・・・・・。

周瑜にとっては孫家との因縁のある二人。

一刀様にとっては『李儒』と繋がりのあった二人だからだ。

黄祖と蔡瑁。

この二人が両派閥に分かれてしまっていた。

劉琦を推す黄祖。

劉琮を推す蔡瑁。

二人揃って悪事を働いていた筈が今となってはいがみ合っているという構図。

 

 

「裏があるんじゃないか?」

 

「一刀様ならそう言うだろうと思って調べさせた。・・・・・・が、本当に仲違いしているらしい。

その原因なんだが、李儒がいなくなった後の利権争いが発端のようだ。

そして、それに関して蔡瑁がその利権を得たらしい」

 

「李儒の死・・・・・・か」

 

「少しおかしいのではないか?・・・李儒の(おこな)っていた事が何かはわからないが・・・何故その後を蔡瑁が引き継げる?」

 

「周瑜の言うとおりだ。・・・・・・俺も疑問に感じ自身で蔡瑁の事を調べた。

蔡瑁は時折街に出て、とある店に通っていたらしい・・・」

 

「とある店?」

 

 

一刀様の眉間に皺がよる。

それを横目で見ながら俺は言葉を続ける。

 

 

「何の変哲も無い店だ。・・・・・・調度、洛陽で『李儒』が死ぬ間際に行った店のような・・な」

 

「・・・・・・」

 

「一刀・・・何の事だ?」

 

「あぁ・・・この件は報告してなかったっけ?・・・俺が李儒と言う男を気に掛けていただろ?

その李儒が死ぬ前に立ち寄っていた店の事なんだ。李儒が死んだ次の日には跡形も無く消えていたんだよ」

 

「・・・ふむ。・・・・・・その店も・・・なのか?」

 

「御明察。俺が確認した次の日・・・と言うよりも、その日の夜には消えた。

洛陽での事があったからな、その前に蔡瑁が店を出た(のち)確認しておいた。

店は洛陽と変わらず文官が使うような筆や硯、書籍類・・・店主は見るからに商人風な男。

流石にその場で中を調べる事は出来ずに夜中に潜り込もうとしたが、せっせと店仕舞いしていて無理だった」

 

「どこに行ったのかは?」

 

「今、部下に後を追わせている所だ」

 

「そうか・・・「トトトン」・・・ん?」

 

「新しい情報が届いたようだ・・・」

 

 

天井から聞こえてきた合図。

その合図に答える。

すると天井の板が小さく開き、竹簡が振ってきた。

それを開き内容を確認する。

 

 

「一刀様、荊州は面倒なもんを巻き込んだようだ・・・・・・」

 

「面倒なもん?」

 

 

一刀様は怪訝な表情をする。

その表情を見て俺は密書の内容を告げた。

 

 

「蔡瑁が劉玄徳を味方につけたらしい」

 

「・・・・・・雪蓮に聞かせたくない内容だな」

 

「・・・・・・」

 

 

そう言って溜息をつく周瑜公瑾を他所に、一刀様は眉間に皺を刻み、黙ってしまう。

その表情を見た俺は嫌な予感がしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

― 趙雲Side ―

 

 

 

 

 

おかしい。

戦が始まって数日・・・袁紹軍との戦いで感じた小さな疑問。

先の侵攻では勢いがあった筈なのだが、今の袁紹軍にはそれが感じられないのだ。

あっさりと曹操軍に押し込まれていく袁紹軍。

曹操軍が強い・・・そう言われればそうかもしれないが明らかに違和感を感じる。

恐らく後一刻もすればこの戦は終わる・・・。

私は違和感を拭えないでいた。

そんな状態で攻め立てている時、友軍が私の軍に合流する。

 

 

「いかがいたしたのかな?」

 

「曹操様からの伝令として来た。趙雲隊はそのまま冀州の袁本初の居城へ向かっていいとの事。

恐らくは公孫賛殿を救出して来いって事だ」

 

「ふむ・・・それはありがたいですな。でわ、我ら幽州勢はこのまま冀州へと向かわせていただきましょう」

 

「承知。では、御武運を・・・・・・恐らく公孫賛殿は東の離宮に幽閉されているだろう」

 

「ほう・・・何処かで見たかと思えばお主は確か・・・」

 

 

曹操殿の伝令で来た男は元は袁紹殿の下に居た将。

袁紹殿を裏切り曹操殿へ降ったと言うのは余り感心しないが・・・白蓮殿の情報はありがたい。

私は素直に礼を述べて兵達に行く先を告げた。

向かうは冀州。

白蓮殿、待っていてくだされ・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

― とある男Side ―

 

 

 

 

 

最近この大陸が慌しく動いていると感じる。

この漢中には、まだその動乱は訪れては居ない。

だか、恐らく此処も巻き込まれるだろう。

最近、漢中では流行り病に襲われている。

それもこの大陸の動乱に関係しているのではないかと疑ってしまうのは考えすぎか・・・・・・。

 

 

「・・・・・・殿。五斗米道の方達が城下で流行り病の治療をしたいと申し出ていますがいかがいたしましょう?」

 

「五斗米道は高度な医療集団と聞いている。流行り病がこれ以上拡大すれば民達にとっては一大事・・・。

その申し出快く受けさせていただこう。

米一斗の代わり・・・・・・と言うわけではないが五斗米道の方達に炊き出しをする旨をあわせて伝えておいて欲しい。

劉協様には私から伝えておくとしよう」

 

「承りました・・・・・・では、失礼いたします」

 

 

部屋から出て行く侍女を見送った後、私は劉協様の居室へと向かう。

劉協様はお優しい。

恐らくは私のした事に何の不満も漏らさないだろう。

劉弁様や劉協様は聡明な方だ。

不謹慎だがもっと早くにこのお二人のどちらかが皇帝になっていれば世は荒れなかったかも知れない。

世の中ままならないものだ・・・・・・。

流行り病にしろ、乱世の兆しにしろ・・・・・・あの男にしろ。

ままならないのは私もか・・・・・・そう思い自嘲する。

ふと、あることを思い出す。

弟は元気にしているだろうか?

洛陽を離れてから間もないが少し心配になってしまった。

弟は劉弁様の居る宮廷仕えに昇進していた。

誠実で真面目な弟の事だ、恐らくは問題なく自分の仕事をこなしているだろう。

あの手紙も無事弟に届いただろうか?

無事届いてくれればいいが・・・・・・。

私はいつの間にか立ち止まり、廊下から見える外の景色を眺めつつそんな事を考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『太史慈放浪編』

 

 

 

 

 

― 太史慈Side ―

 

 

 

 

 

成都の城門を堂々とくぐる。

俺は客人・・・なんら咎められることも無い。

会いに来たのは『厳顔』

恐らくはあえないだろう。

 

 

「こ、こちらへどうじょ!」

 

 

案内してくれたのはあの諸葛亮。

諸葛亮に案内されるとはな・・・・・・。

諸葛亮孔明の言葉に頷き、後に付いて歩く。

通されたのは中庭。

どうして玉座の間じゃないのかって?

当たり前だ。

俺の事は既に涼州の姜維や馬謖から伝わっている筈だ。

見えてきた中庭には既に兵が配置してあり、蜀の将も待機していた。

蜀・・・・・・劉備玄徳を頂点とする国。

武神と(うた)われる関羽雲長。

一騎当千と名高い張飛益徳。

槍の名手と名高い趙雲子龍。

錦と称される馬超孟起。

その従姉妹である馬岱伯瞻。

天下の伏龍である諸葛亮孔明。

諸葛亮孔明と並び、鳳雛と称される鳳統士元。

既に此処には居ないが弓の名手として有名な黄忠漢升。

その友人で、猛将と名高い厳顔。

その弟子である魏延文長。

それに加え涼州に居る姜維伯約、馬謖幼常。

そして蔡瑁。

黄忠と厳顔を除いた役者が全員揃い踏みか・・・。

思わず小さく噴出す。

 

 

「貴殿が太史慈か?」

 

「あぁ、そうだ」

 

 

関羽の問い掛けを肯定する。

その瞬間に関羽の眉がわずかに動いたのを見逃さなかった。

恐らくは有ること無い事伝わっているのだろう。

 

 

「ちょ、ちょっと待って・・・・・・」

 

「桃香様?」

 

 

劉備が驚いた表情で俺を見る。

 

 

「俺がどうかしたか?」

 

「やっぱり・・・・・・その声・・・・・・」

 

 

そう言って劉備は顔を青褪(あおざ)めた。

 

 

「は・・・・・・はわわわわわ!?も、もしゅっ・・・もしかして『天の御使い』!?」

 

「「「「「「っな!?」」」」」」

 

 

諸葛亮の一言で周囲の将達が戦闘態勢に入る。

 

 

「き、貴様!!その顔布を取れ!!!」

 

「なぜだ?」

 

 

俺は成都に入る前から顔に布を巻いていた。

涼州の一件で姜維達の手によって下手な濡れ衣を被せられていれば厄介ごとに巻き込まれる。

成都の領内で揉め事を起こせば今後動きにくくなる可能性があったからだ。

まぁ、今の状況に置いて今さら隠し立てする必要もない。

そう判断して顔を覆っていた布を剥ぐ。

 

 

「「「「「「・・・・・・」」」」」」

 

「外したぞ」

 

「そ・・・・・・そんな・・・・・・」

 

 

劉備は青褪(あおざ)めた表情のままそう言葉を漏らした。

劉備を囲む将達もその場から動けずに居る。

 

 

「まだ何かあるのか?」

 

 

俺の問い掛けに反応すらしない蜀勢。

ふぅ・・・・・・と溜息を吐く。

 

 

「・・・・・・あ、貴方は誰なんでしゅか?」

 

「あわわ・・・・・・失礼だよ朱里ちゃん」

 

「き、貴様はいったい何者だ!?」

 

「どう言うことなのだ?」

 

「・・・・・・ふむ」

 

「なぁ・・・・・・蒲公英・・・」

 

「後で教えてあげるからお姉様は黙ってて・・・・・・」

 

「桃香様!?大丈夫ですか!!」

 

 

諸葛亮が発した一言に続き各々が俺に問いかけてくる。

俺が何者か?

唯の太史慈子義だ。

『天の御使い』なんて言う大層な物を背負ってなどいない。

 

 

「お前達も呼んでいただろう・・・・・・俺は太史慈子義だ。

そろそろ本題に移らせてもらう。厳顔は何故ここに居ない・・・俺が会いに来たのは厳顔なんだが?」

 

「桔梗・・・厳顔殿はここには来ぬ!不敬の罪で投獄されているからな・・・・・・」

 

 

・・・・・・お気の毒に。

噂では聞いていたが其処までするとはな。

 

 

「不敬だと?主に忠言した程度で不敬を問われるとはなんと見下げた国だ。・・・・・・やはり蜀とはそう言う国か」

 

「なんだと!?」

 

「直ぐに怒りを(あらわ)にするとは・・・・・・蜀の武神とは名ばかりで、唯の猪と変わりないようだな」

 

「貴様ぁ!!」

 

 

蜀・・・・・・世の混乱に乗じて興った国。

国として成り立っているようでその実は全て主である劉備玄徳と言う人物が中心。

ただ理想のみを追い求め、一度砕かれた筈のその理想がちょっとした事で『実』を持ってしまった。

その結果が収まる筈だった世の乱れを急激に加速させた。

やはり最初の時点で芽を摘んでしまうべきだったのだ。

『天の御使い』は・・・・・・優しすぎた。

 

 

「無様だ・・・・・・まったくもって無様。なぁ、そう思わないか諸葛亮?」

 

「っ!?」

 

「知っているぞ。お前も(ないがし)ろにされているんだろう?

度重なる主への忠言が元で中枢から外されているんだろ?

お前に学ぶ振りをして近寄ってきた姜維や馬謖にその立場を奪われたのではないか?」

 

「・・・・・・」

 

「そんな事はありません!!朱里ちゃんは私達の仲間・・・「では、どうして諸葛亮が俺を此処まで案内する必要があるのだ?」・・・・・・っ!」

 

 

割って入ってきた劉備の言葉を俺は遮り言葉を続ける。

 

 

「仲間であり、義勇軍の頃から付き従っている諸葛亮が何故立場が低い者がするような案内役などしなければいけない?

口では何とでも言える。仲間であるなら厳顔も同じだろう?

その仲間の忠言を不敬と称し牢獄へ放り込むとは言語道断・・・・・・この国の在り方がその行いに見て取れる」

 

 

俺の言葉に関羽や魏延が今にも切りかかってこようとする。

それを推し留めているのは趙雲と馬超。

俺はそのまま視線を蔡瑁へと移す。

 

 

「そして、そこに居る蔡瑁。・・・・・・こんな男が国の中枢に居るのだからな」

 

「!?」

 

「・・・・・・どう言う意味ですか?」

 

 

俺の言葉の意味を理解しなかったらしい劉備が問い返してくる。

やはりか・・・・・・既に落ちる所まで落ちていた蜀と言う国の評価が更に下がる。

 

 

「何も知らないのか・・・・・・その男は、かつて裏で相当の悪さをしていた男だ。

表の顔は善人を装っているが黄祖と共に裏でとんでもない悪事を働いていた」

 

「嘘です!私は悪事など働いてはおりません!!」

 

 

当然のようにそう言葉を荒げる蔡瑁。

俺は鼻で笑い、肩をすくめる。

今さら蔡瑁の事なんてどうでもいい。

この男に用があるのは俺じゃないからな・・・・・・。

 

 

「まぁ、信じるにしろ信じないにしろ俺には関係ない。

さて、そろそろお暇するとしよう・・・・・・」

 

 

城の奥が騒がしくなってきた。

事は済んだと見ていいだろう。

俺は踵を翻し、城門へと足を向ける。

 

 

「待て!!貴様をこのまま帰すわけには・・・「伝令!!牢獄から厳顔様が脱走しました!!!!」・・・なんだと!?」

 

「桔梗様が!?」

 

「報告を!」

 

「何者かが牢獄へ侵入し厳顔様の牢を開放・・・・・・他に幽閉されていた罪人達の牢も開放されたらしく・・・・・・」

 

 

厳顔だけではない・・・・・・・か。

流石だな。

俺は小さく笑いながら歩を進める。

 

 

「まさか!?待て!!貴様の仕業だろう!!」

 

 

関羽が声を荒げ俺に向かって切りかかってくる。

俺はその斬撃を飛んで避わす。

だが、関羽はその隙を逃さずに斬りかかってきた。

しかし、その動きは思わぬ攻撃によって止められる事となった。

轟音と共に視界を覆う砂煙。

その音の発信源をに目を向ければそこに居たのは厳顔。

 

 

「世話をかけた」

 

「気にするな」

 

「桔梗様!!どうしてこんな事を!!」

 

「馬鹿者め!!お主らが間違っているからに決まっておる!!」

 

「私達は間違ってなどおらぬ!!」

 

「愛紗よ、お主のそう言う所が間違っていると言ったであろう!!」

 

 

厳顔と関羽、魏延の押し問答が始まる。

此処でこんな事をしていても何も変わらない。

なまじ力を・・・大義を手にしてしまった分言葉では通用しない。

もう口で言ってもどうしようもない所まで来てしまったのだ。

 

 

「厳顔、それ位にしておけ・・・・・・待ち人が首を長くして待っているぞ」

 

「・・・・・・すっかり忘れていた。紫苑は兎も角、璃々は待たせるとうるさいからな」

 

 

厳顔はそう言って豪快に笑う。

俺は溜息をつき歩を進めようとした。

しかし、後ろで関羽と魏延が今にも斬りかかってくる気配。

俺は左手を上げる。

その瞬間に風を切る音が聞こえ何かが通り過ぎていく。

 

 

「っきゃあ!?」

 

 

聞こえたのは劉備の悲鳴。

 

 

「そこを動くな。動けば俺の仲間の矢が何処に当たるかわからないぞ」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

 

俺はそう告げもう一度左手を上げる。

風を切る音が通り過ぎる。

 

 

「っく!?」

 

 

関羽の呻きと共に何かが折れる音がする。

恐らくは矢を打ち落としたんだろう。

俺は上げた左腕を軽く回す。

すると、風を切る音が不規則に続く。

実の所、矢が当たる事はない。

もし此処で誰かに傷を負わせようものなら無事に成都を抜け出す事は難しくなる・・・・・・。

 

 

「さて・・・・・・厳顔、俺達はお暇するとしよう」

 

 

少し名残惜しそうな厳顔。

それを手で促し、俺達は脱走騒ぎで荒れる成都を悠々と後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがきっぽいもの

 

 

ごめんなさい わかりにくくて ごめんなさい 獅子丸です。

 

前回のコメントで読者様方から複雑だ、わかりにくいとのお声をいただきましたorz

デスヨネー。

自分でもやりすぎだとは思うんですがこう言った構成にしてしまったぶん引っ込みがつかない状況でして・・・・・・。

とりあえず未来軸と現代軸を表す名前を付けてみました。

『赤壁編』、『現代編』、『太史慈放浪編』と安直な名前を(ぁ

前書きでも書きましたが『赤壁編』は戦の状況に主眼を置いた物で伏線などはほぼありません。

問題なのが『現代編』と『太史慈放浪編』です。

この二つ、『現代編』が主軸であり、『太史慈放浪編』は複線の回収と『現代編』への伏線も担っています。

『現代編』と『太史慈放浪編』で伏線を回収して『赤壁本編』へと繋がっているわけです。

回収の仕方に関しては既に『太史慈放浪編』で回収する物もあれば『太史慈放浪編』で伏線が張られ後の『現代編』に繋がる物もあるので。

実質今書いている『赤壁編』は後の『赤壁本編』の前書きと言うことになります(ぁ

満を持して登場する『赤壁本編』を読むときに・・・そう言えば誰々は何かしてたなぁ・・・程度の補足と考えてもらっても結構ですw

実の所、だらだらと赤壁の話数を引き伸ばすのを避けるための処置なので(ぇ

物語の総決算とも言える所なのでバシっと決め手バシッと終わりたい作者の我侭です。

申し訳ありませんがご容赦ください。

上でもかきましたが、『現代編』と『太史慈編』をのみが現状ではリンクしています。

その点を頭の片隅に置いておけば少しは読みやすくなるかもしれませんw

 

 

と言うわけで時間軸。

今回は

 

未来(赤壁)→現代→現代→現代→未来(太史慈編)

 

と言う構成になっています。

 

 

さて、解説に・・・・・・と行きたいところですが、今回から解説を一旦やめます。

『現代編』に関してですが、今回以降『太史慈放浪編』へと繋がる事や逆の事も増えてきます。

ですので解説するにしても作者自ら伏線に触れてしまう可能性が出てきたので・・・・・・。

今回だけは触れますが・・・・・・例えば『あの人』と『あいつ』です。

ね?あるぇ?ってなるでしょう?w

と言うわけなので今後はっきりと回収できた場合だけネタバレを恐れずに解説する事とします。

 

 

と言うわけで、今回はこの辺で。

 

次回も

 

生温い目でお読みいただけると幸いです。

 

 

 

 

 


 
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