No.283033

鋼の錬金術師×テイルズオブザワールド 第三十六話

NDさん

産廃創想話ってSS置き場、見る人を選ぶと思うんだけど。自由でかなり面白い所だと思うんだ。

2011-08-23 20:49:32 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1928   閲覧ユーザー数:1842

~バンエルティア号~

 

気温の高い船の中、エドがアンジュに全てを話した。

 

ノームに聞いた星晶の現状、そして今後の変化等。

 

『なるほどね……。減ったり、増えたり、されには強力な物が突然現れたり……かぁ。』

 

アンジュは、また少しだけ頭が痛くなる。

 

その様子を見て、カノンノが心配をした。

 

『大丈夫ですか?アンジュさん』

 

『いえ……大丈夫よ。それよりもエドワード君……』

 

アンジュが、エドの後ろの人物に指を指す

 

『その……後ろに居るアームストロングさんの隣のもう一人のアームストロングさんは………誰?』

 

アンジュがそう言うと、エドではなく、指を指されたもう一人の筋肉が答えた

 

『おう!!俺か!?俺はリメインズの幹部を務めている、マイティ・コングマンって言うんだ!よろしくな!!』

 

アンジュが、驚いた顔をしてコングマンの顔を見た。

 

『リメインズ……。エドワード君の師匠が居るギルドね…。』

 

アンジュがそう言うと、コングマンは少しだけビビッた表情をして、固まる。

 

『う……。そいつの話は、出来ればしないでくれ……』

 

どうやら、酷い目に合わされたらしい。

 

大体予想がついたアンジュは、納得したように頷いた。

 

『アンジュー。ヴェラトローパの資料の事なんだけど……うわぁ!!ぎゃぁぁああああああああああああ!!!』

 

リタが、研究室から出てきた瞬間、悲鳴を上げた。

 

目の前に、暑苦しい筋肉マンが二人も存在してるのだから。

 

船の中は、いつもの二倍暑苦しかった

 

『よぉ!俺の名はマイティ・コングマンってんだ!よろしくな!!』

 

挨拶されても、リタはコングマンの方を見ず、エドの方を睨む

 

『ちょっとこいつはどう言う事よ!!また物凄いのがこのギルドの中に居るじゃない!!殺す気!?私たちを殺す気なのね!!!』

 

『何をとち狂った事を言ってんだてめぇはぁ!!』

 

リタの妄言に、エドは憤った声を発した。

 

だが、リタは真剣に命の危険を感じているようだった。

 

『エドワード、この錬金術の本の中……うわぁ…』

 

ジーニアスが、部屋に入って真っ先に熱気を感じる。

 

目の前に、筋肉の二人を見て完全に理解した。

 

『エド……この人達……何?』

 

完全に暑苦しそうに、その上のだるそうな声でエドに問いかけた。

 

『よぉ!俺の名は、マイティ・コングマンってんだ!!』

 

『あぁ………うん……』

 

その暑苦しい挨拶で、今にも倒れそうになった。

 

そのせいで、エドに聞きたい事が最早どうでも良くなりつつあった。

 

『エドー!ちょっとこの箒、錬金術で新しくして欲しいんだけどー』

 

アーチェが、笑顔で部屋に入ってくる。

 

そして熱気を感じ、その熱気の根源を見つける。

 

筋肉の二人の視線が、アーチェに向けられる。

 

アーチェは命の危険を感じ、まず表情を取られないように無表情になった。

 

そして真っ先に後ろ歩きで扉の内側まで移動し、

 

そのまま静かに扉を閉めた。

 

『何だ?アドリビドムの奴らはどうにもシャイな奴らばかりだな。』

 

コングマンが、不思議そうに辺りを見渡していた。

 

『それはしょうがない事でしょう。我輩達のような、このような肉体美は常人には近寄りがたいオーラを発する物です。ですが、それで

 

こそ得られた称号ではありませんか?』

 

少佐がそう言うと、コングマンが笑い出す。

 

『はっはっは!まぁその通りだ!俺のオーラは常時噴火する火山のマグマだからな!!はっはぁ!!』

 

その笑いに、ほとんどがマグマのような暑苦しさを感じる。

 

リタが、エドの方に睨みつける。

 

『俺は悪く無えんだよ』

 

お返しに、エドがリタを睨みつけた。

 

二人の睨み合いが始まり、そこで冷戦が始まった。

 

この暑い時に、喧嘩はするものでは無いと思うのだが、

 

とアルは思った。

 

『なんだ騒がしい。静かにしないか。地の流れが……』

 

セルシウスが部屋に入った瞬間、セルシウスは派手にぶっ倒れた。

 

完全なる、熱中症だった。

 

『セルシウスゥ――――!!!!』

 

周りの者が、セルシウスの周りに集まる。

 

『馬鹿野郎!!こんな暑苦しい時にこの空間に入るから……!!』

 

『やばいぞ!手が溶けかけてる!!』

 

『誰か担架!担架持って来い!!』

 

医務室から、ウィルとアニーが現れ、

 

セルシウスを担架に乗せ、タイミングを合わせて医務室まで運んだ。

 

医務室の扉が閉じられるとコングマンは首を傾げた

 

『なんだあいつ?肌が青かったぜ。生まれつきの病気とか持ってんのか?』

 

『むぅ、私も何故倒れたかは見当はつきませんね。』

 

お前らのせいだよ

 

その場に居た全員が、そう突っ込んだ。

 

『……ところでコングマンさん。このアドリビドムに何か御用があったのですか?』

 

アンジュがそう話を切り替えると、コングマンはすぐに答える。

 

『いや!クエスト途中にこいつらに助けられたんでな!お礼参りに来ようと思った所なんだ!』

 

『お礼参り?』

 

コングマンがそう言うと、右手の拳と左手の拳を合わせ、大きな音を鳴らした。

 

『俺は余り大した物は持って無えけどよ、俺に用があったら、いつでもリメインズを頼ってくれ!いつでも駆けつけてやるよ!』

 

アンジュは、その言葉にしばし考える

 

『ええと……それはリメインズの人達、皆を呼び出しても良いって事……?』

 

『おう!その通りだ!出来ることの限りまでなら何でもやってやるぜ!!』

 

つまりは、合併と同じような意味なのだろうか。

 

それは、ありがたいのか、迷惑なのかは良く分からなかった。

 

『……そう。それならありがたく使わせて貰うわね。』

 

アンジュは、そうニッコリと微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コングマンが去っていく時、

 

アームストロングとコングマンは熱い握手をした。

 

『また、どこかで会おう。』

 

『ああ。いつでも協力してやるぜ。』

 

その友情は、端から見れば清清しいのだろうが、

 

間近で見れば、かなりの熱気を感じ、

 

その場だけストーブが置かれているようだった。

 

コングマンが去っていくと、アンジュ達は大きな溜息を吐いた。

 

これで、大きい災難は去った。という事になる。

 

アームストロングも、部屋に戻っていくと

 

その部屋は信じられないほど涼しくなった。

 

『あぁ~~……。災難だったぜ……』

 

エドがそう愚痴をこぼすと、アルは呆れるように溜息を吐く

 

『兄さん、ほらだらしない。』

 

『んぁ……良いんだよ別に。疲れてんのは疲れてんだからよぉ。』

 

エドは、ソファに腰を欠け、両手を大きく広げて独占状態にしていた。

 

そのみっともなさに、アルはまた再び呆れてしまった。

 

『そんな事駄目だよ。ほらちゃんと起き上がって。』

 

アルに言われて、エドは舌打ちをするように立ち上がる。

 

舌打ちをした理由は、立ち上がられたからでは無く、

 

考えていた思考の姿勢を、崩られたからだ。

 

今夜、実行する作戦を、また再び練り直す。

 

ノームに聞いた、星晶の変化、そこで引っかかる部分

 

あれが、もしかしたら……

 

『エド?』

 

考え事をしていると、目の前にはカノンノが居た。

 

『うぉ……どうした?』

 

気づかなかったエドは、少しだけ驚いたが、

 

カノンノは、笑顔でエドの手を引いた

 

『もうすぐ夕ご飯だよ。早く行こうよ。』

 

そう言って、手を引っ張られたエドは、そのまま従うように歩いた。

 

『わ……分かったって。一人で行けるって……。』

 

『そんな事言ってたら、有御飯の量が少なくなっちゃうよ。ほら一緒に行こ。』

 

その光景を見ていたアルは、どうにも気に入らないような感じがした。

 

『エミルゥ!今日の夕御飯、エミルが作ったんだってね!私、絶対食べるから、多くしてね!!』

 

『あぁ……う……うん…。分かった……』

 

向こうで、エミルとマルタが話していた。

 

うんそうだ。ちょうどこの感じだ。

 

アルは、この殺意と怒りが、徐々に兄であるエドの方にも向けている事を感じつつあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

~食堂~

 

『いただきまーす』

 

全員が、食卓に並んで夕御飯を食べていた。

 

その場で、アルだけが、御飯に手をつけていなかった

 

『どうしたのアル、食べないの?』

 

『ああ……。僕は良いんだ。』

 

コレットが心配の声を出すと、カノンノが言葉を発する

 

『だ……駄目だよコレット。アルは……』

 

カノンノの言葉に、コレットは あっ……と言葉を出す

 

『そ…そうだったねアル。ごめんね!』

 

『いや……そんなに謝らなくても良いよ…。』

 

アルはそう言って前を向く。

 

『おっ。じゃぁアルの分は俺が貰うな。頂き!』

 

リッドは、それを狙ったかのようにアルのステーキを取った。

 

『おいリッド!卑怯だぞ!!そんな唐突に取るなんて!』

 

『早い物勝ちだ!へへへ……』

 

その様子を見たアルは、ただ苦笑いをするだけだった。

 

そして兄であるエドの方を見ると、エドはもう全て食べ終わっていた。

 

ある物を除いて

 

『……兄さん。カフェオレ残してる……。』

 

アルがそう言うと、エドはまた固まる。

 

そして、文句を言うように食堂の奥に届くよう、叫んで文句を言った

 

『おい!!ロックゥゥゥゥゥス!!!俺の場所に牛乳置くなっつってんだろうがぁぁあああああ!!!』

 

『いえ、それは牛乳ではございませんよ。カフェオレという飲み物です。』

 

『コーヒーはコーヒーだけで十分だ!!どうして飲み物にサタン白濁色液体を流し込む必要があるんだ!悪魔の発明かぁあああ!!!』

 

『おい、牛乳も立派な飲み物だぞ』

 

エドの言葉に、ユーリが突っ込む。

 

だが、エドは反省しないようにふてくされた

 

『飲みなよ兄さん。折角作ってくれたんだからさ。』

 

『いーや!絶対飲まん!!前にも似たような物食わされたが、これはほとんど”直”に近い!!無理だ!!!!』

 

エドの我がままに、アルは大きく呆れる。

 

前に居たジーニアスは、それを気づいて手を伸ばした

 

『え?エド、カフェオレ飲まないの?じゃぁ僕に頂戴』

 

そう言って、ジーニアスはエドに置いてあったカフェオレを取り上げ。口に運んだ。

 

その光景を見て、アルは あっ と小さく声を出した

 

飲み干したとき、ジーニアスは満足した笑顔になる

 

『ぷはー。やっぱり味がある飲み物は美味しいよね。』

 

そう言った後、アルは少しだけ注意するように言った

 

『駄目だよジーニアス君。こういう時は、兄さんにはちゃんと飲ませないとさ。』

 

『え?だって飲みたくないって言ってる物が自分の好物なら、僕だって飲みたいんだからさ。』

 

『それはそうだけどさ……』

 

エドは、目の前に牛乳が無くなった事で、上機嫌になっていた

 

『そうそう、ジーニアスの言うとおりだぜ!要らねぇ物は要る奴に渡したほうが、よっぽど効率が良いってもんだ!』

 

『もう、兄さんはちゃんと牛乳飲みなよ。』

 

『小さいままに……なりますよ』

 

『うるせぇ!!』

 

アルとプレセアの突っ込みに、エドは反発するように答える。

 

『まぁまぁ、そんなに喧嘩していただかなくても……。飲み物の御代わりは、いくらでもありますから。』

 

ロックスの言葉に、アルは安堵する息を吐いた

 

『そうですか。良かった。それじゃぁ兄さん。早速……』

 

エドは、目にも止まらぬ速さでもう既に食堂の扉から廊下へと飛び出していた。

 

その速さに、アルは呼び止めるのが遅かった

 

『ごちそうさまでしたぁあああああ!!』

 

『ちょっと兄さぁぁぁぁぁあああああん!!!』

 

その時のエドは、本当に必死の顔だったという。

 

 

 

『ああロックス、飲み物のお代わり頂戴。』

 

『はい、かしこまりました。ジーニアスさん。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~エドとカノンノの部屋~

 

就寝の時間、エドはそくささとベッドに入り、眠る準備をする

 

まるで、誰とも関わらないかのように、布団を被る

 

『んじゃ、おやすみ』

 

エドはそう言って、布団に潜り込んだ。

 

『兄さん、これからどうするの?』

 

アルは、予想外に質問をしてきたため、少しだけエドの姿勢がずれる

 

だが、その状態で少しだけ持ち直し、話を聞く体制になる

 

『ん?何がだ』

 

『いや……。これから起こる、ラザリスの世界の事もそうだけど。僕達、元の世界に帰れるのかなって……。』

 

アルがそう質問をすると、その部屋で沈黙が起こる。

 

そこで、カノンノが悩みだす。

 

布団で背を向けている為、エドとアルには表情が見えないが

 

カノンノは、かなり複雑な表情をしていた。

 

このまま、エドが出て行けば、多分もう二度と出会えない。

 

そうなる事が、少しだけ怖かったのだろう。

 

『……今はそんな事考えなくて良い。それよりもこれからのジルディアの世界の侵食の事だろ』

 

『でも、早く帰らないと機械鎧だって不調が起こったとき、ここでは修理できないし。そにれウィンリィが……』

 

ウィンリィという言葉に、エドは反応する、

 

『どうしてそこでウィンリィが出て来るんだよ!』

 

『だって、きっとこの世界の時間の流れが僕たちの世界の流れと違う場合、きっと心配してるよ。』

 

そのウィンリィという言葉の反応に、カノンノは聞き逃さなかった。

 

カノンノと、イアハートが半分起き上がり、エドの方を見つめる

 

『ねぇエド、その……ウィンリィって人は、誰?』

 

少しだけ不安な表情をして質問をしていたカノンノは、俯きながら質問をした。

 

その質問に、エドは少しだけ焦って答える

 

『いっいやっ!別になんて関係も無えよ!あいつとはただの幼馴染ってだけだ!むしろ今まで忘れてたくらいなんだからよ!!』

 

必死にウィンリィの事を全否定するエドに、アルは言葉を発する

 

『兄さん、それは酷いよ!!いつも機械鎧を手入れしてくれていたのはウィンリィでしょ!!』

 

『ああそうだ!手入れさせてもらってたさ!だけどなぁ!!幼馴染のくせに金をまけもしねぇんだぞ!可愛げも何も無えっつうの!!』

 

さらにエドは、話を続けた

 

『それにあいつは汽車で来れば汽車代とか言ってチョクチョク金請求してくるし!セントラルでは遠慮なく土産を俺の金で買わされた上

 

に!荷物持ったのほとんど俺だぞ!!そんな奴の事なんかなぁ!!』

 

エドの話に、カノンノは少しだけ微笑んだ。

 

イアハートも、可笑しい話を聞いているかのように少しだけ笑い出す。

 

『ははは。そのウィンリィって人と、エドとアルは仲が良いんだね。』

 

『ちょっとだけ……羨ましいかな……。』

 

だけど、二人とも少しだけ悲しそうな顔をしていた。

 

エドは、その悲しそうな雰囲気が理解できず、

 

二人は何か、別の不安を感じていると感じた。

 

アルは即座に理解し、エドを睨みつけたが

 

『………。今は思い出話なんかしてられねぇんだ。明日も早い。俺はとっとと寝るぞ』

 

エドはそう言って、無理やり布団に潜った。

 

それを見て、アルはその場で立ち上がる。

 

『うん。じゃぁおやすみ。兄さん、カノンノ、イアハート』

 

そう言って、部屋の電気を消した。

 

部屋の電気が暗くなる。

 

その部屋に、静寂が生まれた。

 

その静寂の中で、皆は安らかな睡魔に襲われ、ゆっくりと眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カノンノとイアハートが寝静まった頃、

 

エドは目をパッチリ開け、その場で立ち上がる。

 

そして部屋を出ようと、出口へと向かった

 

『兄さん、どこ行くの?』

 

アルがそう呼びかけると、エドはそこで立ち止まる。

 

そして振り向き、笑顔で答えた。

 

『エステルに、この時間からの修行を頼まれてんだ。だからしばらくしたら戻ってくる。だから待ってろ』

 

兄のその言葉に、アルは少しだけ不審に思う。

 

『僕も行くよ』

 

『お前は残ってろ。カノンノ達を守ってやれ』

 

エドの言葉に、アルはキョトンとする

 

『守るって……』

 

『じゃ、そういう事だから』

 

エドはそう言って、部屋から脱出する。

 

そんな無責任の兄を見て、アルは溜息を吐いた

 

『しょうがないなぁ。全く』

 

そう言って、エドの言葉を信じては居ないが。

 

兄のエドを信じて、この部屋で待機する事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~エステルとユーリの部屋~

 

エドが扉を叩くと、中から声が聞こえる

 

『ボスチア』

 

ユーリの言葉が返ってくる。

 

その言葉に、エドは言葉を返す

 

『ドッカーン』

 

『入れ』

 

合言葉を言ったエドは、鍵を開けた扉を

 

ユーリの言葉の通りに、扉を開けた

 

『いよいよ、今夜ですね。師匠』

 

エステルが、真剣な目でエドを見つめる

 

『………なんでお前が居る』

 

エドの目線には、一人の少年が居た。

 

新人なのに偉い顔をしている、リオンだった

 

『ウリズン帝国の話は聞いている。僕もあの帝国には借りがあるからな。出来る限りの事は協力させてもらうよ』

 

リオンの言葉を聞き、エドは不穏と怒りの混ざった顔でエステルを睨みつける

 

『……………』

 

その視線の迫力に、エステルは目を逸らした

 

『す…すみません師匠……。バッグを見られてしまいまして………』

 

エステルの話に、エドは溜息を吐いた。

 

よりによって、リオンに聞かれたとなると

 

また、面倒くさいクエストになりそうだと考えた。

 

『それで、君の書いた計画書を見たのだが、本当にこれで上手く行くのか?そして本当にこれで良いと思ってるのか?』

 

リオンの言葉に、エドは面倒くさそうに答える

 

『そもそも、午前5時までには船に戻る必要がある。今は何時だ?』

 

エドが問うと、アスベルが答えた

 

『今は、午後の11時となっている。』

 

『そう言う事だ。時間はもう6時間ちょっとしかない。それだけの短い時間に、余計な事は必要無えんだよ。』

 

エドの言葉に、リオンはしばし黙り込む。

 

だが、やはりまだ何か納得がいかない顔をしていた。

 

やはり、こいつとは馬が合わなそうだ。

 

『エステル、バッグはどこだ』

 

エドがそう言った瞬間、エステルはしばし慌てだした。

 

『ええと……バッグバッグ……あっ!』

 

エステルは、驚くように声を出した。

 

飼っているミアキスの下に、そのバッグがあったのだ。

 

『駄目ですプリルちゃん!危ない!!』

 

エステルは慌ててプリルを抱き上げ、そのバッグから離れさせる。

 

エドも慌てて、そのバッグを取り上げた

 

『……ったく。とんでもねえ奴だな……。』

 

エドは、エステルを睨みつける。

 

『ごめんなさい…』

 

エステルは、謝罪するように俯いた姿勢になった。

 

その様子に、アスベルは慌てる

 

『エドワード君!エステリーゼ様にそんな無礼は……!!』

 

『よしてくださいアスベル。これは私の責任です。それに……私に師匠を叱咤する権限なんて持って居ないのです……。』

 

エステルの言葉に、アスベルはしばし黙り込む。

 

船の中で学んだのか、アスベルは大人しくなる

 

『……分かった。ここは黙りましょう。』

 

その言葉に、エドはただ頷いた。

 

『……さて、今はもう時間がないから、無駄話は終わりだ。今からウリズン帝国に行くぞ。』

 

エドの言葉に、この部屋に居る者は真剣になる。

 

『カロルは?』

 

エドが言うと、ユーリが指を指した

 

『寝てるぜ』

 

そこには、丸まって寝息をして気持ち良さそうに寝ているカロルが居た。

 

それを見てエドは呆れたが、その場まで歩いてカロルに声を駆ける

 

『おい起きろ、真実を知りたいって言っただろ。』

 

エドが少し大きめの声でそう言うと、

 

カロルの寝息はさらに大きくなる。

 

イラッと来たエドは、

 

鋼の左足でカロルを踏みつけた。

 

『ぐぼぉ!!』

 

変な音と共に、カロルの悲鳴が響く

 

『起きろ!!てめぇの国の真実を知りに行くんだろうがぁ!!』

 

腹を押さえながらもだえ苦しむカロルに、エドは怒りの声を出す

 

『ごほ……!えっ……し……真実……?』

 

カロルが、その場で咳払いしながらも言葉を出す

 

『おいおい、やりすぎじゃねえか…?』

 

ユーリが、呆れた声で溜息混じりに言葉を吐いた。

 

カロルが、少しだけ戸惑う形で腹を押さえながら考えた。

 

『……でもさ、今日は……あれだよ。国の命令で、国民誰一人ウリズン帝国王都から出て来れないんだよ…。そんな所で、どうしろって

 

のさ。』

 

カロルの言葉は、前にも聞いていた。

 

その日だけは、活動しにくいと言う事で、カロルは止めるよう勧めていたが、

 

エドは、その事に逆に利益を考えていたのだ。

 

『馬鹿かお前は。そんな時こそ、面白い事が起こるんだろうが』

 

そう言って、エドは面白そうな顔でカバンを取り出した。

 

カバンの中は、機械の屑のような……鉄くずばかりだった。

 

中には銅線、さらには花火の材料までもがある。

 

『そんなもん持ってきて、どうすんのさ。』

 

カロルの言葉に、エドは笑顔になる

 

『いや、これで良いんだ。これで、真実を知ることが出来る。』

 

エドは、嫌らしい笑顔になっていた。

 

カロルは、その嫌らしい笑顔がなんだか不気味に感じた。

 

『それで、行く者は決まってるのか?』

 

ユーリがそう言うと、エドは表情を戻し、その質問に答える

 

『お前は自由だ。来なくても良いし。来ても良い。』

 

『……あいつのは借りがあるしな。行ってみるのも良いかもな』

 

ユーリがそう言うと、アスベルも同じように答える

 

『それじゃぁ、僕も行こう。ウリズン帝国の真実には僕も興味がある』

 

アスベルが言った後、エドの後ろで声が聞こえる

 

『…アスベルが行くのなら、私も行く』

 

『いっ……ぎゃぁぁぁあああああああああああああ!!』

 

いきなり後ろで囁かれたエドは、驚いて尻餅をついた。

 

その実感を得て、エドはこいつがプレセアと似ていると悟った。

 

『居……居るなら居ると言ぇえ!!』

 

ソフィにビビるその情けない姿に、全員は更に不安を感じた。

 

『師匠!私も行きます!』

 

『お前は駄目だ!』

 

エドは、エステルに対してはあっさりと答えた。

 

その答えに、エステルは不満を持っているようだった。

 

『どうして!?』

 

『足手まといだ!!』

 

『同感だ』

 

エドとリオンの言葉に、エステルは大きく心に傷が付いた。

 

部屋の隅で、体育すわりをして、子供ミアキスをじりじりと撫でていた。

 

その姿に、アスベルは不安を感じる。

 

アスベルは、エステルの元へと歩み寄り、声をかけた

 

『エステリーゼ様。きっとエドワード君はエステリーゼ様の身を案じて、残らせたのだと思います……ですよね?エドワード君。』

 

アスベルの言葉に、エドは真剣に考える。

 

しばらく考えても、どうしても答えが出なかった。

 

『いや、そいつは間違いなく足手まといになるだろう。』

 

リオンが、容赦なく答える。

 

エステルの口から、聞き取れない言葉がブツブツと呟かれる。

 

その様子に、さらにアスベルは不安になった。

 

『……しゃーねぇなぁ。んじゃ。俺は残るわ』

 

ユーリはそう言って、その場で座り込んだ。

 

『ユーリ?』

 

『居なくなった時に、アンジュとかがここの部屋に来た時の言い訳には、俺が居た方が最適だろ。なぁエド?』

 

ユーリがそう言うと、エドは納得した声を出す。

 

『ああ。そうだな』

 

『というわけだ、お前ら5人、とくと頑張って来い。』

 

ユーリがそう言うと、

 

エド、リオン、カロル、ソフィ、アスベルの5人は、

 

立て続けに部屋から出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

『行くぞ。』

 

エドは、船の出口に手をつける。

 

全員の覚悟は、もう承知の上だった。

 

ここから、エド達のミッションが始まる。

 

ウリズン帝国の、真実を知る為のミッション。

 

だが、

 

カロルが、その場で一瞬だけ物凄く悪い予感がした。

 

『………』

 

カロルの様子に気づいたエドが、振り向いて声をかける

 

『?……どうしたカロル』

 

『あ………いや、なんでもない』

 

その悪い予感が、それは自分達の身に降りかかるとは感じていない。

 

だけど、その悪い予感は、確かに大きく、そして多く存在した

 

扉が開かれる。

 

扉の向こうに、ウリズン帝国への道のりがあった


 
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