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真・恋姫†無双 真公孫伝 ~雲と蓮と御遣いと~ 1―12

真・恋姫†無双 真公孫伝 ~雲と蓮と御遣いと~ 1―12
更新させていただきます。

今回は黄巾討伐の序章続きです。

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2011-08-23 16:26:27 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:10644   閲覧ユーザー数:6527

 

 

 

この作品は恋姫無双の二次創作です。

 

三国志の二次創作である恋姫無双に、さらに作者が創作を加えたものであるため

 

人物設定の違いや時系列の違い。時代背景的な変更もありますので

 

その辺りは、なにとぞご容赦をお願いいたします。

 

上記をご理解の上、興味をお持ちの方は 次へ をクリックし、先にお進みください。

 

 

 

 

 

 

 

「ほ、北郷殿!」

 

黄巾党討伐のため、軍の編成をしていた一刀に後ろから声が掛けられる。

兵たちへの指示を中断し後ろを振り向くと、先だって客将という形で参入した三人、

三国時代の英傑である劉備、関羽、張飛の三人が立っていた。

改めて言うまでもないだろうが、三人とも可愛い。

 

「お、関羽さん達。星の案内終わった――あ、真名じゃ分かんないか」

 

「いえ、案内の最中にお互いに真名を預けたので問題はありません」

 

生真面目に関羽が答える。

 

「早っ!?あれかな、英雄同士はなにか惹かれあうものでもあんのかな」

 

「え、英雄?」

 

「あぁ、ごめん。こっちの話」

 

まだ英雄と呼ばれるほどのなにかを成していない三人にそういう呼称を付けて呼んでも戸惑うだけ。一刀はそう判断して話を煙に巻いた。

 

「なんかお兄ちゃん変な人なのだ!」

 

「こら鈴々、失礼だぞ!」

 

慌てた様子で張飛の口を塞ぐ関羽。

その光景が微笑ましく、つい笑顔になる一刀だった。

 

「別に良いよ。自分で言うのもアレだけど確かに変だからな、俺。えーっとそれでだ、なんか俺に用だった?」

 

「え、えっと……その……お礼を」

 

「お礼?」

 

劉備の口から出てきた言葉に、一刀の脳内に疑問符が浮かぶ。

見れば、関羽と張飛もその言葉に頷いていた。

そして

 

 

「雇ってくれてありがとうございました!」

「本当に助かりました」

「ありがとーなのだ!」

 

 

三人が三人とも、揃って一刀にむかって頭を下げる。

 

「え?ちょ?」

 

突然のことに驚く一刀。

この光景を客観的に見ると、自分がいたいけな女の子三人に頭を下げさせている鬼畜野郎に見えるのはなぜだろう。

 

「正直、北郷殿がお言葉添えして下さらなければ客将として動くことはままなりませんでした」

 

「いや、お言葉添えって……俺、そんな大層なことしたつもりはないんだけど。一応、ギブアンドテイクだったし」

 

文官、北郷一刀としてはこの三人を加えれば各将の負担が減らせると考えただけで、正直打算で動いた結果ゆえだった。

……まぁ、個人的にほっとけなかったってのもあるけど。

 

「でも結果的に助けてもらったのだ!」

 

「そうですよー!」

 

関羽に便乗し、劉備と張飛も一刀に感謝をする。

流石にここまで持ち上げられると背中が痒くなってくるな、と一刀は思う。

 

「感謝なら白蓮にしてあげてくれよ。俺は一応、文官としてあの話を持ち出したわけだけど、多分白蓮だったら全然そんなの関係なしに劉備さん達を迎え入れただろうからさ」

 

自分の恩人。自分の主。

公孫伯珪なら迷わずそうするだろうと一刀は思う。

ここに来てから一年も経っていないが、素直にそう信じることができた。

 

「そうですか……なら、公孫賛殿には改めて感謝の意を表すことにしましょう。戦働きで存分に!」

 

「うん。頼りにしてるよ。劉備さん、関羽さん、張飛ちゃん」

 

声勇ましく高らかに声を張り上げる関羽を見て一刀は頼もしさを覚えると同時に、自分はまだまだだな、と自嘲気味に苦笑した。

 

 

「あ」

 

その関羽の傍ら、劉備が何かに気付いたように声を上げた。

 

「桃香さま?」

 

「ねぇねぇ愛紗ちゃん。北郷さんに真名を預けようと思うんだけど……良い?」

 

少し不安そうに関羽を見る劉備。

義姉妹としての長姉は劉備だが、やはり大事な決定は関羽に意見を求めるのか。

それは日常茶飯事のようで、関羽はたいして間を置かずに答えた。

 

「わ、私に聞かれてもですね……、桃香さまが北郷殿のことを真名を預けるに足ると御思いならば構わないと思いますが」

 

「だよね!やっぱり愛紗ちゃんは頼りになるなー」

 

「お姉ちゃんはもう少し自分で判断した方が良いと思うのだ」

 

にゃははー、と快活に張飛が笑い、その言葉に劉備が少しだけしょんぼりした顔になる。

それとは対照的に

関羽はなぜか少し頬を赤く染め、わざとらしく咳払いし一刀の方をちらちらと気にしていた。

 

 

「それじゃあ改めて!姓は劉、名は備、字は玄徳、真名は桃香って言います!」

 

「鈴々は張飛なのだ!でもって翼徳で、真名は鈴々なのだ!お兄ちゃんよろしくなー」

 

「わ、私は関羽。字は雲長。真名は愛紗です。改めてよろしくお願いします、北郷殿」

 

 

三人の名乗りが終わったところで、フリーズしかけていた一刀の脳が正常に戻る。

可愛い女の子三人が目の前に居るという時点で大分アレなのだが、それなりに好意的であり、さらに真名まで許されるという好待遇。

なにがどうなってこうなったのかは謎だが、真名を預からせてもらう以上、こちらも胸襟を多少開かないといけない。

 

「ご丁寧にありがとう。姓は北郷、名は一刀。真名は無いから好きな方で呼んでくれ。んじゃ改めて、桃香、愛紗、鈴々。白蓮のためにもよろしく頼むよ」

 

そう言って礼を返した瞬間、再び脳内にノイズが走った。

 

 

 

一人……多い……?

 

 

 

彼女等と会った時と同様に、そのノイズは一瞬でどこかに消えさり、一刀の意識の中にはノイズが走ったなどという事実は一欠けらも残ってはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「殿―!」

 

そこに元気ハツラツな声が響く。

 

一刀が後ろを振り向くと、その声の発声元である舞流と、やれやれといったふうに舞流を見る燕璃が歩いてくるところだった。

 

「お、舞流に燕璃。編成は終わったか?」

 

「えぇ、今のところ問題はありません。メン……趙雲殿にも手伝ってもらいましたので」

 

相変わらず溝は埋まって無いようで、燕璃はめずらしく嫌そうな表情を作って報告する。

そのことに苦笑いしながら、一刀はふと愛紗と舞流を見る。

関羽と周倉。

史実では主従だったこの二人。なるほど、よく似ている。凛々しいとことかそっくりだ。

頭まで一緒だと困るけど。

 

「関羽殿も堰月刀を使うのでござるか」

 

「あぁ、そういう周倉殿も中々の使い手と見た。この戦が終わったら、一勝負頼めるか?」

 

「それは願っても無い。負けないでござるよ!」

 

さっそく意気投合したようで、二人の間には穏やかだが猛々しい、武人特有の雰囲気が漂っている。

 

「へ~!裴元紹さんは涼州の出身なんですか~」

 

「えぇ、本来は南下して成都にでも行こうかと思っていたのですが、どういうわけか東にむかって歩いていたらしく、いつのまにやらこんなところにまで」

 

「ほーこーおんちなのだ!」

 

「なっ!?だ、断じて違います!私が方向音痴など、そんなことあるわけが……」

 

燕璃は燕璃で天然&悪気のない正直者の二人と話している。

方向音痴と指摘され、一瞬慌てたもののすぐに動揺を押し隠した。

だが、思い当たる節は多少なりともあるようで、すぐに小声で

 

「そんなバカな…私が…方向……?」

 

なんてぶつぶつ呟いている。

……というか自覚無かったのか。

 

 

 

 

 

その後一旦、女性陣と別れた一刀は仕事がニ、三残っていたのを思い出し、書庫にむかう。

 

「あれ?」

 

誰もいないと思っていた書庫に人影が。

眼鏡を掛け、理知的な雰囲気を醸し出している少年は書庫の入り口で立ち止まっている一刀の存在に気付いたようで、ふと本から顔を上げた。

 

「おや、これはすいません。気付くのが遅れてしまいました」

 

「あ、あぁ」

 

微笑を浮かべる少年に、なぜか気おくれを感じる一刀。

物腰と口調は丁寧だが、なにかが違った。腹の中に一物抱えている感じとでもいうのだろうか。

 

「申し遅れました。今日からこの城で文官としてお世話になる于吉と申します。以後よろしくお願いしますよ、北郷一刀殿」

 

眼鏡を掛けた物腰柔らかな少年――于吉は薄く微笑み一刀に一礼した。

 

それと同時に一刀の背中に悪寒が走る。

 

蛇に睨まれた蛙というか、その類いの恐怖。

怖さではなく気持ち悪さといった感じであった。

 

「あぁ、よろしく。えっと……于吉か。よし、覚えた」

 

「では、お仕事の邪魔になるといけませんので、私はこれで」

 

そう言って会釈をしながら一刀の脇を通り過ぎる傍ら

 

 

「同じ陣営同士、仲良くやって行きましょう。……この世界では、ね」

 

 

そう呟き、何事も無かったように軽い足取りで去って行った。

 

残された一刀は風のように去った新たな同僚を見ながら、なにか言い知れぬ不快感を覚えていた。言うなれば、誰かの掌で踊っているような、そんな不快感。

しかし、それを詳しく噛み砕く時間は無い。ましてやその感覚の意味も今の一刀には分からない。

 

とはいえ、いつまでも呆けているわけにもいかず、出陣までの残り時間。

残っていた仕事を速攻で片付け始める一刀であった。

 

 

 

 

 

 

「でも珍しいよね、愛紗ちゃん」

 

「は?突然なんですか、桃香さま」

 

前を歩く桃香さまに突然話を振られ、間抜けな声が出る私。

 

「さっき一刀さんに真名を預けても良いか、って聞いたでしょ?最終的には愛紗ちゃんも同意してくれると思ってたけど、一回は反対されると思ってたから」

 

「なるほど。そういう意味ですか。確かに反対しようとは思いました。……ですが」

 

少し言葉に詰まる。なぜか北郷殿を見た時、真名を預けるのを拒否するのはとんでもない愚行だと思う自分がいた。

彼に真名を預けることこそ、自然だとでも言うかのように。

 

と、同時に

一瞬、彼の笑顔に心奪われる自身がいたことなど、どうして吐露できよう。

一瞬の気の迷いと考え、その残影を振り払う。

それに、珍しいと言えば鈴々だってそうだ。

 

「鈴々。そういえばお前もずいぶんと無警戒に真名を預けたな」

 

横を歩く背の低い義妹、鈴々に問いかける。

 

鈴々は頭があまり良くないが、感覚というか直感というか、野生の勘は群を抜いている。

その感覚にどれほど助けられたか。

戦場でも、日常生活の買い物でも。かなり幅広く。

だからこそ解せない。今回の鈴々には傍から見ても警戒心というものが全くと言っていいほど無かった。

 

「ん~……鈴々もよく分かんないのだ。でも、あのお兄ちゃんは信用できるのだ」

 

いつになく冷静な表情で淡々と述べる鈴々。

だが、それをも当たり前と思える自分がいるのもまた事実。

 

この感覚は一体何なのだろうか――

 

明確な答えを出せないまま廊下を進んでいくと、正面から人が歩いてくる。

文官であろうその少年は、こちらに気付くと軽く会釈をし、私達の脇を通り過ぎる。

 

そのすれ違いざま

 

 

ゾワッ……!!

 

 

全身の血が沸騰するかのような感情のうねりが私を襲った。

この感情を言葉に表すとするなら――怒り。

 

「おい!」

 

気がつけば私は

ぶしつけにもほどがある言い方でその少年を呼び止めていた。

 

 

「あ、あの、すいません。僕、なにか気に触るようなことをしたでしょうか……」

 

その少年が振り返る。

怯えているのでは無く、申し訳なさそうな表情をしてこちらを見ていた。

 

それと同時に

自分の中の怒りが急速にしぼんでいくのを感じる。

急に怒りの感情を感じたのと同じように。

 

「……あ。す、すまない。なんでもないんだ」

 

「は、はぁ……。そう…ですか」

 

その少年はぶしつけに呼ばれたのにも関わらず、今一度こちらに会釈をし、廊下の奥に消えていった。

 

「あ、愛紗ちゃん。どうしたの?」

 

「いえ、なんでもありません。……なんでも」

 

 

ここに来てから自分が自分で無いような感覚がある。

今のもその一種なのだろうか。自問自答しても答えを見いだせないことに、もやもやした感情を抱きつつ、さきほどの少年に見覚えがあるような気がする愛紗。

 

しかし、考えても考えても霧に飲まれるが如く答えは出ない。

いつしか濃霧になった自分の胸中の感情を無理やり押し込め、黄巾党との戦に意識を割いた。

 

 

 

 

 

 

城外

 

 

壮観というほど数は多くないが、隊列を乱さずに整列している公孫賛軍。

それぞれが思い思いの表情をし、これから始まる戦いに思いを馳せている。

 

隊を束ねるのは五人。白蓮、星、舞流、愛紗、鈴々。

一刀、燕璃、桃香は白蓮と共にとりあえず本陣待機。

いわば、不測の事態が起こった時のための遊撃部隊である。

 

 

整然と立ち並ぶ兵たちの前に白蓮が進み出た。

 

 

「幽州の精鋭達よ!我らはこれより悪逆非道を尽くす黄巾党の討伐にむかう!……彼らの多くは元はこの幽州の民だ。だが、人であることを止め獣になり下がってしまった彼らを私は討たなければならない。この時勢、人であることを止めないで必死に生き抜こうとする者達のためにも!そして明日も皆で笑って暮らすためにも!」

 

 

「出陣!!」

 

 

「「「「 おぉぉぉぉぉ!!!! 」」」」

 

 

絶妙なタイミングで星が号令を掛けるとの同時に、兵達が鬨の声を上げる。

その様子を見て、一刀は自分の身体が震えているのを感じた。

 

これから起こる戦という名の人殺しに対しての恐怖から来るものではない。

あまり喜べるものではないが、白蓮の檄から感じ取った覚悟に当てられた武者奮いだった。

 

 

黄巾賊討伐。

これが北郷一刀にとって初めての大きな戦。初陣となる。

まっすぐ前を見据える一刀の腰には、木刀。

そしてもう一本。細身の剣が差さっていた。

 

 

 

 

 

 

【 あとがき 】

 

 

 

 

真・恋姫†無双 真公孫伝 ~雲と蓮と御遣いと~ 1―11

【 黄巾党討伐・序 】

更新させていただきました。

 

 

最近、急な気温の変化によるものなのか、体調があまりよろしくない作者です。

不調によるものか、はたまたインスピレーションの無さによるものなのか、頭の中で大まかな構図は出来上がっているものの、それを上手く文章にできないという状況に陥ってしまっています。

そのテンションが示す通り、今回のあとがきはネガティブ極まりないです。すいません。

 

 

さて、とりあえず出陣までを書いたのですが、なんかペース早いですね。

そして白蓮は最後しか見せ場が無いという扱い。なんか刺されそうな気がする。

真公孫伝は白蓮の地位向上のためでもある作品ですが、超頻繁に白蓮が出てくるわけでもありません。

もちろん、メインヒロインは白蓮ですけどね。

 


 
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