「恋姫らぢおーっ!」
「美羽さまのお部屋~」
♪BGM【はじまりは突然に】
「この番組はお嬢さまの、お嬢さまによる、お嬢さまのためのらぢおです。かわいらしいお嬢さまをひたすら愛でようというコンセプトのもとに構成された番組なので、他にお気に入りのヒロインがいる方は今すぐに回れ右しちゃってくださーい」
「七乃ぉ」
「はい、なんでしょう?」
「『恋姫らぢお』とは一体なんなのじゃ?それに妾の部屋というが、こんな狭い部屋、妾は知らんぞ」
「そうですねぇ~。お嬢さまもわからないことだらけでしょうし、順番にお答えしますね。まずこの恋姫らぢおですが……実は、忠義の兵を募るために私が編みだした新たな策なんです」
「ほうほう」
「今まで通り方々を渡り歩いて、各地で少しずつ兵を獲得していくのもいいんですけど、それだとやっぱり手間がかかってしまうと思いまして」
「ほうほう」
「なによりお嬢さまの魅力に気づいていない者が多すぎる!――ということで、お嬢さまの魅力を一箇所から大陸中に広く発信できるこの方法を思いついたわけです」
「なるほどのう。それは確かに優れた良策なのじゃ。で、具体的にはどうしたらいいのかの?面倒なことだったらあんまりやりたくないのじゃ」
「ふっふっふー。そこがこの策の優れたポイントなんです。なんとこの恋姫らぢお、ここでおしゃべりをするだけでいいんですよ」
「しゃべるだけでいいのかえ?」
「しゃべるだけでいいんです。実はここで話した内容は、全て包み隠さずに各地の村々へと届く仕組みになっているんですよ」
「なぬっ!?それはまことかや!?」
「はい~。だからお嬢さまはここでいつも通りにおしゃべりして、いつも通りの魅力を存分に発揮したら、らくらく~と兵が集まってくるというわけです」
「うむうむ、確かにらくらく~じゃな!」
「それに加えて、ここは『美羽さまのお部屋』。お嬢さまの名前をわざわざ銘打っているだけあって、この空間ではお嬢さまの魅力が倍増する!」
「妾の魅力が倍増!?」
「お嬢さまがその気になれば、倍率ドン!さらに倍!」
「さらに倍!?」
「にばいにばーいで四倍に!四倍すら通り越して、その可能性、もはや無限大ッ!」
「おぉっ!?」
「……とはいっても、あんまり気張りすぎると早々にバテちゃうだけなので軽く構えて――」
「なんだかやる気がふつふつとわき上がってきたのじゃ!」
「――って、今さら言ってもムダですよね~」
「にばいにばーい!」
「まぁ初回ですし、お試しってことで、とりあえず今日はこの調子でいきましょうか」
「にばいにばーい!」
「……にばいにばーい!」
「にばいにばーい!」
「にばいにばーい!」
『この番組は、「あなたの暮らしに幸せのひとしずくを」チャイナネットかたかたグループの提供でお送りします』
○●○●
「……恋姫らぢおーっ!」
「お嬢さま、違いますよ。その下です」
「ん?どこじゃ?」
「えーと……」
カサカサッ。
「ここですね」
「ここじゃな。んと……『ふつおた紹介』のこーなー」
♪BGM【あの娘に首ったけ】
「ふつおたってなんじゃ?」
「普通のお便りの略、ですね。ここにある書簡をテキトーに読んでいただいたら結構ですよ」
「読むだけでいいのかや?」
「はい、とりあえずは」
「それはまた、らくらく~じゃな!これで兵が集まるなら最初からそうすればよかったのう」
「ですねぇ~」
「じゃあ、読むとするかの」
カサカサッ。
「ふむふむ……」
カサッ。
「ふーん……」
カササッ。
「ほぉー……」
カサッ。
「……お嬢さま?」
「ん。なんじゃ?」
「なにしてるんですか?」
「七乃が言ったとおり、テキトーに読んでおるぞ」
「いや、そうじゃなくて。声にださないと」
「声にださないといけないのか?」
「ふつおた紹介のコーナーですし。紹介しなくちゃダメですよ」
「なるほどのう。それは盲点だったのじゃ」
「今読んだ何枚かはもういいですから、早く次の読んじゃいましょ」
「今のは読まなくていいのかや?」
「だって一回読んだのじゃ面白くないじゃないですか」
「それもそうじゃな」
ポイッ。
「上のらぢおねーむのところからお願いしますね」
「うむ!『らぢおねーむ、ゴマ団子。美羽様、七乃さん、こんにちは。さっそくですが、ぼくは甘いものが嫌いです。もちろんハチミツなんて、甘すぎるうえにべたべたしていて一口も食べることができません。でも美羽様はハチミツを平気で食べてますね。僕には一生理解することができないと思いますが、美羽様にとってのハチミツの魅力ってずばりなんなんでしょうか。ぜひ教えてください』……なんじゃ、これ?」
「なんか言い方にトゲがありますよねぇ。ゴマ団子のくせに、甘いものに恨みでもあるんでしょうかね」
「知らん!こんなやつに教えることなんかなにもないのじゃ!」
ポイッ。
「でも、お嬢さまって本当にハチミツ好きですよね。なにか特別な理由でもあるんですか?」
「……ふっふっふー。もちろんあるぞよ」
「えーっ!その理由ってなんですか?私、知りたいなぁ」
「うーん、そうじゃのぉ~……じゃあ七乃だけには特別に教えてやるとするかの」
「わぁ、ありがとうございます!さすがお嬢さまは気前がいいですねぇ」
「にゃははっ!そうじゃろそうじゃろ!」
「で、なんなんですか?理由って」
「うむ、それはじゃな……」
「わくわく」
「それは、じゃな……」
「わくわく」
「……甘いからじゃ!」
「……はい?」
「甘くておいしいからじゃ!」
……
……
……
「……まぁ、そうでしょうね」
「そうじゃぞ?」
「さて、お嬢さまの秘密も明かされたことですし、次のコーナーにいきましょうか」
「うむ!」
「『美羽さまやってみよう!』のコ~ナ~」
♪BGM【嵐のタイフーン】
「美羽さまやってみよう!はお嬢さまに、様々な企画に挑戦していただこうというコーナーです」
「えー!?なんじゃそれ!めんどうそうなのじゃあ!」
「まあまあ。手間のかかることはさせませんから」
「それでもめんどうなのはイヤなのじゃ」
「嫌なんですか?」
「イヤじゃ」
「どうしても?」
「どうしても」
「……仕方ないですねぇ。挑戦して成功したあかつきには」
ゴトッ。
「このハチミツひと壺、まるまる舐め放題なのに――」
「やるのじゃ!」
「はーい、今日のお題はこちらでーす」
じゃじゃんっ!
「『早口言葉』に挑戦!」
「はやくちことば?」
「今から私が文章を出題しますから、それをできるだけ早く三回繰り返して言うことができれば成功になります」
「それだけかや?」
「それだけですよ」
「思ったより簡単そうじゃの」
「ほら、さっき言ったじゃないですか。手間がかからないって。どうします?さっそく挑戦してみますか?」
「どうするもこうするも、妾はやる気まんまんじゃぞ!早く成功してハチミツ舐め放題なのじゃ!」
「それじゃ出題しますね。今から私が言う文章を三回繰り返してください」
「うむ!」
「赤ハチミツ青ハチミツ黄ハチミツ」
「赤ハチミちゅ青ハチミちゅ黄ハちゅミちゅ、赤ハちゅミちゅ青ハちゅミツ黄ハちゅミちゅ、赤ハちゅミちゅ青ハちゅミちゅ黄ハちゅミちゅ!」
「――さあ、判定は!」
ブッブーッ!
「残念、失敗です」
「なんでじゃ!?ちゃんと言えておったではないか!」
「ビミョーに惜しかったんじゃないですかね?」
「惜しいならほとんど成功したのと同じじゃ!」
「まぁ失敗は失敗ですし、次の曲紹介のコーナーに――」
「ヤじゃ!ハチミツ欲しいのじゃ!」
「えーと……残りの尺は……あっ、お嬢さま。もう一回だけならギリギリ挑戦できそうですよ。どうします?」
「やる!」
「そうこなくっちゃ!――じゃあ、出題しますよ。今から私が言う文章を三回繰り返してください」
「うむっ!」
「赤袁術青袁術黄袁術」
「あきゃ――赤えんじゅちゅ」
ブッブーッ!
「失敗でーす」
「まだ最後まで言ってないぞ!?」
「判定は絶対ですから」
「もっかい!もっかいやるのじゃ!」
「ダメです。さっきのでちょっと押しちゃったぶん、巻きに入らないと」
「半分でいいから!」
「半分だと早口言葉にならないですって。このハチミツは没収させていただきま――」
「没収しちゃダメなのじゃあ!」
ガタッ。
――ヒュンッ!
「あっ!お嬢さまが卓に乗った拍子にハチミツ壺が!」
ひゅーん……
「お嬢さまの頭上にハチミツ壺が!」
――ガシッ。
「頭に当たりそうになったつぼを七乃が受け止めたのじゃ!」
……どろぉ~。
「壺が逆さまで中身のハチミツがお嬢さまに!」
「――にゃああっ!?」
「……あーあ」
「……べたべたなのじゃあ」
「曲紹介の間に着替えちゃいましょうか」
「うむ……ぺろっ」
「あっ、舐めちゃダメですよ」
「でも、もったいないじゃろ?ぺろっ、ぺろっ」
「もったいないって……体にかかったぶん、全部舐めちゃうつもりですかぁ?」
「それはわからんのじゃ――ぺろっ。でも妾についたハチミツじゃからな――ぺろっ。もうこのハチミツは妾のハチミツなのじゃ――ぺろっ」
「もぉ、口だけは達者なんですから。……仕方ないなぁ。私も手伝いますね」
「うむ。……ん?手伝う?」
「それではリスナーの皆さんはお待ちいただいてる間にこちらの曲を聴いてくださいね。お嬢さまと私が歌う『Honey Wonderful』。どーぞ」
♪【Honey Wonderful】
『さーて、お嬢さま』
『な、なんじゃ?七乃、目が怖いぞ』
『私も手伝わないと間に合わないですもんねぇ~』
『えっ?えっ?』
『それーっ!』
『――ぎにゃああああっっ!?』
……
……
……
「……はぁ……ふぅ……。えーと……もう少しだけ時間がかかりそうなので、今日は特別にもう一曲聴いていただきましょう」
「なな、の……」
「お嬢さまが歌う『デリケートに好きして』です。どうぞ」
「にゃ、にゃ、にょ……」
♪【デリケートに好きして-美羽ver.】
……
……
……
『恋姫らぢお~』
『美羽さまのお部屋ーっ!』
●○●○
夕方の帰り道。
隣を歩くあなたはどこか上の空で――私のことなんか見やしない。私の気持ちなんて知りやしない。
だってあなたがいつも見てるのは、私も知ってるかわいいあの子だから。
……こんな想い、もうたくさん!
「そんなアナタに朗報!恋の悩みを一気に解決してくれる素敵な商品があるんです!それがコレ、恋のお守りミニ衝車!コレ一つを肌身離さず持っているだけで、大好きなアノ人の心の城門をぶち破ってくれるというスグレモノ!コレでアナタも恋の勝ち組間違いナシ!
さて気になるお値段ですが――通常価格5000円のところ、今だけ特別価格1980円!1980円でお買い求めいただけます!
そしてさらに!今だけ、お買い上げの際にミニ衝車がもう一つついてくるキャンペーン実施中!一つでも効果十分なミニ衝車を二つ持つことで、アノ人の心の城壁まで粉々に!
二つセットでもお値段は変わらず、1980円!1980円です!もちろん金利、手数料は全てチャイナネットかたかたが負担いたします!
さらにさらに、ご注文の際に今日放送の『美羽さまのお部屋』を聴いたとお伝えいただくと、先着10名様に等身大恋のお守り衝車をプレゼント!これでもうアノ人の心はアナタだけのモノ!
さぁらぢおの前のアナタも、今すぐにお近くのチャイナネットかたかたグループのお店へご注文ください!ご注文、いつでもお待ちしております!」
『ちゃーいな、ねっ、と、かたかた~♪』
○●○●
♪BGM【終局へ……】
「あっという間にお別れの時間になってしまいましたねぇ」
「七乃ぉ」
「はーい、なんでしょう」
「なんなのじゃ、この服は?足のところがあみあみだったり、しっぽも大きな耳までついておるぞ」
「その服はですね、ずばり名前をばにーさんと言います」
「ばにーさん?」
「実はそれ、天の国のお召し物なんですよ」
「ほう!……天の国ってなんじゃ?」
「私も詳しくはわからないです。雲の上の上のほうにある国なんじゃないですかね」
「その雲の上の上にある国の服を、なんで妾が着ているのじゃ?」
「なんか巷で流行ってるらしいんですよね、天の国。やっぱり流行りは次々取り入れていかないと。お嬢さまの人気アップにもつながりますしね」
「なるほどのう!さすが七乃は先見の明があるのぉ~」
「えへへ~、ありがとうございますぅ。それもこれもお嬢さまあってのことですからね。かわいいお嬢さまはなに着ても似合っちゃいますから」
「にゃははっ!それはもちろんなのじゃあ!」
「はい~」
「――あっ、でも」
「はい?」
「この服も皆に見えなかったら意味ないんじゃないかの?」
「大丈夫です。ちゃんと見えてますよ。皆さんに、ではないですけど」
「皆に見えなくてもよいのかや?」
「はい。こういうのは誰か一人にでも見えてたら、それだけで十分なんですよ」
「うーむ……ま、それもそうじゃの。で、誰が見てるんじゃ?」
「それはですねぇ……」
「うむ」
「……秘密です」
「へっ?教えてくれないのかや?」
「誰が見てるっていうのは重要じゃないんですよ。肝心なのは、誰かに見られてるっていう意識なんです。普段の何気ない仕草や作法っていうのも、常日頃から他人の目を意識することによって磨かれていきますからね」
「ふーん」
「まぁ今回の場合は……その誰かが案外近くにいるってことだけ、それだけ覚えていただけたら結構ですよ」
「ん~……よくわからんのじゃ」
「そのうちわかるかも、ですよ」
「うむ、そうじゃな」
「さて、この番組では各コーナーで紹介するお便りをリスナーの皆さんから募集しています。お便りには、らぢおねーむとどのコーナーに宛ててのものかを明記して、お近くのチャイナネットかたかたグループのお店へ投書してくださいね。今回はふつおたのコーナーでしかお便りを紹介できませんでしたが、他のコーナーでもリクエストを随時募集していますので、どしどしご応募くださ~い」
「七乃ぉ」
「はい?」
「今日は聞いたことない言葉ばっかり出てくるの。こーなーとか、りくえすととか」
「あぁ、それですか。実はですねぇ、それも天の国の言葉なんですよ」
「また天の国かや?」
「そうです。今後のためにちょっとずつ勉強してるんですよ。利用できそうなものはどんどん利用しないと」
「ふふん、流行りは取り入れていかないといけないからのう」
「さすがお嬢さま!ついさっきの私の言葉をさも自分が考えた言葉のように言ってのけるなんて!ス・テ・キ!」
「にゃははっ!褒めてもなにもでないぞぉっ!でも、もっと褒めるのじゃあ!」
「お嬢さまかわいい!」
「にゃははっ!」
「お嬢さま最高!」
「にゃははぁっ!」
「お嬢さまの魅力、にばいにばーい!」
「にばいにばーい!」
「にばいにばーい!」
「にばいにばーい!」
『この番組は、「あなたの暮らしに幸せのひとしずくを」チャイナネットかたかたグループの提供でお送りしました』
※『チャイナネットかたかたグループ』は商品の取り寄せ、配達を主とした機関です。自社製品も多数扱っていますが、配達区域は魏・呉・蜀・南蛮となっておりますので、エリア外(仲を含む)にお住まいの方にはご利用いただくことが出来ません。予めご了承ください。
Tweet |
|
|
10
|
1
|
追加するフォルダを選択
物足りない気がして、もう一つ書いちゃいました。一応これも祭り参加用ですが、おすすめ作品などはもう一方の『恋姫外史の外史』に書いていますので、そちらをよろしくです。
今回は「もしも美羽と七乃さんがラジオ番組をやったら…」というドリフ宜しくのもしもシリーズなので、作中の文章は音のみです。コンセプト自体がそういうものですから、悪しからずご了承ください。あたし、ただ楽しくおしゃべりしてる二人が書きたかったの。
※注)作中で使われる通貨単位は円に変換してあります。少し調べてみましたが、当時の通貨はやはり馴染みが持てないため、このような処置をとりました。自動翻訳フィルターが搭載されていると思っていただけたら結構ですので、こちらも悪しからず。※