此処には何も無かった
都会の喧騒も、法の縛りも、何もかもが欠落している
満ちているのは静謐で、厳かな気配のみ
青く澱んだ空間の中で目を開いてみた
映るのは、水面から差し込んでくる淡い光
今まで気付かなかったけれど、それはとても美しい
見惚れている間にも体は少しずつ闇に呑み込まれていく
胡乱になる意識と共に徐々に、徐々に
それでも僕はこれから向かう場所へと思いを馳せてみる
振り返り、手を伸ばし、目前の闇を掴もうとして、触れようとして
・・・あぁ、もし底など無いのなら
その果てを願わなくても済んだのに
これ程まで想わなくても済んだのに
しかし悲しいかな、全ての物に底がある
今は未だ見えてもいないのだけれど、いずれ必ず行き当たる
それでも僕は構わない
やっと、帰る場所を見付けられたのだから
そして辺りは昏くなる
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どこまでも深遠で
どこまでも凄惨な