No.278686

双子物語-1話-

初音軍さん

オリジナル3作目で一番長くだらだらと書いてるシリーズです。没った時期を入れて6、7年。キャラ構成で10年くらいは経っている代物です。注:当時のままUPしているので読み難いかもしれません。

2011-08-19 17:49:14 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:548   閲覧ユーザー数:471

  地方でもなく都会でもない、寂れてもなければ賑やかでもない。何の変哲も無い普通の町で双子が生まれた。

二卵性双生児で二人とも元気に泣きながら生まれてきたが、しかし、そのうちの一人は遺伝子の一部が異変をきたし、虚弱な子供として生まれてしまった。それがわかったのは、出産後しばらくしてからのことだった。

 

  二人は無事5歳となり、春を迎えて、園児生活も残り一年。最後の園児生活を満喫することになった。彼女たちの家は保育園に近く、子供でも歩いていけなくもない距離にある。バスを利用するよりは歩いたほうが良いくらいだ。

園内には桜の木が2~3本植えてある。時期的にもちょうどいいくらい綺麗に花が咲いていた。そこに二人を出迎えてくる一人の担任。

 

?「おはよー、二人とも元気だねー」

彩菜「おはよー、あがたせんせー」

雪乃「どうも…」

 

  宵町県(よいまち・あがた)24歳の保育士でいつも冷静に子供たちを管理している。

 軽い性格のために、子供からは少々小ばかにされている。そんな女性。

 

県「おやっ、雪乃ちゃん元気ないんじゃない?」

雪乃「別に、いつものことです」

 

県「ああっ、低血圧」

雪乃「うん…」

 

県「そいつは失敬」

 

  県が笑うと、風が吹き、県のおかっぱ黒髪が軽くなびいた。視線の先には園児を乗せたバスが3人の方向にゆっくりと近づいてきた。そうして、一日が始まる。

 

県「おっはよ~」

 

  バスから降りてくる園児にタッチしていく県。降りてくる園児の中から彩菜は特に仲の良いと思われる友達のもとへ向かう。

  彩菜の後ろからゆっくり後を追う雪乃の姿が県には可愛らしく映った。

 

彩菜「ねぇねぇ、昨日のモテルンジャーどうだった?」

女友達「悪の幹部に一目惚れしてどうすんねんと、ツッコミたい」

雪乃「……」

 

  ドラマというものをあまり見ることがない雪乃は話についていけないため、聞き流しながら姉の彩菜と建物の中に入っていく。無口で愛想がないので基本、友達がいないと言っていいくらいだ。

  そんな雪乃にも近寄ってくる園児はいた。

 

大地「おはよ…、雪乃…ちゃん」

 

  顔を赤くしながら近づいてくる男子。別に恋とかそういうのではなく、ただの人見知りである。緊張しやすい性格のためにこの園児にも友達らしい友達はいない。

 

雪乃「おはよう」

 

  逆に雪乃は緊張はしていない。ただ、興味のないものに関しては口にもしないし、あってもそんなに口数は多いほうではない。おしゃべり好きには相手にしてもつまらないという印象しか残らないのだ。

 

  それでもきちんと返事を相手の目を見て返してくれる。性格は違うが、友達のいない者同士という共通するところで、雪乃としてもこの大地に対してはまんざらでもないようだ。

  こうして様々なグループができあがる。そこから取り残されるものは孤独だ。大人として交流することができない。もし、大人に言われて渋々グループに入れても慣れるわけもない園児が長くその中にいられるはずもなく、自然とまた離れていくのみである。

  ある意味、ここからが社交性を身に着ける数少ないチャンスなのである。

 

県「みなさん、おはよう」

園児「おはよーございまーす」

 

  子供らしいちょっと舌足らずな言葉遣いが大人の心に染み渡る。県は何度もそれが聴きたいがために、何度も言わせると。

 

園児「しつこーい!」

県「あはは、悪い悪い」

園児「ちゃんとあやまれー」

県「ごめんなさーい」

 

  子供になめられているようで、実は信頼が厚い保育士。悩みがあれば一緒に考え、怪我をすれば素早く適切な処置を施す。勉強でわからなければわかりやすくヒントをあげ、一緒に遊んだりもする。子供の扱いは一級品と、他の大人からも認められているほどだ。

  子供のまとめ役としてはこれほど適任な人材もいまい。ただ、自己中心的な行動を起こすのが欠点というところなのだろうか。

 

県「よーしっ、さっそくせんせーとあっそぼー!」

保育士「ちょっ、県せんせい…!」

 

県「ん、なんですか?」

保育士「時間割通りに進めてくださいよ」

 

県「ん?あっ、いっけね~。でも、最終的に全てやればいいんですよね?」

保育士「え?まぁ…」

 

  県は口の端を上げて目の前の男性保育士の肩を叩いた。

 

県「まかせといてください」

保育士「はぁ…」

 

県「っよーし、じゃあみんな遊ぼー!!」

園児達「わーい!!」

 

  わらわらと建物の外へと出る子供たち。県も子供のようにはしゃぎながら外へと走っていく。注意した保育士は呆然とそれを見ながら立ち尽くすことしかできずにいた。

 

県「今日は快晴なり! 春の晴れに心地よいそよ風が吹く今、やることといったらこれしかないっしょ?」

雪乃「なぜにドッヂボール…?」

 

  県自ら白い粉引くアレで線を引き、フィールドを作って柔らかい大きめのゴムボール片手に眩しいほどの笑顔を園児たちに浴びせかけていた。

 

県「だってみんなでできるのってあんまりないし」

雪乃「あんまりアクション性が高いのはできないから見学してるね」

県「じゃあ、その辺で見といて」

 

  雪乃は半分埋まっているタイヤに腰掛ける、全身が他の子より細く、白髪が目立つ。

 生まれながらの虚弱体質で色が抜けてしまっていた。妹と比べて姉はどうだろう。

  やや茶髪が混じっていて、活発で元気。体が弱く、儚ささえ感じさせる雪乃とは正反対。だが、さすが双子の姉妹というべきか。その辺は足らない部分は互いに補うということを5歳の若さでわかっている。服装も違う。姉の彩菜は動きやすいように半袖短パンに対し、雪乃はワンピースで、服装と一見したときの性格のイメージが合っている。

 

彩菜「おりゃあ!」

 

 ボスンッ!

 

男児「いてぇ!」

 

  運動神経がいいのかグループ分けして始まると次々と相手の選手を倒していく彩菜。ハンデとして相手側のチームに県が参戦していた。

  暖かく、心地よい風が雪乃の頬を撫でる。思わず眠気が深まってきたところに隣に気配を感じて視線を向けるとそこには朝会った大地の姿があった。

 

雪乃「やらないの?」

大地「…うん、みんなとやるの苦手で…、遊びの邪魔になっちゃうだろうし…」

 

雪乃「ふーん…」

 

  視線を試合の場所へ戻し、興味ないようなため息交じりの声を返す。大地はそれ以降話かけてもこない。特に仲がいいわけでもないから雪乃からは話すことはない。

  しかし、拒絶しているわけではないので大地も雪乃の隣に来れるし、無駄に緊張しないで済む。今の関係が今の二人にはちょうどいい距離感だった。

 

彩菜「でぇい!せんせー!とっとと当たってよー!」

県「なに、手加減してほしいの?」

 

彩菜「だってゲームが終わらないよ」

 

  気づけばゲームは県と彩菜の二人以外は全て外野。あんまりいても仕方ないので余った園児たちはつまんなそうに見てたり、滑り台などで遊んでいる者もいた。

 

県「ふむ、そうか…」

 

  県は雪乃の方を見やると、ちょいちょいと手招きする。雪乃は渋々立ち上がり県のそばまで来ると、県は雪乃の手を挙げさせパチンとタッチした。

 

県「選手交代!」

彩菜「なにぃっ!!?」

 

県「はいっ、ボール」

雪乃「私はあんまり運動できませんて」

 

県「大丈夫、一球で勝負がつく」

 

  ねっと小悪魔的な笑顔を彩菜に向ける。彩菜はまるで金縛りにあったかのように途端に身動きがとれなくなっていた。ため息をついて、彩菜に向けボールを投げる雪乃。

  勢いなくポスっと軽い音をたて、ボールは地に着いた。

 

県「はい、勝負あり」

彩菜「ひ、卑怯だぞー。雪乃を使うなんてー」

 

県「だって終わらせたかったんでしょう?」

彩菜「くううっ」

 

  県が入ると最終的にこうなり、勝てた試しがない彩菜だった。

 やんややんやとお祭騒ぎしているうちにお昼寝タイムが訪れた。

ジャラジャラジャラ!!

 

菜々子「絶好調~♪」

 

  子供たちを送った後、小遣い稼ぎのためにパチンコ屋に足を運んでいた。雑誌などで台と確立の勉強は隙なくしており。その生まれ持っての強運で辺りを引き当てていた。

 

菜々子「またも確変!」

男「随分当たってますな」

 

菜々子「あらっ、魚屋さんの…。仕事はどうしたの?」

魚屋主人「もうすっかり息子に仕事とられましてな。やることないんで気晴らしに」

 

  ちょうど良い時間になったので、山のように積まれた箱を持っていく。やりおわったあとなのか、魚屋さんも一緒についてきていた。店員さんに軽く睨まれながら換金しにいく。

  外に出ると魚屋さんをお誘いをしてみた。

 

菜々子「これからちょっと食事に行くんですけど、一緒にどうです。奢りますよ?」

魚屋主人「いいんですか?」

 

菜々子「はい」

魚屋主人「では、お言葉に甘えて」

 

  こうやって偶然居合わせると相手は時々良い思いもできる。私の勝てる割合は約7割ほど。運の流れほど予測できず、あてにならないものはない。

  最近、近くにファミレスができた。普通にどこにでもある大手のファミレスだ。

 魚屋さんと私は適当に注文をとると、回転率すこぶる悪くなるまでその場で話続けた。

  内容は至ってシンプル、世間話だ。

 

 

  お昼寝タイム続行中、30分ほどすると、すっかり全員眠ってしまっている。県はそんな光景を見るのが好きだ。遊んでいるときとは違う顔を眺めることができるから。

  人の表情を見るのが好きな県はわざと相手を怒らせたりすることもある。相手する方としては県の対応が本気なのか冗談なのか判別しづらいので困るだろう。

 

県「むふふ、あんまり表情見せないけど、寝てるときは天使みたいに可愛いのよね」

 

  彩菜と手を繋ぎながら眠っている雪乃の顔を覗きみる。他の子供にぶつからないようにそ~っと。

 

県「んん、頬に少し触れたい。しかし、ガマンガマン」

 

  起きたらまた寝かしつけるのが大変なのだ。県は伸びる手を押さえつつ、その部屋を後にして、先生たちが集まっている場所へと向かった。

  夕方、ある程度勉強もして。後は遊びながら迎えにくるのを待つだけとなった。

 

保育士「可憐ちゃんのお母さんが迎えにきました」

可憐「わーい、ママー」

母親「お世話になりました。じゃあ帰ろうか」

可憐「うん」

 

  保育士、園長などと話を軽くしながら帰っていく、その繰り返し。県はこの瞬間が少し淋しく感じた。

男性保育士「県さん、この後。少し付き合ってくれませんか?」

 

県「却下」

 

  県に気のある男性保育士が来るたびに断り、そして入れ替わっていくので女性保育士たちは呆れていた。今回のは3度振られても懲りないようだが。

男性保育士「ううっ、また振られましたー」

 

園長「本当に彼女は子供たちが好きなのねー。ずっとみつめちゃって」

 

  園長は髪が全部白髪で、見た目相応に年を召している。人生の先輩ながら、困ったことがあると気軽に相談できる辺りが良い評判があるといわれている。

  本日残るは彩菜と雪乃の双子だけで、県は二人と楽しくおしゃべりしていた。

 

県「あははっ、それ本当?」

男性保育士「ああっ…子供が羨ましい!!」

女性保育士「その発言痛いわよ?」

 

  拳を震わせながら言う男保育士にツッコミを入れる女性保育士。

 

男性保育士「にしても、彼女の学歴って確か外国の有名な大学も行ってるみたいだけど」

女性保育士「しかも点々と各地回ってるのよね。どこから来てどこへ行くのか不明ね」

園長「いいじゃないですか、そういう謎も魅力のうちよ」

 

  見た目と経歴が全く合わないのが面白いのか、3人は県を暖かい目で見つめている。

 

菜々子「おつかれさんでしたー!」

 

  しばらくそうしていると、母親の菜々子が二人を迎えに来た。

 

彩菜「ママだ!」

雪乃「あらっ、今日は10分くらい早い」

 

  反応がまちまちだが、二人の表情は同じくらい晴れやかで、いかに楽しい先生や会話をしていようと、親に勝るものはなさそうだ。

 

園長「相変わらずお元気ですね」

 

  華やかに笑う園長先生に敬礼のポーズをしながら元気よく返事をする菜々子。

 

菜々子「それが唯一の取り柄ですから」

彩菜「じゃあねー、県先生」

雪乃「また明日」

県「うん…」

 

  子供と話していたときの表情を作ってはいるがどこか寂しそうな感じを漂わせる県。

 園長が何気なく隣で聞こえるか聞こえないかの声で独り言のように呟く。

 

園長「そんなに子供が好きなら結婚してつくってみては?」

県「いえっ、そんなことないですよ。結婚は今のところ興味ないですし」

 

  その言葉で我に返ったのか、穢れない笑顔で同僚に声をかけていく。すっかり気分を切り替えたようで、後片付けや、戸締りなどを確認してから保育士たちは解散していく。

  年長組は後一年で卒園していくのだ。まだ早いにしても子供が好きな人間にとっては

時間が早く感じられるのかもしれない。

 こうやって、何事もない普通の一日が過ぎていこうとしている。

彩菜「ただいまー」

 

  家に帰ってからの手洗いはきっちり躾けられている。以前、彩菜が手洗いを怠り、菓子をつまんでいたのを菜々子に見つかりプロレス技をかけられたのが半トラウマとなっていたからであった。

  雪乃は怠ることはなく、毎日面倒くさがらずにきちんと済ませていた。

  子供たちはすぐさまテレビのもとへ向かってソファーに座りながら真剣に画面を見つめている。菜々子は疲れて隣にある畳の上でごろんと横になっているとやがて、にぎやかにトークしてるテレビ音からゲーム音に変わり、楽しそうにしているのを菜々子は目を瞑りながらしかめっつらをしていたが、やがて二人のもとへと向かう。

 

菜々子「ちょっと二人とも!」

彩菜「な、なに?」

 

  驚いている彩菜に菜々子の顔はしかめていたのから笑顔に変わり、コントローラーを奪い取る。

 

菜々子「私も混ぜて!」

 

  子供っぽい母を見ながら笑い合う二人。刻々と時間が過ぎていくなか、菜々子の一人勝ちが続き。

 

静雄「ただいま」

 

  父親の静雄が会社から帰ってきた。気がつけば外は真っ暗で。父の帰りに子供達はすぐに気づいたが、菜々子は相

変わらずコンピューター相手に熱中していた。

  静雄は子供たちに口の前で人差し指を立てて「しー」というポーズをするとそろりそろりと菜々子の後ろに立ち握り締めた拳を振り下ろす。

 

  ゴンッ!

 

菜々子「あいたぁっ…!」

 

  すぐさま振り返る菜々子。映る眼には愛しい旦那さまの姿がはっきりと映る。

 

菜々子「よしっ、どっかに食いに行こう!」

 

  もはや飯作る気も失せたらしい。堂々としすぎるその行動に、静雄は呆れ、子供達はそれぞれのらしい反応で喜ぶ。全員着替え終わり、意気揚々と家を出て車に乗り込んだ。

  どっちも車の運転はできるが、今回は菜々子がハンドルを握る。

 

菜々子「よっしゃー、ぶっちぎっていくわよー」

雪乃「ぶっちぎるな」

菜々子「はいはい、ありがたいツッコミを頂いたので普通にいきます」

 

  それでもやや早めの速度で夫婦二人でよくいっている中華の店に向かい、辿り着いた。

 中に入ると威勢のいいオヤジの声が響き渡る。カウンター、テーブル、座敷と揃っていて店内は赤っぽい色中心の壁やらテーブルやらがそろい、目に悪そうで中からは請け狙いなのか、マジックで描いた髭を携えながら気の良さそうなオヤジならぬ店長が現れる。

 

菜々子「オヤジ、いつもの!」

静雄「ラーメンセット」

彩菜「いつもの!」

雪乃「からあげセット」

オヤジ「あいよー。4名さまいつもの!」

 

  注文がまちまちだったものの、記憶力の良い店長は「いつもの」頼むものを覚えている。店員もそれに習わせ覚えさせているので、夫婦は可哀想だなとか思っていた。

  客の入りもそこそこで、決して不味くも美味くもないという普通の店だったが、雰囲気が気に入ったので通っているのであった。

  やがて、4人の鼻に料理の匂いが入ってきた。そして、まもなくして料理が運ばれ、4人は頼んだ料理を頬張ってそれぞれ楽しんでいた。

 

  家に帰ってくると、風呂を沸かして、入る組み合わせをくじで引かせた。

 

彩菜「やったー。私はママとだ」

雪乃「お父さん…」

 

  そして、じゃんけんで負けた菜々子に残念でしたと一言告げ、雪乃を片手で担いで風呂場まで歩いていった。服を脱がせながら静雄は雪乃に小さい声で聞く。

 

静雄「今日は楽しかったか?」

雪乃「うん、それなりに」

 

静雄「そうか」

 

  満足気に頷く静雄。あんまり楽しそうに思えない言い方だが、こうやって言うこと自体楽しんでいる証拠で、機嫌悪いときは終始無言でいるから怖い。

 楽しみにとっておいたプリンを高速で彩菜に食われた後、ずっと彩菜の視線から背けていたのを静雄は

思い出していた。

 

菜々子「わおっ、汗くさーい」

 

  静雄と雪乃が出た後、残り二人が勢いよく湯船につかると皮膚についていた乾いた汗が溶け出し、一瞬においを感じとった菜々子に彩菜は喜んで笑っていた。

 

彩菜「今日はドッヂボールやったんだよー」

菜々子「そう、で。勝ったのよね?」

 

  妙に勝ち負けに拘る菜々子に彩菜は残念そうに首を横に振る。そして言い訳を菜々子に聞かせる。顔を赤らめて口を膨らます仕草に菜々子のツボに入ったのか胸がキュンとなった。

 

彩菜「だって、雪乃使うんだもーん。ずるいよ」

菜々子「彩菜は雪乃ラブだもんね?」

彩菜「…わかんなーい」

 

  湯煙の中で他愛の無い話をするのが日課となっている。くだらないことのようだが楽しいのだろう。それぞれが色んな組み合わせで笑い声がこだましていた。

  夜10時ごろ、双子が同時に眠そうに目を擦っていたのを見逃さずに菜々子は二人を2階へと連れていった。

ベッドへ横にならせると、電気が消えるとカーテン越しの月の光のみが唯一の明りとなっていた。

 

彩菜「おやすみ」

雪乃「…うん」

 

  二人は手を繋ぎながら互いの目を見て微笑み。そして、静かに目蓋を閉じた。

 

 

菜々子「かんぱーい!」

 

  缶ビールを開けて静雄の持っている缶にコツンとぶつける。

 

静雄「嬉しそうだな。というか、一日そのテンションなのか?」

菜々子「んー、今日はね。なんか一回目~って感じだったから」

静雄「なんだよ、一回目って…」

菜々子「さぁ? 細かいことは抜きにして飲みましょう、飲みましょう」

 

  相変わらずのマイペースぶりに苦笑しながら用意されたツマミを食べながらビールを一気に飲んでいく。疲れたからだに程よいアルコールは気持ちがいい。

 

静雄「あんまりはしゃぎすぎるなよ、疲れるから」

菜々子「やだぁ、何年寄りくさいこといってんのー」

 

  ケラケラと笑いながら静雄の背中をバンバンッと強く叩き、むせる静雄。その後、二人は缶を置いてじゃれあった。結果的に静雄のマウントポジションからの横っ腹くすぐりが決めてとなり勝利した。

  

そんな毎日を飽きもせずに繰り返す平和な家族であった。

 

 


 
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