No.277318

一刀、デレ焔耶、夏祭り

karasuさん

どうもkarasuです。
本日はここからご挨拶をさせていただきます。
さて、午前五時から考えて午前九時半に完成した即興と言ってもいい作品でございます。
過度な期待はせずに生暖かい目で読んでください。
そして祭り用作品と言うことで参加要件を確認。

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2011-08-18 10:01:05 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:9277   閲覧ユーザー数:7126

 

焔耶「すみません。こんな感じの浴衣ってありますか?」

 

そう言いながら自分で書いたのであろう拙い絵を、店員である年老いたおじいさんに見せる

 

おじいさん「ん~。残念ながらこれに似た浴衣はないな。……どうしてもこの浴衣じゃなきゃダメなのかい?」

 

焔耶「いや、ないならいいんだ。ないなら……」

 

おじいさんの質問に焔耶は笑顔で返すが自然と顔は俯き、残念そうな表情になっていた。それを見ていたおじさんは腕を組み少し厳しい表情で

 

おじいさん「彼氏のためかい?」

 

焔耶「な、なななな。なにを!!」

 

そう続けて質問した。途端に焔耶の顔が耳まで真っ赤になり、頭から湯気が上がるのではないだろうかとおじさんは思った

 

おじいさん「ふむ。その彼氏はいい人なのかい?」

 

焔耶「………んっ(コクリ)」

 

質問をしながらまるで品定めでもするかのような目で、俯いている焔耶の顔を覗きこむおじいさん。それに対して焔耶はさらに顔を赤くしながら、小さな声で返事をして僅かに頭を縦に振った

 

おじいさん「はっはっは、よしわかった!! ばあさん、この娘の寸法測るから準備しとくれ!!」

 

おじいさんが店の奥に向かって大きな声でそう叫ぶと、一人のおばあさんが奥からメジャーを持って出てくる

 

おばあさん「ふふふ。話は聞かせてもらいましたよ。寸法測るからちょっとこっちに来て頂戴」

 

そう言っておばあさんは焔耶を手招きする。そしてぱぱっと寸法を測るとメモ用紙に書いていく

 

おじいさん「ほほう。以外と胸が……」

 

おばあさん「おじいさん。尻こだま潰しますよ?」

 

おじいさん「んん!! さ、さて。お代は要らないから二週間後にまたここに来なさい。その時に試着してもらうよ、直す必要がありそうだったら直さなきゃいけないからね」

 

メモと焔耶が持ってきた絵を一纏めにして棚の中にしまいこむと、おじいさんは笑顔でそう言った

 

焔耶「ええ!? な、なんで……」

 

おばあさん「この人は気まぐれでね。気にすることはないよ。どうせ他の仕事でお代はがっぽり貰ってるからね」

 

焔耶が困惑していると、おばあさんは焔耶の肩に片手を置きながらもう片方の手で○をつくって笑顔を浮かべる。焔耶はその背後に黒いオーラを纏った招き猫を見た

 

おじいさん「ちなみに普通の浴衣でいいのかい? 最近はミニの浴衣なんてせくすぃーなものもあるが?」

 

焔耶「い、いやいやいや。普通のでお願いします!!」

 

ニヤニヤしながらそう訊いてきたおじいさんに、焔耶はまた顔を真っ赤にして首を横にぶんぶん振る

 

焔耶「そ、それじゃあ失礼します!!」

 

そのまま物凄い勢いで頭を下げた焔耶は早足で店を出て行く。そんな焔耶をおじいさんとおばあさんの二人は優しい顔で見送った

 

おばあさん「いい仕事になりそうですね。お前さん」

 

おじいさん「うむ。どの仕事よりも最優先でやるぞい」

 

おばあさん「おやおや。企業から頼まれていたものはいいんですか?」

 

おじいさん「体調不良とでも伝えておいてくれ。あんな下らんものを作る時間すら惜しいわ」

 

そう言っておじいさんは先ほどのメモと絵を取り出し目を閉じる。瞼の裏にはすでに浴衣の完成図と、それを着た焔耶の姿がはっきりと映っていた

 

おばあさん「わかりました。では私は電話でもしてきますかね」

 

そう言っておばあさんは奥に戻り、おじいさんは店の扉につるされている札をOPENからCLOSEにした

 

 

 

慌てて店を出た焔耶は店の横にある壁に背中を預けると深く息を吐いた。そして

 

焔耶「やっった……」

 

と呟くと小さなガッツポーズをとった。そこに……

 

女子A「あれ? 焔耶、こんな所で何してるの?」

 

焔耶の通う学園で同じクラスである友人が通りかかり、焔耶に声をかけた

 

焔耶「ああ。そこの店で、今度の祭りに着ていく浴衣を買いに着たんだが…」

 

女子A「え? あの店で? あの店って有名人御用達の店でかなり高いって聞くけど……焔耶って以外とお金持ちなんだね~」

 

焔耶「え!? そうなのか!!」

 

友人の言葉に心底驚く焔耶に、友人はそんなことも知らないのかといったような顔をした

 

女子A「でもまぁ、この付近で浴衣売ってるとなるとこの店だけだしね~。焔耶の家ってパソコンとかはないんでしょ? なら仕方ないでしょ。それじゃあ今度の祭りでね~」

 

焔耶の友人はそう言って手を振りながら焔耶に別れを告げて歩いていった。それを見送った焔耶は急いで店に戻ろうとしたが、扉の札がCLOSEに気が付きがっくりと肩を落とした

 

焔耶「(タダにしてくれるって言ってたけど……大丈夫かな……)」

 

といった不安を抱えながら焔耶は帰路についた

 

 

 

 

 

 

 

数日前・北郷宅

 

その日一刀の家には焔耶が遊びに来ていた。焔耶のお目当ては最近一刀が買ったホラーゲーム。内容は和風ホラーであり、写真で幽霊を撮って撃退していくといった内容のものである

 

既に一刀がクリアをしているデータでプレイをしている焔耶は、プレイキャラの衣装を通常のものから変更してプレイしていた

 

焔耶「やっぱりこういった雰囲気には浴衣が似合ぎゃああああああああ!!」

 

一度画面から目を離して一刀の方を見ていた焔耶は、画面の方に視線を戻した際に急に現れた幽霊に驚き叫び声を上げた

 

一刀「ははは。そうだね、こういった雰囲気には浴衣が似合うね。それに、この浴衣なんだか焔耶に似合いそうだ」

 

仰け反る焔耶を見て笑いながらそう言った一刀

 

焔耶「そうか? ふむ……」

 

仰け反った体を元に戻しながら焔耶は一刀の言葉に、まるで無関心であるかのように軽く流しながらしっかりとその浴衣を目に焼きつけ、記憶するのであった

 

 

 

 

 

焔耶が和服屋に浴衣を依頼してから二週間後。焔耶は言われたとおりに和服屋を訪ねた。店に入ると店番をしていたおばあさんが焔耶を笑顔で出迎え、店の奥に居るのであろうおじいさんに声をかける

 

おじいさん「おお。来たね、早速これを着てみてくれ」

 

そう言っておじいさんは手に持っていた風呂敷包みをおばあさんに渡す。それを受け取ったおばあさんは、試着室へと焔耶を連れて行き浴衣を焔耶に着せておじいさんの前へと戻った

 

おじいさん「うむ。我ながら見事な出来だ」

 

そう呟いたおじいさんの目の前には、ピンクの胡蝶蘭の模様がちりばめられた白い浴衣を着た焔耶がいた

 

おじいさん「どうかな? どこか変に感じる所はないかな?」

 

そうおじいさんが質問すると焔耶は大きく首を振る。それを見ておじいさんは満足そうに頷き、おばあさんはより笑顔を濃くする

 

焔耶「あの…本当にお代は払わないでいいんですか? こんなに素敵な浴衣を作って貰って……」

 

とても不安そうな表情でおじいさんとおばあさんを交互に見る焔耶に、おじいさんとおばあさんは顔を見合わせて同時に頷く

 

おじいさん「それじゃあ、お代の代わりに写真を撮らせて貰おうかね。そしてそれを店頭に飾らせて貰うよ。ただ一人じゃ恥かしいだろうから彼氏と一緒に撮ろう。うむ、それがいい。決定!!」

 

焔耶「か、彼氏って! 一刀はそんなんじゃなくて!!」

 

おばあさん「おやおや、彼氏の名前は一刀って言うのかい? もしかして北郷さん所の息子さんかね?」

 

焔耶「~~~~~~っ!!/////」

 

おじいさんの言葉に思わず動揺してしまい口を滑らした焔耶。そのことを後悔するころには、おじいさんとおばあさんの二人が勝手に盛り上がっていた

 

おじいさん「そういば一刀坊も来てたな。まぁまだ完成してないのだが……こりゃあ楽しみになってきたのう」

 

おばあさん「本当ですね~。ふふふ」

 

その後一刀のことについて散々二人にいじられた焔耶は、ふらふらとした足取りで家に帰るのであった

 

 

 

 

祭りの日当日

 

焔耶はあの浴衣を着て一刀との待ち合わせ場所に来ていた。一刀を待っている最中、何人もの人が焔耶のことをみてひそひそと話をしていたことに、焔耶は不安を抱いていた

 

焔耶「(うぅ……浴衣なんて着るの初めてだし、どこか変なのかな? でもおばあさんにわざわざ着せて貰ったから、着方が間違ってるとかはないと思うんだけど……)」

 

初めてきる浴衣を不安に思っている焔耶は、見てくる人のほとんどが男であるということに気が付く余裕などあるはずもなく。時間が経つほどに不安が募るだけであった

 

一刀「焔耶ー。早いね、まだ五分前なのに」

 

そんなところに一刀の声が焔耶の耳に聞こえ、焔耶は心底安心した。そして、一刀の声がするほうに振り返り胸が高鳴るのを感じる

 

そこに居たのは胸の部分に赤い小さな花菖蒲のある黒い男物浴衣を着た一刀だった

 

一刀「どうした焔耶? ぼーっとして」

 

焔耶「あ、ああ。なんか一刀の浴衣姿が新鮮でな…」

 

一刀「それを言ったら焔耶の浴衣姿だって新鮮だよ。それどころか着るのも初めてじゃない?」

 

焔耶「確かにそうだな。そのおかげでさっきから色んな人が私を見てくるから、どこか変なところがあるんじゃないかと不安でな。なぁ、一刀。私の浴衣…どこか変か?」

 

不安そうな顔でそう一刀に訊いた焔耶はその場でクルリと一回転してみせる

 

一刀「変なところなんかないよ。すっごく似合ってるよ焔耶」

 

そう言いながら一刀は顔を僅かに赤くしながら、恥かしさから後ろ頭をかく。焔耶は焔耶で一刀の言葉に顔を赤くして俯いてしまう。そのまま二人の間にはほんの少しの間静寂が訪れるが

 

一刀「さて、せっかく祭りに来てるんだから屋台をいろいろ見ていこうよ」

 

焔耶「そうだな。行こう」

 

一刀から差し出された手を焔耶がしっかりと握り返すことで、すぐに静寂は破られる。二人は手をつないだまま、多くの人と屋台で賑わう祭りに参加すべく足を進めた

 

射的に輪投げ、くじ引きにお面、水飴、焼きそば、たこ焼きなど等。二人は祭りを存分に満喫するために、色々な屋台に立ち寄った

 

互いに顔を見合わせれば自然と笑顔が浮かび、繋いだ手もまるで一つの手であるかのように違和感がなくなる

 

相手の顔にソースなんかがついてればふき取り、互いのことをまるで自分のことのように一喜一憂する

 

一刀の友人に会ったとき、思わず緩んだ一刀の手を焔耶が強く握れば、焔耶の友人に会ったときには一刀が強く握り返す

 

時間が経つのも忘れ、二人で過ごすこの時間を笑顔で過ごす

 

そして二人は祭りの会場から少し離れたところにある公園のベンチに腰掛けていた

 

焔耶「本当にここから花火が見えるのか? あまりにも人がいないが」

 

一刀「ついこの間までは見れなかったんだけどね。そこの木が切られたからここからでもしっかり見えるんだよ」

 

そう言って一刀が指差した方を焔耶が見れば、丁度一発目が打ち上がるところだった

 

人が三人は座れるであろうベンチで、二人肩を寄せ合って花火を見る一刀と焔耶

 

花火が打ち上がっている間、二人の間に特に会話はなく。打ち上がる花火の感想をたまに言う程度。ただ、二人はまた自然と手を握り合っていた

 

『次の花火が本日最後の花火となります』

 

そんなアナウンスが二人の耳に微かに聞こえた。そのアナウンスの少し後に打ちあがった花火は、その日一番の大きさだった

 

焔耶「おぉ……」

 

思わず感嘆の声を漏らす焔耶。花火が終わった後も二人はその場から中々動かずにいたが、焔耶はおじいさんたちとの約束を思い出した

 

焔耶「そうだ。すまんがこの後行かなきゃいけないところがあるんだが、一刀も付き合ってくれ」

 

一刀「もちろん。それじゃあ行こうか」

 

そう言うと二人はベンチから立ち上がり、和服屋へと向かった

 

一刀「何故此処に?」

 

和服屋に着いた一刀の第一声はそんなものであった。一刀の質問を無視して焔耶が先に店の中へと入り、一刀もその後に続く

 

おじいさん「おぉ!! 待ってたよ二人とも。さぁ、こっちへ」

 

そう言って二人を迎えたおじいさんは、素早く二人の後ろに回りこむとグイグイと二人を店の奥へと押していった

 

二人はそのまま既に撮影準備を終えているおばあさんのカメラの前に立たされる

 

一刀「焔耶、これはいったい?」

 

焔耶「この人たちに大きな借りがあって…ダメか?」

 

そう言いながら上目遣いで一刀を見る焔耶。そんな焔耶と一刀は暫く睨みあっていたが、諦めるように一刀は肩を落とした

 

おばあさん「それじゃあ笑ってー……はいチーズ」

 

おばあさんの声に合わせて二人が笑顔になると同時にカメラのシャッターが押される

 

おじいさん「うむ。写真が欲しかったら、一週間後ぐらいに来てくれれば渡すよ」

 

焔耶「わかりました。それじゃあまた一週間後に」

 

焔耶の言葉に合わせて二人はお辞儀をして店を後にした

 

一刀「はぁ……なんか無駄に緊張したな。あの写真は何に使うんだ?」

 

一刀は写真を撮られている最中ずっと気になっていたことを焔耶に聞いてみた。それに対して焔耶は本当のことを言うか否かを悩んだが

 

焔耶「店頭に飾るんだそうだ…」

 

一刀「本当に?」

 

焔耶「本当に」

 

一刀「その割には幸せそうですね、焔耶さん」

 

焔耶「私は一刀と一緒ならいつでも幸せだ。それが形に残るならもっと幸せだ」

 

そこまで言って焔耶は自分が何を言ってしまったのかに思い至り、慌てて一刀の顔を見る。一刀の顔は今まで見たこともないほど赤くなっており

 

一刀「俺も…焔耶と一緒なら幸せだけどさ…こういったことは事前に言って欲しいな」

 

この言葉に自分の言葉だけでも顔を赤くしていた焔耶は、全身が熱くなるのを感じていた

 

焔耶「………う、あう」

 

何かを言おうと顔を真っ赤にしたまま口をパクパクさせている焔耶。それを見て一刀は少し余裕が出来たのか、焔耶のことをしっかりと抱き寄せると

 

一刀「俺じゃ頼りないかもしれないけど、俺は焔耶を守り続けるから。愛してるよ…焔耶」

 

焔耶の耳元で一刀が囁いた言葉は一刀の想い。花菖蒲の花言葉は『優しい心、君を守る』

 

焔耶「いつからかは分からないけど、この想いはもう変わらない。愛してる…一刀」

 

一刀の思いに焔耶が返した自身の想い。胡蝶蘭の花言葉は『変わらぬ愛、あなたを愛します』

 

何もせず、ただただ長い時間抱き合う二人。それでも今日一日のいついかなる時よりも、この時を、互いの想いを届けあった時を、そしてその想いが通じ合った時を幸せに感じていた

 

 

 

 

 

 

 

焔耶「一刀……あたってる…」

 

一刀「うぅ…しかたないだろ…」

 

焔耶「ふふ。本当にダメな奴だな一刀は。そんなんで私のことをちゃんと守ってくれるのか?」

 

一刀「守る」

 

焔耶「そうか……」

 

せっかくの雰囲気をぶち壊すような会話で互いを離した二人。焔耶の目元には涙が浮かんでいた

 

焔耶「今日は一刀の家に泊まるぞ」

 

目元の涙を拭いながらそう一刀に言う焔耶。そしてその視線を一刀の一部に向けた後

 

焔耶「だから夜まで我慢だ」

 

そう言って一刀に背を向けて歩き出す焔耶。そんな焔耶に種馬は飛び跳ねて喜びたい感情を必死におさえつけていた

 

 

どうも二度目のkarasuです。

 

いかがだったでしょうか? 楽しんでいただけたでしょうか?

 

第二回の祭りもデレ焔耶で頑張りました。かなり即興で書いたのでなんともいえない作品ですね…準備不足が悔やまれる。

 

次回本気出せばいいってばっちゃが言ってた!! うん。

 

ネタがなくて、ネタ探しにイラストを漁っていたら浴衣姿の焔耶さんが見えまして。浴衣を変えて書かせていただきました。

 

レスポンス元に設定しても良いかどうか悩んだので、設定しませんでしたがネタの元になった作品の作品名、作者様、URLを張りますので是非とも覗いていってください!!

 

MALI様

『浴衣焔耶』

http://www.tinami.com/view/165253

 

ここまで読んでいただきまことにありがとう御座います。

これからもほそぼそと続けさせていただきたいと思います。

 


 
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