朝起きて飯を食べ、身支度をする。うん、いつも通り。
家を出て学校に着く。うん、これもいつも通りだ。
「ねぇ、チョコ持ってきた?」
「え?今日佐々木くんにあげるの!?」
「今日ケーキ作ってきたんだ~」
「うあぁ、緊張するー」
…………この色めきたった空気以外はな!
つぅかなんなんだよ、バレンタインって。どいつもこいつも菓子業界の戦略に乗せられやがって。大体チョコなんかもらっても別に嬉しくねぇし。
そう思いながら靴箱を開ける。中にはいつも通り上靴と教科書しかない。………………。
「おはよう……ってなんでお前そんな溜息ついて……あぁ、なるほど」
「た、溜息とかついてねぇよ。ちょっと今日飛ばしたから、息整えてただけだ」
「ふぅん」
ちくしょう、憐みの目でこっち見るな。ちなみにそいつの手にはすでに綺麗に包装されたチョコがいくつかあった。……ちょっとばかしモテるからって調子に乗ってんじゃねぇよちくしょう!
階段を上って教室に着く。机の中を丹念にチェックする。……………………。
「おっす、お前何して………あ。…………」
「いや、無言で人の肩に手置いて首振らないでくれるか!?」
「大丈夫だ……生きろ」
「その優しげなまなざしがすっげぇ心に刺さるんだが。あれか?新手のいじめか?」
そいつは何も言わず今日の英語の予習を見せてくれた。……なにこの対応。
そしてそいつは部活のマネージャーやらクラスの女子やらに次々とチョコをもらっていた。……イケメンは氏ねばいい。
昼休みになって俺はすぐさま弁当を食べ終えた。…………………………。
「お前食うのはえぇな。なんでそんな急いで……。……心配しなくても呼び出しかかんねぇと思うぞ?」
「お前さらっと失礼なこと言ったな。あと別にそんなんじゃなくて、早食いしたい気分だったんだよ」
「…………。…………そうか」
「なんだよ今の間!」
「いや別に、空が青いなと思って」
「今日めっちゃ曇天だけど!?それと遠い目するのやめてくれるか!?」
「……………あ、わり、ちょっと俺猛烈にリラッ●マをもふりたくなったから、席外すわ」
「それ明らかに口実だよなぁ!っていうかもうちょっとましな理由なかったのか!?そもそもそんなに気まずかったか、今の会話!?」
結局そいつは本当に席を外しやがった。さらに生意気に緊張した面持ちの女子に呼び出されていやがった。あいつの方もまんざらじゃなさそうだ。………リア充爆発しろ!(ブワッ
放課後。俺は部活には所属していないので、教室でマ●オカートを一人でやっていた。するとクラスメートが忘れ物を取りに来た。
「あれ?お前こんな所で何やって………。……………じゃ、オレ部活戻るわ!」
「ツッコミ放棄か!別に期待してたわけじゃないからいいけど!そしてその無駄に爽やかな笑顔が腹立つ!」
そいつは俺を可哀想なものを見る目で見つめると、無言で立ち去った。ちくしょう……やめろよその目………。そんな目で俺を見るなよ………。
下校時間になった。ここまでくれば俺ももう期待はしまい。視界がぼやけているような気がしないでもないが、まあ気のせいだろう。なんか鼻の奥がツンとするが、季節外れの花粉症だろう。………べつに泣いてねぇよ………………。
そんなことをぶちぶちと思っていると、廊下で友人に会った。
「お、よう」
「え?あれ、お前帰宅部なのになんでこんな時間まで………。…………ごめん、酷なこと聞いたな」
「気まずそうに目ぇそらすなよ!」
「いや、すまない。今の質問は禁則事項だったな」
「み●るビーム!って違ぇよ!なにやらせてんだ!」
やべぇ、ついやってしまった……。あの作品はネ申だと思う(キリッ
「今のはお前が勝手にやったんだろ……。…………まあその様子じゃ収穫は0だったみたいだな」
「………いいんだ、俺には嫁がいっぱいいるから」
「二次元のな。現実を見ろ」
友人は憐憫のまなざしを向けてきた。………今日一日だけで何回人に憐みの目で見られただろう。
「……仕方ないな、ちょっと待て」
「?なんだよ?」
友人は制服のズボンのポケットに手をつっこみ、何かを探し出した。やがて見つかったらしくそれを俺に差し出した。
「ほら、やるよ、チ●ルチョコ」
「……………男からもらってもなぁ。しかもチロ●チョコ」
「贅沢言うな、十分うめぇだろ。ほれ」
そう言って友人は●ロルチョコを俺に渡した。
「……………………ありがとうございますぅ」
「うわー、無理やり言った感満載ー。……まあいいや、じゃあまた明日な」
「おう、じゃあな」
俺はそのあと誰にも声をかけられることなく、学校を出た。
帰り道、俺は先ほど友人にもらったチョコを取り出した。………今日の戦利品はチ●ルチョコ1個か…………しかも男にもらったやつ。
チョコの包装紙を取り、口の中に放り込んだ。
「…………………………………………………………しょっぺ」
塩味バレンタインデー
(甘いはずのチョコは、何故か涙の味がした)
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深夜のテンションクオリティで実にすみません^q^← 部誌では初めてシリアスじゃないものを書きました。「小説では絶対こういうことをしない」っていう自分のポリシーが、ギャグになったらがんがん崩れました…。(キリッとかブワッとか) まあなにはともあれ新鮮でした。またこういった感じのものも書くかもしれません。 あ、「リラッ●マもふる」発言は完全に私の趣味です。リ●ックマかわいいよリラック●←