それはある夏の物語、
別に夏ではなくても良い。
春、秋、冬、
それが例え一日日が落ちることのない世界だと言っても構わないし、
一生光など見ることの出来ぬ物語であっても構わない。
これは、他の世界から来たある青年がその世界を平和にした後、
……そう、その後、青年と青年を巡った人たちの物語だ。
桃香SIDE
「ふっふーん♫ふふーん♪きょーおーは楽しみ警邏のひー♪」
最近政務ばかりで城から中々出られなかったから、今日は愛紗ちゃんの警邏に無理やり一緖に来ちゃった。
「桃香さま、あまりはしゃがないでください。お恥ずかしい」
「だって嬉しいんだもん♡」
「まったくもう…少しは他の国の王様のように王としての威厳というものを見せて欲しいものです」
「えー」
「えーではありません!桃香さまは昔から威厳というものがたりないのです」
うん、愛紗ちゃんはいつも通りだね。
「いいね、愛紗ちゃん、平凡な一日って<<ポンポン>>」
「何故私の肩を叩きながらそんなことを言うのですか。そう言っても見逃したりしませんからね」
「いや、ほんとにそう思ってるんだよ?だって、戦っている時には、こんな日が本当に訪れるなんて疑った時もあるんだからね」
「………確かにそうかもしれません」
あの乱世を乗り切って、私たちが手に入れたのは平和、繁栄。
今この国はいつになく天高いところに昇っているに違いない。
民たちの顔に笑顔が満ち溢れて、誰一人食べること、着るものに困らない世界。
そんな日が訪れるのもそう遠くはないはず。
「ここまで来たのも、ご主人様のおかげです」
「そうだね」
あの乱世、
人たちが苦しんでいることを知っていても、自分たちの無力さで何もできないことを悔しがっていたあの日、ご主人様はまるで天使のように私たちに来てくれた。
実際に、ご主人様は天の御使いで、私たちと一緖にこの天下にて乱世を鎮めるために一緖に頑張って、そしてそれを成し遂げた。
乱世は終わり、今からはこの人たちの笑顔が何十、何百年もつづくように守るために頑張っている。
この先にどんなに厳しいことがあるとしても、ご主人様と一緖ならきっと乗り越えられる、ご主人さまと一緖なら負けない。
「あ」
「どうしたの、愛紗ちゃん」
「桃香さま、ご主人さまが…」
「え?ご主人さま?」
「あそこへ…子供たちと…
愛紗ちゃんが指す方を見ると、ほんとにご主人さまが子供たちに囲まれて街の子供たちが良く遊ぶ空き地の陰に座っていました。
「ご主人さ…」
「ねー、御使いさま、またお話して」
「天の世界のお話!」
「わかった、わかった。いつもお前たちが天の世界のお話をして欲しいっていうからそろそろ覚えているものが底をつくよ」
「「「えーー」」」
お話を強請る子供たちに囲まれているご主人さまの姿を見て、私はご主人様を呼ぶことを一瞬やめた。
「んじゃあ、今日は俺が作った話でも良かったら聞かせてあげるよ」
「どんなお話?」
「別に楽しいお話だったらいい」
「動物出るの?あたし動物好き」
「動物?……うーん、そだね、出るよ」
「わーい」
「……そうだな。題名は……仙女と木こり」
・・・
・・
・
物語は樵に行った木こり青年の場面から始まる。
山で木を切っていた木こりの前に鹿が一匹走ってきた。
『助けてください。猟師に追われてるんです。お願いです、隠してください』
優しい木こりは鹿が可哀想で自分が切った木材の後ろに隠れるようにして、自分が何事もなかったかのように木を切る作業に戻りました。
そうしていると、鹿が言っていた猟師が走ってきました。
『ここで鹿が走っていくのを見なかったか?』
木こりは木材の後ろに隠れて震えている鹿の姿を見て、
『見たな。あっちの方へ走っていった』
と、ある方向を差してあげた。
猟師は木こりの話を信じて、彼が差した方に走っていった。
猟師が見えなくなった頃、木こりは鹿を出てくるように行った。
『助けてくれてありがとうございます』
『構わないさ。さ、早く猟師が戻ってくる前に逃げるといい』
『はい、その前に、命を助けてくれたあなた様に良いことを教えてあげます。明日この山の奥にある池で、天からの仙女たちが降りてきて沐浴をします。そこで彼女たちが陸に置いてある服のうち一つを隠してください。そしたら、服がない仙女は天の戻っていくことができなくなるんです。その人と結婚して子供が三人になるまで服を返してあげなかったら、その人は延々とこの地上であなたの妻として生きることになるでしょう』
鹿は木こりにそう言って猟師が行った方向とは反対側に向かって消えていきました。
不思議と思いながらも木こりはその日帰っては、次の日鹿が行った通りに山の池の方に行きました。
そしたら、本当に仙女たちが池で水浴びをしているのではありませんか。
木こりは鹿が行った通り、木にかけておいた仙女たちの服のうち一つをこっそり隠しました。
暫くしていると、他の仙女たちは皆服を来て空を飛んで天に帰るのに、一人だけ服がない仙女が居ます。
慌てながら自分の服を探す仙女の前に木こりが現われました。
『こんな所でどうしたのですか?』
仙女は突然男が現れて驚きました。
『服を失くしたのですか?』
仙女はその話に驚きながらも、頭をうなずきました。
木こりはその仙女に自分が持ってきた服を着させて、自分の家に連れて帰り、結婚しました。
そして、月は流れ、
結婚した二人の間には、二人の子供ができました。
あともう一人子供ができたら、仙女は天に帰ることができません。
そんなある日、仙女は一つ良いこと思いつきました。
ある日、木こりが家に戻ってくると、仙女はいい酒をたくさん用意して木こりに飲ませました。
暫く呑むと、木こりはすっかり酒に酔ってしまいました。
そんな木こりに、仙女はこっそりと聞きました。
『実はあの時、あなたが私の服を隠したんですよね』
木こりは酒によっていながらも、その話を聞いてビクッとしました。
『いいんですよ。もう私はあなたの妻、もう昔のことで怒ったりはしません』
『……じゃあ、ここでずっと俺の妻で居てくれるのかい?』
『ええ、もちろんです』
それを聞いた木こりは安心して、仙女が勧める酒を飲み続けた。
もう暫くすると、完全に酔いつぶれた木こりに、仙女はもう一度聞きました。
『それで、その服をどこに置いたのですか?』
『それを知って…どうするんだ』
『何もしません…ただ、ちょっと懐かしいと思いまして…一度着てみたいのです』
そう言いながら仙女は、天の世界に置いてきた自分の家族や友たちのことを思い出して涙を流しました。
それを見た木こりはまた心が弱くなり、また酒が入ったせいもあって、仙女に服の隠し場所を教えてしまったのです。
『あれはな……俺たちが始めてあった場所からちょっと離れたところにある岩の下に隠しておいたさ』
それを聞いた仙女は喜びながら、もうしばらく木こりに酒を飲ませました。
木こりが酒に酔いつぶれ、寝てしまったことを確認して、仙女は自分が産んだ子供二人を連れて、木こりが言っていた場所へ向かいました。
暫くして、酔いつぶれていた木こりは、起きてみると妻と子供たちが居なくなったのを知ってしまったと思いながら山へ昇りました。
でも、彼が池に着いた時には、もう仙女は子供二人を両腕に抱えて天の昇っていきました。
『帰ってきてくれ!』
木こりが離れていく仙女を見ながら叫びました。
『ごめんなさい、あなた。だけど、私は帰らなくちゃいけません』
だけど、仙女は帰って来ることなく、そのまま天に昇って、やがて見えなくなってしまうのでした。
・・・
・・
・
桃香SIDE
「話は……ここでお終い」
「「「「………」」」」
話が終わっても、子供たちは無言のままご主人さまを見つめていた。
そして、私も……
「…ご主人さま……」
隣の愛紗ちゃんも胸を締めながら、ご主人さまと子供たちの姿を見守っていた。
「木こりがかわいそう」
「木こりなんて全然可哀想じゃないよ。それより仙女さんの方がずっと可哀想だよ」
ちょっとすると、子供たちが話を聞いた感想を言い始めた。
「木こりは大体鹿の言った通りに守らなかったんじゃない」
「でも木こりは自分が好きな人が自分を騙して逃げてしまったわけだろ?木こりは酒呑まされてそのうちに言ってしまっただけだし」
「先に木こりが仙女の服を奪ったのがいけないよ。仙女さんだって、天の世界に家族や友たちがあったのに、自分の幸せのために仙女さんをずっと自分の側に居させようとしたんでしょ?」
「っっ!!」
ある女の子が言う言葉に私の胸がズキッとした。
ご主人さまも、あの童話の中の仙女さんみたいに、天の世界に友たちは、お父様、母様が居るのに、突然この世界に来て、今まで帰られないままここに居る。
「まぁ、まぁ、そんな皆熱くならないで。ただのお話だから」
「ねー、御使いさま。御使いさまもいつか天の世界にのぼって帰るの?」
「え?……俺?」
「!!」
そんなのダメ!と叫びたくなるのを心でやっと抑えた。
「バカ、御使いさまはもう子供たくさんいるじゃん。呉のところに」
「魏のネコミミ軍師さまも御使いさまの娘孕んでるし」
「あ…あはは…そうだな。俺はもう帰れないな」
……そう、ご主人さまは天の世界に帰れない。
という以前に、帰る方法を知らないんだ。
「ふぅ……よかった」
それに気づいて、安心する自分の姿に気づいた時、私は更なる罪悪感に陥った。
何が良かったなの?ご主人さまはずっとこのまま、天の世界に帰れないのに。
私はご主人さまがここにずっと残っていなければいけないことを喜んでいるの?
桃香…あなたはどこまで自分勝手な娘だったら気が済むの?
「っ!!」
「!桃香さま!」
愛紗ちゃんが走っていく私を呼んだけど、私は振り向かずに走った。
華琳SIDE
「最近は頑張ってるわね。あなた」
「うん?」
ちょっと用があって一刀の政務室に来た私は、ふと最近思っていたことを彼に言った。
「サボりもしないし、他の娘たちともいちゃいちゃしたりもしないし」
「……夜の仕事はちゃんとしてるぞ」
「そんなの分かってるわよ。そういう意味じゃないわよ、このバカ」
だけど、ほんとに最近の一刀は良くしてくれてる。
街の警邏から国の政に至るまで、彼の手が関わらなければ成るものがないほどだけど、最近の彼はそれ以上よ。
以前ならもっとノンビリした感じで、他の女の子たちともいちゃいちゃしながら、それでも民たちのために努力を怠らない彼からもう少し成長した感じ。
彼は立派になっていた。私が見ても認められるほど。彼は王の姿が様になっている。
「私から褒めてあげたいぐらいよ」
「…華琳がそんなことを言ってくれるなんて嬉しいな」
「いえ、本当に……」
私は彼が座っている机に近づいて、その上に座って彼の肩を掴みながら言った。
「ありがとう、一刀」
「……華琳」
昔、彼が私の前から消え去った時、私は天下を手に得て、代わりに持っていた全てを失った。
だけど、彼がいつかは帰って来てくれる。また私の元へ戻ってきてくれる。
それを疑った事なんて一度もない。
そして、彼は帰ってきてくれた。
当たり前のことだって、彼が私に帰ってくることなんて、当然で、そうなるに決まっていると思っていたのに、彼を見た途端、他の娘たひの目があるにもかかわらず泣きながら抱きつく私の姿がいた。
一刀が帰ってきてくれた。
私の覇道を共に歩いてくれたあの人が帰ってきた。
それが嬉しくて…嬉しくて仕方がなかった。
出来れば私が持っている全てを彼に捧げても良いとまで思った。
だけど、彼はただ私の側に居てくれた。
何の返しも無く、ただ私だけ、私たちだけ居てくれればそれでいいかのように、彼は当たり前のように私たちの元に帰ってきてくれた。
今この天下にあるものは、全て私たちが共に築いたもの。
だけど、私一人だけじゃ、絶対に出来なかったこと。
あなたが居なかったら、とうの昔に跪いたはずの場所が何度もあった。
彼が、今ここに居る一刀が居てくれなければ、私はここまで来ることができなかった。
「今日閨に来なさい」
「今日は春蘭たちの…」
「来なさい」
「…はい」
私の愛おしい人。
「……うん……」
夜、寒さを感じて起きてみると、ふと隣が涼しくなっていた。
「……一刀?」
一刀が、
隣に居る筈の一刀の姿が見えなかった。
どこへ………
・・・
・・
・
服を着て外に向かう。
夜風は少し寒い。
彼はどこに行ったのだろう。
当ても無く廊下を歩いていたら、中庭に物陰があることに気づいた。
「……一刀」
一刀が東屋で一人で座っていた。
私と一緖に寝ていたというのに、こんなところに来て何をしているのかしら。
彼に気付かれないように、静かに彼の元へと近づいた。
「………ふぅ」
彼は心の底から出てくる溜息をついた。
彼の視線は空を向いていた。
何も言わずに、ただ空を見上げている彼の目元の涙が見えなかったら、私は彼の無礼さを叱るため彼の前に出ていたかもしれない。
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「寂しくならない?」
「うん?何が?」
「天の世界。あなたが置いてきたもの全部。家族、友たち、全部捨てて私の前にまた来てくれた。でも、あなたがそれらを懐かしがらないとは思わないわ」
「……そうだね……そんな時は、空を見たらいいと思う」
「空を?」
「天の世界でも、ここみたいに空は青い。そして日が昇る時や落ちる時は朱色になって…また夜になると星と藍色の空がある。天の世界でも、この世界でも、空だけは変わることがないから」
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「……いや」
「!」
「俺はここに居る。そう決めたんだ…今になって……どうにもならない」
「!」
彼が涙を拭いて立ち上がるのを見て、私は先に部屋に戻るために足を急げた。
・・・
・・
・
「はぁ……」
先に部屋に戻って、服を脱ぎながら彼が言った言葉の意味を鑑みる。
彼は私の元へ戻ってきてくれた。
でも、彼が来るまでの二年間、彼は天の世界にいた。
天の世界がどのような所か私は知らない。
だけど、きっと一刀にとって、ここより懐かしみがあって、彼にとって在るべき場所だと言うことは確かでしょう。
そんなのを全て犠牲にしてまでここに来てくれたのは、一刀自身。
私は…何もしなかった。
「だからって、それが私のせいではないとは言えない」
今夜私が見た彼の涙。
今夜以前に、彼が帰ってきてから、彼が消える以前に、
一刀はどれだけ泣いたのだろう。
自分が居た場所を恋しがりながら、そこに置いてきたものたちをどれだけ愛おしく思っていただろう。
「私の方がもっと大事だったから、ここに来てくれたんじゃないの?」
だからと言って、彼が後悔しないというわけではない。
彼は、確かに私を懐かしんでいただろう、それを疑うことは私の存在を疑うほど馬鹿らしいこと。
だけど、あの夜私が言った言葉たちが、彼にどんな風に覚えたのだろう。
『綺麗な月ね』
『あなたが私に仕えたのは、私が拾ったからもの』
『その恩はこれから返してくれるのでしょう?』
『…帰るの?』
『そんなに言うなら……ずっと私の側にいなさい』
『お終いにしなければいいじゃない』
『どうしても……逝くの?』
『恨んでやるんだから』
『逝かないで』
『かずと…』
『一刀……』
『…………一刀?』
『ずっといるって、言ったじゃない!』
『バカ…っ!』
彼に届いたはずのその言葉は……覇王の威厳無き…子供の駄々。
優しい天の御使いは、自分の全てを捧げてまで尚その子供の駄々を……叶えてあげるしかなかったとしたら?
がらっ
「!」
「あ……華琳」
戻ってきた彼と目があった。
「…今から、消えたあなたを探しに行くつもりだったの」
「…ごめん、途中で起きちゃって…ちょっと夜風を浴びたくなってな」
「そう……」
「……ごめん、華琳」
私を見つめていた一刀は、また何も言わずに裸のまま立っている私を抱きしめた。
「大丈夫だよ、華琳」
「一刀…?」
「また、あんなことしないから……華琳の前で消えたり…しないから……」
「………」
バカ
あなたは、いつもそうやって人のことしか考えないのね。
自分のことなんて、ものともせずに……
蓮華SIDE
「お父様、抱っこー」
「はい、はい」
今日は久しぶりに一刀が孫呉の屋敷にやってきてくれた。
こっそり訪れた彼を一番先に見つけた孫登が誰よりも先に彼を私が居た政務室まで連れてきた。
たまには母娘一緖で、一刀を独り占めするのも悪くないと思って、そのまま一刀を引きずって来ている始末だ。
この様をお姉さまにバレてしまったらまた一大事になりかねないが……
「まったく、孫登はいつになっても子供だな」
「むぅ…お父様は登のこと嫌いなの?」
「そんなわけあるかーー」
「うわぁーー」
一刀は抱いていた孫登を更に高く持ち上げたままぐるぐると回った。
「わーい♡」
「ハハハ、どうだ、孫登」
「たのしいー♡」
「まったく、二人ともあまりはしゃいぢゃだめよ。それと一刀、そんなことして孫登が危ないじゃない」
「分かってるよ」
そういいながら、一刀は孫登を下ろした。
「ふぅ、楽しかった」
「他の娘たちにはナイショでな。さすがに皆に迫られたら体が持たない」
「えー、甘述ちゃんにもダメ?」
最近孫登は二人目の娘をはらんでいる母と遊べない甘述と一緖に遊んでいる。
もちろん他の娘たちとも仲良くしてるけど、寡黙な甘述も孫登が何度も誘うと子供の様が出るらしい。
「甘述ちゃんは…うーん、そうだね。いいよ」
「やったー!じゃあ、甘述ちゃん呼んでくるー」
「え、今から?」
「うん!」
孫登ははしゃぎながら部屋を出て行った。
「絶対他の娘たち皆連れてきちゃうわね」
「あはは……頑張るしかないな」
「そうね」
戦いが終わった後、一刀の娘が次々と産まれた。
最初に思春、亞莎、祭、明命、穏、そして私が最後になって、今度は思春が二人目の娘を産む。
三国で断然一刀の娘を宿している孫呉だけど、その分、一刀が一度ここに来ると、私たち以前に子供たちの相手で忙しい。
子供たちが過ぎていくと、一刀の完全にへばってる姿が、微笑ましく思うもその大変さが確かに感じられる。
もちろん、そのかわり保養食とかはちゃんと付けてあるんだけど、それもまた夜になったら……
「//////」
「?どうしたの、蓮華」
「な、何でもないわ」
もう、なんてことおもってるのよ、私ったら……
「ねぇ、一刀、今日ここに居るの?」
「そうだな…今日は蓮華と孫登と一緖に居ようと来たんだし?」
「ほんと?嬉しいわ」
「本当はもうちょっと早く来たかったんだけどね」
「………うん」
最近はほんと、三人で穏やかしていることなんて思えないぐらいに忙しかったから。
一刀も忙しいし、私は少し建業に戻っていた。
母様の忌日で、姉さまと小蓮と、孫登も一緖に建業に戻っていた。
忙しい中でも、毎年母様の墓に行って今までのことを報告することは、私たち三姉妹にとっては大事な行事になっていた。
「ありがとう、一刀。忙しいのに…」
「そう言うなって。蓮華と孫登と一緖に居るのが疲れるなんて全然思ってない。むしろ力になってくれるからこうしてきたんだよ」
「……うん」
でも、やっぱり最近あまり一刀に会ってないから……寂しかったかもしれない。
孫登もいることだし、会おうとすれば会えないわけじゃないけど、それでもこうして彼から私のところに来てくれたのは嬉しい。
「……一刀、…あのね」
「…え、蓮華、今真昼間だぜ」
「ち、違うわよ!もう!」
「冗談だって……」
もう、意地悪なんだから……
一刀は座っている私に近づいて両肩に手を置いた。
「蓮華」
「……一刀」
彼の瞳の中に映る、私の顔がどんどん近くなっていくを見ながら、私はそっと目を閉じた。
がちゃっ!
「お父様、全部連れてきちゃった!」
「ひゃーーー!」
「うわっ!」
いきなり孫登と他の娘たちが追い詰めてきて、一刀も私も振り向いた。
「父様!孫登さまだけたかいたかいしてあげるなんてずるいです!周卲だって父様にたかいたかいしてもらいたいです!」
「……父上、贔屓は良くないぞ」
「とおさま…陸延も……はぁ…はぁ……はぁああああん!」
「あうっ!陸延ちゃん、やめてぇー!」<<呂琮
「まったく……父よ、こいつらはほっといて私からしてもらおうぞ」<<黄柄
「………」
その娘たちを見て、一刀は一瞬無言のまま立っていた。
「……父様?……ごめん、あたし甘述だけに言おうとしたんだけどね、でも、でも……」
その姿を見てちょっと怖くなったのか孫登は悶々としながらそう言った。
そんな孫登を見て、彼はゆっくりと孫登の頭に手を乗せた。
「…大丈夫だよ、孫登、父様怒ってるわけじゃないから」
「……ほんと?」
「ほんと、ほんと、その証拠に…っ!」
「ひゃわっ!」
「ほーら、たかいぞーー」
「あー!ずるいです!孫登さまばかり二回もしてもらうなんて贔屓です!」
「……あまり待たせると例え父上でも許さない<<チリン>>」
「陸延ちゃん、やめて!このままだと孫登さまにお父様を独り占めされてしまいます!」
「(*´Д`)ハァハァ」
「ええい!まどろっこしい。こうなったら力づくじゃ!」
孫登を抱き上げる一刀を見て、他の娘たちも負けずと一刀の周りに集まって来た。
今日も彼には休みはないらしい。
「よし、お前らどんとこーい!」
「すぅ……ぅ……」
夜になったら、孫登を間において、一刀と一緖に布団に入った。
「久しぶりにお父さんを見て、皆うれしかったんだね…最近この子、夜になると眠くないって言いながら寝ないでいたのよ?」
「………」
「…一刀?」
「……うん?」
孫登を見ながらぼうっとしていた一刀は、私が再度呼ぶとやっと我に戻ったのか私を見た。
「…ごめん、あなたも疲れてるのに……」
「いや、大丈夫だよ。…そんなことより、蓮華この前墓参りに行ってきたよな」
「え?ええ……孫登も一緖に行ってたけど、この娘ったら墓の前で走り回って大変だったのよ」
「あはは…そりゃいけないな。後で俺が言っておくよ」
「そうしてくれると嬉しいわ」
ほんと、私一人だけ手に負えない時が多い。
一刀のことはちゃんと聞くのに(今日はそうでもなかったけど)、私の言葉はあまりちゃんと聞かない。
やっぱ私がいつもあまくするかそうなのかしら。
でも、それだと一刀だって………
「お父様……」
「!」
「あ、起きたのか?」
「…ふみゅ……」
寝中に一刀のことを呼んだらしい。
「また……登とお母様と遊んでね…」
「あ……」
もしかしたら、孫登は一刀の言葉を聞くのは、一刀がいつもここに居ないせいなのかもしれない。
一刀はいつも政務で忙しいし、他の国の娘とも一緖に居なきゃいけない。
自分がわがまま言ったり駄々をこねると、一刀がまたここに来てくれないと思って不安なんだ。
だから、一刀の前ではいつも良い子に居ようとする。
「お母さんの言うことちゃんと聞いたら、毎日でも来てあげる」
「…………へへへ……じゃあ、良い子してる…」
ほんとに寝てるの?この娘……
「……いいよな。こんなふうに、家族揃って居られるのって…」
「そうね…もっとこんなことができればいいのにね」
だけど、それができない。
だから、いつもは子供げた孫登も良い子になったり、普段なら王の威厳も無く子供と一緖にはしゃぎだす一刀にため息をつく私もそれを微笑ましく見つめる。
こんな父と母の間で産まれたこの娘は、大変かもしれない。
ろくに遊んであげることもできなくて、家族が一つの場に集まるのがこんなに大変な家族。
でも、
「楽しいわ」
「うん?」
「あなたと、孫登と一緖にこうして居られるの…母として、女としてとても嬉しい」
「………俺も蓮華と孫登と一緖に居れて嬉しい」
「……うむぅ……」
一刀の優しげな笑顔と、孫登の無邪気な笑顔が同時にぶつかってくると、私もついつい顔がにやけてきてしまう。
でも、あまり長くみられると恥ずかしいから
「つ、疲れてるわよね、そろそろ灯りを消しましょう」
「ああ、その前に」
「え?あ……ぅん」
突然に彼の唇が孫登を越えてぶつかって来ると、私は驚きながらもそれに応えて目を閉じた。
「ん………う…」
「……昼間の続き」
「…急にしないでよ、びっくりするじゃない」
「でも嬉しいでしょう?」
「……当たり前のこと一々聞かないでよ。恥ずかしいじゃない」
「もっかいする?」
「ばか」
・・・
・・
・
そしてある日、
三国合同の朝議にて、時間になっても一刀は姿を現さなかった。
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暑中見舞い申し上げます(これで合ってるはず
こんにちは、勝手に第二回同人恋姫祭り韓国代表TAPEtです。
今回は最初からすごい作品の波で、驚きながら思いつきの作品を挙げてみます。
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