真・恋姫†無双~赤龍伝~第81話「赤い龍と黒い風」
―――劉備陣営―――
関羽「呉の宿将と柱石が仲違い、か。……桃香様。我らはこのまま呉と同盟していて良いのでしょうか?」
劉備「え? でも同盟を破棄してどうやって曹操さんに立ち向かうの?」
趙雲「同盟を破棄して曹操に降るということですよ。……そういう選択肢を取る必要が出てくるかもしれん」
張飛「そんな卑怯な事はしたくないのだー……」
関羽「卑怯かもしれん。だが我らは、兵の命を預かっているのだからな。……星の言う通り、選択肢の一つとして考える必要があるかもしれん」
諸葛亮「いえ、その必要は無いかと」
劉備「え、どういう事? 朱里ちゃん、他に何か考えがあるの?」
諸葛亮「考えというか。……周瑜さんと黄蓋さんの諍いですけど、これは恐らく、周瑜さんの考えた策です」
馬超「ええっ!? あれって作戦なのかっ!?」
諸葛亮「はい。あの口論の始まり方は、あまりにも不自然でしたから」
関羽「不自然だったか? 私は特にそうは感じなかったのだが……」
趙雲「黄蓋の言葉や周瑜の台詞は、いかにも二人の言いそうな事だと思ったのだがな……」
諸葛亮「いかにも過ぎると思いませんでしたか?」
劉備「それは少し思ったかも。……だって二人とも呉を愛している人たちなのに。……何だか突然だなーって印象はあったね」
諸葛亮「はい。……その後、愛紗さんたちが抗議したとき、周瑜さんは私にこう問いました。……孔明もそう思っているのか? と」
関羽「確かに……」
諸葛亮「敢えてそういう言い方で私に尋ねるという事は、愛紗さんたちの抗議を、暗に肯定しないという事ですよね?」
趙雲「…………」
諸葛亮「私はあのやりとりで確信しました。……あの諍いは策の一端なんだって」
趙雲「なるほどな。あのやりとりにはそんな裏があったのか……」
馬超「うへぇ~……軍師の会話ってすごいんだなぁ」
諸葛亮「それに赤斗さんも、それとなく私に伝えようとしてくれていましたから……」
劉備「え、そうだったの?」
諸葛亮「はい。私が周瑜さんの策に気づいている事も分かっていましたし」
張飛「赤いお兄ちゃんって以外と凄いのだ」
諸葛亮「呉の総参謀ですからね」
関羽「周瑜と黄蓋の諍いが策だったとして……では、呉はどう動く? 曹操は? 我らはどう動けばよい?」
諸葛亮「恐らく黄蓋さんは呉を脱走して、曹操さんに降伏するはずです。そして、曹操軍を内部から混乱させるでしょう」
関羽「脱走……」
諸葛亮「となれば、呉はその混乱に乗じて総攻撃を掛けるでしょう。私たちは呉と連携し、混乱する曹操さんの部隊を強襲するのが良いかと」
趙雲「となると……速さが命の作戦になるな」
諸葛亮「そうですね。私たちは呉の動きを見逃さないようにしないといけません。黄蓋さんが動く時が決戦の時かと……」
関羽「わかった」
軍議を終えて天幕の外に出た関羽は、陣営を出ていく赤斗の姿を見つける。
関羽「……あれは」
劉備「愛紗ちゃん、どうしたの?」
関羽「風見殿が……いえ。何でもありません。桃香様は先に休んでいて下さい」
そう言うと関羽も赤斗を追って陣営を出ていった。
劉備「愛紗ちゃんっ!」
赤斗「ここまで来れば大丈夫かな」
陣営から少し離れた場所に、赤斗と玄武はやってきた。
玄武「どこであろうと同じ事だ」
そう言いながら玄武は、鎧を脱ぎ捨てて黒衣の姿を現した。
赤斗「力ずくでも、司馬懿の企みを吐かせてあげるよ」
玄武「ふんっ」
二人は同時に剣を抜いた。
そして、官渡の戦い以来の二人の戦闘は始まった。
その場に吹き荒ぶのは、赤と黒の風。
赤斗と玄武によって、他の人間が入り込めない空間が作り出されていた。
赤斗「くっ!」
玄武「ちっ……」
剣圧が――、闘気が――、殺気が――、あらゆる力が――、想いが――、
お互いを否定しようとぶつかっていた。
玄武「………どうやら官渡の時よりも、だいぶ力をつけたみたいだな」
赤斗「あれから、お前たちのお蔭で色々あったし、修行もしたからな。強くもなるさ!」
玄武「あのまま毒矢で死んでいれば良かったものを!」
赤斗「そう簡単に死んでたまるか!」
関羽「これは……」
赤斗を追って関羽が目にしたのは、二匹の龍。
関羽は虎牢関での呂布と赤斗の一騎打ちを思い出す。
実際に二人の一騎打ちを見たわけではなかったが、噂は聞いていた。
赤い龍が飛将軍呂布相手に戦場を駆け巡った、と……。
しかし、関羽はその噂を信じられなかった。
初めて会った時は、孫堅にくっついてきただけの男としか思わなかったし、二度目に会った時には、敵であったはずの月や詠を保護してくれなんて、とんでもない事を頼みにきた男としか思えなかったからだ。
だが、三度目にあった時は、徐州を脱出する為、赤斗と戦い関羽は負ける寸前まで追い込まれた。
そこで赤斗の実力を思い知る事ができた。
そして今、噂通りに赤い龍が黒い龍と一緒に、辺りをところ狭しと駆けていた。
関羽「しかし、相手は何者だ?」
赤斗と玄武二人の戦いを見ながら、関羽は自然と疑問を口にしていた。
恋「……赤斗」
その時、関羽の背後から恋の声が聞こえた。
関羽「呂布! どうして此処に?」
恋「……赤斗、捜してた。戦ってるの赤斗と……玄武」
関羽「風見殿と戦っている者を知っているのか!?」
―――曹操の本陣―――
夏候淵「華琳様。間諜から報告が入りました」
華琳「聞こうかしら」
夏候淵「はい。軍議の席上、大都督である周瑜を宿将黄蓋が激しく罵倒。それを受けた周瑜は黄蓋を極刑にしようとしたそうですが、孫策や孫権たちによって仲裁され、結局、黄蓋は軍規に照らし合わせて鞭打ちの刑に処されたとの事です」
華琳「ふむ……」
夏候淵「上手くいけば、黄蓋を我が軍に引き込めるかもしれないとも密書には記されています。如何いたしますか?」
華琳「演技か真実か。……しかし黄蓋ほどの武将が降るのであれば……欲しいわ。何としても」
夏候淵「はぁ……。罠の可能性が高いと思われますが」
華琳「多少の罠など、曹魏の人間なら粉砕しておしまいなさい。間諜たちには黄蓋と密かに連絡を取るように伝えなさい」
夏候淵「……かしこまりました」
夏候淵は最後まで納得できなかった。
キィン、キン、キィン。
お互いの剣がぶつかり合い、高い金属音を発する。
赤斗と玄武の戦いは、すでに始まってから二時間は過ぎようとしていた。
だが二人は戦いを止めようしなかった。
赤斗「はぁ、はぁ……」
玄武「そろそろ限界のようだな。はぁはぁ……」
息を切らせながらも、二人は戦いを止める事ができなかった。
赤斗「それはお前がだろ」
その時、呉蜀同盟の本陣から騒がしい声が聞こえてきた。
玄武「何だ!」
赤斗(……祭さんが華琳に投降する為、本陣を抜けたのかな?)
玄武「何か知っているのか?」
赤斗「さあな」
玄武「ふっ……まあいい」
赤斗「ん?」
玄武「もうすぐ全てが終わるのだから」
赤斗「それは、どういう意味さ?」
玄武「曹操も劉備も、そして孫策も、みんな滅ぶって事さ」
赤斗「何だと!」
赤斗(司馬懿が赤壁で何か仕掛けてくるつもりなのか? 確か司馬懿って、赤壁の後に登場するはずだったよな……)
そんな事を考えている隙を玄武は見逃さなかった。
玄武「ふんっ、隙だらけだぞ」
赤斗「くっ!」
胸を浅くだったが赤斗は玄武に斬られた。
玄武「これで終わりだーーっ!!」
玄武はとどめの一撃を赤斗に向けて放った。
しかし、玄武の一撃は赤斗には届かなかった。
玄武「貴様ら!」
玄武は殺意に満ちた目で、邪魔に入った二人の武将を睨みつけた。
赤斗「恋、関羽さん」
関羽の青龍偃月刀と恋の方天画戟によって玄武の剣は阻止されたのだ。
赤斗「ありがとう。助かったよ」
恋「(コクン)」
関羽「何をしている! いきなり隙だらけになって、死ぬ気か!」
赤斗「ははは……すみませんね。ちょっと考え事を……」
関羽「まったく……」
関羽はそう言いながら青龍偃月刀を構えた。
赤斗も恋も武器を構えた。
玄武「…………止めだ」
関羽「なに?」
赤斗「逃がすと思うか」
突然、辺り一面に霧が立ち込めてきた。
玄武「ふふ……また、すぐに会う事になるさ」
そう言って玄武は霧の中に消えていった。
関羽「消えた?」
赤斗「逃がしたか。………しょうがない。いったん戻りましょうか。動きがあったみたいだしね」
関羽「う、うむ。そうだな」
本陣に戻る赤斗だったが、玄武の言葉が頭から離れなかった。
つづく
~あとがき~
呂です。読んでくださって、ありがとうございます。
真・恋姫†無双~赤龍伝~に出てくるオリジナルキャラクターの紹介
オリジナルキャラクター①『風見赤斗』
姓 :風見(かざみ)
名 :赤斗(せきと)
字 :なし
真名:なし
武器:花天と月影……二振りの日本刀(小太刀)。赤色の柄で赤銅の鞘に納まっているのが“花天”で、黒色の柄で黒塗りの鞘に納まっているのが“月影”。
本編主人公の少年。
身長168㌢。体重58㌔。年齢17歳。黒髪黒眼。(右目は輝く金色)
放課後に道場で古武術の達人である先生に稽古をつけてもらうのが日課だったが、ある日道場で黒尽くめの男に襲撃される。
その際、赤い光に包まれて恋姫の世界に飛ばされる。
死にかけていた所を、火蓮によって保護され“江東の赤龍”という異名を付けられる。
古武術 無双無限流を学んでおり、その奥義を使えば恋姫の世界の武将とも闘えることができる。
無双無限流には、『全ての奥義を極めしとき、その身に龍の力が宿る。』という伝承がある。
奥義には“疾風”“浮葉”“流水”“月空”“烈火”“絶影”“龍鱗”“狂神”などがある。
奥義の同時発動は可能だが、奥義単体の発動以上に身体に負担がかかる。
現在、奥義“狂神”を発動させて、龍脈の気が流れ込んだ影響で右目は金色に変化している。
好きなもの:肉まん
苦手なもの:海(泳げないから)
能力値:統率3・武力4・知力4・政治2・魅力4
オリジナルキャラクター②『孫堅』
姓 :孫
名 :堅
字 :文台
真名:火蓮(かれん)
武器:南海覇王……やや長めの刀身を持つ、両刃の直刀。派手な装飾はないものの、孫家伝統の宝刀。
孫策(雪蓮)たちの母親。
身長173㌢。腰まで伸びる燃えるような赤い髪の持ち主。
血を見ると雪蓮以上に興奮してしまう。
孫尚香(小蓮)には非常に甘い。周りの人間が呆れるほどに甘い。
この外史“赤龍伝”では孫堅は死んでいない。
好きなもの:娘たち(特に小蓮♪)と酒
能力値:統率5・武力5・知力3・政治4・魅力5
オリジナルキャラクター③『諸葛瑾』
姓 :諸葛
名 :瑾
字 :子瑜
真名:藍里(あいり)
武器:風切羽(かざきりばね)……火蓮から受け取った護身用の短刀。諸葛瑾(藍里)の実力が低いので、あまり役に立っていない。
諸葛亮(朱里)の姉。
諸葛亮(朱里)とは違い、長身で胸も大きい女性。髪は金髪でポニーテール。
温厚で気配りのできる性格で、面倒見も良い。赤斗の世話役として補佐につく。
一時は、自分たちとは違う考え方や知識を持つ赤斗に恐怖心を持っていた。
政治、軍事、外交と様々な仕事をこなすが、諸葛亮(朱里)には僅かに及ばない。
苦手なもの:酒(飲めるが、酔うと周りの人間にからむようになる)
能力値:統率3・武力1・知力4・政治4・魅力4
オリジナルキャラクター④『太史慈』
姓 :太史
名 :慈
字 :子義
真名:嶺上(りんしゃん)
武器:雷電(らいでん)……二本の小型の戟。
非常に勇猛かつ、約束に律儀な武将。銀髪レゲエの女性。
孫策(雪蓮)と一騎打ちして引き分けたことがある。
それ以来、孫策の喧嘩友達になっており、よく喧嘩をしている。
孫尚香(小蓮)や諸葛瑾(藍里)と仲が良く、孫尚香(小蓮)の護衛役をしている事が多い。
子供好きで、よく街の子供たちと遊んでいる。
弓の名手でもあり、その腕は百発百中。
好きなもの:子供
能力値:統率4・武力4・知力3・政治2・魅力3
オリジナルキャラクター⑤『司馬懿』
姓 :司馬
名 :懿
字 :仲達
真名:不明
武器:不明
黒尽くめの衣装を身に纏った、曹操軍の軍師。
曹操軍に属しているが、曹操からの信頼はないといっても良い。
色々と裏で暗躍しており、虎牢関では張遼を捕え、術により自分の傀儡にしている。
今は、魏から姿を消している。
能力値:統率5・武力?・知力5・政治5・魅力?
オリジナルキャラクター⑥『玄武(げんぶ)』
姓 :不明
名 :不明
字 :不明
真名:不明
武器:魏軍正式採用剣……魏軍に配備されている剣。
司馬懿の部下。
普段は何の変哲もない魏軍の鎧を身に纏い、普通の兵士にしか見えない。
しかし、眼の奥からは異質な気を醸し出している。
鎧の下には黒の衣を纏っており、素顔は司馬懿に似ている。
虎牢関では、鴉と一緒に張遼を捕えた。
能力値:統率2・武力4・知力3・政治1・魅力2
オリジナルキャラクター⑦『鴉(からす)』
姓 :不明
名 :不明
字 :不明
真名:不明
武器:爆閃(ばくせん)……司馬懿から受け取った回転式拳銃。
司馬懿の部下。
性格は軽く、いつも人を馬鹿にしているような態度をとる。
司馬懿と同じ黒い衣装だが、こちらの方がもっと動きやすい軽装な格好をしている。
寿春城では、孫堅(火蓮)を暗殺しようとした。
能力値:統率2・武力4・知力2・政治1・魅力3
オリジナルキャラクター⑧『氷雨(ひさめ)』
姓 :不明
名 :不明
字 :不明
真名:不明
武器:氷影(ひえい)……氷のように透き通った刃を持つ槍。
司馬懿の部下。
青い忍者服を着た長い白髪の女。
背中には“氷影”を携えている。戦闘時には全身からは氷のように冷たい殺気が滲み出す。
洛陽で董卓(月)と賈駆(詠)を暗殺しようとした所を、赤斗と甘寧(思春)に妨害される。
官渡の戦いでは、呂布の部下を連れ去り、それを止めようとした陳宮を殺害する。
能力値:統率2・武力4・知力3・政治1・魅力3
オリジナルキャラクター⑨『宮本虎徹』
姓 :宮本(みやもと)
名 :虎徹(こてつ)
字 :なし
真名:なし
武器:虎徹……江戸時代の刀工が作った刀。
赤斗の古武術の師匠。
年齢は50歳。実年齢よりも、肉体年齢は若い。
赤斗と一緒に、恋姫の世界に飛ばされたと思われる。
最初は河北に居て、それからは用心棒をしながら、色々と辺りを転々としている。
赤斗の修行をやり直した後、天の世界に戻ったようだが、詳細は不明。
赤斗曰く、『無双無限流の妙技を見せてやるっ!』が口癖で、その実力は呂布(恋)以上。
能力値:統率?・武力6・知力5・政治?・魅力?
※能力値は「5」が最高だが、呂布の武力と劉備の魅力は「6」で規格外。
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