No.271072 織斑一夏の無限の可能性8赤鬼さん 2011-08-12 15:29:09 投稿 / 全5ページ 総閲覧数:5527 閲覧ユーザー数:4897 |
Episode8:主人公という立場が怪しくなってきた一夏君
【一夏side】
前から思ったんだが、ISって装着すると、おっぱい強調されるよな。
放課後の第三アリーナ。箒が訓練用IS『打鉄』を装着、展開していた。
実際これまでもセシリアがブルー・ティアーズを装着している時もおっぱいが強調されていたのだが、日を追う毎に何とか我慢する事が出来るようになった。
でもな、何というかおっぱいの大きさには定評がある箒さんがISを装着すれば、どうなるか分かるよな?
実際、目の前にしてみ?
この俺のように獰猛な性的衝動《リビドー》が溢れんばかりに暴走するから。
そうです。さっきから俺は箒を直視できません。直視したら大変な事になるのが分かってるから。
タスケテ、千冬姉。
「......か。......ちか。......一夏っ!!」
「へぁ? は、はい! 何でしょうか?」
「ん? 何で敬語なのだ? 取り合えず今日から私もISで訓練に付き合うからな」
「......せっかくISにおいてはわたくしと一夏様だけの模擬戦が出来たのに......」
「一夏だって、近接格闘戦の訓練もしておきたいだろう。だからこそ、私の出番というわけだ」
まぁ、確かにセシリアは遠距離型だから近距離格闘戦の訓練は出来ない。
ありがたいと言えば、ありがたいのだが......強調されたおっぱいに視線が向いてしまう。
「では一夏、はじめよう。刀を抜け」
いかんいかん。取り合えず邪念は振り払って、今は訓練に集中するとしよう。
御剣一刀流の技と勘が現在の俺の体にどれくらい馴染んでるか試しておく必要もあるしな。
「お待ちなさい! 一夏様のお相手は妻であるこのわたくしの務め! セシリア・オルコットをおいて他にいなくてよ!?」
ここでもまたセシリアの暴走はとどまる事を知りません。正直、泣きたくなってきた。
「ええい、貴様はいつもいつもっ! ここではっきりさせてやるっ! 一夏のお嫁さんになるのは、この私だっ!」
あるぇぇぇぇーーー? 箒さんまでも暴走してらっしゃる?!
もうね、最近思うんだよね。
君達の暴走がひどすぎて、正直俺の設定(前世の記憶と経験を継承)が薄れてきちゃってるような気がするんだよね。
あれ? 主人公って俺だよね?
セシリアじゃないよね?
箒でもないよね?
そんな俺を放置して、模擬戦を始める箒とセシリア。
正直ね、置いていかれてる気がするんだ。
このままじゃ主人公としての立場が危うい気がする......いつの間にかタイトルが『セシリアの華麗なる妄想』とか『箒の放課後ツンデレタイム』とかになりそうな気がする......
............
.........
......
ふざけるなぁーーー!!
「主人公はこの俺だぁぁぁーーーっ!!」
意味不明な咆哮を上げながら俺は覚えたての瞬時加速《イグニッション・ブースト》を使い、箒とセシリアに一気に迫る。
「なっ! 一夏っ?!」
「一夏様!?」
結局、二対一になってしまったが、関係ない。
ここで黙って見ていては男が廃るっ!
嘘です。主人公という立場を剥奪されないためにも俺は必死になるしかないんですっ!!
「うわぁぁぁーーーんっ! この立場は誰にも渡さぬっ! 渡さぬぞぉぉぉーーーっ!!」
「言ってる事は全く意味が分からんが......凄い気迫だっ! さすがだな、一夏」
「それでこそ未来のオルコット家を支える次期当主にふさわしいお方ですわ」
「はぁはぁ......、で、では......今日はここで......終わるとし、しよう......」
ぜぇぜぇと息が切れ、片膝を付く箒に、倒れ伏してるセシリア。
結局、最後まで立っていたのは俺だけでした。
主人公の面目躍如といったところでしょうか。
男には負けられない戦いがあるっ!
「ふぅ......」
展開解除。と同時にISの補助がなくなるので、疲れが一気に体にのしかかってくる。
でも、こういう疲労感はなかなか心地いいものである。
「取り合えず、二人とも立てるか?」
左手をセシリアに、右手を箒に差し伸べ、二人を優しく立ち上がらせる。
二人は俺とは違う反対側のピットなので、そこまで付き添ってから、自分のピットへと戻る。
しかし、今日の箒の強調されたおっぱいは危険だった。
というか、IS操縦者って女性しかいないから、男の俺には本当に大変だ。
IS装着で強調されるおっぱいを見てて負けました、とか恥ずかしすぎる。慣れないとなぁ~。
ピットに戻って、汗をタオルで拭ってると、バシュッとスライドドアが開いて鈴が現れた。
「おつかれ。はい、飲み物はこれでいいんだよね?」
手渡されるのはスポーツドリンク。しかも俺の事をちゃんと理解しているかのように冷えていないドリンクだ。運動後の熱を持った体に冷たい飲み物は体に毒だからな。さすが幼馴染。ちゃんと分かってる。
「変わってないよね、一夏って。若いくせに体の事ばかり気にしてるとこ」
「そりゃそうだろ。何をするにしても体が資本だ。若いうちから不摂生したらいかんのだぞ」
「ジジくさいよ」
「うっせ」
うん、何かこういう雰囲気は落ち着く。お互い気心知れた仲だからな。
「ね、ねぇ、一夏。やっぱあたしがいないと寂しかった?」
「そりゃ、遊び相手が減るのは大なり小なり寂しいだろ」
「そういうじゃなくってさぁ」
今日の鈴はかなり上機嫌のようでさっきから笑顔を絶やさず、話を続ける。何かいい事でもあったんだろうか?
「あっ、そうだ。今日は俺が最初にシャワー使ってもいい事になってたんだ。早めに部屋に戻らないと」
いつもは箒が先にシャワーを使う事になっているんだが、今日はまだ動けそうにないという事でさっき箒とセシリアを送り届けた後、箒から先にシャワーを使ってもいいと言われてたんだっけ。
「えっ? 一夏って一人だけの男子生徒だよね? 誰かと同室なの?」
さっきまでの上機嫌はどこへやら一転して不機嫌面になる。
な、何だ?
「あ、あぁ、お前も会っただろ? 今、箒と同じ部屋なんだよ」
「......は?」
「い、いやな、俺の入学ってかなり特殊な事だったから別の部屋を用意できなかったみたいでさ。まいっちゃうよな~......ははは......」
目の前には引きつった笑みを浮かべる鈴―――もとい鬼がいました。
「ねぇ、それってあの子と寝食を共にしてるって事?」
「......ははは......ま、まぁ、そうなりますよね~。で、でも見ず知らずの相手よりも幼馴染の箒でよかったよ。これで見ず知らずの他人だったら寝不足になっちゃうからな......ははは......」
正直、目の前の鬼を直視する事が出来ません。
「......ったら、いいわけね」
「え? えっと?」
俯き加減の鈴が何と言ったのか聞き取れず、思わず聞き返してしまった。
「だから! 幼馴染だったらいいわけな!?」
いきなりの鈴の方向にたまらず驚いて身を引く。
「分かった、分かったわ。ええ、ええ、よく分かりましたとも」
急に一人で納得し始めた鈴は何度も何度も頷いてる。え? え? 何が分かったんだ?
「一夏っ!」
「はいっ! 何でありましょうか?」
「幼馴染は二人いるって事、覚えておきなさいよ」
そう言って鈴は足早にピットを立ち去って行った。何なんだ、一体......?
【箒side】
時刻は夜の八時過ぎ。夕食も終わりくつろぐムードの中でいた私と一夏の前に一夏の幼馴染、凰鈴音が現れた。
「というわけだから、部屋代わって」
しかも意味不明な事を言ってくる。
「ふ、ふざけるなっ! 何故、私がそのような事をしなくてはならない!?」
「いやぁ、篠ノ之さんも男と同室なんて嫌でしょ? 気を遣うし。のんびりできないし。その辺、あたしは平気だから変わってあげようかなって思ってさ」
何度も何度も会話が堂々巡りしている。さっきから一向に会話が進まない。
でも、私も負けるわけにはいかないのだ!
幼馴染という立場はこの目の前にいる凰鈴音が来てしまった所為で利点が薄くなってきている。
恋敵《ライバル》が日を追う毎に増加している今、ここで同室という利点までをも手放すわけにはいかないっ!
「別に嫌とは言ってない! 寧ろ全然余裕だ!」
一夏は一夏でこの場の雰囲気に気圧されてるのか、冷や汗をたらしている。
くっ! 少しは私の味方になってもいいものをっ!
「と・に・か・くっ! 今日からあたしもここで暮らすから」
「ふ、ふざけるなっ! 出ていけ! ここは私の部屋だ!」
ヤバい、この恋敵《ライバル》は手ごわいっ!
「『一夏の部屋』でもあるでしょ? じゃあ、問題ないじゃん」
そう言って、一夏の同意を得ようとする目の前の恋敵《ライバル》。このまま、一夏がこの恋敵《ライバル》の味方をしたら、私に勝ち目がなくなる。
幸い、一夏はオロオロしてるだけだが。
ここで反撃だ!
「とにかく! 部屋は代わらない! 出て行くのはそちらだ! 自分の部屋に戻れ!」
「ところでさ、一夏。約束覚えてる?」
「無視するな! ええい、こうなったら力づくで......」
そのまま立てかけてあった竹刀を手に取り振り下ろそうとした瞬間―――
「箒。それはやり過ぎだ。」
竹刀は振り下ろされる事はなかった。竹刀の先を一夏が掴んでいたからだ。
「す、すまない......」
しまった。困惑していたのが自分でも分かる。これは自分の失態だ。
基本的に武器を人に向けていいものではない。
【一夏side】
気まずい。ええ、非常に気まずいですとも。
箒は箒でさっきの失態を引きずって無言だし、鈴は鈴でふふんとした顔で俺の返答を待っている。
えっと、約束覚えてる?とかだったよな。
「鈴、約束っていうのは」
「う、うん。覚えてる......よね?」
鈴は顔を伏せ、ちらちらと上目遣いで俺を見てくる。心なしか恥ずかしそうにしているが......思い出せるのはあの時の約束の事か?
「えーと、あれか? 鈴の料理の腕が上がったら毎日酢豚を―――」
「そ、そうっ。それ!」
よし、あってた!
「食べさせてあげるって。毎日俺にメシをご馳走してくれるって約束だろ?」
「......はい?」
あれ? 急に体感温度が下がったような気がする。
パアンッ!
「......へ?」
いきなり頬をひっぱたかれた。いきなりの事で何が何だかよく分からない。
ゆっくりと視線を戻すと、鈴は肩を小刻みに震わせ、怒りに満ちた眼差しで俺を睨んでいる。しかもその瞳はうっすらと涙が浮かんでいて、下唇を噛みしめていた。
「最っっっ低! 女の子との約束をちゃんと覚えていないなんて、男の風上にも置けないヤツッ! 犬に噛まれて死ね!」
鈴はそのまま足早に部屋を出て行った。
「......まずい。怒らせちまった」
今回の件は俺が悪い......んだよな。......鈴、泣いてたな。俺が泣かせちまったのか......。
「一夏」
「な、何だ? 箒」
「馬に蹴られて死ね」
ぐはぁっ! グサッときましたよ。
今日はもう何を言っても聞いてくれないだろう。
今度ちゃんと謝ろう。
ごめんな、鈴。
―――翌日、生徒玄関前廊下に大きく張り出された紙があった。表題は『クラス対抗戦日程表』
俺の一回戦の相手は二組―――凰鈴音だった。
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第8話です。
なんか、もうね......
すいませんっした!!