始めに、主人公を始めとした登場人物の性格にズレがあるかもしれません。
なお、オリキャラ等の出演もあります。
そういうものだと納得できる方のみ、ご観覧ください。
第30話 酔っ払ってやった、後悔はしていない。 by一刀
酔っ払って書いた、後悔はしているさ。 by作者
「すまない、一刀。この脆弱な父を許してくれ」
僕は突然前触れなく唐突に、父さんと呼ぶ男に頭を下げられた。
「俺はお前とは違うのだ。俺は凡庸で、脆弱で、矮小な男だ。それは誰も言わずとも自分自身がよくわかっている」
そうは言うが、贔屓目に見ても父さんは立派な人間である。
さもなくば、母さんが惚れることなどあるわけがない。
才は持ち、それを最大限に伸ばした男。学もあり、武も持つ。
しかしてそれに驕ることはせず、日々精進を心がける男。
故に人望も十分に厚い
「すまない、一刀。すまない、すまない、すまない、すまない」
そんな立派な父親がただひたすらに子である僕に頭を下げていた。
「お前を、母方の祖父に預けることに決まった」
「、、、、、、、、」
「今日からお前は、“”北郷“”一刀だ。俺の姓は、、、捨ててくれ」
「はい。、、、父さん。あの子は、どうなりますか?」
「安心しろ。妹も、お前と一緒に義父に預けることに決めた。お前達が大人になるまでの生活費も、渡してある」
「分かりました。後は、お任せください」
そう言うと、頭の上に手を置かれ、撫でられた。
「ふっ、やはり、お前は母親の血が濃いか。その年齢で、その立派さ。とても、、俺の子とは思えない」
「、、、、、、」
「一刀。覚えておけ、強いことはいいことだ。利口なことも、立派なこともいいことだ。けれど、行き過ぎた力が何かを壊してしまう様に、過ぎればそれは他人にとっては恐怖の対象に成る。わかるな」
「、、、、、、、父さんは、僕の親です。他人じゃ、ありません」
「、、、、俺は、お前が怖い。俺の子とは思えないほど、優秀なお前の所為で、俺はお前の母を信じられなくなった」
「っっ、、母さんは!父さんを裏切ることなんて!「分かっている。あれは、そんなことをする女ではないことくらい」、、なら、どうして、出て行くのですか?」
「すまない。全ては、この脆弱な父が悪いんだ。誰も信じられなくなった、この父が悪いんだ」
父さんは立ちあがり、玄関の扉を開ける。
出ていく父さんの背中を見送るのは、僕一人。
母さんも、妹も、今日は一度も部屋から出てきていない。
「じゃあな、一刀。あれと、あの子のことは頼んだぞ」
「はい。わかりました」
「、、、お前は、この父のようにはなってくれるなよ。誰かを信じられる、強い男になれよ」
「はい。父さん」
「あと、真面目すぎるのも、駄目だな。たまには、我が儘を言い、ふざけるのだぞ?真面目すぎる男は、もてないからな」
そう言い、笑う父さん。
父さんの笑顔なんて、数年ぶりに見た。
「はい。、、、、、さようなら、父さん」
「ああ、、、、、、さよならだ、俺の自慢の息子。もし、お前が家庭を持った時は、俺やあれのように争うのは止せよ。話しあえ。いいな?」
「はい」
「和を以って貴しと為す、だ。忘れるなよ?」
「はい、、わかり、ました」
涙を堪え、俯いて、もう一度顔を上げるころにはもう、玄関の扉は閉じていた。
そして、もう二度と、その扉が開くことはなかった。
「っっ、いった」
痛み疼く右肩に魘されて、俺は目を覚ました。
左手を右肩から順に腕に這わせていく。
「取りあえず、腕はくっ付いてるよな?」
よかった。マジで。
恋に斬られた時は腕一本持っていかれたかとおもったし。
恋との戦闘を思えば、俺が五体満足でいることは奇跡に近かった。
「に、しても、、、痛みの所為で悪夢を見たな」
左手で髪をかき上げながら、天幕の天井を見上げる。
子供のころの夢。
あまり思い出したくない過去くらいなら、誰にだってあるだろう?
俺にとってのそれは、あの頃の俺。
「和を以って貴しと為す、か。夢にまで出てきて言わなくても、忘れないって」
要は争わずに話し合いで解決するのが一番良いってことだろ?
俺がいつもやってることじゃないか。
「まっ、それで何かが解決できたことの方が少ないけどさ」
そう呟きながら、寝具の中から起き上がる。いや、起き上がろうとした。
「んしょ、と。ありゃ?」
したが、派手にバランスを崩して突っ伏す。
なんだこれ?体が上手く動かないんだけど?
「はわわ!何をやってるんですか!北郷さん」
「えっと、視界が全部布団で顔は見えないんだけど、その声は朱里ちゃんだよね?なんかさ、身体がおかしいんだよね。立とうとしてるのに倒れるんだけど、どうなってんだ?」
「そんな体で立とうとしたら当たり前です!」
ジタバタとなんとか体勢を立て直そうとするけど、芋虫みたいにしか動けない。
なんて情けない姿か、これじゃ朱里ちゃんにかっこ悪いって思われちゃうじゃないか。
「その上、視界がくらくら揺れてるんだけど、何これ?俺が揺れてるの?それとも世界が揺れてるの?」
「どっちも揺れてなんていませんよ!とにかく座って、くだ、さい!はぁ、はぁ」
朱里ちゃんは全身を使って俺を寝具の上に座らせてくれた。
座らせてもらったのに、今だに視界は揺れている。
しかも、なんか頭の中が熱い。
「もう、無茶しないでください。北郷さん、怪我人なんですから」
「あっ、うん、ごめん」
あ~、駄目だ。
なんか考えようとするともっと頭ん中が熱を帯びてくる。
如何しちゃったんだ、俺?
「、、、そういやさ、朱里ちゃんがなんでここに居るの?」
「桃香様や鈴々ちゃんが心配なさっていたから、蜀軍を代表してお見舞いに来たんです。それに、私は医学の知識も持っていますし」
最後の部分をない胸をはって言うのがすごい微笑ましい。
ない胸、無い胸、無乳。
、、、、、なんか、似たようなのを気絶する前に見たような、、、
ああ、そうだ。
倒れる前に無乳と、丁度朱里ちゃんみたいな綺麗な金髪を見たんだっけか?
あれって、誰だったかよく分かんなかったけど、朱里ちゃんだったのかな?
「、、、、朱里ちゃん。俺が倒れた時さ、周りに誰かいたか知ってる?」
「??いえ、私は何も知りませんけど、どうかしましたか?」
「、、、、いや、知らないならいいや」
取りあえず、朱里ちゃんじゃなかったんだな。
じゃ、誰だったんだろうか?
、、、、駄目だ、考えようとすればするほど、頭が熱くなってくる。
ぼーっとする、なんか、この感覚、覚えがあるよな?
もしかして俺、酔ってるのか?
「、、、、、なあ、朱里ちゃん。俺が寝ている間に、なんかした?」
「えっと、痛み止めの麻酔にと星さんに渡されたお酒を飲ませましたけど、酔っ払っちゃいましたか?」
あ~~、やっぱりか。
俺が寝ている間に何してくれてんだよ。
そして、最後の部分を首を傾げながら可愛らしく言うなよこのヤロー。
男が酔っぱらうってことを、あんまり軽く考えちゃ駄目だろ?
基本的に前後不覚に成るし、俺に場合はそれに加えて、なんかおかしくなるんだよね。
積極性が増すっていうか、ふざけてる部分が取れるっているか、真面目に女の子を口説くなるようになるっていうか。
「、、、、朱里ちゃん」
「なんですか?」
「朱里ちゃんて、すっごく可愛い顔してるよね」
「は、はわわ!い、いきなりどうしたんですか!北郷さん!」
「髪もサラサラで綺麗な金髪だし、顔はちっちゃいのに目は大きくてお人形さんみたいだし、瞳の色も鮮やかな赤色でくらくらするよ」
「なにを、いってるんです。北郷さん。は、はわわ」
動揺し始めた朱里ちゃんの頬に手を添えて、少しずつ首筋へ這わせていく。
「だ、駄目ですよぉ。ふざけるのは止めてください、、、」
「おふざけで、こんなことするわけないだろう?可愛いよ、朱里」
「っっ」
赤くなり、固まってしまった朱里ちゃんを抱き寄せ、髪に顔を埋める。
やばい、やばいことだってわかってるのに、止まらない。止まれない。
自分の吐息からでる酒の匂いと、朱里の髪の匂いが鼻腔で混じって、脳が溶けていくような感覚に襲われる。
「良い匂いだね」
「や、だ、駄目。最近、お風呂とか、入ってませんし。汗、とか」
「戦中だし、わかってるよ。大丈夫。朱里ちゃんの汗が良い匂いだ」
そう言いながら、首筋に舌を這わせた。
「や、止めてください!」
流石に嫌悪感が先行したのかな。
突き飛ばされた。
片腕が上手く動かない俺は、バランスを崩し情けなく倒れる。
「あ、、、だ、大丈夫ですか?」
「、、、、痛い」
「ほ、北郷さんが悪いんです。酔ってるからって、こんなことするから」
そう言いながらも、倒れた俺を心配してくれるこの子は、本当に優しいな。
けど、だからってどうしてこうも無防備かね?
襲おうとしている男に、自分から近づいちゃ駄目だろ。
「ごめん。酔ってたみたいだ。許してくれると嬉しいな」
「、、、はい。もうこんなことしないでくださいね。私は桃香様の軍師なんですから」
「うん。わかった。酔い覚ましに、少し話に付き合ってくれない?朱里ちゃんは、どうして軍師に成ったの?」
返事を考える暇も与えず、笑顔を朱里ちゃんに向ける。
朱里ちゃんは一考した後、ぽつぽつと語り始めた。
「世を正したいと思ったからです」
「それで選んだ道が、軍師?」
「はい。私は、力は弱いですけど、考えることだけは得意でしたから」
「ふーん。そっか、それだけの理由で随分と辛い道を選んだんだね」
「えっ?」
劣情、という言葉の意味を生れて初めて理解した。
俺のこの気持ちは、卑しく、劣ったものだ。
悲しそうに驚く少女の顔が、どうしようもなく欲しくなる。
酒という力で、俺の中に眠る獣が目覚めて、舌舐めずりを始めていた。
「えっ?って、どうしたの?戦場で一番多くの人を殺すのは、兵でもましてや将でもない。軍師だろ?辛くない訳、ないもんね」
「、、、、、、」
すっと、もう一度朱里ちゃんの頬に手を伸ばす。
「桃香や愛紗は、朱里ちゃんの苦しみはわかってくれてるのかな?わかってくれるのは、同じ軍師の雛里ちゃんだけじゃない?」
「、、、桃香様も愛紗さんも、とっても優しい人です」
「うん、知ってるよ。優しすぎるから、あの二人には周りが見えてない。遠くばかりを見つめて、傍で泣いている朱里ちゃんには気づいてない。いや、違うか。気づいていても、助けようとしてくれないよね?朱里ちゃんは自分達と同じ救う側の人間だって言い訳をして」
震え始めた朱里を抱きしめる。
けれど、これは愛しさじゃない。
これは単純な独占欲で、それ以外じゃない。
「気持ちに答えられないから、せめて優しくする。その方が辛くなるって知っているのに、残酷だよね。朱里ちゃんは、いつまでそうして隠れて泣くのかな?いつまで続けるのかな、こんな不幸と感傷しか生まない関係を」
本当に、俺は酒なんてのまない方が良いよな。
今の俺は、少女の幸せを願いっていない。
少女の意思も尊重しない。
「あ、貴方に何がわかるっていうんですか!」
「まだ何も。出会ったばっかりだしね。けど、知っていることもあるよ。一時だけ、その痛みから解放される方法なら」
抱き寄せた朱里ちゃんの耳元で、そう囁く。
「ふ、ふざけないでください!離して、ください」
「ふざけてなんてない。そんな辛い想いばかり積み上げて、一体どうするつもりなのかな?いつか、その重みで前にも後ろにも進めなくなるってわかってるだろ?必死に叫んでも、誰も朱里ちゃんのことなんて振り返ってくれない。わかってくれない」
あらがおうとするその顔が、どうしようもなく可愛く見える。
あらがうなら、そのあらがいごと、俺は少女を欲している。
叶うなら、少女の、その運命を、俺は奪いたい。
少女の匂いを、吸って吐く、それだけで全身が沸騰しそうだった。
欲しい。この身体が。
欲しい。欲しい。欲しい。欲しい―
「可哀想に」
「っっ、あ」
「辛いんでしょ?忘れてしまいたいんじゃないの?虎牢関で朱里ちゃんが殺した人たちの顔を、これから殺してしまう人たちのことを」
「わ、私は、、、っ」
「だったら、今夜だけでも忘れてしまえば良いよ。享楽に溺れて、甘い毒を臓腑一杯に吸い込んで、二人だけで、、、」
酷く華奢な身体を、寝具の上に押し倒して、首筋に舌を這わせた。
もう、抵抗はない。
「北郷さんは、、悪魔です」
涙声でそういう朱里を無視して、俺は続けていく。
「俺はただ知りたいだけだよ。朱里ちゃんの一番奥にある。秘密の場所を」
這わせた舌は、徐々に下へと下がっていった。
「ふう」
少し経って。いや、ぶっちゃけ、やることやっちゃった後。
俺はようやく酔いを醒まして、天幕の天井を見上げていた。
傍らには、温もりの塊がある。
「、、、北郷さん」
「一刀でいいよ。もう、浅い仲でもないし」
「じゃあ、一刀さん。謝ったりしないでくださいね」
わかってるよ。
流石に、これで酔ってたんだごめんなさいなんて謝って済ますほど、俺も腐ってないし。
けど、何も言わないのもなんかあれだよな。
こういうときって御礼とか言っといた方が良いのかな?
「ありがと」
「どうして、御礼なんて言うんですか?」
「気持ちよかった。ありがと」
「っっ!そういうことも言わないでください!、、は、恥ずかしいんですから」
「赤くなって、可愛いな。朱里」
「幾らほめても、もうさせてあげませんからね」
布団で身体を隠しながらそういう朱里が、可愛過ぎて思わず抱きしめる。
「はは、わかってるよ。今のは本音が漏れただけ」
「もう、、、あの、私、そろそろ戻らないと桃香様達に怪しまれちゃいます」
「うん。わかってる。わかってるけど、もう少し、このままで」
「、、はい」
はぁ、駄目だ。
華琳の所を離れてから、ずっとご無沙汰だったから、女の子の体が気持ち良くてしょうがない。
もうちょっとだけ、このまどろみに沈んでいよう。
side 華琳
意気揚々と、いえ、違うわね。
べ、別に私は今、機嫌がよくなんてないんだからね!
まあ、柄にもなく笑顔で一刀の天幕に向かっていたりするけど、そ、そういうのじゃないから!
それに、たとえ機嫌がよかったとしてもそれは于吉から一刀が今でも私を思ってくれていると聞いたからでもないし。
ましてや、一刀と呂布との戦いで一刀の“”強さ“”をみたからとかでもないんだからね!
「、、、って、何を考えているのかしら。私は」
けど、この連合で良い拾い物をしたっていうのは事実ね。
私が、一刀を陳留から追い出したのはその才覚をひた隠しにしてきたに怒りを覚えたから、でも呂布との戦いで私は確かに見た。
一刀のその才覚と力を。
私が持つソレとは性質が別な、人を惹きつける力。
覇王の力とは正反対な王者の素質。
「何処となく劉備のソレと似通っているのは不愉快だけれど、私の傍に置く者としての資格は十分ね」
そう、言い訳じみたことを呟いてから、私は一刀の天幕の扉に手をかけた。
しかし、その瞬間、聞こえてきたのは、
「ほ、北郷さん」
「朱里」
私以外の女の真名を愛おしげに呼ぶ一刀の声。
そして、隙間から垣間見える男と女が、重なり合うその姿。
数秒たって、私はようやく無意識のうちに顔に浮かべていた笑顔が、消え去っていたことに気付いたのだった。
次回予告! 、、、、ネタばれ注意
長く、続いた戦いは、一人の少年の言葉と共に終わりを告げた。
「漢王朝はこの大陸の支配権の一切を放棄するものとする!」
そして、それは乱世への幕開けであった。
「全員を救いたい、全員に生きていて欲しい。そんな甘い願いは、絶対に叶わない」
「一刀、いえ、和を語る王よ。この乱世の世で、共に舞おうではないか」
「月を、董卓を天下人にする。、、、、それがボクの夢なの!」
「うはうはなのじゃ~」
混沌に包まれた世界で、貴方はなにを見るのか
「ふざけるなよ、小僧。悲劇の主人公きどりか?」
「兄ちゃんなんて、大っ嫌い!」
そして、青年三人の長かった旅路は、今、終わる。
「北郷、、俺に死ねというのかあぁ!」
「め、眼鏡が、眼鏡がァァ」
「だ、誰だ、こんなことしたのは!」
次回、真恋姫無双 二次制作作品 天遣三雄録
第完話 人の数だけある理想 ~そして伝説へ~
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虎牢間の戦いは、敗北で終わった。