第19話 鬼神
「あああああああああああああああああああああああ!!」
戦場に響く恋の悲しき叫び。恋は周囲を敵兵に囲まれていることを忘れているかのように泣き崩れる。その間に春蘭たちが秋蘭の元に近づいていた。
「秋蘭!大丈夫か!」
「私は無事だが、流琉が呂布の一撃を受けて倒れている。いまは後方へ真桜が運んでるところだ」
「流琉は大丈夫なのですか?!」
季衣が柄と鎖だけになった岩打武反魔を持って秋蘭に尋ねる。
「心配はしなくていいぞ。季衣命の心配はない」
「そうですか・・・よかったぁ~」
「それよりも・・・呂布です・・・どうしますか?春蘭様」
凪がまだ泣き崩れている恋を見ながら春蘭に尋ねる。
「呂布を倒せば董卓軍は完全に崩壊する・・・いくぞ!凪!」
春蘭と凪が恋に向かって駆け出す。
「させっかい!」
しかし、恋の後方から敵を蹴散らしながら霞が現れ、馬を恋と春蘭の間に滑り込ませる
「張遼、お前が相手をするつもりか?」
「夏候惇か、一刀の借りを返してやりたいけどここは引かせてもらうで!恋!」
霞は愛馬を反転させ、走りながら恋の左腕を取る。そのまま馬に乗せようとするが、恋はまったくうごかない。
「恋!一刀が消えてもうて悲しいのはうちもいっしょや!でもいまここで恋が死んでどうすんねん!」
すると泣き続けていた恋が泣き止み、小さくつぶやいた。
「・・・・ご主人様」
「なにがしたいのかわからんが、敵の前でそんなことをしていて見逃してくれると思っているのかぁぁぁ!」
春欄が恋へ切りかかるのを霞が飛龍偃月刀を振り受ける。
「だれでもええ!恋を連れて下がるんや!」
霞の副隊長が恋を強引に連れて行こうとすると、恋はその手を振り払いふらつきながら方天画戟をもって立ち上がる。
春蘭と凪を相手どっていた霞は異様な殺気を感じて2人から離脱し、後ろを見ると・・・
目を赤く充血させ、黒き闘気を纏い魏軍を睨みつけている恋がそこにいた
「あああああああああああああああああああああ!」
恋が春蘭と凪に向かって飛び込む。そして目にも止まらぬ連撃を春蘭と凪にぶつける。
「は、はやさが!違いすぎる!」
春蘭たちを助けようと秋蘭が矢を放つが恋はそれを見もせずによける。凪が恋の左横に回り込んで蹴りを繰り出すが、それを恋は左腕を振り下ろして叩き落す。恋の腕力を直接くらっった凪の右足はボキッといやな音を響かし凪は痛みに叫ぶ。
「ぐあああああ!」
「凪!」
春蘭が凪と恋の間に割り込もうとするが恋は方天画戟を横薙ぎし春蘭を吹き飛ばす。そのままの勢いで恋を方天画戟を凪へ振り下ろす。
「・・・シネ」
「っ!」
凪は横に転がるようにその攻撃を避けるが剣圧によって飛ばされる。
足が満足に動かない凪はその場でうずくまってしまう。
「が、楽進様をお守りしろ!」
楽進隊、于禁隊、李典隊の兵士たちが凪と恋の間に立ちふさがり防衛体制を取る。
その様子にも恋は一切躊躇することなく方天画戟を構える
「・・・・ジャマスルヤツハシネ」
「皆のもの怯むな!我等は魏の精兵だ!かかれぇ!」
楽進隊の副隊長の指示に魏の兵は一斉に恋に切りかかる。
その攻撃を恋は方天画戟を振り何人も同時に切り伏せ、その隙に切りかかってくるものには拳を叩き込んでいく。楽進隊や李典隊の兵士たちは圧倒的な力によって蹂躙されていく。
「ぐあ!」「ぎゃあ!」
凪の前で部下たちが宙を舞い、そして切り伏せられた者は血を噴出す。
その恐ろしい光景に凪は目を伏せてしまう。
「も・・う・・・やめてくれ・・・」
凪の願いは空しく恋は殲滅せんと方天画戟を振り回す。
「くそっ!」
春蘭が恋をとめようと剣戟を浴びせるが恋はすべてを受けてそして1つ1つが必殺の連撃を振るっていく。
「あああああああああああああ!」
恋が獣のように叫ぶと方天画戟で春蘭を七星餓狼ごと叩き伏せる。その轟撃に耐えれなかった七星餓狼は真っ二つに折れてしまった・・・・
流琉、真桜、凪そして春蘭すらも瞬く間に打ち倒した恋に恐怖した魏兵たちは徐々に包囲陣を解き後退する・・・
―――・・・前の世界で恋はご主人様を守れなかった
―――・・・この世界に来たときにご主人様はいつも一緒にいようといってくれた
―――・・・そのためにご主人様は恋と同じ強くなった
―――・・・恋はご主人様と一緒に戦えるようになってうれしかった
―――・・・ご主人様は「恋はおれが守るよ」といってくれた
―――・・・だから恋も「ご主人様はずっと恋が守る」といった
―――・・・なのに恋はご主人様をまた守れなかった
―――・・・恋はご主人様と一緒にいるだけで幸せ
―――・・・恋が見つけられないとこにいかないで
―――・・・ご主人様・・・・
―――・・・ご主人様を消したのはだれ・・・?
―――・・・許さない
―――・・・ユルサナイ
―――・・・ゼッタイニユルサナイ
恋は返り血で体中赤く染め、そして怒りによって充血した目を魏軍に向ける。
「き・・・鬼神だ・・・」
魏軍の1人が恐怖に体を震わせながら口にだす。
「・・・ヨワイヤツハシネ」
恋は方天画戟を構え足に氣を込めて飛び上がり魏軍の集団のなかに飛び込む。方天画戟が漆黒の氣が覆い、いつもの2倍以上の大きさになる。その肥大化した方天画戟を恋は振り回して周囲の兵をなぎ払っていく。その光景はもう戦闘ではない・・・虐殺だった。
その光景を唖然としてみつめていた霞、翠、華雄のところに本陣から合流した詠、風が着き、同じように驚愕する。
「あ、あれが・・・恋?」
「・・・そうや・・・一刀が失ったと判断した恋は我を忘れてる・・・」
「あんなの恋じゃない・・・やめさせないと・・・」
「無理だ・・・」
詠の懇願を華雄が拒否する。
「なんで?!」
「あの状態になってる呂布はだれにも止めれない・・・たとえ我々が全員でかかってもだ」
「そ・・・そんな・・・」
詠が口を押さえて蹲る
「たぶん・・・いまの恋ちゃんは立ちはだかる者すべてを敵を思ってしまう・・・そうなのですね?霞ちゃん」
風が飴を頭部の宝慧に持たせながら尋ねる。
「ああ。暴れだす前に止めようとしたウチにすら恋は戟を向けたんや・・・」
「れ、恋はどうなってしまうの・・・?」
詠が震える声で尋ねる。それに翠が恋の発する殺気に震える馬を撫でながら答える。
「分からないでも・・・あのまま暴走してたら最後は精神が壊れてしまうかもしれない」
「いまの恋は一刀を守れなかったという自責の念と一刀を消した者への怒りが心のなかで渦巻いているはずや・・・もし心がそれに耐え切れなかったら恋の精神は死んでまう」
「どうしようもないの・・・?」
「一刀がいたら押さえ込めるかもしれんけど・・・一刀は・・・」
霞も自分が考え付いたことに顔を歪める。霞が言いたいことがわかった詠たちは涙を目にためる
そして風がこっそりとつぶやいた
「だれでもいいのです・・・恋ちゃんを助けて・・・」
すると風たちの後ろから一番聞きたかった声が聞こえた
「恋はおれがなんとかする」
太陽の光によって輝く白き服を着た一刀がそこにいた。
あとがき
どうも、作者です。今回で魏と決着つけるつもりが・・・次回をお楽しみに!( ゚∀゚)bみたいな形になってごめんなさい・・・
今回は恋メインのつもりで書いたつもりです。普段の恋と後悔や怒り、悲しみに支配された恋のギャップを感じていただければうれしく思います。
今回の恋のセリフですが、前回のコメントにあったものからネタを拝借しました。ありがとうございます。
次回こそ、魏との戦争を終らせるつもり・・・・です・・・・つもりです(´・ω・)
では次回お会いしましょう(´・ω・`)ノシ
Tweet |
|
|
70
|
1
|
追加するフォルダを選択
一刀が凪たちにやられたことを悔やむ恋は鬼神と化し魏軍へ襲い掛かる・・・そして消えた一刀の行方は・・・