No.269018

辻の道なり

土竜さん

これは自が高2のときに書いたオリジナルものです。更新する予定はまだないです。
つたない文章ではありますが沢山の指摘、待ってます。

2011-08-10 22:56:03 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:245   閲覧ユーザー数:243

 

 

-----ギョアアアアアアアアアアアアアア

 

自分の意識が覚醒し、初めて聞いた音は化け物の断末魔と肉が千切れ骨が拉げる音。

 

そして次に聞こえたのは、

 

「ん?なんじゃ?人間の……メス………か?」

 

しわがれたご老体のような声。

 

そこで覚醒したはずの意識は連絡を途絶えた。

 

 

 

また意識が覚醒した。

 

「お、起きた様じゃな。状況は理解できるかえ?」

 

意識が戻ったことに気づいたようでご老体のような声のヒトは近寄ってきた。

 

自分は声のした方へ顔を向ける。

 

「あ、~~あ、っあ、あ」

 

声を出そうとして失敗する。

 

「あ~~これこれ、無理して出そうとするな。まぁ無理も無い、十日ほど寝ておったからの」

 

目の前に居るであろうヒトはケタケタと笑う。

 

「?」

 

「そう不思議そうな顔をするでない。しかし人間とは脆い物なのだな」

 

こう言うといったん離れて、カチャカチャと音を立てまた近づいてきた。

 

「さ、之でも飲んで喉を温めぃ」

 

受け取ろうと手を伸ばす。

 

「これこれ、茶碗はこっちじゃて」

 

不慣れな場所で物の位置が掴めず明後日の方向に伸ばされた手をそのヒトであろう手が捕まえ茶碗へ

と誘導する。

 

暖かい。独特な香りがする。

 

「まさかとは思うが、手前目見えておらんのか」

 

声が出ないからこの言葉に頷く。

 

「そうか、ならしばらくここに居るが良い。声も出ておらんしな」

 

この言葉に頷き、与えられたものを飲む。

 

「~~~!!!げほっげほげほ!!」

 

そして吹いた。

 

「どうした!?か、顔が赤いぞ?」

 

頭がふらつく。もう……だめだ。

 

  フラァ~、ボテ

 

意識が刈り取られ、布団に体が沈む。

 

「お、おい!しっかりしろ!おぃ……

 

 

 

意識が覚醒する。頭がガンガンと響く。

 

「(頭が、痛い)」

 

手を頭に当てながら体を起こす。

 

「(しかしここはどこなのだろうか。)」

 

周りの音に耳を澄ます。

 

聞こえてくるのは虫のさざめき、鳥の声、狼達の息遣い。

 

「…!」

 

「心配せんでもあ奴等は襲ってきたりはせんよ」

 

突然隣から声がする。

 

声のした方に顔を向ける。

 

「しかし、酒がだめだったとはな。すまぬ、次からは気をつけよう」

 

私が顔を向けるとともに謝罪の言葉が聞こえてきた。

 

言葉が発せぬがためにこの言葉に頷きで返した。

 

「今日はもう遅い。話すなら明日にしよう」

 

今回はこの声を最後に意識が途切れた。

 

あの日から数日が過ぎた。

 

「目が覚める」というのも私にとっては妙な話で、昼か晩かも関係の無い話だった。

 

しかし今になると如何だろう。

 

床から起きると「おはよう」と言われ、飯時になれば一緒に「いただきます」と言う。

 

少し前までなら有り得ない事だらけだった。

 

「のう、御主よ。名は何と申すのじゃ?」

 

「……名?」

 

突然の問いにしばしぽかんとしてしまった。

 

「そう名じゃ、名。何時までも『御主、御主』と呼ぶわけにもいかんしのう」

 

「名……か、名は……」

 

あった。「逆撫(さかなで)十九郎(じゅうくろう)紅助(あかすけ)」と言う名が。

 

しかし捨てられた身分でこの名を口にするのには抵抗があった故に、

 

「名は…もう『ナクシタ』」

 

と私は言った。

 

「?御主は名を、無くしたのか?亡くしたのか?」

 

と彼(仮)は問いかけてきた。

 

「どちらも。捨てられたが故に尚更」

 

この答えに返してきたのは、

 

「…………」

 

無言。

 

しばしの沈黙が続いた。

 

「…よし!」

 

その沈黙を先に破ったのは、

 

「御主の名は今から『つくも』じゃ!」

 

彼(仮)だった。

 

「つ……く……も?」

 

彼の勢いに気圧されながらも名を反した。

 

「そう、99と書いて『九十九』。御主は完全ではない故にじゃ!」

 

何かと興奮状態な彼(仮)。

 

「あ、はぁ…」

 

「おっと、忘れておった。わしの名は『つじの あづさお』じゃ!」

 

「あづ…さお?」

 

「そうじゃ。字はの……之じゃな」

 

板にでも彫ってあったのかそれを手渡された。

 

それに彫ってあった字は、

 

 辻乃 梓織

 

男とも女とも取れる中性的な名前だった。

 

「因みに言っておくがわしゃ『鬼』じゃ」

 

「居ぬ……のですか?」

 

「おお、博識じゃな。確かにわし等鬼は『居ぬ』。居ぬじゃ」

 

一息置いて梓織は続けた。

 

「じゃがな、わし等は『居ず』では無い。ちゃんとここに居る。理解できておるか」

 

梓織の言葉に頷く。そして言葉を出した。

 

「梓織、私には人には姿が見えずとも、声が聴ければ其処には居る。

 

人が解らずとも私には解ります」

 

「……。そうか、そうか。愚問じゃったのぉ。…そうじゃ、水浴びにでも行かぬか」

 

こう言われ、少々自分の匂いを嗅ぎ、自分が汗臭いことに気付いた。

 

「……。はい」

 

「何、手の届かん場所はわしが洗ってやろう」

 

上機嫌の梓織に手を引かれ、立ち上がり、歩き出す。

 

今日はまだ始まったばかりである。

 

 
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