No.268615

真・恋姫無双SS ~この地に生きるものとして~ 第7話「賊徒襲来」

SYUUさん

黄巾編いよいよスタートです。
と、言ったわりに話も短く一刀もでてきませんが・・・

2011-08-10 18:55:12 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:5677   閲覧ユーザー数:5166

真・恋姫無双SS ~この地に生きるものとして~

 

 

第7話「賊徒襲来」

 

 

飯時をすぎ、混雑も収まり始めた飯所で二人の少女が卓をはさんで向かい合っていた。

 

「ここ最近の賊の増え方は異常です。

 星と別れた今、我々二人だけで旅を続けるのは至難ではないかと思います」

 

眼鏡をかけた黒髪の少女がそう切り出した。

 

「私としては候補も絞れてきた事ですし、そろそろ仕官先を決めるべきかとおもいますが

 風はどう思いますか?」

 

「ぐぅ~~」

 

「寝るな!」

 

「おお!?あまりの白々しさに思わず意識が遠のいてしまいました。

稟ちゃんにはすでに意中の相手が定まっていることなど風にはお見通しなのですよ~。」

 

「くっ、確かに曹操殿を基準として他の諸侯を見ていたのは認めますが、

 それが『風は曹操殿とは言っていないのですよ?』・・・風!」

 

「それで、稟ちゃんは我慢も妄想も限界だからすぐに陳留に向うべきだと、

 そう言いたいのですね~?」

 

稟と呼ばれた少女はこれ以上声を荒げても無駄と察し、

一度、呼吸を落ち着けてから風と呼んだ少女を見据た。

 

 

「風には他に気にかかる諸侯がいると?」

 

「そ~ですねぇ~、候補と呼べるかはまだわかりませんが

 気にかかる人物が一人、いることにはいますね~」

 

風の意見がよほど意外だったのか

一瞬眼を見開いて稟は風を問いただす。

 

「主だった諸侯はすべて見て回ったはずですが、

 風の気にかかる人物とはいったい?」

 

その稟の問いかけに対して風は、

一見なんの関係もないような話を持ち出した。

 

「稟ちゃんはこんな話をご存知ですか?

 かの高名な水鏡先生が男子を弟子にとったとか」

 

「ええ、その噂は聞き及んでいます。

 女子しか弟子にとって居なかった水鏡殿が男子を弟子にしたと結構な話題になっていましたね」

 

それがどうしたというのです?といった表情で稟は相槌を打つ。

 

 

「さすがは稟ちゃんですね~。

 では、その方の名が北郷というのはご存知ですか?」

 

「いえ、それは初耳ですね・・・

 北郷・・・はて?どこかで聞いたような名ですね?北郷・・・・北郷・・・・

 あぁ、そういえば星が良く話していた人物の名がたしか北郷と」

 

「その通りなのですよ~

 星ちゃんの思い人あってみたいとはおもいませんか~?」

 

「確かに星が認めるほどの人物となれば気にはなりますが、

 それと仕官の話は関係ないでしょう。

 それに星の話していた人物と同一人物とはかぎらないでしょう?

 星が最後に会ったのも、もう何年も前だとか・・・」

 

そんな話をしていると急に外があわただしくなっていた。

 

 

一方その頃・・・

 

「た、大変です亜莎!賊が街のすぐそこまで!!!」

 

息も絶え絶えに駆け込んできた黒髪の少女の言に、

遂にこの街にも賊の手が・・・と悔しげに歯をかみ締める亜莎と呼ばれた片眼鏡の少女。

 

「それで、街はどうなってるんですか?県令様の部隊は?」

 

「そ、それが、県令様が少数の護衛を連れてすでに逃げ出したって、

 街中大混乱になってます!」

 

「そ、そんな・・・」

 

明命から聞かされた事態に亜莎は愕然とした。

 

この街の県令はあまり優秀な方ではなかったが、

それでも他の街の民を食い物にしている人に比べれば幾分マシであった。

凡庸ではあるが民を大切にする優しい方、

それがこの街の県令に対する亜莎の評価だった。

それが見事に裏切られた気持ちだ。

 

 

「亜莎!私達も早く逃げないと」

 

明命の声に亜莎は我に帰り数回首を振るとゆっくりと立ち上がった。

 

「あ、亜莎?」

 

先ほどまでとがらっと雰囲気が変わった亜莎に明命は恐る恐る声をかける。

 

「明命、父さんと母さんを頼みます」

 

「亜莎どこにいくんですか!亜莎~!!!」

 

背後から呼びかける明命の声を無視して、亜莎は街の表門へとかけて行った。

 

 

亜莎が表門に辿り着いた時には門の周りは閑散としており、

門兵すら見当たらなかった。

 

すでに裏門から逃げ出したのだろうか。

亜莎はその様にがっかりしながらも、自分のやる事はかわらぬと

門より外を睨む。

その先には遠目にだが賊と思わしき集団がこちらに向って来るのが見える。

その数およそ3千といったところだろうか。

県令が逃げ出さず、きちんとした防戦が行えていれば、

追い散らす事のできた数・・・

だが、現状をなげいても事態は変わらない。

 

亜莎は両手で頬を叩って己を奮い立たせると、

門より外へと踏み出していった。

 

 


 
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