No.268309

糖度何%

ゆいさん

がくルカデートを見学するグミリンです。
初めは別の、関係の進んだがくルカデートを書いていたのですが、急に初デートの方が面白いのでは?と思いましたので書きました。

2011-08-10 13:32:53 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:896   閲覧ユーザー数:895

 

糖度何%

 

 「あっ……今日のルカさん。いつにも増してキレイだね~」

 「そりゃ、昨日一日かかって選んでいたからね~」

 二人の視線の先を見られていると気付かずにがくぽとルカが歩いていた。

 付き合い出したがくぽとルカの記念すべき初デートをグミとリンは陰ながら見守っているのだ。

 緊張のためかルカの表情は固く浮かべる笑みもぎこちない。いつも平然としているがくぽもどこかぎこちなく二人の目に映った。

 ちらちらとがくぽを気にしているルカと同じようにがくぽもルカを気にしてちらちらと見ている。

 互いに変な遠慮があるのか、緊張しているのかしれないが先程から同じことを繰り返していた。

 

 

 そっとルカの手が隣を歩くがくぽの手に伸ばされ、触れるのを躊躇ううちにがくぽと目が合い慌てた様子でルカが俯くと、今度はそのルカの肩にがくぽの手が伸びるが顔を上げたルカと目が合うと慌てて視線を逸らす。

 何度目かも分からない光景にリンがイライラと地団駄を踏んだ。

 「あー! もうっ、がっくん何やっての!? がばーって、ちゅーぐらいしろよ!」

 熱弁を振るうリンが身振り手振りを交えて語るのをグミは拳を握り激しく頷いた。

 ルカの態度は予想通りだったが、がくぽの態度は想定外だった。

 あの、いつも平然としていて余裕を失わないがくぽの態度は意外なものだ。

 

 

 「お兄ちゃんって、付き合ったこと無いのかな?」

 「あるよ! お兄ちゃんが言ってたもん!」

 がくぽと仲が良いカイトが言うのなら間違いは無さそうだ。

 「しっかり、遊んでいたみたいだよ。来るものは拒まずで……」

 カイトから聞き出した情報をリンは嬉々としてグミに話していると声をかけられた。

 「……リン? グミちゃんも?」

 声の方に目をやるとミクが難しい顔をして二人を見ていた。手に店のロゴが入った紙袋を持っている姿から買い物に来ている様子だ。

 「っミク姉!?」

 「っミクさん!?」

 自分の顔を見て驚き、慌てる二人にミクは首を傾げて近づいた。

 「どうしたの?」

 「違うの!? 覗きじゃなくって……心配だから、それでっ……」

 「そうなんです! だから、そのっ……」

 近づいたミクがリンとグミの間から覗き込み、見慣れた後ろ姿を見つけて黙り込んだ。

 それだけでリンとグミが何をしていたのかが分かった。

 呆れた表情をしたミクにリンとグミは言い訳めいた事を口にして笑うがミクの難しい顔を見て黙った。

 「…………」

 きまりが悪そうに指を絡めてちらちらとミクを伺うとミクは真剣な目をがくぽとルカに向けていた。

 

 

 

 

 

 がくぽの隣を歩きながらルカはそっとがくぽを伺う。

 いつもと変わらない表情に見える。そっとそれを確認してルカは気付かれないようにひっそりと溜息をつき俯く。ちらりと俯くルカにがくぽの目が向けられたのをルカは気付いた様子もなく歩いていた。

 嫌われてしまったかしら……。

 先程からルカはそんな事を考えていた。

 ただ、がくぽと二人きり。それがここまでルカをいつもの振る舞いをさせないのだ。

 彼が見ていると思うと勝手に身体が強ばり、頭が白くなって言葉が出てこなくなってしまい、それがさらにルカを追い詰めて軽いパニックを起こしていた。

 先程のレストランでも話しかけてくるがくぽに対してルカは言葉に詰まり黙りがちになってしまっていた。そのうちに会話が途切れて気まずい空気の中で食事を終えて再び歩き出したのだ。

 嫌われても仕方がないと自分の態度を思い出してルカは泣きそうになる。

 ルカの肩に軽い衝撃が走り、考え込んでいたルカは視界が斜めに傾いでいくのをぼんやりと見ていた。

 

 

 

 階段を降りる途中で後から慌てた様子で降りてきた男に突かれる形でルカが傾いでいくのを見たがくぽは動いた。

 掴んだルカの細い腕を引き寄せると手すりを掴んだ腕にびきっと負荷がかかる。それを無視してがくぽはルカを抱き込んだ。

 「怪我は?」

 「……あ、大丈夫ですわ」

 がくぽに問われてルカはぎくしゃくと頷く。

 吐息がかかりそうな程に近い距離がルカから微かないい薫りを伝えてくる。

 抱き込んだルカの身体は思っていた以上に華奢でそれでも確かに柔らかく温かい。

 それに気付いたがくぽは苦い笑みを浮かべた。

 あれほど触れることが躊躇われたのに、触れてしまえば際限なく彼女を求めて、離せなくなる。

 がくぽがルカをいっそう強く抱くとルカは戸惑った表情でがくぽの名を呼ぶ。

 努めてゆっくりと深呼吸をしたがくぽはルカを抱く手を離した。

 「ルカ殿は意外とおっちょこちょいなのだな」

 「……すみません」

 くすりとがくぽが笑うとルカは朱に染まった顔をさらに朱に染めて顔を伏せた。

 「いや、謝ることではない。行こうか?」

 自然にがくぽがルカと手を繋ぐとルカが驚いた表情でがくぽを見つめた。

 「このほうがよかろう?」

 「……はい」

 耳まで朱に染めたルカが恥ずかしそうに俯いた。微かにがくぽの手をルカが握り返してくる。

 ルカが自分を見ていなくて良かったとがくぽは微かに朱に染まった顔で思った。

 

 

 

 

 

 「……あ、あまー」

 「……うわー」

 空を仰ぎ見ながらリンとグミが口々に言うのをミクは静かに見ていた。

 別にミクはデートの覗き見をしていたのではなく、ただ、ルカの表情が酷く辛そうに見えた。だから、心配になったそれだけだ。

 階段でルカが落ちそうになった時はひやりとしたが、あれから自然にまだ、少しぎこちないものを残してはいるが、ルカの表情は明るい。

 会話は聞こえないが、そのルカの表情でもう大丈夫だとミクはつきりと痛む胸の痛みと安堵をないまぜにして深い息をついた。

 甘い、見ている方が恥ずかしいとか言いながらもリンもグミも笑っていた。

 

 

 

 
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