「レールガンが恋をする?」
私の目の前にはインターフォンの押しボタン。
ここに来てから10分が過ぎている。
ボタンを押すだけのことが出来ずにドアの前で立ちすくんでいる。
「私・・・・・・何をやってるんだろう、バカみたい・・・・・・」
寮を出るときは勢い込んで来たのに、いざここまで来ると気持ちが揺れる。
気になって仕方がないのに・・・・・・素直に「遊びに来たよ」って、言えればいいのに。
そんな簡単なことが恥ずかしいと思う気持ちが大きくて言い出せない。
「素直じゃないな・・・・・・私。逢いたいくせに」
大きく深呼吸を繰り返して、気持ちを落ち着けて・・・・・・。
指をボタンへと伸ばした・・・・・・その時。
「ガチャッ」
ドアの鍵が解錠される音。
「え?」
ドアが開く。
「あ・・・・・・」
「へ?」
ドアを開けた当麻としばし見つめ合う。
「あ、あ、あの・・・・・・」
「えっと~何で?」
かっと顔が熱くなる。
予期せぬ展開に気持ちが追いつかない。
ああ~このままじゃ、いつもの怒鳴りあいになってしまう。
そんなつもりなんて無いのに・・・・・・。
「こ、このぉ……」
「御坂? おい、大丈夫か」
自分が情けなくて、瞳が熱くなって涙が溢れだしてしまう。
「・・・・・・・・」
「バカッ! 何で出て来るのよ!」
「はい?」
ああ~ダメ! このままじゃダメっ。
拳を握りしめて何とか押さえようとするけど。
「何でキレてんだ? 意味が分からないんだけど?」
ダメ、我慢できない!
「う、うるさいっ!!」
と同時に電撃が飛んでしまう。
「バチッバチッ!」
「うわっ!」
当麻が右手をかざして避ける。
電撃が手に吸い込まれるように消滅した。
「あの~御坂さん? 今日はどういったご用件で・・・・・・」
「うっぅぅぅぅ・・・・・・バカッ! 人の気も知らないで」
「な、なんなんだいったい・・・・・・取りあえず落ち着け、良いな?」
「バカにしてぇ~」
「嫌々、していないから~」
「その態度が癪に障るのよっ!」
「そんな無茶な」
「うるさい!!」
肩で息をして睨み付ける。
「でも、どうして俺の部屋の前に?」
「偶然よっ!」
「はぁ?」
「偶然、通りかかったのよ、悪い?」
「それって無理がないか?」
分かってる、自分でも馬鹿なこと言ってることぐらい。
でも、素直に認められなくて反抗的な態度を取ってしまう。
「あのさ、俺のところへ来たんだろう?」
「ち、ちがうわよ。偶然だっていったでしょ」
「素直じゃないな、いい加減直したらその性格」
「当麻のくせにぃ~~~」
思わず名前を呼んじゃったけど当麻は気付いていない様子。
怒りとは違う感情でさらに顔が赤くなってしまう。
「なにげに酷い言われようなんだが?」
平然としている当麻が癪にさわる。私がこんなにテンパっているというのに・・・・・・。
「と、とにかく部屋へ入れよ。ここじゃ近所迷惑だから・・・・・・」
「体裁が気になるわけ?」
「ち、違うって! 御坂が困るだろ?」
「あっ」
気遣ってくれてる。
「う、うん・・・・・・」
素直に頷いて玄関に上がる。
「それにしても・・・・・・御坂?」
「え? な、なに?」
「はぁ~俺が聞きたいぞ? 俺の部屋の前で何をしていたんだよ」
「そ、それはべつに・・・・・・」
「別にってことは無いだろう? 寮の前ならいざしらず、EVでここまで上がってきたんだろう?」
「そ、そうだけど・・・・・・」
「らしくないぞ? いつもの御坂はどこへ行ったんだ?」
「うぅぅぅ・・・・・・」
「玄関じゃ話も出来ないな、上がれよ? 汚いところだけど」
「う、うん」
当麻に促されて部屋へ。
「たいしたもん無いけど、取りあえずお茶」
「あ、ありがとう」
ティーバックの紅茶を一口飲む。
気持ちが少しだけ落ちつく。
「御坂? わざわざ休みの日に急用でもあったのか?」
「急用じゃ無いけど・・・・・・用事はある・・・・・・」
「そうか?」
「うん」
「・・・・・・・」
当麻が私が口を開くのを待っている。
こう言うとき当麻の優しさが良くわかる。
計算じゃなくて自然体で接してくれる。
逢いたいだけで理由なんて特になくて……それでも言い訳を考えてご飯でも作ろうと用意はしてきた。
それにしたって、可笑しなことでもあるんだけど、私と当麻はまだそういった関係じゃないから……。
「ここ数日、放課後に会わなかったから・・・・・・ちょっと気になって」
「で、わざわざ?」
「う、うん」
「そっか」
「ちょうど飯にしようかと想ってたんだけど、御坂は飯は?」
「へ?」
「もう昼近いけど、飯は食ったのか?」
「ううん、こっちに来てからにしようと想っていたから」
「それじゃちょっと出ないか? 俺も食べてないからさ」
「そ、それじゃ私がなにか作る!」
「えっ? 御坂が?」
「うん・・・・・・ダメ、かな?」
「別にいいけどまともな食材なんて無いぞ」
そうなると想って用意はしてきた。
でも、ここまで話がうまく進むとは想っていなかったから・・・・・・でも、無駄にならずに済みそう。
「そ、それは大丈夫。持ってきたから・・・・・・すぐに用意するね」
私はすぐにキッチンに向かう。
「つまり初めからそのつもり?」
「い、いいじゃない何でも! 女の子がご飯作ってくれるなんて、う、嬉しいでしょう?」
恥ずかしくなって、大きな声でこたえる、。
「ああ・・・・・・まぁ」
首を傾げる当麻。
無理もないわよね? 会えばいつも電撃やらコインの攻撃だものね。
当麻はいつもそれを簡単に無効にしちゃっているんだけど。
初めは信じられなくて追いかけ回して居たけど・・・・・・シスターズのことが切っ掛けで当麻の
見方が変わった気がする。
当麻が気になって仕方がない。
私が唯一エレクトロマスターとして全力で立ち向かえる相手。
それが凄く嬉しくて・・・・・・まさか、その裏にこんな感情が芽生えてたなんて。
私、当麻のことが好き、かもしれない。
気になっていたたまれずに今日の行動になったわけだし・・・・・・。
料理をしながらそんなことを考えてる。
この料理だって、本当は苦手。でも、好きな人に食べて貰いたいと想って猛特訓した。
一応は女の子だし、男、男の子に作ってあげたいじゃない?
私にだって乙女心は有るんだから・・・・・・自分で言って恥ずかしいけど。
自分の気持ちを確かめるために、思い立った行動なんだけど。
このままだと自分が嫌な子になってしまいそうだったから。考えが偏ってしまいそうだったから、ね。
野菜炒めと中華風卵スープ。
ご飯はスーパーで買ってきた。炊くまでは時間がないと想っていたから。
「はい♪ 出来ましたぁ」
「お? 旨そうだな~」
「遠慮無くどうぞ」
「御坂は? 一緒に食べようぜ」
「うん」
二人で私の作ったご飯を食べる。
これって・・・・・・凄く幸せな気がする。
当麻はガツガツ食べてくれる。
いっぱい作って良かったぁ~男の子だものね。
「コンビニ以外の飯なんて久しぶりだ~ごちそうさん」
「お粗末様♪」
「ふぅ~やっぱり御坂も女の子だな~」
「な、何よそれ?」
「料理が旨いってことだよ」
「ほ、褒めても何も出ないわよ?」
「感謝してるんだよ」
「そ、そう……」
食事の後、お茶を飲みながらのんびりとしていると、会話も途絶えてしまって・・・・・・。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
この沈黙から脱出したくてあまり考えずに言葉を口にする。
「あ、あの、あんたのこと名前で呼んでもいい?」
「え? 別に構わないけど。それじゃ俺は美琴だな?」
「!」
「どうした? 美琴」
「ううん、なんでも」
名前を呼ばれるのって・・・・・・呼び捨てが嬉しい!
ああ~私、また舞い上がってしまいそう。
「当、当麻・・・・・・」
「うん?」
私、顔真っ赤よね? 自分でも頬が熱いのが分かる。
当麻がこっちを見ている。恥ずかしいけど、それ以上に嬉しい。
当麻の視線が恥ずかしくて俯いてしまう。
「美琴、耳まで真っ赤だぞ」
「バ、バカっ~!!」
当麻に殴りかかる。ポカポカと照れかくしで打つ。
手が滑って身体が倒れ込んで当麻の胸の中へ。
「あっ!」
「あ・・・・・・」
ドキドキ・・・・・・心臓の音が急テンポで高鳴る。
私、当麻の胸に・・・・・・きゃぁ~~~~~!
当麻のシャツをギュッと掴む。電撃を抑えるための行動だったのだけど。
当麻の腕が私を包むように抱きしめてくれた。
「美琴・・・・・・」
当麻の声が耳元に聞こえる。
心臓は限界を超える程に鼓動が早い。
私は顔どころか体中が熱くなっている。
好きな人に抱きしめられているんだもの、当然よね? 当麻も私と同じ気持ちなのかな?
胸に耳を押しつけると当麻の鼓動が聞こえてくる。
あ、朝もシャワー浴びたし汗臭くないわよね? この状況じゃ今更だけど、でもそこは女の子なわけで
気になるじゃない?
あれ? 私意外と落ち着いている? 当麻の腕の中だと言うのに……。
安心しているんだ。恥ずかしいけど当麻に抱かれているのが嬉しい。
私は当麻が好き! 大好き!
大きく深呼吸をして顔を当麻に向ける。
「ねえ、当麻」
「うん?」
「当麻は私に抱きつかれて迷惑?」
「驚いたけど、迷惑じゃない」
「そ、それじゃ、うれしい?」
「え、ええっと……」
当麻の顔が赤く染まって照れている様子。
「私は嬉しいよ。当麻とこういうことができて」
もう一度当麻を強く抱きしめる。
「美琴……」
予想してなかった急展開。
それに意外と落ち着いている自分に驚く。
これなら素直に言い出せるかもしれない。
私の気持ちを当麻に……。
「当麻のことが……好き。自分の気持ちに気付いたらじっとしていられなくなって……」
ゆっくりと当麻に気持ちを伝えていく。
当麻の反応は? さっきからの雰囲気だと受け止めてくれそうだけど……でも、聞くまでは不安。
当麻の胸に顔うずめながら当麻の言葉を待つ。
「俺も嬉しいよ。美琴みたいな女の子に好きって言われて……俺も好きだよ美琴」
「本当? うざいとか思ってない?」
「想ってない、美琴といると楽しいしな」
「当麻……」
心の中がすごく温かくなって……当麻も私と同じ気持ちだったんだ。
ものすごく恥ずかしんだけど、当麻を見つめて瞳を閉じた。
「美琴」
唇に触れる感覚。
私のファーストキス。
「これで美琴と恋人同士か」
「ええっ! 恋人!」
恋人っ! あはっ♪ そうだよね。
「何を驚いてんだ? 告白して同じ気持ちで、キスまでしたのに。それが恋人同士だろ」
「そそそそうかもしれないけど、恋人……当麻と私が……」
「美琴?」
「うん! 恋人! 当麻と私は恋人同士♪ でも、これはものすごく恥ずかしいことなんじゃ……」
夢でも冗談でもないんだ。私と当麻……恋人同士。
「慣れだよ、慣れ。最初は色々とあるだろうがそれも時間の問題だ」
「そうだけど、考えるだけで頭が沸きそう」
「俺だって、一緒に居ればそれも半分で済むだろう? 馴染むまでの我慢だ」
「当麻って、意外と普通なのね」
「そうか? 美琴と同じだぞ?」
「私なんてテンパってるし、周りの反応を考えると……落ち着いてなんていられない」
「学校は無理だけど。それ以外は美琴のそばに居る。一緒に乗り越えよう」
「本当? 約束だからね」
「ああ」
「そ、それじゃ~さっそく明日から寮まで迎えに来て♪」
「おお、任せろ!」
「うん♪」
嬉しい! 朝から当麻と逢える!
電撃をやりあうんじゃなくて、彼女として恋人として、好きな人と一緒に居られる。
私頑張るから、当麻にふさわしい女の子になれるように。
当麻と一緒に居るのが自然であるように……。
おしまい
あとがき
ども~Ikuです。
妄想爆発でこんなお話を創ってみました。
変わり映えは無いな、うん。こんな話しか書けませんが読んでいただけて大変うれしく想います。
ラブコメ大好きなのでこの路線ばっかりになってしまうんですが……。
懲りずに読んでいただけると嬉しく想います。
byIku
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御坂美琴のお話で、上条当麻にアタックします。
とは言っても電撃やコインじゃないですよ? 恋のアタックです。
ラブラブ全開になってますのであしからず。