No.260032

織斑一夏の無限の可能性1

赤鬼さん

インフィニット・ストラトス二次創作、第1話です。

2011-08-05 08:35:28 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:8536   閲覧ユーザー数:8012

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Episode1:第二の人生は女難

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【一夏side】

 

 

俺はIS学園に入学する事になってしまった。

 

男性で唯一、ISを動かせる男性として世界中でも報道されてしまったため、一躍時の人となってしまった。

 

玄関前には報道陣が殺到し、政府のお偉いさん、どっかの研究所の人も訪問してきた。

 

研究所の人は「解剖させてくれ」と恐ろしい事を言ってきたので、塩を撒いてお帰り願った。

 

野次馬も増え、監視と護衛が付く生活を送る羽目にはなるわ、中学では注目の的となった。千冬姉も月1、2回しか家に帰らなかったのにあの試験の日から毎週末帰ってくるようになった。

 

千冬姉には試験会場で経験したあの時の感覚を相談した。ISの事、そしてもう一人の俺の人生。

 

そしてあの後に分かった事なのだが、その時に経験したもう一人の俺......いや、前世の記憶なのか?前世での経験はそのまま今の俺に引き継がれていた。

 

つまり、剣術の腕がそのまま今の俺に引き継がれているのだ。

 

一度千冬姉と剣を手合わせてみたのだが、以前までは全く歯の立たなかった千冬姉を寸でのところまで追い詰めるくらいにまで剣の腕が上がっていたのだ。

 

もちろん勝てなかったがな。

 

んで、ISを動かせる俺は当然、IS学園に入学する事になってしまい、今、教室にいるのだが......正直に言って......辛い。

 

何が辛いって......見渡せば、視界に映るのは女、女、女。

 

そうISは女しか動かせなかったのが今までの常識だったのだ。

 

当然、IS操縦者を育成する機関であるIS学園には女性しかいない。当然、教職には男性もいるが、少ない。つまり、女子高と変わらない。

 

少し前の俺はそんな環境にウキウキしていた。前の人生でも女っ気なかったし、今までもそうだった。だから、女だらけの環境に夢見心地で初めての彼女もできるかもしれないと思っていた時期もありましたよ、ええ。

 

ただね、正直言って、いざ、そのような環境に置かれると辛いし、おっかない。

 

周りは女で男一人。気軽に話せる友人は誰もいないし、何がおっかないって、獲物を狙うかのような女生徒の視線が怖い。

 

まだ話しかけてこないが、ヒソヒソ俺の事を話してるのは分かる。

 

居心地が悪い......。

 

ただ、唯一の救いがあるとすれば、窓辺の奥にいるのが篠ノ之箒。

 

ISを発明した天才(天災?)科学者、篠ノ之束の妹であり、剣道の全国大会で優勝するくらいに強い。

 

彼女が纏う張り詰めた雰囲気はまさしく古い時代の日ノ本の侍の様な鋭さを放っており、近寄りがたいオーラが6年前より更に強くなっている。

 

でも、俺には分かるっ!

 

制服を着てても分かるナイスプロポーション!そして髪型は昔のままだが、可愛くなってたっ!

 

うむうむ、幼馴染だし、後で声でもかけておくべきだよな。

 

ただ、視線を向けると、ぷいっと顔を逸らされる始末......俺って嫌われてたっけ......?

 

そして暫くすると我が一年一組の担当教諭が教室に入ってきた。

 

 

「全員揃ってますねー。じゃあSHR(ショートホームルーム)始めますよー」

 

 

モニターに”山田真耶”と表示され、にっこりと微笑む女性副担任こと山田真耶先生。生徒達とそう変わらない小柄な体系なのに服と眼鏡のサイズが合っていないのか『子供が無理して大人の服を着た』か『子供が背伸びしている』といった印象を与えている。

 

しかし問題はそこではない。そう......巨乳......いや爆乳なのだっ!!

 

童顔でおっぱいデカいって......初めて俺はIS学園に入学できた事を心の底から喜んでしまった。

 

いい、実にイイっ!!

 

あのおっぱいに挟まれたい、揉みしごきたい。

 

 

「......くん。......ちかくんっ!......織斑一夏くんっ!!」

 

 

「へ?!あっ.......はいっ!」

 

 

ヤバい、あまりに爆乳振りにトリップしてしまったようだ。山田先生の呼び声に反応できなかった。

 

声が裏返ってしまった......周囲の女子はくすくす笑ってるみたいだし......正直、恥ずかしい。

 

 

「あっ、あの、お、大声出しちゃってごめんなさい。お、怒ってる? 怒ってるかな?ゴメンね、ゴメンね!でもね、あのね、自己紹介、『あ』から始まって今『お』の織斑君なんだよね。だからね、ご、ゴメンね?自己紹介してくれるかな?だ、ダメかな?」

 

 

生徒の俺にかなりの低姿勢な山田先生。

 

あまりの小心者振りに、『この人は教師をやっていけるのだろうか......?』と余計な心配を胸に抱きそうになってしまう。

 

 

「いや、あの、そんなに謝らなくても……っていうか自己紹介しますから、先生落ち着いて下さい」

 

 

「ほ、本当ですか?本当ですね?や、約束ですよ?絶対ですよ!?」

 

 

涙目になりながら手を取り熱心に詰め寄る山田先生。

 

年上なのだが、つい思ってしまう。―――可愛いっ!!お持ち帰りしてみたいっ!!

 

はっ!いかんいかん、またトリップしてしまう所だった。

 

そうだ、自己紹介だっけ?

 

席を立ち、後ろを向く。俺の席は一番前の真ん中、まるでイジメですか?と言いたくなるような席なので自己紹介するためには後ろを振り向かなければならない。

 

で、振り返ると―――全女生徒の視線が俺に突き刺さる。

 

さすがにこの数の視線には耐えられない。早く終わらせてしまおう。

 

 

「えー………、えっと、織斑一夏です。よろしくお願いします」

 

 

周囲の女子は俺に何かを期待するような視線を投げかけてくる。

 

正直、お腹痛くなってくる。キリキリキリキリ......これがストレスからくる胃痛というものだろうか......俺、まだ15なのに。まぁ、前世の記憶では20台半ばなので副担任の山田先生とそう変わらないんだけどね。

 

箒もさっきまでは無視してたのに、今は俺の自己紹介に耳を傾け、視線を俺に向けている。

 

しかし、この針の筵状態なのは耐えられない。さっさと切り上げるに限る。

 

 

「い、以上っ!」

 

 

ズコォーーーッ!大半の女生徒がバラエティー番組に出るお笑い芸人のようにずっこける。

 

おぉーーー、生では初めて見る。と一頻り感心しながら眺めてると、俺の頭が後ろからスパァーーーンと叩かれる。

 

叩かれた頭を押さえながら慌てて振り返ると......俺の良く見知った人物がいた。

 

 

「げっ、千冬姉―――」

 

 

そこまで言って、手に持っていた出席簿で再度叩かれる。

 

 

「織斑先生だ」

 

 

へ?え?織斑先生?

 

 

「織斑先生、もう会議は終わられたのですか?」

 

 

「ああ、山田君。クラスへの挨拶を押し付けてしまってすまなかったな」

 

 

俺の時とは違う優しげな声。何で俺には優しくないんだ?

 

 

「い、いえっ。副担任ですからこれくらいはしないと……」

 

 

千冬姉は俺達生徒の方を向きながら胸に手を当てて発言する。

 

 

「諸君、私が織斑千冬だ。君たち新人を一年で使い物になる操縦者に育てるのが仕事だ。私の言う事はよく聞き、よく理解しろ。出来ない者には出来るまで指導してやる。私の仕事は弱冠15才を16才までに鍛え抜く事だ。逆らってもいいが、私の言う事は聞け。いいな」

 

 

おぉーーー、余りに一方的な物言い。横暴だ。こんな横暴を許してしまっていいのだろうか。

 

しかし、俺のそんな思惑とは裏腹にクラスの女子達が途端に黄色い声を上げ色めき立つではないか。

 

織斑千冬、俺の唯一の肉親にして唯一人の姉。第一世代IS操縦者の元日本代表で公式戦無敗。しかも第一回ISの世界大会―――モンド・グロッソの格闘部門及び総合優勝者なのだ。

 

つまりは世の女性たちの憧れの的である。

 

 

「キャ―――――――!千冬様、本物の千冬様よ!」

 

 

「ずっとファンでした!」

 

 

「私、お姉様に憧れてこの学園に来たんです!北九州から!」

 

 

「あの千冬様にご指導いただけるなんて嬉しいです!」

 

 

「私、お姉様のためなら死ねます!」

 

 

千冬姉は見慣れ過ぎた光景なのか非常に鬱陶しそうだ。

 

 

「……毎年、よくもこれだけの馬鹿者が集まるものだ。感心させられる。それとも何か?私のクラスにだけ馬鹿者を集中させているのか?」

 

 

「きゃああああああっ!お姉様!もっと叱って!もっと罵って!」

 

 

「でも時には優しくして!」

 

 

「そしてつけあがらないように躾をして~!」

 

 

一部、不穏な声が聞こえるが......聞かなかった事にしよう。

 

 

「で?挨拶も満足に出来んのか、お前は?」

 

 

「いや、千冬姉、俺は……」

 

 

スパァーンッ!本日三目の出席簿がお見舞いされる。

 

千冬姉、身内贔屓しないからってポンポン人の頭を叩いていいもんじゃない。

 

 

「織斑先生と呼べ」

 

 

「………はい、織斑先生」

 

 

 頭を押さえながら席に着く一夏。ここまでのやり取りでさすがに他のクラスメイトも俺と千冬姉が姉弟だというのに気付いたようだ。

 

 

「え……?織斑くんって、あの千冬様の弟………?」

 

 

「親戚とかなのかな……?同じ名字だし、もしかして姉弟だったりして?」

 

 

「じゃあ、世界で唯一男で『IS』を使えるって言うのも、それが関係して?」

 

 

「ああっ、いいなぁっ。代わって欲しいなぁっ」

 

 

ひそひそとそんな話が耳に入って来る。今のやり取りで俺と千冬姉の関係に気付いた子もいるみたいだ。

 

自分の代わりに成り代わる、絶対に後悔するぞ、あの人は完璧に見えても......家じゃかなりズボラな人間だからな。

 

教室の視線の殆どが千冬さんに注がれている中、明らかに俺に向いている視線がある。

 

軽く気配を探ると一人は箒。そしてあからさまに俺に敵意を向けてくるのが一人いるな。

 

やれやれ、平穏に学園生活を送りたいだけなのに......。

 

でも、これから山田先生のあの爆乳が毎日拝める事は幸運なのかな?テヘッ。

 

そんな思考を遮るかのように鳴り響くチャイムの音。

 

 

「さあ、SHRは終わりだ。諸君らにはこれからISの基礎知識を半月で覚えてもらう。その後実習だが、基本動作は半月で体に染み込ませろ。いいか、いいなら返事をしろよ。よくなくても返事をしろ、私の言葉には返事をしろ」

 

 

鬼教官宣言に対し湧き上がる歓喜の声。

 

はぁ~、取り敢えず二度目の高校生活。気楽に楽しみますかね。

 

IS学園。ISの操縦者育成を目的とした教育機関であり、運営およびに資金調達には日本国が行う義務がある。だから、この学園には世界中から生徒が集まる。勿論、教師も世界中のIS操縦者が派遣される。

 

何故、運営およびに資金調達を日本国のみだけが負うのか、それはISを発明・開発したのは篠ノ之束、つまり日本人であり、ISはこれまでの軍事力を凌駕する。

 

ISが一機あれば、国を滅ぼせる、とまで言われてるのだ。

 

日本人が作ったISの所為で世界は混乱した。そして一国だけがIS技術を独占するのはおかしい、と他の国々が言及。だから日本で始まった混乱の責任は日本にあり、世界のバランスを崩さない為にもISの技術を他の国にも提供しろって事が条約によって定められた。

 

こんな横暴ともいえる要求を当時の日本政府はのむしかなかった。この世界の日本政府も物資の輸入、輸出共に他の国に依存していたからであり、これが途絶えれば日本の終わりを意味しているからである。

 

【箒side】

 

 

6年振りに会った幼馴染は私の事を覚えてくれていた。

 

幼い頃から小学4年までずっと隣にいた男の子、織斑一夏。

 

実家は剣道の道場でもある篠ノ之神社、私はそこで一夏と一緒に剣道の修業に励んでいた。

 

元々人付き合いが苦手な事もあって周りのクラスメイトからはよく「男女」とイジメられた。そんな私を庇ってくれたのは一夏だった。

 

何時から一夏の事を好きになったのかは分からない。でも、この気持ちは嘘ではなかった。

 

一夏の傍にいれるのが純粋に楽しかったし嬉しかった。

 

毎晩、一夏の事を考えてよく眠りに就いた。正真正銘、私の初恋だった。

 

でも、初恋は決して実らない―――

 

篠ノ之束、私の姉であり、ISの生みの親でもある。あの人がISを発明、発表した事で国の要人保護プログラムというのに組み込まれ、引っ越しをしなくてはならなくなった。

 

引っ越しを知った晩、私は声を上げ泣いた。

 

―――好きな人にもう会えない。

 

まだ小学4年だった私には耐えられなかった。だから一夏と離れ離れになってしまった原因でもある姉とISを憎んだ。

 

何時しか親とも離れ離れになりながらも、私は一夏との繋がりを無くしたくなかった。だから、一夏が褒めてくれた髪型を変えず、一夏と一緒に鍛錬した剣道をずっとずっと続けてきたのだ。

 

姉の繋がり故にIS学園への入学は決定事項であり、大嫌いなISに関わらなければならない事実に陰鬱としていた頃、何の気も無しに点けっぱなしになっていたTVから流れてきたニュースを聞いた瞬間、手に持っていたコップを取り落としてしまった。

 

繰り返し流されているそのニュースの内容がとんでもないものであったからだ、何しろ今まで女性にしか扱うことができなかったISを初めて起動させた男性が出現したという事件だった。

 

これだけでも十分に大きなニュースだが、しかしその重大ニュースも壊れたスピーカーのように連呼される特徴的すぎる名前と、画面に映し出された適当に切っただけの黒髪と負けん気の強そうな瞳をもった顔を見た瞬間に何処かへ飛んで行ってしまった。

映し出されているのは私、篠ノ之箒の幼馴染にして、初恋の相手、織斑一夏だったからだ。

 

あれだけ嫌だったIS学園への入学は待ちきれないほどのものになってしまった。

 

―――早く一夏に逢いたい

 

―――早く一夏の声が聞きたい

 

それだけしか考えられなくなってしまっていたのだ。

 

IS学園に入学して、教室に行くと久し振りに見る一夏がいた。視線を外せなかった。直ぐにでも声を掛けたかったのだが、6年という歳月が私を臆病にさせていた。

 

相手が自分を忘れてるかもしれない、という不安に胸が締め付けられる。

 

でも、視線は一夏から外せなかった。そして一夏がこちらに気付いたようで私に視線を向ける。最初は驚いたような表情をして、ニコッと笑顔を向けてきてくれたっ!

 

恥ずかしくて顔を背けてしまったが、一夏が私の事を覚えてくれている、その事が純粋に嬉しかった。

 

うん、次の休み時間にでも勇気を出して声を掛けてみよう。

 

待ちに待った再会なのだ。

 

 

【一夏side】

 

 

現在、一時間目のIS基礎理論の授業が終わり、休み時間だ。

 

正直いくつになっても勉学は苦手だ......でも、そんな事よりも今の現状は朝よりもひどくなっていた。

 

ど う し て こ う な っ た 。

 

この教室だけでも好奇の視線が絶え間なく降り注がれていたのに、それに輪をかけて、廊下にひしめく女生徒の多さに冷や汗が流れる。廊下には他のクラスの娘や2年、3年生が詰めかけている。が遠回りに俺を見てはひそひそと話していて誰も俺に話しかけようとはしない。

 

逃 げ 出 し た く な っ て き た 。

 

 

「ちょっといいか?」

 

 

見上げると黒髪ポニーテールで盛り上がったおっぱいにどうしても視線を向けてしまう程にナイスバディ―に成長した篠ノ之箒がいた。幼い頃から小学4年まで一緒だった幼馴染だ。

 

 

「箒......?」

 

 

「......話がある。ついてこい」

 

 

そして連れられて着いた場所は校舎屋上。今は俺と箒の二人きり......まぁ、物陰に女生徒が数名隠れてこちらを伺ってるが、放っておいても害はなさそうだからここは無視しておこう。

 

問題は俺の前にいる箒。

 

そして無言。

 

あるぇぇぇ?用があるんじゃなかったのか?

 

せっかく可愛くなった箒から誘ってくれたからドキドキしてたのに。この期待を裏切る無言は何だ?

 

対峙する箒はどこか不機嫌そうだ。口をへの字にし、俺を睨みつけては視線を外し、思考に耽ってる。やっぱり俺、嫌われてるのかな?

 

うーーーむ、一応、ここは俺から話を切り出すべきか?

 

休み時間も無限じゃないしな。時間も限られてるし。このまま無言で休み時間が終わる、とかマジないから。

 

 

「そういえば去年、剣道の全国大会、優勝したんだってな。おめでとう」

 

 

「な、なんでそんな事を知ってるんだっ?」

 

 

「なんでって新聞で見たし」

 

 

「なんで新聞なんか見てるんだ?」

 

 

話題を振ったおかげで話は出来たが、箒は何か変な答えを返してきた。まぁ、偶然見つけたんだけどな。たまたま知ってる名前を新聞で見付けたら見るだろ、普通。

 

 

「あーーー、後、久し振り。6年振りだけど直ぐに箒って分かったぞ。ほら、髪型、一緒だし」

 

 

俺の言葉に頬を赤くして、ポニーテールの先端をいじくり始めていた。

 

 

「よくも、覚えているものだな......」

 

 

「いやぁ、忘れないだろう。幼馴染の事くらい」

 

 

俺の言葉に箒は何かを言いかけた所で

 

 

―――チャイムが鳴る。

 

 

「ほら、俺達も戻ろうぜ」

 

 

二時間目の授業を告げるチャイムが鳴り響く中、箒の手を取り急かす。

 

 

「~~~っ!!」

 

 

かぁっと箒の表情は赤くなっていく。どうしたんだ?風邪でもひいたのだろうか?

 

 

【一夏side】

 

 

IS。正式名称「インフィニット・ストラトス」。

 

科学者"篠ノ之束"により開発された宇宙空間での活動を想定して作られたマルチフォーム・スーツ。

 

当初の制作者の意図とは別に宇宙進出は一向に進まず、「兵器」へと転用されたが、現在は各国の思惑からアラスカ条約が締結され、スポーツへと落ち着いている飛行パワードスーツ。

 

本来であれば、"女性以外に使用できない"という致命的欠陥を抱えているが、何故か俺は動かせてしまった。

 

だから、現在、俺はIS学園にいるのだが......

 

正直、さっぱり理解できない。

 

入学一週間前に『必読』と書かれた電話帳のような分厚さのISの参考書が送られてきたのだが、最初の3ページくらいで挫折した。

 

諸君、よく考えてみてくれたまえ。

 

いくら前世の記憶が甦って精神年齢が20台半ばであろうともが六法全書よりも分厚そうな教本を一週間で読破できるか......答えは否!断じて否なのであるっ!

 

人間、諦めも肝心である。

 

 

「皆さん、ここまでで分からない所はありましたか?」

 

 

山田先生がそのおっきいおっぱいを揺らしながら生徒に聞く。

 

俺は教科書と睨めっこしながらも表情は青ざめてる。

 

 

「織斑君、何か分からない事がありましたか?なんでも質問して下さいね。なにせ、私は先生ですから~」

 

 

何時の間にか俺の前には山田先生がニコニコしながら立っていた。

 

 

「......先生、ほとんど......いえ、全然分かりませ~ん......」

 

 

「え?ぜ、全部ですか?今の所で分からないって人はどれくらいいますかぁ?」

 

 

俺の返答に山田先生はビックリしながらも他にも分からない生徒がいないか周りを見渡したが、みんな理解しているらしく、反応はなかった......

 

トホホ......俺だけですか......

 

 

「織斑、入学前の参考書は読んだか?」

 

 

千冬姉が俺に近付いてくる。あまりにも分厚かったので間違えて捨ててしまった旨を告げると出席簿で殴られる。

 

千冬姉の愛が痛い......

 

結局、入学前に届いた参考書は再発行される事となり、さらに一週間で覚えろ、と言われてしまった。


 
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