始めに、主人公を始めとした登場人物の性格にズレがあるかもしれません。
なお、オリキャラ等の出演もあります。
そういうものだと納得できる方のみ、ご観覧ください。
第26話 凡庸を語る者 by甘寧
合戦のさなか、見たものは無様に這い蹲るあの男の姿。
反吐に塗れ、剣を取りこぼし、張遼の前で頭を垂れるように倒れる男を私は鼻で笑う。
「ふん、無様だな」
やはり、蓮華様があの男から学ぶことなど何一つない。
そう思いながら、蓮華様に近づく張遼隊の兵士たちを斬っていく。
斬って、殺して、切り裂いて、死なせる。
死んでいく者たちすべては死の間際、懇願するような、恐怖の表情を浮かべながら死んでいく。
何時も通り光景。権力に塗れ安穏と暮らす暗君も、戦場で戦う屈強な兵士も、死ぬ間際は皆同じ表情を浮かべる。
『生きたい』と、言外に叫び続ける。
「皆、生きたいのは同じか」
蓮華様の為に死ねるのなら、それ以上の誉は無いと知る。
しかし、間際になれば私も、こう思ってしまうのではないのか?
『生きて、蓮華様の為になりたかった』
「まだまだ、私も惰弱だな」
口少なくそう呟く。前にお出になろうとする蓮華様を背に隠し、敵をけん制しながら敵を斬っていく。
一区切りついてから、ふと倒れているあの男の方を見る。
そこには、反吐に塗れ、地面を這い蹲りながらも、迫ってくる死を前に、笑っている男の姿があった。
「っっ、、なぜ、笑っていられる?死ぬのが、怖くないのか?」
わけがわからなかった。殺されて死ぬ間際に笑う人間など、見たことが無かった。
狂っているのかと思った。しかし、あの男の目は確かに理性の光を宿していた。
そして私は、あの男が繰り返していた言葉を思い出す。
『今日が死んでも良い日だろうかどうかは、自分で判断してくれよ』
死ぬ覚悟が、戦う前から出来ていたというのか?
いや、死ぬ覚悟なら、戦場に出た者なら全員している。
していても、いざ死ぬとなると揺らぐ、それが、人。
「あの男は、揺らがない?いや、しかし、あんな男が、英雄だというのか?」
そんなことを思い、そして、すぐにそうではなかったのだと悟る。
男を守るために、立ちふさがった一人の老将が斬られると、男は涙をこぼしていた。
『止せ、先生!あんたはそんなことはしなくていい!死ぬべきは、俺だろう!』
その姿を見て、私は納得した。
「ああ、そうか。そういうことか」
――申し訳ありません。雪蓮様、やはり、蓮華様があの男から学ぶことなど何一つありません。
そう呟いている内に、戦闘は終わった。
汜水関の方では、黒煙が上がっている。汜水関は、堕ちたのだろう。
『安心しろ。先生。俺が、あんたに天下を見せてやる』
戦いが終わり、斬られた老将を担ぎながらそう言う男を、傍に居る蓮華様はじっと見つめられていた。
「行きましょう、蓮華様。やはり、あの男から蓮華様が学ぶことなど何もありません」
私の言葉に、蓮華様は眉を顰められる。
「しかし、思春。北郷のあの姿こそが、姉様が私に見せたかったものではないの?」
「おそらくは、違うでしょう。そして、たとえそうであったとしても、私は蓮華様にあの男のようになって欲しくありません」
「何故?あの男は、英傑よ。貴方は私に、英雄になるなと言いたいの?」
「蓮華様。残念ながら、今の蓮華様の目は節穴でございます」
「なっ、」
私はそう言い切った。言いきって差し上げねばならなかった。
蓮華様が道を踏み間違えになられない為にも。
「あの男は、自分の命と何かを天秤にかけて、推し量れる英雄ではありません。いえ、そもそも、上に立つ者が自分の命など天秤にかけてはならない。上に立つ者が死ねば、苦しむのは民達です」
「あっ、、」
「それを、あの男は自分の命を簡単に投げだす。まるで、自分の代わりなど幾らでも居るとでも言いたげに。民や、兵士達が、どれだけ自分に依存しているかも知らずに。私は、蓮華様にそのような王になって欲しくはありません。蓮華様の代わりになる者など、居ないのですから」
「思春、、、」
「申し訳ありません。私ごときが出過ぎたことを言いました」
「いえ、嬉しかったわ。ありがとう、思春」
最後に、蓮華様に非礼を詫びてから戦場から退き返していく。
道中、あの男が軍師や将、兵士達から怒られている姿を見た。
聞こえた限りでは、君主が戦闘したことの非常識を聞かされているようだ。
男は、苦笑いを浮かべながらそれを聞き続けていた。
「、、、、知らぬ、訳ではないのか?ならば、あの男の天秤には、最初から自分の命が含まれていない?」
最後には何時もヘラヘラと笑っている男を見て、口元を吊り上げた。
「あの男の本質は、王ではないな。元来、私のように、補佐する側の人間だ」
もし、あの男が孫呉に、蓮華様の元に居てくれたのなら。
私と同じように、蓮華様に命を捧げてくれていたのなら。
と、思って。すぐに顔を背けた。
「いや、あんな男。居ても蓮華様の害にしかならん」
私は陣への道を急ぐ。
合戦の中で、私は剣を振るっている。
ふと北郷の方を見ると、張遼と相対していた。押されながらも、懸命に剣を振るい続けていた。
「負けられない」
姉様が私に、あの男の何を見せたかったのかは分からない。
けれど、もし、見せたかったものがあの姿だというのなら、後れを取るわけにはいかなかった。
懸命に剣を振るう。対するのは張遼隊の屈強な兵士達。精兵といえた。
思春のように、一撃の元に倒すことは出来ない。二撃、三撃、打ち合って初めて相手が体制を崩す。
そこを見逃さずに討っていく。
――姉様なら、この程度の相手は一撃で切り捨てられる。
私の剣戯は、姉様には遠く、及ばない物だった。そう思うと、体が勝手に前へと出て行く。
すると、思春が背で私を隠すように立ちふさがる。私に向かってきていた兵士達が斬られる。
「、、、そうね。冷静にならないと」
そして、敵の数が減り一区切り付く。私は、なんとなく北郷の方を見た。
そこには、反吐に塗れて血に這い蹲りながらも、笑いながら、眼に宿した光を失わずにいる北郷の姿があった。
無様に映るその姿を、私は何故か美しいと思ってしまった。
死を間際に、笑っているその姿。あれこそが、本当の強さなのではないだろうか。
そして、北郷は何度も呟いていた言葉をまた、呟く。
『ああ、今日は、死ぬにはいい日だ。合戦の騒乱の中でなら、寂しくもない』
死ぬにはいい日。そう言い切る北郷の顔は、最後まで笑顔だった。
「私には、あそこまでの覚悟が出来るの?」
孫家の女として、戦場で死に覚悟なら出来ている。
けれど、殺される間際、最後の最後まで笑っていられるかと聞かれれば、無理だと思う。
私はきっと、涙を見せてしまう。生きたかっと、姉様やシャオ、思春や明命、祭や冥琳、穏や亜莎、呉のみんなと笑い合いながら明日を生きたかったと思ってしまう。
「あれが、本当の強さ」
口元を吊り上げる北郷の顔が、戦場を駆ける姉様の顔と重なった。
しかし、そんな強い男でさえ、涙を見せることはあるのだと私はすぐに知った。
『止せ、先生!あんたはそんなことはしなくていい!死ぬべきは、俺だろう!』
北郷を庇って倒れた老将を見て、北郷は臆面も無く眼に涙を溜めていた。
その涙を見て、私はまた美しいと思ってしまった。
不謹慎なのはわかっている。けれど、誰かの為に流された北郷の涙はどうしようもなく輝いて見えた。
「国の為に笑って、将の為に泣いているのね。あの男は、何かの為に命を捨てている」
――なんて、美しい生き方だろう。
私は、そう思わずには居られなかった。
そして、そんなことを思っている内に汜水関から黒煙が上がる。
汜水関は、堕ちたのかしら。
『安心しろ。先生。俺が、あんたに天下を見せてやる』
私は、それを確認することなど無く。肩に老将を担ぎ、そういう北郷の顔に魅入られていた。
自信に満ちたその言葉は、何処までも私を惹きつけた。
何時の日か、私も笑いながらそんなことが言える日が来るのだろうか。
「行きましょう、蓮華様。やはり、あの男から蓮華様が学ぶことなど何もありません」
そう思っていると、思春から手を引かれる。
思わず、眉を顰めてしまった。
――学ぶことなど、星の数ほどあるじゃない。姉様はきっと、私に北郷の様な強い君主になって欲しくて、あの姿を見せたのに。
「しかし、思春。北郷のあの姿こそが、姉様が私に見せたかったものではないの?」
「おそらくは、違うでしょう。そして、たとえそうであったとしても、私は蓮華様にあの男のようになって欲しくありません」
――北郷のように、私に強くなって欲しくは無いの?
私には、思春が何を言っているのかわからなかった。
「何故?あの男は、英傑よ。貴方は私に、英雄になるなと言いたいの?」
「蓮華様。残念ながら、今の蓮華様の目は節穴でございます」
「なっ」
思春の言葉に、耳を疑う。
この子が、私を馬鹿にするようなことを言うなんて、初めてのことだった。
「あの男は、自分の命と何かを天秤にかけて、推し量れる英雄ではありません。いえ、そもそも、上に立つ者が自分の命など天秤にかけてはならない。上に立つ者が死ねば、苦しむのは民達です」
「あっ、、」
確かに、その通りでもあった。
上に居る者が振るう勇気は、一歩間違えれば蛮勇。
蛮勇や、軽々しく命を賭けるなど、褒められたことじゃない。
「それを、あの男は自分の命を簡単に投げだす。まるで、自分の代わりなど幾らでも居るとでも言いたげに。民や、兵士達が、どれだけ自分に依存しているかも知らずに。私は、蓮華様にそのような王になって欲しくはありません。蓮華様の代わりになる者など、居ないのですから」
「思春、、、」
「申し訳ありません。私ごときが出過ぎたことを言いました」
「いえ、嬉しかったわ。ありがとう、思春」
思春の言う通りだと思う。そして、私を思ってくれるこの子が傍にいることを嬉しく思うわ。
けれども、陣への道を行く途中、見た北郷の笑顔を見て。
やはり、美しいと思ってしまう。
命を投げ出してでも、成し遂げたい何かを持つ彼を美しいと思ってしまった。
「ごめんなさい、思春。やっぱり、私もいつか、彼のようになりたいわ」
呉の将兵の為に、私の友たちの為に、笑って死ねるような、そんな王に。
――誰かの為に死ぬ人生に、憧れてしまう私がいる。
汜水関攻略は、左慈の活躍と愛紗の活躍、そして星の暗躍によって終わったと傷の治療中に聞いた。
何でも、左慈と愛紗が華雄とその部隊の相手をしている間に、星の部隊が汜水関に入り込み落としたらしい。
左慈と愛紗を囮にした星は高笑いをしながら城壁の上で汜水関攻略を宣言したらしい。
星らしいと思うけど、なんか釈然としない。そんなことをしている暇があったら霞の相手をして欲しかった、霞と華雄を倒せば汜水関はどっちにしろ落ちたんだし。
俺、死にかけ損じゃね?とか星に漏らしたら、笑らって誤魔化された。
まあ、別にいいけどさ。
そして、その日の夜。汜水関を攻略したことで次の虎牢関に向けての軍議が開かれた。
のだか、
「北郷さん!これはどういう積りですの!どう責任を取るつもりですの!」
「そうじゃ!そうじゃ!妾の兵になんていうことをしてくれたのじゃ!」
「そーだ♪そーだ♪」
開始早々、袁家の面々に怒鳴られた。ちなみに、最後のは張勲だ。
最後の張勲以外は本気で憤慨しているらしい。俺、何かやったかな?
そりゃ、袁術はなんか華琳に似てるな~とか、邪な眼で見たこともあったかもしれないけど、髪をツインドリルとかにはしてないぜ?
頭の中で思う分にはいいじゃないか。思想の自由は憲法で保護されてんだぜ?
「聞・い・て・い・ま・す・の!!貴方のところの将の所為で、私の軍がどれほどの損害を出したと思っていますの!」
「そうじゃ!そうじゃ!麗羽姉様の兵士ばかりか、妾の兵まで巻き込みおって!北郷のところの将は何を考えているのじゃ!」
「そーだ♪そーだ♪」
なんかよく分かんないけど、怒っているのは俺が袁術ちゃんを脳内でツインドリルにしたことじゃないらしい。
兵士が巻き込まれた?なら、最初に考えた策が成功したのか?でも、確か左慈が命令違反をしてご破算になった筈だろ。
その所為で俺は死にかけたわけだし。俺は首を捻る。すると、于吉が耳打ちしてきた。
「(実はですね、、一刀君。とても言い難いのですが、、左慈が暴走したそうなのですよ)」
「(暴走って何だよ?華雄と戦場で言葉では言えないことをしちゃったのか?露出プレイは華雄に可愛そうだろ!?)」
「(、、、、確かに、あれはある意味言葉では言えないようなことですね)」
「(、、、何やったんだ?あの馬鹿)」
「(華雄との戦闘で、頭に血が上っていたようで。その、敵軍の兵士ばかりか、袁招軍と袁術軍の兵士まで、蹴り殺してしまったらしいのです)」
于吉の言葉を聞いて、ため息を漏らす。
袁招と袁術が怒り狂っているのは当然の無いことだった。
俺は二人に向きあって、話す。
「なるほど、、ね。うちの軍の馬鹿。味方殺しまでしちゃったわけだ」
「そうですわ!この責任、どうとるおつもりでして!」
「そうじゃ!そうじゃ!」
「そーだ♪そーだ♪」
なんか、息がぴったり合ってるな。袁家は仲が良いらしい。従姉妹同士仲がいいのはいいことだな。
従姉妹と言えば、俺も結構妹と仲がいい。これは、夏の日の話なんだけど、
「そのネタは前話でやりましたよ。現実と向き合ってください」
「いけず」
于吉の言葉で現実と向き合うが、どうしようか。
非は完全に俺達の方にあるよな。なんせ、味方である袁招軍と袁術軍の兵まで殺しちゃったんだから。
てっ、ん?なんかおかしくね?
「なあ、確か、左慈は華雄が突っ込んできたあとも引かないで前曲で戦ってたんだよな?」
「まあ、そうみたいですけど。それがどうかしまして?」
「そうじゃ!そうじゃ!」
「そーだ♪そーだ♪」
なんかもう、後ろの二人が段々ウザくなってきたな。黙ってくれないかな。
「じゃあ、どうして後曲にいた袁招と袁実の兵士達が巻き込まれたんだ?まさか、左慈がわざわざ後ろに下がって兵士達を蹴り殺したってわけじゃないだろ?」
幾ら華雄との戦いで興奮してても、そこまで狂う奴じゃないだろ。
殺したなら、それは多分乱戦のさなかでのことの筈だ。
「例えば、袁招軍と袁術軍が前曲の指揮官である俺に断りも無く無理やり前にでも出ない限り、そんな悲劇は起こんなかったんじゃないのか?」
「うっ、、そ、それは」
「な、七乃~」
「あはははは~」
案の定、図星だったらしい。
「あ~、それって、自業自得って言うんじゃないのか?要は、功を焦って無理やり前に出たせいで、指揮系統が混乱したんだろ」
「の、脳筋なお姉様が、まともなことを言ってる!」
「どういう意味だ!蒲公英!」
まあ、ぎゃあぎゃあと騒ぎ出す馬超と馬岱は無視して、天幕の中には何とも言えない空気が流れる。
殆どの物が、俺ではなく袁招と袁術を見ている。
「な、なんですの。その皆さんの視線は!まるで私が悪いみたいじゃありませんか!」
「そ、そうじゃ、そうじゃ」
「そーだ、そーだ」
全員の視線にさらされて、流石の連携にも力が無い。
「皆、そう言っているのよ。麗羽の兵が死んだのは麗羽、貴方の判断が悪かったからよ。功を焦った貴方が悪いわ」
「そうね。袁術ちゃんも袁招軍が前に出るのを見て、焦って進撃させたわけだし、あれじゃ被害が出て当然よ」
「流石に、、北郷さんに何の連絡も無く、いきなり部隊を前に出すのはまずかったんじゃないですか?」
華琳、孫策、桃香の言葉で劣勢を悟った袁招と袁術は俺を睨みつけてくる。
「まあ、ほら。功が欲しいなら次を頑張ればいいんじゃないか?」
「貴方ごときに言われなくてもわかっていますわ!」
「そうじゃ!そうじゃ!」
「そーだ♪そーだ♪」
袁招は立ちあがって宣言した。
「次の虎牢関は、この私!総大将自らが出て差し上げますわ!我が袁家の力、皆さんは後ろでポケーっと眺めていてよろしくてよ!おーほっほっほ!」
「妾たち袁招軍もでるのじゃ!」
「キャー♪凛々しい美羽様も素敵ですよ!」
盛りあがる袁家に、俺は笑顔で聞いた。
「で、策は?」
「無論!華麗に優雅に雄々しく前進!ですわ!!」
「あっそ」
まあ、俺達に関係ないなら別にどうでもいいや。
こうして、軍議は終わった。
軍議が終わった後、私は爪を噛み思案していた。
「まずいわね。冥琳」
「ああ、まずいな。このままでは、どうせ袁術に命じられるのは無理な突撃だろう。また、無意味に兵を失うことになる」
――袁家の馬鹿どもは策という言葉を知らんらしい。
忌々しそうに呟く冥琳と、私も同じ気持ちだった。
無意味に兵士を失うのは避けたい。孫呉独立の悲願を叶える為にも。
「かといって、今は袁術ちゃんの命令には逆らえないわ。どうしようかしら?」
「、、、我々だけではどうしようもないだろうな」
「あら、諦めるのかしら?」
「まさか、そんな筈がないだろう」
――ほんと、頼もしいわね。冥琳は
笑ってそう言えば、笑みを浮かべて帰してくる。
「で、どうするのかしら?」
「我々だけではどうしようもない。だから、他の諸候に協力を頼もう。どの諸候も、わかっているだろう。袁招と袁術では、虎牢関は落とせないと、な。あそこには今、退いて行った張遼と華雄の他にも、呂布がいる」
飛将軍呂布。噂では、たった一人で黄巾党三万を壊滅させた武将。
思わず、血が滾る。いけない、いけない、今はまだ、戦場じゃないのだから。
「他の諸候たちは、協力してくれるかしら?」
「未だに功を上げていない者たちならな。馬超、曹操あたりが妥当だろう」
「公孫賛は?」
「ん、ああ、忘れていた。しかし、公孫賛は野心の無い君主だと聞くが、まあ、話ぐらいはしておいた方がいいか、、、」
珍しい、あの冥琳がもの忘れするなんて。疲れているのかしら?
「まあ、良いわ。冥琳、話をする諸候を誰にするかは貴方に任せるけど、北郷軍は呼んでおいてちょうだい」
「北郷軍か?あそこはもう、汜水関を破るという功を劉備と共に立てている。話に乗るかどうかは分からないぞ?」
「来るわよ。絶対」
「勘か?」
「そっ、勘よ」
「ふっ、わかった」
「じゃ、よろしく~」
伸びをしながら天幕を出て、夜空も見上げる。
月と星が、綺麗に見えていてとても気分がいい。
「さてと、じゃ。聞かせてもらおうかしら。どうして、北郷軍の将が“”わざと華雄を逃がした“”のかを。ふふふ」
合戦のさなか見た光景を思い出して、私は笑った。
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