No.249858

仮面ライダーEINS 第十五話 双撃

この作品について
・この作品は仮面ライダーシリーズの二次創作です。

執筆について
・隔週スペースになると思います。

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2011-07-31 08:30:03 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:534   閲覧ユーザー数:514

――2011年11月5日 13:12

――学園都市中央区 商業区

 本来なら多くの人で賑わう場所で、アインツと怪人が交戦していた。

『一騎。相手はタイプスティールシリーズの発展型みたいだね』

「それもタダの棺桶ではないらしい」

 アインツが戦っている相手はかなり洗練された技術で作られたであろうタイプスティールの発展型であった。

想像以上の防御力。そして何よりも悩みの種なのが運動性能の高さであった。

『一騎。そいつはタイプスティール・フロッグ』

「変換期にはちょうどいい名前だな」

 堅いなりには戦い方がある。性能差に機嫌を良くしたタイプスティール・フロッグがガンガン攻めてくる。

その腕を掴んで相手の力も利用して放り投げる。タイプスティール・フロッグは名前に違わぬ受け身を取るが、後ろからアインツが全体重を載せたドロップキックを放つ。

双方すぐに起き上がり、再び相対する。

次の瞬間にはタイプスティール・フロッグの口腔部に当たる部分から舌のようなものが伸びた。

だが歴戦の戦士にそれは当たらず、それを掴んで思いっきり放り投げた。この背負い投げも受け身を取られ、決定的なダメージを入れることが出来なかった。

攻め倦いている。

アインツも晴彦もそう思っていたその時だった。

対峙していた二人の間に手榴弾が投げ込まれた。

これに素早く反応したアインツは大きく後ろに跳躍した。タイプスティール・フロッグは爆風をまともに受けてしまう。そもそも喰らってもそんなにダメージがなかったかも知れないが。

「ハル!」

『学園都市内の信号だ』

「なに!?」

 一騎が手榴弾が投げられた方を見た。

逆光で見えなかったが、腰にベルトが巻かれているのまで確認できた。そして覚悟を叫ばずに"ソレ"は変身した。

 

『Zwei!!』

 

 飛び出してきたのは無骨なソレであった。

明らかにアインツより体格の良いソレはタイプスティール・フロッグに飛びかかり、インファイトを仕掛けた。

体格は良いものの動くは洗練されており、格闘術はかなりものであった。着実にタイプスティール・フロッグは追い込まれていく。

そして左ストレートと右フックの二連撃が直撃した瞬間、タイプスティール・フロッグが爆発した。

一瞬タイプスティール・フロッグの装着者の身を案じてアインツが焦りを見せるが、どうやら無事のようであった。

そして変身を解除し、ソレと相対した。

「ツヴァイ……完成していたのか」

 一騎の口からこぼれたのは二号を意味する言葉であった。

ツヴァイは変身を解除し、一騎を睨み付けていた。

「久しぶりだな。雨無一騎」

「……尾木小次郎か?」

「ほう、覚えているか?」

 そう言って尾木は一騎の眼前に立ち睨みを効かせた。

 

 

 * OP:Journey through the Decade *

 

 

EPISODE15 双撃

 

 

――2011年11月5日 15:13

――学園都市 中央区 事務科

――製作倫理委員会

 中央区に呼び出されたアインツチームは、あまりにもアウェーな会合に参加していた。

一騎に至っては聞く気はさらさらないという雰囲気で、晴彦は怒りを露わにしている状態であった。

「……であるからして」

 日本人とは違う覇気と口調。日本人は戦争と基本的に無縁だが、PMCに所属している人間が居ないわけでもないが、明らかにそちらの人間であった。先ほど自己紹介があったが既に名前を忘れてしまっていた。

一騎の興味はむしろツヴァイの変身者……ちょうど一騎の正面に座っている男であった。

「一騎、あの男と知り合い?ちょっと殴ってきてよ」

 態度でかすぎ。と付け加えた。まるで勝ち誇ったように椅子に身体を預けていた。

「あいつは尾木・K・小次郎。22歳。国籍日本。かつて俺と学園都市産仮面ライダー一号の装着者を競い合った男だ」

「かなりのFool guyだね。一騎と争って勝てるとでも思ったのかな?」

 おそらくこの場にある全ての状況が、晴彦の堪忍袋の緒を高速研磨している様だ。

「そこはノーコメントだが……少なくとも奴のプライドを傷つけたことは確実だ」

「なんで?」

「あいつは某PMC出身のエリート兵士で、CQBから重火器に関するスペシャリストだ。確かにいっぱしの研究者と本当の兵士が争って研究者が勝とうものならば……」

「器が小さいねぇ」

 と晴彦が締めた。相棒がここまで怒っているのはかなり珍しかった。

「アインツの優位性はないものと考えられる!!」

「へぇ。すごいですね」

 一騎は聞いてませんと返した。聞く気どころかやる気もなく、唯一有るのは寝る気だけだ。

しかし相棒である晴彦は憤りを隠せなかった。長机を力強く叩き語気を荒げた。

「その前に貴方たちチームの審査が先だ!加えて僕たちは学園長直轄のチームだ。つい二ヶ月前に国の圧力で作られた貴方がたにどうこう言われる筋合いはない!」

 そもそも横でもう寝ますというオーラを発している男は学園の創始者の一人だ。内情もろくに理解できていないお役人に偉そうな口は叩かれたくはない。

「我々は学園都市の意志ではなく、国の意志を第一としている!第一貴公らは甘すぎる!その程度で何か守れると思っていることが笑止千万!!」

「言わせておけば!!」

「はいはい、ストップだ。ハル」

 晴彦の怒り方をみると、アインツチームとしての誇りがあったのだろう。

この勢いが学会の時に出て欲しいとちょこっと思ったが、ここは彼の脳血管のためにも撤退するべきだろう。

「こっちはこっちでやります。そっちはそっちで好きにやってくれ」

「アインツはクビだ」

「クビ!?」

 晴彦がさらに声を荒らげた。血管が切れる音を聞けるのはレアな体験だっただろう。

晴彦としては四年近く戦ってきて、学園都市の最高機関以下から言い渡されては抗議もしたくなる。

「あんたらは時代遅れだ」

 そう尾木が言いはなった。

「そりゃ4年も戦ってたらな。大きなヴァージョンアップをしたわけでもないし」

 さも当然のように一騎が言葉を発した。

「じゃあ、ここは新入りに任せて、俺達は長期休暇と行きますか」

 そう言って一騎は両開きの扉を勢いよく開く。

「ハル、JAXAに行こうぜ。昔、倫理的問題で中止になった惑星開発用強化人間が、形を変えて再スタートしたらしい」

「ちょ、ちょっと一騎?」

 様子はいつもと一緒だ。だが会議に参加していた人間も晴彦も、ある意味"仮面ライダー"に固執していた一騎があっさり引き下がった事に違和感を感じていた。

「じゃあ後はお任せしますっと」

 晴彦の肩を持って、そのまま部屋を出て行ったしまった。

部屋に取り残された人間は、そのまま完全防音の部屋で次の話に入るのであった。

「意外だったな。雨無が簡単に引き下がったのが」

 そう尾木が呟いた。

「尾木。俺達の目的……分かっているんだろうな」

 軍人口調の男が尾木に迫った。

「分かっている。俺は雨無を倒せればそれでいい」

 そう言った尾木の口調と表情は、憎悪に満ちたものであった。

 

 * *

 

――2011年11月5日 15:40

――学園都市 中央区 事務科

――廊下

「ちょっと一騎!?」

「なんだ晴彦。今、会議中だから静かにしてやれ」

 と言ってもどこの会議室も完全防音の部屋ばかりだ。対して意味はない。

「クビだよ!それも十人委員会からじゃなくて!新参の!どこの馬の骨とも分からない!噛ませ犬みたいな!」

「落ち着け、ハル。俺は休暇としか言ってない」

 晴彦が肩を上下に動かしながらクールダウンを始めたところで一騎はようやく語り始めた。

「……ああ」

 納得した。付き合いが長いから察したとも言うべきか。

「なるほど、じゃあJAXAにでも見学に行きますか!」

「青春スイッチオンで宇宙キター!」

 

 

――??

――??

 暗い空間とは対照的に白服に身を包んだ男二人が、これからの方針を密談していた。

「学園都市に"楔"を打ち込むことに成功した様だな」

 座っていた男が抑揚のない言葉を並べた。

「ええ。ついこの間暴走した輩がいましたが、それも対して問題になりそうではないです」

 立っていた男も強弱のない言葉でそれに返した。

「ニホンの警察のほうはどうだ?」

「4年前の科捜研からの流出事件は政治でうやむやに出来そうです」

「大衆は所詮そんな物だ。一年前に起こった大事件はすぐに風化する」

 座っていた男……おそらく上司は立ち上がり、一つの試験管を手に取った。

「今私たちの手の中にこれがある。これがあるかぎり、我々の勝利は確固たるものだ……」

 上司と思われる男の手の中には赤い液体……おそらく液体が入った試験管が握られていた。

 

 

――2011年11月6日

――東京都 調布市

「相棒」

「なんだい、相棒」

 気楽なアインツチームは電車に揺られていた。

あの後、本当にJAXAに出張にでたチームは、へたくそな尾行を連れたまま目的地にたどり着いたのであった。

「後ろの尾行がどっか行った。俺達信用無かったんだな」

「それは実に心外だね。まあ急に一人追加したから怪しまれるかな?」

 そう言って晴彦は一騎の向かい側に視線を移す。そこにはよだれを垂らしながら睡眠を謳歌している亜真菜が座っていた。

「一騎。君、推しが強いタイプ好きでしょ?」

「空中に跳び上がっても待ってくれているほうがいいな」

 事実上ノーコメントと言い放った一騎は手元にあったアインツコマンダーを開いた。

「お、ブラジルからメールの返信が届いた。どうやら出払っているようだな」

「一騎の行ったとおりだね。今十人委員会は全部学園都市から出払っていることになる」

 学園長を初めとした委員会の面々は、オートレースに出ていたり、何かを撮影に行っていたり、器械体操の指導に出払っていたり、工学に関する講演をしていたり、拳法の指導で忙しかったり、故郷に里帰りだったり、アメフトの試合を見に行ったり、ハングライダークラブの会合であったり、これまた拳法の指導だったり、大学の提携と大忙しであった。

「まあ何でこんなに重なったのか、検討は付くがな」

 つまりツヴァイチームは最高機関がいない隙を突いてデビューしたことになる。

今現在、学園都市にいる一番のお偉いさんがツヴァイのチームと繋がっていてもおかしくない。

「しかしどこの組織だろ?」

「奇しくも英雄達と俺達の軌跡が重なってしまったのかもしれないな」

 

 

次回予告

――くそ!こいつでどうだ!

 

――どうした?随分と手こずっているじゃないか?

 

――誇りに思え!

 

EPISODE16 一撃


 
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